第145回 衆議院本会議 1999年5月13日

地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案


平成十一年五月十三日(木曜日)

    ――――――――――――― 

議事日程 第二十号  平成十一年五月十三日

    午後一時開議 

第一 電波法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付) 

第二 郵便法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付) 

第三 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

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○本日の会議に付した案件

 株価算定委員会委員任命につき同意を求めるの件 

日程第一 電波法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付) 

日程第二 郵便法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付) 

日程第三 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出) 

地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑

    午後一時三分開議

○議長(伊藤宗一郎君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 株価算定委員会委員任命につき同意を求めるの件

     (略)

 日程第一 電波法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)

 日程第二 郵便法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)

     (略)

 日程第三 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

     (略)

     ――――◇―――――

地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明

○議長(伊藤宗一郎君) この際、内閣提出、地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案について、趣旨の説明を求めます。自治大臣野田毅君。

 〔国務大臣野田毅君登壇〕

○国務大臣(野田毅君) 地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案の趣旨について御説明いたします。

 地方分権の推進は、二十一世紀を迎えるに当たって、新しい時代にふさわしい我が国の基本的な行政システムを構築しようとするものであります。

 これまでの行政システムは、全国的統一性、公平性を重視したものであり、我が国の近代化、第二次大戦後の復興や経済成長を達成するために一定の効果を発揮してきたものでありますが、今日においては、国民の意識や価値観も大きく変化し、生活の質の向上や、個性的で多様性に富んだ国民生活の実現に資するシステムの構築が、強く求められております。

 このためには、国は本来果たすべき役割を重点的に担い、住民に身近な行政はできる限り地方公共団体にゆだねること、並びに、地方公共団体の自主性及び自立性が十分に発揮されるようにすることを基本とする、国と地方の新しいシステムに転換する必要があります。

 このような趣旨は、既に平成五年六月に衆参両院において行われた地方分権の推進に関する決議において明らかにされております。これを受けて制定された地方分権推進法に基づいて地方分権推進委員会の勧告が行われ、昨年五月、政府として地方分権推進計画を作成し、国会に報告したところであります。

 この法律案は、地方分権推進計画を踏まえ、さらに地方分権を推進する観点から検討を進め、地方自治法を初めとする関係法律四百七十五件について、必要な改正を行おうとするものであります。

 第一に、国と地方公共団体との関係について、新しい関係を築くため、都道府県知事や市町村長を国の機関として国の事務を処理させる仕組みである機関委任事務制度を廃止することとしております。

 これに伴い、地方公共団体に対する国の包括的な指揮監督権等、機関委任事務に係る根幹的な制度を定める地方自治法の改正を行うとともに、個々の機関委任事務を定めている関係法律の改正を行い、地方公共団体が処理する事務を、自治事務と法定受託事務とに区分することとしております。

 また、機関委任事務制度を前提として成り立ってきた地方事務官制度は、これに伴い廃止することとし、地方事務官が従事することとされている事務については、厚生事務官及び労働事務官が行うこととし、そのため、国の地方出先機関を再編することとしております。

 第二に、法定主義の原則、一般法主義の原則、公正、透明の原則に基づき、地方公共団体に対する国または都道府県の関与の見直し、整備を行うこととしております。

 このため、地方自治法において、関与に係る基本原則、新たな事務区分ごとの関与の基本類型、関与の手続及び関与に係る係争処理手続を定めるとともに、個々の法律における関与は基本類型に沿った必要最小限のものにするべく、所要の改正を行うこととしております。

 第三に、国の権限を都道府県に、また都道府県の権限を市町村に移譲するため、関係法律において所要の改正を行うこととしております。

 これに関連して、地方自治法等の改正により、二十万以上の人口規模を有する市を当該市からの申し出に基づき指定することにより、権限をまとめて移譲する特例市制度を創設することとしております。 第四に、地方公共団体の自主組織権を尊重し、行政の総合化、効率化を進めるため、必置規制の廃止または緩和を行うこととしております。

 第五に、市町村合併の推進、地方議会の活性化、中核市の指定要件の緩和等、地方公共団体の行財政能力の一層の向上と行政体制の整備確立を進めることとしております。

 以上が、地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案の趣旨であります。(拍手) 

    ――――◇―――――

 地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

○議長(伊藤宗一郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。虎島和夫君。

 〔虎島和夫君登壇〕

○虎島和夫君 私は、自由民主党並びに自由党を代表いたしまして、先ほど趣旨説明がございました地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案につきまして、総理及び関係閣僚に対して質問を行います。

 戦後、日本国憲法が制定され、その中に地方自治の一章が設けられました。地方自治の本旨に基づいて、我が国の新しい地方自治がスタートすることになったのであります。

 以後、半世紀が過ぎました。この間、地方の時代を開こうと、願望と期待を込め久しく論じられてきましたが、戦前から続く機関委任事務制度を初めとして、さまざまな面で国の地方に対する関与が強く、私の地方自治に実際に携わった経験から見ても、まだまだ真の意味での地方自治には、ほど遠いものがあったものと思っております。

 現在、我が国の内外の社会経済情勢は激しく変化しており、あらゆる分野における構造改革が喫緊の課題となっております。行政についても、生活の質の向上を求める国民の声、地域の個性を大切にした地域づくりの必要性などが叫ばれる中で、これまでの中央集権の色が濃い制度では、もはや迅速的確に対応できない状態となってまいりました。

 二十一世紀という新しい世紀を迎えようとする今、新しい行政システムの構築が求められております。地方分権の推進は、中央省庁改革と並んでその大きな柱であり、国と地方のあり方そのもの、まさにこの国の政治の形をつくり直そうとするものであります。

 我が党は、平成五年六月の本院において、地方分権の推進に関する決議を行って以来、常にこの課題について、中心的かつ積極的な役割を果たしてまいりました。平成七年の地方分権推進法の制定、地方分権推進委員会の五次にわたる勧告、地方分権推進計画の策定など、地方分権の推進に向けた取り組みが着々と進められ、今回、その一つの到達点ともいうべき地方分権一括法案が国会に提出されましたことは、まことに意義深いものがあります。この間の関係各位の御尽力に、心からの敬意を表したいと存じます。

 また、このたび情報公開法が成立いたしました。既に一部の地方公共団体においては情報公開条例が制定されておりますが、この法律の成立により、一層条例の制定が促進されるものと期待されます。

 情報公開制度は、行政と住民との垣根を払い、民主主義の基本である住民の声を行政に的確に反映させるため、有効な手段となるものです。住民の自治意識の高揚にとっても、大きな意義があるものと考えます。そうした意味において、地方分権の推進と情報公開制度の充実は、住民の参画による個性的で魅力ある地域づくりを進める上で、相乗的な効果を発揮することになるでありましょう。

 今回提出された地方分権一括法案が早期に成立することを強く願いつつ、まず総理に、今まさに地方分権を進めるに当たって、その基本的な考え方をお聞かせいただきたいと思います。

 まず、地方分権に関連して、どのように今後の行政が変わっていくのかという点についてお伺いいたしたいと思います。

 地方分権は、行政システムの大きな転換でありますが、それはあくまでも手段であります。それによって国民、住民の生活をいかに豊かなものにし、充実させていくのかが目的であります。これについて、二つの面からお伺いいたすものであります。

 一つは、今後、地球環境の悪化が懸念され、少子化の傾向が続き、高齢社会が展開する中で、国民すべてが安心して暮らせるような社会にしていかなければなりません。

 我が党は、二十一世紀は、幅広い国民参加の成熟した高度環境・福祉国家としての日本国を築き上げたいと決意しております。そのためにも、住民に直接接している地方公共団体が権限と責任を持って環境・福祉を行える体制が必要であり、まさに地方分権が求められた大きな理由の一つがそこにあります。今回の地方分権一括法により、今後の環境・福祉施策はどのように変わっていくのか、総理にお伺いするものでございます。

 次に、総理が提唱された生活空間倍増プランに関連してお尋ねをいたします。

 国民が多様化した価値観をそれぞれに生かして、ゆとりと潤いのある活動ができるよう、生活の質の向上を図り、将来の夢の実現を目指していくことが重要であるとの総理の考え方に基づき、政府は、去る一月二十九日に、国民のさまざまな活動の場としての生活空間の倍増に向けた基本政策を策定したところであります。

 また、これを推進するため、市町村が、広域的な連携等のもとに、主体的に生活空間倍増地域戦略プランを策定することとされておりますが、これについても、地方分権の趣旨に照らし、地方の自主性、自立性が十分に発揮されるべきであると考えますけれども、この点は国土庁長官にお伺いするものでございます。

 さて、地方分権の推進は、同時に、国と地方公共団体の役割分担を明確にし、国と地方の双方にとって行政改革につながるものでなければなりません。そこで、まず、今回の地方分権は、国全体の行政改革という観点からは、どのような効果が期待できるのか、総理のお考えをお聞かせいただきたいのであります。

 次に、今回の一括法において、地方にさまざまな権限が移譲されることになります。しかし、地方の行政機構の肥大化をもたらすことになっては、住民の理解は得られません。単に国から地方への仕事の移しかえでは何にもなりません。国においても、中央省庁等改革により一府十二省庁に統合するとともに、公益法人の見直しなどを進めようとしております。

 地方行政に関しても、行政のスリム化は不可欠であります。地方分権という趣旨からすれば、当然地方公共団体が自主的に、みずから行政改革を進めることが基本でありますけれども、地方自治制度を所管する立場から、地方行革についてどのように取り組まれるのか、さらに、現在の都道府県ないしは市町村の規模は、分権の受け皿としては適正であるのか、適正なものとするためには、特に市町村合併の促進にどのような誘導、支援措置を考えておられるのか、自治大臣にお伺いするものであります。

 地方分権を進めるためには、国のコントロールの縮小や権限の移譲などとともに、地方公共団体の自主的な財源を充実していくことが必要であることは言うまでもありません。そのためには、地方税の充実が基本であります。また同時に、地域間の税源のアンバランスを調整するための制度も重要であります。地方財源の充実確保についての自治大臣の基本的な考え方をお伺いするものであります。

 さて、地方分権が進めば、地域のことは地域みずからが決めることが基本となることは申すまでもありません。一方で、国土の均衡ある発展を考えた場合、過疎地域、離島、半島などの条件不利地域においても、健全な地域社会を守っていくことは重要です。折しも、新農政の展開、二百海里海洋新時代を迎え、これらの地域が新しい役割を積極的に担っていく今日、国としての支援、対応施策は、今後ますます必要であると考えておりますが、この点についての総理の御所見をお伺いするものであります。

 以上、地方分権の推進に関しまして、数点にわたって質問をしてまいりましたが、今回の地方分権の推進は、明治維新、第二次大戦後の改革に続く第三の改革であり、今回の法案はその扉を開くものとなるでありましょう。今後、さらなる関係者の努力に期待して、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)

 〔内閣総理大臣小渕恵三君登壇〕

○内閣総理大臣(小渕恵三君) 虎島和夫議員にお答え申し上げます。

 このたびの法律案につき、議員が実際に地方自治に携わりました経験を踏まえまして、種々お尋ねがありました。

 まず、地方分権を進めるに当たりましての基本的考え方についてでありますが、地方分権は、二十一世紀にふさわしい我が国の基本的行政システムを構築するものであります。地方分権を積極的に推進し、明治以来形成されてきた国、都道府県、市町村という縦の関係であります中央集権型行政システムを変革し、対等、協力の横の関係を構築したいと考えております。

 地方分権の推進との関係で、今後の環境政策についてのお尋ねでありました。

 国民それぞれが地域におきまして、良好で快適な生活環境の確保を図っていけるよう支援していくことは、環境保全施策の基本でもあります。今回の分権一括法によりまして、各地方公共団体が、この理念の実現に向け、必要な環境保全施策をより自主的に展開できることになり、身近な地域において快適な生活環境の確保が可能になるものと考えております。

 地方分権の推進との関係で、今後の福祉政策についてのお尋ねでありました。

 個人が尊厳を持ち、地域においてその人らしく自立した生活を営むことができるように支援することが、社会福祉施策の基本でもあります。今回の分権一括法によりまして、各地方公共団体が、この理念の実現に向けまして、必要な福祉施策をより自主的に展開できることとなり、身近な地域においてきめ細かで多様な福祉サービスの実施が可能になるものと考えております。

 地方分権の推進により期待できる国の行政改革の効果についてのお尋ねでありましたが、地方分権の推進は、新しい時代にふさわしい基本的な行政システムを構築しようとするものであり、今日、我が国が取り組んでいる行政改革の大きな柱の一つでもあります。また、国と地方公共団体それぞれの役割が明確化し、国の関与も必要最小限に限られることとなるため、国、地方を通じた行政の簡素効率化が図られるものと考えております。

 最後に、過疎地域などの条件不利地域振興についての御質問でありましたが、国土の均衡ある発展と健全な地域社会の維持は、重要な政策課題であると考えております。このため、さまざまな面で不利な条件にあるこれらの地域につきましては、地方公共団体の自主的、主体的な取り組みを支援しつつ、今後とも引き続き、国としても、産業基盤や生活環境の整備等の施策を進めてまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣野田毅君登壇〕

○国務大臣(野田毅君) 地方行革に対する取り組みについてのお尋ねであります。

 御指摘のとおり、地方行革は、地方公共団体がみずからの責任で主体的に推進すべきものであります。政府としては、地方公共団体に対し、具体的な数値目標を設定し、これを住民に公表しながら進めるよう要請するとともに、主体的な地方行革を促すための行財政支援を積極的に行ってまいります。

 次に、地方公共団体の規模と市町村合併についてのお尋ねであります。

 基礎的自治体として住民への行政サービスの水準を高め、行政の効率化を図るためにも、市町村合併を積極的に推進することが重要と考えております。このため、今回の法律案に、合併特例債の創設、合併算定がえの期間の延長、地域審議会の設置などの思い切った誘導支援措置を盛り込むこととしたところであります。

 次に、地方税財源についてのお尋ねでありますが、地方分権の進展に応じ、地方公共団体がより自主的、自立的な行財政運営を行えるようにするためには、地方公共団体の財政基盤を充実強化していくことが極めて重要であります。地方分権推進計画においては、地方における歳出規模と地方税収入との乖離をできるだけ縮小するという視点に立って、地方税の充実確保を図ることとされておるところであります。

 今後、地方分権推進計画を踏まえ、税源の偏在性が少なく、税収の安定性を備えた地方税体系を構築していくとともに、地方団体の財源の均衡化を図るための地方交付税の確保に努め、地方税財源の充実確保を図ってまいりたいと考えております。(拍手)

    〔国務大臣関谷勝嗣君登壇〕

○国務大臣(関谷勝嗣君) 地域戦略プランにおける地方の自主性、自立性の発揮についてでありますが、地域戦略プランは、都市と地方の各地域がみずからテーマを選び、複数の市町村等が広域的な連携のもとに、関連施策間の連携が図られた総合的なプランを主体的に策定するものでございます。

 地域戦略プランの推進に当たり、地方分権の趣旨に照らして、地域の選択と責任に基づく自主的な地域づくりを進めることは、極めて重要なことと認識しており、このプランに対して、国としても、関係省庁が一体となった推進体制のもと、最大限の支援を行うことといたしております。

 以上でございます。(拍手) 


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 出典:国会議事録検索システム


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