沖縄県収用委員 第4回会審理記録

城間勝(一坪反戦地主)


城間勝

 私は、任意交渉の問題について、求釈明を行ってきたのですが、この件について、3月24日に再求釈明の申し入れをおこないました。今回は、それについて求釈明を、再度の求釈明を行っていきたいと思います。

 私たちがなぜ、この任意交渉の問題について求釈明をしてきたか、あるいは再度の求釈明をせざるをえないかということについてですが、憲法29条がいわゆる財産権を侵してはならないということを明確に規定しています。私有財産権を制限しようとする場合にでは公共の福祉のために土地を提供することができることをうたっているんですが、その場合にも厳密な、明確な手続きのもとにおいて、私有財産を制限しうるということがうたわれているんだろうと思います。

 しかしながら、わたしたちの財産に対して、那覇防衛施設局はこの間、どういう手続きをしたかということをはっきりと明らかにしていきたい、収用委員会のみなさんにもぜひその内容について理解してもらいたい、という事で、この任意の交渉について、求釈明を行ってきたわけです。

 その中で、国側はこういうことをいってるんですね。「いわゆる一坪共有地主の方々につきまして、契約拒否という運動を推進しようとする一坪反戦活動等諸般の事情を勘案し、使用についての同意が得られる見込みがないと判断した。」から、任意の交渉をしなかったという旨の回答をしているんです。しかし、みなさん、今の収用制度のもとにおいては、人の土地を、いわゆる私有財産の制限をしようとする場合に、あなたの土地を公共の福祉のために使わしてもらいたいというふうに交渉をして、それでもいやだという場合に強制使用という制度が発動してくる、こういう手続きがとられるべきなんですね。これは極めて常識、常識的なことなんです。

 こういう常識に反することが、今、明らかになってきているんですね。これは現在の強制使用制度を著しく歪めるものであり、近代国家のいわゆる法治主義という根幹があるわけですが、この根幹をも逸脱するものである。法の下の平等に反する内容の手続きがとられている。この防衛施設局の回答は、ある種の思想信条をもっていれば、そういうのを持っていると判断したときに、その憲法の保障する手続きを取らんで、問答無用に強制使用の手続きがとれるというですね、こういう内容のことを明らかにしている、こういう風に思います。

 こういうことを防衛施設局は回答しているわけですが、再度の求釈明というのは次のような内容です。

 国側はさきほどいったような内容のことをいってはいるんですが、この強制使用の手続きが取られて以後、去年の7月ごろに一部の反戦地主に対して、どういうわけか一部の反戦地主の家を防衛施設局の職員を使って回らせている。さきほどいったような内容のことをいいながら、なぜ、一部の一坪反戦地主の家を回ったのか。このことについて、再釈明を求めているわけです。

 その内容の一つは、何時から何時まで、この一部の反戦地主の家、一坪反戦地主の家を回ったのか。その時期について明らかにしてもらいたい。

 二点目には、何人の地主と交渉を行ったのかということを、その人数について明らかにしてもらいたい。

 三点目には、この先ほど言った内容で、任意の交渉をしてこなかったんですが、実は過去3回の強制使用のなかでも、そのことは行われておりません。されてきてこなかったわけですが、今度、なぜ、7月の時点で反戦地主の、一坪反戦地主の家を回るようになったのか、この理由について明確にしてもらいたい。

 えー、もし全体の、全地主の家はたぶん回っていないと、私たちは押さえてありますが、なぜ全体を回らなかったのか。一部の一坪反戦地主の家を回っていますが、その区分を、全体を回らなかった理由、回る人と回らなかった人がいますが、その区分けをした基準はなんなのか。それも明らかにしてもらいたい。

 それから、反戦地主もですね、わたしたちと同じように会を作って反戦運動、契約拒否運動をしておりますが、その反戦地主の家には防衛施設局の皆さん、回っていると思う。国は手続きをとってきていると思いますが、なぜ一坪反戦地主だけは、先ほど言った理由で、任意の交渉をしてこなかったか。このことについて、その基準と根本的な考え方について、明らかにしてもらいたい。こういう項目で求釈明を求めて参りました。ぜひ、その内容を明らかにしてください。

当山会長代理:ありがとうございます。では、施設局、どうぞ、釈明、お願いします。

坂本施設部長:那覇防衛施設局施設部長の坂本憲一です。いくつかご質問がありましたのでこちらからお答えしたいと思います。

 平成8年7月に那覇防衛施設局は、全国の一坪反戦地主の家を回ったのが、その回った期間についてということですが、その点についてご回答いたします。一坪反戦地主の方々の契約説得を行ってきた期間につきましては、平成8年7月23日から、同年8月9日までの間です。それから何名の一坪地主の会ったのか、今後契約説得を行うのか、ということですが、約2900名の方々に対して契約説得交渉を行いましたが、不在等により約800名の方々にはお会いすることができませんでした。当局としては、施設及び区域の運行実施について、土地所有者との賃貸借契約により円満に使用権原を取得することとし、このための努力を常々行っていたものであります。今後もその一環としてやるつもりです。

 それから、平成8年7月に、契約説得を行った目的は何かというところですが、日米安全保障条約の目的の達成のため米軍基地を円滑かつ安定的に提供することは日本政府の義務であります。当庁といたしましては、これらの基地の運行実施について土地所有者との賃貸借契約による円満に使用権原を取得することとし、そのための努力を常々行っていたものであります。その一環として契約説得を行っています。

 一坪共有地主は契約拒否運動を拡大する等の活動を行っているものであるため、従来積極的には契約説得を行っていなかったものの、一坪反戦地主会の発足後十年をこえ、相続等による所有権の変動にともない、一坪共有地主となった方もおられることから、契約説得を行ったものであります。

 それから、意見照会前においては、いわゆる一坪共有地主のみなさんに対しては契約拒否運動を拡大する等の活動内容等諸般の事情を勘案し、使用認定の同意が得られる見込みはないと判断し、交渉しておりません。

城間勝:今、えー、防衛施設局のほうから、なぜ一坪反戦地主会に対して、その収用手続きに入る前の任意の交渉を行ってこなかったか、ということについて、そしてその、それと同時に7月の時点で、収用手続きに入る前に交渉を行わなかったに、なぜ7月の時点でやったのかということについて説明がありましたが、わたしたちは今この回答を聞いて、まったく納得ができません。

 しかもですね、800名ぐらいですか。えー、不在でいなかったと言っているんですが、一度も来ていない人がたくさんいるわけですね。800名を含めてです。この人たちに対して、もう一度会おうとすることもやっていないですね。防衛施設局は、この800名について、不在だということで会えなかったと言うんですが、その後に会う努力をなさいましたかね。ちょっとその点だけ、お聞きしておきたいと思います。

当山会長代理:どうぞ施設局。

 それから城間さん、お願いがあるんですけど。

城間勝:はい。

当山会長代理:求釈明ですので。あと、おそらく納得できないので、意見はカットされたい。

城間勝:はいはい。それは、わかっております。

坂本施設部長:一度だけ努力しております。

(会場 爆笑、怒号)

城間勝:わかりました。今、あの、一度だけ行って、不在だった場合には行ってないということでしょうね。そういう本当にアリバイ的なことをやっているというのが明らかになったと思います。私たちは、先ほどもいいましたように、起業者が一切の任意交渉を行わないで、強制使用の手続きをとっているものについては、これは却下事由に当たると考えます。それで、明確にこれは却下事由になると思います。そして、この主張点については、今後、意見陳述のなかで具体的に明らかにしていきたいということを申し述べて、わたしの求釈明を終わります。どうも。ありがとうございます。(拍手)

当山会長代理:どうもありがとうございました。

 それじゃあ、新崎さん、お願いします。


  出典:第4回公開審理の録音から(テープおこしは比嘉

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