沖縄県収用委員会 第11回審理記録

 諌山博(土地所有者代理人・弁護士)


 諌山博(土地所有者代理人・弁護士):

 代理人の諌山でございます。

 本件審理で、私たちがどうしても許すことができないのは、審理の中途で、橋本内閣が、米軍用地特別措置法の改悪を強行したことであります。本来であれば、本県土地に対する米軍の使用権限は、昨年5月14日を持って切れている はずです。それ以後、今日までの米軍の使用は、法律に基づかない不法占拠であります。米軍は、一切の施設を撤去して、地主に本件土地を明け渡すべきはずのものであります。

 ところが、日本政府は、まともな審議もしないまま特措法を改悪して、今なお米軍の居座りを許しているのであります。国会で特措法の改悪が強行された日、私は、約30名の反戦地主弁護団とともに国会で抗議の座わり込みを行いました。議事堂前で、私たちは、抗議のシュプレヒコールを繰り返しました。それでも改悪は強行されました。全く言語道断の憲法違反の暴挙であります。これは、当収用委員会と私たち関係者をばかにした、ないがしろにしたものであります。私は、収用委員会の当事者の一人として、橋本内閣のこの不当なやり方に断固として抗議するものであります。

 地主が本件土地を使用、収益するのは、憲法29条で保障された当然の権利です。この権利を剥奪、制限しようとするのであれば、憲法第31条の適正手続きによらなければなりません。土地収用法がさまざまな手続きを規定し、土地所有者に告知、弁解、陳述を、防御などの権利を保障しているのは、適正手続きによらなければ、個人の財産権を侵してはならない、この当然の要請によるものであります。憲法で保障された国民の財産権を、収用委員会の裁決抜きに剥奪、制限することは、憲法31条の保障を真っ向から蹂躙するものであります。

 法的効果の発生を第三者機関の裁決に委ねている例は、土地収用法のほかにもいくつもあります。しかし、第三者機関の結論が出なくても、審理中に裁決と同じ効果を発生させるという法律は、日本国民との関係では存在しません。ところが、土地を米軍の使用に供する場合に限って、収用委員会の裁決を待たずに土地の使用収益の権利を剥奪するというのは、あまりにも極端な、アメリカ追随の立法であります。アメリカの利益を憲法と国民の上に置き、日本国憲法をやみ討ちにしたようなものではありませんか。

 しかも、重大なのは、改悪された特措法が、収用委員会の審議中の米軍使用を認めたばかりではなく、裁決申請が却下されても、米軍使用継続を容認していることであります。これは収用委員会の存在と役割を否定し、行政権力による財産権の侵害を問答無用で認める暴挙というほかはありません。アメリカの要求であれば、このような無法を平気で国民に押しつける橋本内閣の屈辱的なやり方に、私は憤りを禁ずることができないのであります。

 審理の最終段階にあたり、私は、収用委員の皆さんに特に訴えます。特別措置法の改悪でばかにされたのは、何よりも当収用委員会であり、私たちであります。収用委員会がどういう裁決を出そうとも、本件土地を米軍に使用させる、こういう立場をとった、まさに私たちに対する理不尽な攻撃であります。

 沖縄の米軍使用は、世界で例を見ない異常さだと言われています。殴り込み部隊と言われているアメリカの三つの海兵隊部隊のうちの一つが、沖縄に配置されていること自体が、その異常さを象徴的に示しているではありませんか。しかも日米安保共同宣言と新ガイドラインによって、沖縄基地の侵略性と攻撃性は一層露骨なものとなりました。

 本件土地使用は、このような米軍使用の永続化計画の具体化にほかなりません。これに無批判に追随する橋本内閣の圧力を離れて、収用委員の皆さんが、憲法と良心に従った毅然たる裁決をされることを強く要望して私の陳述を終わります。

 当山会長:

 はい、ご苦労様。では次に仲山忠克さん。


  出典:第11回公開審理(テープ起こしとテキスト化は仲田、協力:違憲共闘会議)


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