沖縄県収用委員会審理記録

河内謙策弁護士(土地所有者代理人)


○土地所有者代理人(弁護士 河内謙策)

 地主の代理人の河内です。今の非常にすばらしい答弁を聞いていると、私のほうの嘉手納飛行場についての質問の答えも予想されて、ちょっとめげるんですけれども。めげないで頑張って質問していきたいと思います。

 嘉手納飛行場について質問したいことはゴマンとあるんですね、こんな短い時間では質問できないんですけれども、収用委員会のほうが実質審理を行う各施設について、一つ一つ実質審理を行うというふうに明言されておりますから、きょうは、いわば総論的に軽いジャプのつもりで二つばかりお尋ねしたいと思います。

 嘉手納飛行場について、防衛施設局の方の2月21日に出されました、使用裁決の申請理由説明要旨の第8ページの嘉手納飛行場の欄には、保安緩衝地帯用地ということで使用方法は書かれております。また、実際、例えば字森根石根原の359番の真栄城玄徳さんの土地、これは使用方法として保安緩衝地帯用地というふうに書かれております。そこで私は質問したいんです。

 この求釈明申立書に書かれてあるとおり、保安緩衝地帯用地というふうに当局が言っているんですけれども、保安緩衝地帯用地の範囲を定める基準があれば、それを明らかにされたい。もう1回繰り返します。保安緩衝地帯用地の範囲を定める基準があれば、それを明らかにされたい。これをまず質問させていただきたいと思います。

○起業者(那覇防衛施設局施設部長 坂本憲一)

 先ほどお答えいたしましたけれども、米軍の飛行場設計基準の中で、滑走路及び着陸帯以外に、航空機の飛行上の安全を確保するのに必要なクリアゾーン及び転移表面化に位置する土地等、及び航空機騒音の軽減に必要な区域を総称して保安緩衝地帯用地としていると聞いております。

○土地所有者代理人(弁護士 河内謙策)

 坂本さんは勉強が足りないようなので、反戦地主は心やさしい集団ですから、少しお教えしたいと思います。

 言っておられるのは、米国連邦航空規則のことを指しておられるんですか。助け舟を出しているんですよ。

○当山会長代理

 今、質問ですか。

○土地所有者代理人(弁護士 河内謙策)

 はい。

○当山会長代理

 どうですか、施設局。米国とか米軍とかがよく分からなかったんですけれども。

○土地所有者代理人(弁護士 河内謙策)

 はい、米国連邦航空規則ということに基づいて米軍が基準を定めているというふうに、お答えなのですかというふうに聞いているんです。

○起業者(那覇防衛施設局施設部長 坂本憲一)

 すみませんが、お答えを控えさせていただきたいと思います。

○土地所有者代理人(弁護士 河内謙簾)

 いや、私は全くこういう答えは予想しなかったんで、私が助け船を出したら、素直に助け船に乗っていただけると思ったんですけど、私、弁護士ですから、私はだまそうというつもりは全然ないんで。

 じゃ、調べていただいて、米国連邦航空規則に基づくものであるということであれば、米国連邦航空規則の翻訳文、全文を提出していただくことができますか。このことについてお尋ねします。

 調べていただいて、今のあなたたちの見解が米国連邦航空規則に基づくものだということであれば、その翻訳文を全文出していただくことができますか。これをお尋ねします。

○当山会長代理

 今の質問は、そうであれば出していただく、そうでなかったら出さなくてもいいんですか。そういう意味ですか。

○土地所有者代理人(弁護士 河内謙策)

 はい、よろしいです。

○当山会長代理

 施設局、どうぞ。

○起業者(那覇防衛施設局施設部長 坂本憲一)

 検討させていただきます。

○土地所有者代理人(弁護士 河内謙策)

 ぬかにくぎというのは、こういうことじゃないかと思うんですけれども。

 じゃ、ついでに、それに関連して二つのお願いをしたいと思います。

 一つは保安緩衝地帯用地を図示にした図面、つまり嘉手納飛行場のまわり、ここからここまでが保安緩衝地帯用地なんですよという、保安緩衝地帯用地を図示した図面、この図面を収用委員会に提出していただきたいと思います。

 もう一つのお願い、使用方法として保安緩衝地帯用地というふうに書いてあるすべての土地について、なぜその土地が保安緩衝地帯用地なのか、その理由を書面で出していただきたいと思います。

 もう1回繰り返します。保安緩衝地帯用地を図示した図面を収用委員会に出していただきたい。第2番目として、申請した土地の使用方法として、保安緩衝地帯用地というふうに書いてあるすべての土地について、なぜその土地が保安緩衝地帯用地なのか、その根拠を収用委員会に書面で出していただきたいと思います。この二つのことをお願いしたいと思いますけれども、イエスと言ってください。答えてもらいます。

○当山会長代理

 今、質問じゃないですよね。

○土地所有者代理人(弁護士 河内謙策)

 お願いでございます。

○当山会長代理

 お願いだそうですけど。

○起業者(那覇防衛施設局施設部長 坂本憲一)

 検討いたしたいと思います。

○土地所有者代理人(弁護士 河内謙策)

 防衛施設局と私たち、同じ日本語の国語の辞典を使用していることを望みます。

 次に質問を移します。求釈明の申立書に書かれている2番目ですけれども、防衛施設局の申請の理由、あるいは使用裁決の申請書を見て疑問に思うのは、住宅地区あるいは学校、家族住宅の敷地、こういうところまで防衛施設局のほうは、嘉手納飛行場関係で申請の理由を説明しているんです。反戦地主がそこに住むのはいけなくて、米軍の家族が住むのは許されるとしたら、米軍の家族のほうが何か人間として上等のような印象を与えるので、非常に不愉快きわまりないんですが、そこは、私は弁護士なので、ぐっと抑えまして、感情論で言わないで理屈で言いたいと思います。

 住宅地区、学校、家族住宅地域についてまで、日本国が提供義務を負う理由を明らかにしていただきたいと思います。

○当山会長代理

 施設局、どうぞ。

○起業者(那覇防衛施設局施設部長 坂本憲一)

 嘉手納飛行場について、住宅地区、学校、家族住宅地域についてまで、日本国が提供義務を負う理由を明らかにされたいとの事項について、回答いたします。

 嘉手納飛行場にある住宅地区、学校及び家族住宅地域につきましても、日米安全保障条約の効果的運用のため、米軍の駐留を円滑ならしめることを目的とし、提供しているものであり、米軍人、軍属及びその家族の日常生活に必要不可欠な措置であります。また、これらの土地は嘉手納飛行場の一部として使用され、施設全体と有機一体として機能しております。

○土地所有者代理人(弁護士 河内謙策)

 今のお答えについて、もう一つ立ち入って関連の質問をさせていただきたいんですけど、あなたたちは日本政府の立場で、自主的にこれを判断したのですか。

 それとも、アメリカがそう言ってきたからイエスと言ったのですか。どちらなんですか。日本政府の自らの判断で、これを提供することが必要だと思ったんですか。

 はっきり答えてください。

○当山会長代理

 これは、提供義務の判断の問題ですか。

○土地所有者代理人(弁護士 河内謙策)

 提供義務の判断を、日本政府が自らの立場でしたのかどうか、お答えいただきたいと思います。

○当山会長代理

 施設局、どうぞ。

○起業者(那覇防衛施設局施設部長 坂本憲一)

 これは、日米安全保障条約の効果的運用のため、必要であると判断いたしました。

○土地所有者代理人(弁護士 河内謙策)

 日本政府が自主的な立場で判断したということですね。お答えください。

○当山会長代理

 今、判断しましたというのは、そういう意味でしょう。

○土地所有者代理人(弁護士 河内謙策)

 はい、じゃそういうふうに理解します。

 そういうふうに理解して考えますと、日本政府の判断の基準はどういうところにあるのですか。日本政府の判断の基準を教えてください。

○当山会長代理

 施設局、どうぞ。

○起業者(那覇防衛施設局施設部長 坂本憲一)

 ただいまご説明いたしましたとおり、米軍の駐留を円滑ならしめることを目的として提供しているものでございます。

○土地所有者代理人(弁護士 河内謙策)

 今の言葉について、再度関連の質問をさせていただきますけれども、要するに、あなたたちは自主的に判断しているというのであれば、自主的な判断基準というのがあるはずなんです。

 つまり、私たちが言いたいのはどういうことかといいますと、自主的な判断基準に基づけば、どこで線を引くのかということなんです。どこで線を引くのか、これについての判断基準を明らかにしていただきたい。

 そうでなければ、抽象的に有機的な一体性を保つとか日米安保条約の必要だとか言っても、それは基準になり得ないんです。論理が違うんです。論理のディメンジョンが違うんです。はっきりと、あなたたちはここだったらアメリカ政府をはねつけることができるという基準、ここだったらしょうがないという基準、こういうものをもっているはずなんです。その基準を明らかにしていただきたいと思います。

○当山会長代理

 施設局、どうぞ。

○起業者(那覇防衛施設局施設部長 坂本憲一)

 日米安全保障条約の効果的運用のため、米軍の駐留を円滑ならしめることを目的として提供しているものでございます。

○土地所有者代理人(弁護士 河内謙策)

 今の答えは答えになっていないと思いますが、これ以上やると論争になりますので、私たちは、嘉手納飛行場の具体的な施設の検討のときに、私たちの立場と、そしていかにこれが不合理なものかということを明らかにしたいと思います。

 なお、ちなみに言いますと、昭和29年に東京地方裁判所がアニーパイル劇場事件で、このような施設局の立場を厳しく退けて、「たとえ米軍の慰安のためであっても、東宝劇場を接収・使用することはまかりならん」という、非常にすばらしい決定をしております。日本の政府はこの東京地裁の判決を踏まえて、自らの立場で自主的にアメリカ軍と対等の立場で交渉していただきたい。このことを強く要望したいと思います。以上です。

○当山会長代理

 はい、ご苦労さまでした

 熱心な議論がございましたけれども、ちょうど1時間半たちましたので、ここらへんで15分ほど休憩をとらせていただきたいと思います。

(午後3時26分 休憩)


 出典:沖縄県収用委員会 公開審理議事録
    違憲共闘会議提供、テキスト化は仲田

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