沖縄県収用委員 第6回会審理記録

長野真一郎 代理人


長野真一郎:

 わたしは、阿波根昌鴻さんほか、反戦地主代理人の長野です。わたしは前回の伊江島の意見陳述に続きまして、伊江島の基地施設の重大な特長の一つであります広大な黙認耕作地および黙認住宅地の実態について、意見を述べ、最期に本件審理との関係について触れたいと思います。

 前回同様スライドを使いたいと思いますので、電気を落としていただけますか。マイクの部分だけはちょっと電気をつけて置いてください。

 それではスライド4、基地の全体図のスライドをお願いいたします。これが、伊江島の基地の全体図です。米軍の基地としましては、この西側からですね、かつて射爆場と言われておりまして、現在ではそのような利用はされておりませんということは、前回、意見陳述のなかで話がありましたが、この射爆場とかつて言われていた地域、そして、中央部分に飛行場地域、そして、さらに東側に、右手側ですね、通信施設、ならびに隊舎地域ですね、この大きく言って、一つ、二つ、三つの基地がございます。

 このうちフェンスはですね、全体に張られているのではありませんで、このもと射爆場地域の東から、ずっと南西にそって、この辺りでですね、途中で、左に折れて張られております。従って、このもと射爆場地域の南部はフェンス外の土地です。こういう風になっています。あと、フェンスがありますのが、この東側の通信、隊舎地区のうちの中央部分のほんのわずかな地域、ここだけであります。

 それでは、このようなフェンス外の基地施設とされる施設はどのように使用されているのでしょうか。スライドの13をお願いします。

 これは、いわゆる黙認耕作地を写した写真なんですけれども、この右手のほうに、「USMC BOUNDARY」という標識がたっております。いわゆるアメリカ海軍の境界を示す標識です。従いまして、この標識の右手側、道路の右手側は、フェンスのないまま、しかし、法律上は、あるいは、まあ、事実上はといますか、契約上は、米軍用地として契約がなされている黙認耕作地であります。

 スライドの14をお願いいたします。これも、写真の左側にすこしだけフェンスが見えておりますけれども、フェンス外の部分は黙認耕作地であります。

 スライドの15をお願いします。これも同様に黙認耕作地の状況を写した写真です。フェンス外の土地は、今見ていただきましたように、伊江島の住民の出入りが自由な土地として、たばこ、あるいはさとうきびなどの耕作地として使われております。

 スライド4の全体図をもう一度お願いいたします。これは小さい図ですので、見にくいのですが、東側のこの通信・隊舎地区の、東南の、近くのですね、四角く囲われた部分があります。これは全体が、いま申し上げました、軍用地として契約されているなかで、その一部分、四角の一部分だけが、反戦地主の土地です。そして、この部分は、返還を、いわゆる括弧付きの返還をされております。反戦地主のこの土地が返還されたということは、基地施設、米軍用の施設としては、必要性がないと、こういうことを意味します。この点、防衛施設局の方も、同意いただけると思います。

 これまで、耕作地について見ていただきましたけれども、黙認されているのは、耕作地だけではありません。スライドの16をお願いいたします。え、これが・・・。失礼、これはスライドの15ですね、先ほどの通信・隊舎地区で、一部だけ返還された土地の写真です。

 じゃあ、さきほどの話に戻りまして、スライドの16をお願いいたします。この写真のですね、中央部に建物が建っております。これは米軍施設用地のなかにぽつんと返還されました反戦地主・石川清敬さんの住宅であります。この付近は、道路がありますように、そして、その脇が耕作地として使われていますように、住民の自由な出入りができる場所として利用されております。ところが、この返還された石川さんの土地のすぐ隣、写真でいきますと、このですね、左側に、ちょっと見えにくいんですけれども、別の建物が建っております。この家の建っている土地は、基地施設用地として契約がなされております。基地施設内、といいながら、耕作が黙認されているのみならず、住宅といいますか、一定の年限を占有を継続します建物の建築自体が認められているのです。いわゆる黙認住宅地という形で利用されております。こういう土地が、本当に基地施設としてどうしても必要な土地といえるのか。これは自明のことかと思います。必要性はないわけです。

 反戦地主の石川さんの土地とすぐ隣の土地とはフェンスもなければ、その他基地の利用性に関する観点では、一切、差がありません。石川さんの土地が基地の利用上必要性がないというならば、すぐ隣のこれは契約地主の方々の土地も必要性がないわけです。ところが、米軍用地としての必要性のない土地が、形だけ契約され、毎年契約料が支払われております。その原資は当然ながら、国民の税金であります。

 再びスライド4、基地全体図をお願いいたします。今、見ていただきました石川さんの返還された土地といいますのは、中央の飛行場地区の北西の部分にございます。これも、ちょっと、写真では見にくいんですけれども、この付近は四角い形で、色の塗られていない土地がございます。いわゆる虫食い返還された反戦地主の土地でございます。そして、返還された反戦地主の土地のまわりは、すべて返還地とおなじように、畑や住宅地、あるいは生活用地として使用されておりながら、あくまで軍用地としての契約がなされた土地であります。

 フェンス外のこれだけ広大な土地が、基地としての実際の必要性はないにもかかわらず、今なお基地用地として契約され、多額の契約賃料が毎年支払われているわけです。伊江島の米軍基地の賃借料は、前回、伊江島の産業祭りの資料ということから、8億6千200万円というお話がありましたけれども、沖縄県の発行しました平成7年度で年額10億5900万円、10億5900万円が支払われております。この8億乃至10億の賃借料の大部分が今見ていただきました広大な黙認耕作地、ならびに黙認住宅地を維持するために支払われているわけです。

 明かりを戻して下さい。このような、わたくしがみましても、異常としかいいようがないと思いますけれども、この事実、本件審理との関係で、3点だけ指摘をしておきたいと思います。

 第一に、本件使用裁決申請理由のなかで、防衛施設局は、米軍用地として必要な土地、1万5700ヘクタールの民公有地のうち、0.2%の土地だけが契約を拒否されていると述べております。そして、日本政府も、これまでことあるごとに、99%以上の土地は土地所有者の理解を得て契約できている。契約拒否を続けている反戦地主らは少数の異端者であるという、こういう宣伝を繰り広げてきました。しかし、この主張は二つの点でも誤っております。

 第1点は、これら契約をした人びとも、よろこんでそれをしたのではなく、契約拒否者に対する政府の嫌がらせの中で、泣く泣く契約をしてきたということでありまして、これは、これまでの公開審理の中で、多くの反戦地主が述べてきたことです。

 伊江島の例として、ひとつだけ、もう一度スライドでご説明したいと思います。照明を下げてください。スライドの4、全体図をお願いいたします。この、元射爆場の地区のですね、東南の中央部分にですね、フェンスが張られているんですけれども、一部だけ、くの字型にまがった部分がございます。

 スライドの44をお願いします。これはその部分の写真です。指を指している部分、ここにフェンスがありますけれど、ここで曲がってですね、このフェンスの向こう側がフェンス外になっています。これは、前回意見陳述をされました平安山良有さんの土地です。この土地は返還はされましたが、道路が通じておりませんで、現実には使用が出来ません。一方、契約を、契約に応じた地主に対しては、先程来見ましたように、事実としては自由な使用が認められながら、賃料が払われております。こういう形で、反戦地主に対しては差別的な取扱いがなされているわけです。

 明かりを戻して下さい。

 2点目としてましては、このように99%の土地が契約をされているという、その分母のなかに本日ご説明しましたような基地として必要性のないような土地がいわば水増しして含まれております。反戦地主が少数、異端であるとの政府の主張の虚構を示す一例が、このフェンス外に広がる伊江島の広大な黙認耕作地、黙認住宅地の示すものなのであります。

 二つ目としまして、施設局は、本件審理の中で、駐留軍の用に供する必要性のある土地について、契約締結に努めてきたと、そして99%以上は契約締結ができ、契約締結ができなかったのこりの土地について、今回やむなく強制使用の申請をするに至ったと、こういう風にご説明されております。すなわち、契約された土地も、契約を拒否された土地も、駐留軍の用に供する必要性がどうしてもあるんだと、そういう点では、同じだと、こういうことであります。ところが、駐留軍の用に供する必要性というものの実態は、いま見ていただきましたようにまったくまやかしであります。フェンス外の広大な黙認耕作地、住宅地について、米軍用地に供する必要性があるんだといっている施設局が、一方で、本件強制使用対象地について、いっております必要性については、重大な疑問を当然投げかけるものだといわなければなりません。収用委員のみなさんにおかれましては、個別の土地毎に、その必要性がほんとにあるのかどうか、それを吟味いただきたいと思います。

 第3に、防衛施設局は、同じく、本件強制使用の申請の理由のなかで、これら強制使用の対象地は、施設および区域の運用上、他の土地と有機的な一体として使われており、必要欠くべからざるものであると、こういうふうにいっております。しかし、先ほど来見ていただきましたように、平安山良有さんほか、反戦地主のフェンス外の返還された土地も、防衛施設局の言葉を借りるならば、もともとは他の土地と同様に、有機的一体性を有した土地であったといわざるを得ないと思います。しかし、現実に、フェンスの外に返還された、これらの虫食い返還地の実態といいますのは、防衛施設局のいう有機的一体性という言葉がまったくまやかしであるということを示していると思います。収用委員のみなさんにおきましても、これら伊江島における黙認耕作地、ならびに住宅地の実態をもとに、これら有機的一体性の中身をですね、具体的に吟味いただきたいと、こういう風に考えます。。以上、わたくしの意見陳述を終わります。

当山会長:はい、ごくろうさまです。つぎに新崎盛暉さん。よろしくどうぞ。


  出典:第6回公開審理の録音から(テープおこしは比嘉

第6回公開審理][沖縄県収用委員会・公開審理][沖縄・一坪反戦地主会 関東ブロック