内藤功弁護士(土地所有者代理人)


○土地所有者代理人(弁護士 内藤功)

 代理人の弁護士の内藤功でございます。その問題こそ、最もなじむ問題だということを、私は申し上げたいのであります。

 まず、起業者防衛施設局の申請理由というものは、国民の、県民の財産権を奪う理由を書くものでありますから、最も論証力のあるものでなければなりません。国会での答弁のような形でしゃべれば、それで済むというものじゃない。準司法機関として公正・中立な機関において、今のような答弁は断じて通用しないと、私は申し上げておきたいのであります。

 所有者の方々は、憲法29条財産権、憲法前文の平和に生きる権利、憲法31条の適正な手続きを受ける権利、この三つをしっかり踏まえて、この強制使用に反対しているわけであります。これを打ち破るだけの道理のある申請理由があるかどうかが焦点です。

 今、発言者が申されたように、一つは安保条約、安保体制というものがあるということです。

 二つ目は、相当長期にわたって続くであろうということ。

 三つ目は、安定的な使用の必要があるということです。

 四つ目は、ほかの土地と有機的一体をなして、必要欠くべからず。

 この第4点で、今防衛施設局の論理は組み立てられているが、全部これは弱いものであるということを、われわれはこれから意見を申し上げます。

 しかし、今日は釈明でありますから、この意見を述べる前提として、安保体制というものと安保条約の関係は何かと。アジア太平洋地域と極東との違いは何か、地理的な範囲を地図で示せという質問は、まさにこの案件の焦点そのものじゃないでしょうか。

 というのは、この申請理由の中で、安保論争というものを仕掛けたとすれば、それは防衛施設局のほうがこの案件を安保の論争にしようとしてきているんです。ところが、釈明で追及されるというと、それはなじまないというのは何たることでありましょうか。私は再び読み返すことはいたしませんが、2ページから3ページにかけて、(1)のところで、安保体制というのはアジア太平洋の平和と安定に不可欠な枠組みであると書いてあります。それから、安保条約というのは、極東の国際の平和と安全のためであると言っております。そうすると、安保体制は明らかに極東より広いんです。したがって、これは日米安保条約以上の何か根拠がなければならないはずです。

 なぜ答えられないか、私は一言で申し上げましょう。去年の4月に、クリントン大統領と橋本総理の結んだ日米安保共同宣言、ここでアジア太平洋地域というのが12ヵ所も出てきている。極東という言葉はなくなった。つまり、施設局が安全保障体制というのは安保条約を基軸とするものだとさっきご答弁なさったけれども、これはごまかしがある。ここには、安保共同宣言という、アジア太平洋に拡大していく、日本の覇権を拡大していく、この動きがあるのを彼らは言わなかったんだと思います。

 もう一つ、これは絶対答えてもらいたいのは、アジア太平洋と極東、どっちが広いのか。同じなのか。地理的範囲を明示しろ。これはだれだって分かることじゃありませんか。

 特に、担当者である防衛施設局は、これを明示すべきである。明示できないというのであれば、これは国民の、所有者の貴重な財産権というものを論拠なしに、しかも一たん言いかけたのに、質問されると答えができない。こんなあいまいなことで答弁をしているということになります。

 私は再度、防衛施設局に対しまして、この点について非常に不真面目な答弁である。明確に答えることを強く要求するものです。答えて下さい。

○起業者代理人(那覇防衛施設局施設部長 阪本憲一)

 ただいまの三の1の(二)の事項につきましては、平成9年3月10日付けで、本審理になじまないと思われる求釈明事項であることを回答してございます。

○土地所有者代理人(弁護士 内藤功)

 3月10日付けの書面というのは、私どもは見ておりません。仮にあなたの言う、読み上げるようなものであっても、あなた方は申請理由の中に、ちゃんとアジア・太平洋とは、極東とか書いているじゃないか。そのアジア・太平洋と極東はあなたの文書に書いてあるんだよ。その範囲がどこなのか、二つが違うかどうかというこんな質問にも答えられない、そういう能力も十分もっていない、こういう防衛施設局なんですか、あなた方は。

 これは収用委員会の審理というのを非常に軽視したやり方だと、厳重に私は抗議をしたいと思うんです。再度、答弁を求めます。

○兼城会長

 これは先ほど答弁しておりますので、もういいんじゃないですか。先に進めていただきたいと思います。

○土地所有者代理人(弁護士 内藤功)

 断じてこれは容認できないということを、私は強く申し上げまして、次の機会に、こういう徹底的なわれわれの意見を申し上げる、こういうことを申し上げて、次の代理人の別の問題の質問がありますので、バトンタッチをいたします。

○兼城会長

 次の質問に入る前に、休憩をいたしたいと思います。

 ただいま3時5分前でございますので、15分間休憩をとってから、それからまた再開いたしたいと思います。よろしくお願いします。

                    (15分程度 休憩)


 出典:沖縄県収用委員会 公開審理議事録
    OCRによるテキスト化は仲田さん(XC8H-NKD@j.asahi-net.or.jp)
沖縄県収用委員会・公開審理][沖縄・一坪反戦地主会 関東ブロック