池原秀明さん(反戦地主会副会長)

池原秀明さん:

 こんにちは。わたしは嘉手納飛行場に土地を所有して契約拒否をしている池原でございます。わたしは戦後、小中学校生の頃に、よく、父や母につれられて、黙認耕作地内に農業の手伝いをさせられていました。農作業に疲れながら、収穫物を満載した牛車で家路に急いでいると、かならず、ガードボックス前で、荷物検査だとして、チェックを受けました。兵隊は銃剣で指図しながら、荷物を下ろせといい、検査をして、また指図をして、荷物を積め。このような作業のきついこととという、きついことといい、食料不足のおり、この作業に、積み下ろしのたびごとにこぼれて拾いきれない、作物をみながら、何度くやしい思いをしたか。そのとき、こどもごごろに、この兵隊がいなければ、こんな難儀をしなくていいのにと、次第に米軍嫌いになりました。

 そして、相次ぐ戦後の米軍犯罪や事故を体験するにつけ、軍隊は決して住民を守るために存在するのではなく、敵味方もない訓練された殺人集団だということを、認識するようになり、被害を受けるのは、常に一般民衆であるという事を悟りました。一方、沖縄は、朝鮮動乱や、ベトナム戦争、湾岸戦争の発進基地として使われ、他国民を戦争の犠牲にさせ、いわく、抑圧や虐殺の前進基地となって、自分の土地がそのような基地に使われていることは、いつのまにか自分も米軍の片棒をかつがされ、加害者にさせられている。もう我慢がならない。自分自身の自己葛藤がありました。沖縄県の復帰、まさに反戦地主会の結成準備をしながら、人殺しのための基地には一坪たりとも貸さない、売らない。また、自らの土地は、生産と生活の場に取り返していく。そのことを合い言葉に契約拒否を続けてまいりました。

 さて、そういう反戦地主の契約拒否をしながら、実はこれまでやってきたわけですけれども、去る2月21日に開かれた第一回公開審理で、起業者が述べた使用の裁決申請理由を聞いて、いくつかの点の釈明を求めたいと思います。

 第一点目は、裁決申請理由の中の1ページ目で、使用の裁決の申請理由の前文について、6行目から賃貸借契約を締結してきた土地が云々とあって、契約更新を拒否されている土地があるというふうに述べております。先ず、一点目、新たな契約締結をされた土地は、また、契約拒否をされた土地は、何筆で、面積はどれくらいで、地主の数は何名か。お聞かせ願いたいと思います。まずお答え願いたいと思います。

(坂本部長、なかなか、立ち上がらない)

兼城委員長:これはグループ毎に、釈明要求に対して応えるという話でしたが。第一グループがおわった時点でまとめて、説明を受けた方がいいんじゃないかと思いますが。

阿波根さん:すいません。代理人の阿波根です。質問事項をですね。手短かにやりますので、回答もですね、手短にやると。ということで、可能な限り一問一答の形式でやっていただきたいと思います。あの、質問事項がいくつも続きますのでね、答えにくい、かえって答えにくいんではないかと、思うんですが。できたら一問一答の形式でご理解いただきたいのですが。お願いします。

兼城委員長:これはグループ毎に調整はできておりますか。そうしますと、相当長時間かかると思いますがね。

阿波根さん:時間的な調整はできておりますので、一問一答でよろしくお願いいたします。

兼城委員長:それでは、あの、防衛施設局の方、ただいまの質問に対して、釈明要求に対して、お答えいただきたいと思います。一問一答式でやりますので、よろしくお願いしたいと思います。

(会場拍手)

坂本部長:起業者代理人・那覇防衛施設局施設部長の坂本でございます。今回の公開審理の進め方については、3月10日に収用委員会のほうと打ち合わせた内容でやっていくということでございましたが、変わったということで、それでは答えさせていただきます。

 まず『「賃貸借契約を締結して使用してきた土地で、民法第604条の規程による契約期間満了の契約更新を拒否している土地がある」というが、その契約更新を拒否している筆数、面積、地主数』との事項について回答いたします。契約更新を拒否されている土地は、一筆、面積は236、37平方メートル、地主の数は1名であります。

池原さん:えーそれでは引き続いて、に番目に賃貸借契約をしてきた土地について、賃貸借期間が満了した、というが、満了した日はいつか、お答え願いたいと思います。

(坂本部長。なかなか立ち上がらない。時間がもったいないからそこにたってなさいのヤジ)

池原さん:考えている間に、あと1点、同時に二つ質問をしまして、まとめてお答え願いたいと思います。えー、満了した日はいつか、ということと、それから、三番目に賃貸借契約満了時に、地主に返還した土地があるかどうか。あるのであれば、それはいつか、その筆数、面積、地主は何名か、これをお答えいただきたいと思います。

(坂本部長。なかなか立ち上がらない。はやく答えなさいのヤジ)

兼城委員長:どうぞ、できましたら、マイクの前にお立ちになって、(会場、おーっと言う声とともに拍手)どんどん答えていただきたいと思います。

(坂本部長。なかなか立ち上がらない。)

坂本部長:えー、起業者代理人・那覇防衛施設局施設部長の坂本憲一です。会長からの指示を待っておりますので、よろしくお願いいたします。え、現在、さきほどの問い合わせですが、いまの漢数字の一、二、ないし、三の答えについて、平成9年3月10日付で「審理に馴染まないと思われる求釈明事項である」ことを回答したところであります。

(場内騒然)

池原さん:えー、ただいまのご答弁では納得いきません。前文の中にはですね、自らの土地は、あー失礼、あー、賃貸借契約を締結した土地が云々とあって、契約更新が拒否されている土地があると、いう風に述べております。そして、この契約更新を拒絶されたら、期間が満了したことになっているわけですね。そうすると、今回これが申請されていると。というふうに述べております。そうからすると、今回わたくしが質問しました二、三、についてはですね、満了した日はいつかといえば、はっきりするはずです。それから三番目については、これは、本来ならば返還しなければならない土地。それをあえて今回申請しているわけですから、手続き中だということで、ある政府の高官は、適法だとはいえないけれども、・・・。直ちに違法とは言えない、などとはいうが、あのー、わからないような発言をした者がありますけれども、このことについて、やはりここできちっと釈明していただきたい。というふうに思います。

兼城委員長:えー、ただいまの地主の方の考え方ももっともでございますが、施設局は、これは答えられないと、いうことでございますので、本日の所はどんどん進めていただきたいと思います。収用委員会として、いろんな判断の材料にもなりますし、そこまで、まあ、要求するのはちょっと、本日の公開審理の手順もありますので。是非すすめていただきたいと思います。

(場内騒然)

池原さん:えー、一応申請理由のなかに出しながら、答えができないということについては、私たちは満腹の怒りをもって抗議しておきたいと思います。

(拍手)

 えー、それでは、二番目に、二点目に1ページから2ページにかかる「第1 申請理由等」について、2ページ目の8行目の中頃から、「民公有地については、99、9%の地主と契約を締結した」というが、一つ目の質問。どのような賃貸借契約をしたのか。二つ目。予約書という名目で契約をしているが、これは有効な契約であるのか。三つ目。地主に対してどのような予約契約の内容説明をしたのか、釈明をしていただきたいと思います。

坂本部長:起業者代理人・那覇防衛施設局施設部長、坂本憲一です。「『民公有地のうち、約99、9%の土地については、その所有者との合意を得られた』とあるが、それについては、賃貸借の予約をなしたことがあれば、その内容を明らかにされたい」との事項について、回答いたします。沖縄県内に所在する施設および区域内の民公有地で、現在賃貸借契約を締結している大部分の土地は、復帰時の昭和47年5月15日を契約の時期としておりますが、これらの契約は、民法の第604条の規程により、20年を経過する平成4年5月14日をもって、その期間が満了します。しました。契約満了後も引き続き駐留軍の要に供する必要がある土地につきましては、大部分の土地所有者から賃貸借契約の予約が得られています。この予約は、民法第559条によって準用する同法第556条の規程に基づくものであり、国である那覇防衛施設局長におきまして、平成4年5月14日までに相手方に別途手続きすることにより完結するものであり、賃貸料は予約完結時の適正な額とし、具体的金額につきましては、予約完結の後、すみやかに協議の上、決定することとされております。

 二番目についてです。「『約36、3ヘクタールの土地について、所有者との合意が得られる見込みのない状況にある』とあるが、見込みがない、と判断した根拠は何か。」

池原さん:もしもし。それはまだ聞いておりません。(場内爆笑)

 今のお答えを聞いておりますと、99、1%については、復帰後20年して契約が切れた後で、契約更新をさせていただいたというふうに述べておられますけど、この契約更新の時に予約というかたちでこれが進められておりました。新たな、この時にですね、新たな反戦地主が誕生した年でもありますけれども、しかしこの時国は引き続き契約を取り付けるために、本土には先例を見ない、予約という方法をとった。この予約は、契約内容を一切明らかにしないで、地主や地主会会長などに、契約予約締結書に、記名押印させるといういうもので、国が92年の5月14日までに別途聴取することによって、完結するという、一方的なものであります。さらに地主には、予約を破棄すること、はできないが、国がその土地を必要としなければ、予約は効力を失うというまったく不公平な、不平等なやり方である。多くの契約地主は、基地に、好んで提供しているのではなく、跡利用が遅々として進まない経済的な不利益や、地域のしがらみのなかで、村八分に合いたくないという、ことでやむを得ず、「ンナガナイクトゥルヤル」、そして、応じたと証言をしております。ある老人には、地主会の幹部がきて、「おじー、わったーがぶぎょうしゅがうさぎみそーれー、うさぎらびくとぅ、うりんかんいんかんうしてとらしみそーれー」というふうな形での、契約の話は全くしないで、予約を取り付けたという。これが少なからずの実態ではないのか。このようなことは、詐欺や騙すといわず、なんというのか。お答えをいただきたいと思います。

兼城委員長:起業者の那覇防衛施設局、どうぞ。

(はやくしなさいよのヤジ)

坂本部長:起業者代理人・那覇防衛施設局施設部長、坂本憲一です。先ほど、ちょっと抜かしましたので、2の2の(1)、についてお答えいたします。「『民公有地の内、約99、9%の土地について、所有者との合意を得られた』とあるが、賃貸者契約の内容について明らかにされたい。」、この事項についてお答えいたします。現在、契約している土地の賃貸借契約は、日本国とアメリカ合衆国との相互協力、安全保障条約第6条に基づく施設及び区域ならびに日本国における合衆国軍隊の地位に対する協定を実施するために日本国に駐留するアメリカ合衆国軍隊の要に供する目的のために、面積、賃貸料の額、および支払いの方法、駐留軍が必要としなくなったときの解約の手続き、返還時の補償等について、国である那覇防衛施設局長と当該土地の所有者との間で締結されているものであります。

 次に、「『民公有地のうち、約99、9%の土地については、その所有者との合意を得られたとあるが、その土地について賃貸借についての予約をした』との事であるがその内容について明らかにされたい」との事項について、回答いたします。沖縄県に所在する施設及び区域内の民公有地のなかで現在賃貸借契約を締結している大部分の土地は、復帰時の昭和47年を契約の時期としておりますが、これらの契約は民法第604条の規程によって20年を経過する平成4年5月14日をもってその期間が満了しました。契約期間満了後も引き続き駐留軍の要に供する必要のある土地については、大部分の土地所有者から賃貸借契約の予約を得られています。この予約は民法第559条によって準用する同法第556条の規程に基づくものであり、国である那覇防衛施設局長において平成4年5月15日までに相手方に別途聴取するものとし賃貸借契約を完結したものであります。賃貸借料も、予約完結する時適正な額とし、具体的な金額につきましては、予約完結後、すみやかに協議の上決定することとなっています。

(予約は契約じゃないよのヤジ)

池原さん:ただいまのお答えのなかで、予約はすみやかになされたというようなことを、申し述べられましたけど、さきほどわたしが、いろんなところで聞き及んだ所では、やはり、予約というのは、きれいに説明されてやったものではなく、地域の地主会の幹部のみなさんがたがやってきて、集団的に予約をさせられたとか、あるいは個人的に予約の説明はせず、しないで、あるいは契約書の中身も説明しないで、そのまま、軍用地料の値上げを、じぶんたちがやってあげるかのような形で、説明をしながら、予約を取り付けた。こういう実態が中身であったというふうに思います。これが本当に契約が成立したというふうにいえるのであろうか。わたしたちは、これを許すことができません。

 ほんとに契約地主だけじゃなくして、その当時反戦地主もこの時に誕生いたしました。この地主に対して、やはり予約契約を取り付けるために、地主会の幹部を使うことができずに、収用委員会そのものが、毎晩毎晩押し掛けてくる。こういうなかで、予約そのものが嫌気がさしたと、いって、かたくなにむしろ拒否したという人もいます。

 あ、失礼。施設局の方が、訪ねてきて、予約をさせたということになっています。(場内笑い)

 えー、そういう実態をですね、みるにつけて、わたしたちはやはり、この項における99%の地主というのは、まさに虚構のうえで作られた契約地主だと言わざるを得ません。

 この項では、起業者側はことさら契約地主は99、9%で、契約拒否地主はわずか0、1%などと、はね上がりこぼしみたいな印象を与えているが、契約拒否地主の、復帰時から今日までのすさまじい切り崩し工作があったことはいうまでもありません。起業者は、文章では、使用期間中も契約締結ならびに施設の整備・統合・縮小に努力しているという旨、うまい文句を並べ立てているだけで、整備縮小したというが、何施設で、面積はどのくらいか、そして何人の方が返還されたのか、お聞かせ願いたいと思います。

兼城委員長:どうぞ、起業者の那覇防衛施設局。

坂本部長:起業者代理人・那覇防衛施設局施設部長・坂本憲一でございます。

(もうそれはいいのヤジ)

 ただいまの2の2については、平成9年3月10日付けで「審理に馴染まないと思われる求釈明事項である」ことを回答した部分でございます。

(ちゃんと答えなさいよのヤジ)

池原さん:えー、それではわたしのほうから切り崩しの実態について述べていきたいと思います。

 私個人で言うならば、嘉手弾薬地内にある与那原川が大雨の度に氾濫をして、農作物に被害が出たときに、地主から防衛施設局に河川整備をしてほしいと要請をした。契約拒否地主がいるからできないと言われ、地主会役員の家にわたしはよばれて、契約地主の方々から、あなた方が反対しているから河川整備ができない、どうしてくれるかとせまられました。いわゆる村八分であります。これに抗しきれずに、契約をした人もおります。わたくしはがんばり通しました。

 こういうような反戦地主への、いわゆる村八分的な切り崩しをやって、契約をさせていったと、こういう実態もありますし、それから多くの方々は、反戦地主の「細切れ返還」で利用できないようにしておいて、契約を迫っていた。崖っぷちのある地主、あるいはフェンスのそばにある地主、あるいは基地のどまんなかにある地主、契約拒否地主の方々が利用できないような状況にして一筆だけ返還する「細切れ返還」をやって、契約を迫ってまいりました。

 それから反戦地主をとりまく契約地主に、「この地は返還する、それを望まなければ、反戦地主と相談してくれ」と、ていのいいことを言っておきながら、実際には周囲からの圧力で契約強要をしたではないか。このようなこともあります。またわたしは、職場まで契約交渉に押し掛けられ、当時の伊江村長から睨まれるということがあった。わたしはそのときもがんばりましたけれども、他の地主は職場八分で契約を余儀なくされた。こういう一例も報告されております。こうした実態は数々あり、直接は圧力をかけなくても、周囲から圧力をかけており、働きかけたではないか。このようなことがなければ、契約者は減ったはずであります。このことは、県民投票の結果に現れているのではないかと、その実態を明らかにしてほしいと思います。

兼城会長:那覇防衛施設局。お願いいたします。

池原さん:どのような実態があったのか、お聞かせいただきたいと思います。

坂本部長:起業者代理人・那覇防衛施設局施設部長・坂本憲一です。2の2については、平成9年3月10日付で「審理に馴染まない」という求釈明回答書によって回答しておりますので。

(場内騒然)

池原さん:今のように、わたしどもは・・。

兼城会長:委員会から申し上げます。求釈明の、地主の求釈明について、えー、地主代表から提出されましたその担当表というものを見ますと、第一グループ、いわゆる求釈明の1、2の部分は、えー、求釈明と起業者の釈明併せて、10分ということで時間制限で提出されておりますので、ただいまの求釈明は、ま、意見発表のようになっておりますので、釈明、どの部分を釈明するのか、ということで、簡潔にお願いしたいと思います。これから、たくさんございますので、第二グループが60分ということで、第三グループ30分、第四グループ10分、第五グループ10分ということで、これは起業者の那覇防衛施設局の釈明も合わせたものでありますので、そのつもりで簡潔にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。もうすでに10分の持ち時間を大幅に越えておりますので。

阿波根さん:代理人の阿波根です。時間オーバーしていると思うんですけれども。急いでやりたいと思うんですけれども、第二グループも含めてまだ残っております。およその時間を収用委員会に一応提示いたしましたけれども、その時間をですね。正確にそうしますということではなくて、努力しますということありますので、多少のですね、短縮したり延ばしたりすることもありますので、よろしくご了解を願いたいと思います。知花さんによろしくお願いしたいと思います。 


 出典:第二回公開審理の録音から(文書おこしは比嘉

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