記録映画『教えられなかった戦争・沖縄編』

阿波根昌鴻・伊江島のたたかい


映像文化協会ニュース 第9号 1998年11月8日号から転載


発行:映像文化協会

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『教えられなかった戦争・沖縄編』によせて

 「人間は学ばなければ、いくつになっても何も知らない」と阿波根は言います。ま

た[無知より怖いものはない」とことあるごとに話してこられました。

私がそれを実感したのは、高岩氏の作られた、映画『教えられなかった戦争・フィリピン編』を観させていただいたからです。私はこの映画を観るまで、隣の国フィリピンで日本のやって来た侵略や搾取のことをほとんど知りませんでした。無知の怖さ、知る事のつらさ、そしてそれを知らせるための苦労を私はこの映画を通して初めて知りました。

 今この国では、一見平和に見えますが、その裏でこのような命に関わる重大な出来事が平気でなされています。しかしその事実を国民は知りません。いや、知らされていないのです。今回の『沖縄編』の完成によって、この沖縄の置かれてきた歴史、政治、経済、戦争、差別、平和、教育、そしてそれに対する私たち農民の考え方、生き方が少しでも理解してもらえるのではないかと期待しております。

 戦争と平和。これを左右するのは人間であります。愚かな戦争、無駄な軍備は何の反省もないままに強化されています。あれだけの犠牲を経験してきたにも関わらず、残念ながら今日まで人間の行動は変わっていません。けれども少しでもおかしいと気付き始めた人々だけが、人間としての本当の道、平和を学ぷことができるのではないでしょうか。

 「殺し合いではなく助け合う。奪い合いではなく譲り合う。いじめるのではなく教え合う。そしてそれが実行できた時、真の幸せが生まれてくる」と阿波根は話してきました。高岩氏はそのことを私たちに教えてくれます。

 「武器を作った人間が、人間を殺す。人間より怖いものはない。」21世紀を迎えようとしている現在、時代はますます恐ろしさを増しております。しかしこれから生まれてこようとしている子供たちのためにも、恐ろしい人間をやさしい、愛情ある、平和を作り出す人間に変える努力をしようではありませんか。その意味においても、この映画の持つ意義は大変大きなものであると思います。

 皆さん、どうか平和な社会を求めるために結集して下さい。平和とは仲良くすることであり、また理解し合うことであります。それが必ずや大きな力となることを信じておりまず。私たちもこの伊江島の地で、平和作りのために共に学ばせていただきたいと思います。

      伊江島反戦平和資料館 やすらぎの家 代表 謝花悦子


『教えられなかった戦争・沖縄編

阿波根昌鴻・伊江島のたたかい』内容紹介


 この作品のテーマは阿波根昌鴻さんが、伊江島の反戦平和資科館を訪れる人々に必ず語る言葉に集約されます。「日本の平和憲法を世界に広めて、地球上から戦争も武器もすべてなくす。そして、地球上で生み出される富を、地球上の人々が平等に分配できるようにする。」そして、「世界のすべての人々が、戦争を生み出す社会のしくみを学習し、共に平和運動に立ち上がるようにするのです。」


構成

序 土に生きて命を育む、世の中で一番大切な仕事をしている農民こそが、社会科学や宗教について真実の学習をしなくてはならないと考えた阿波根さんは、伊江島に農民学校をつくり、80%完成していましたが沖縄戦によりすべて破壊され、その上一人息子もなくしてしまいました。

メインタイトル 

 『教えられなかった戦争・沖縄編

    ――阿波根昌鴻・伊江島のたたかい――』

S(シーン)-1 沖縄の歴史(琉球王朝時代〜島津藩の支配〜明治政府による支配〜琉球処分)
S-2・3・4 宮古人頭税撤廃聞争/本部杣山事件/謝花昇と沖縄自由民権運動/本部徴兵拒否運動
S-5・6  阿波根昌鴻さんの生い立ち(キリスト教の洗礼/南米移民・資本主義の根本矛盾に気付く)
S-7  西田天香・一燈園を訪ねる(生産手段の共有と平等な富の分離の実践を知る)
S-8  静岡の興農学園に学ぶ(デンマーク式農民学報散の建設・運営を一生の仕事と決める)/後輩渡辺進さんの話
S-9 伊江島でデンマーク式農民学校建設
S-10 沖縄戦、スパイ容疑で連行される/投降/[神神国日本・鬼畜米英」思想の逆転
S-11 デンマーク式農民学校の再建
S-12 米軍による詐欺と銃剣とブルトーザーによる土地の強奪/やっぱりアメリカは鬼畜か/民政府前での断食座り込み
S-13 米軍とのたたかいの始まり/陳情規定を作る/平良牧師の話(阿渡根さんのたたかい方)
S-14 苦しいテント生活/さまざまな基地被害/米軍からの攻撃
S-15  生きるための基地内強行耕作/宣教師の応援(宣伝の重要性を知る)
S-16 米軍による32名農民の逮捕・軍事即決裁判
S-17 区民の90%以上が栄養失調になる
S-18 基地内での強行耕作続行/米軍によって畑が焼き払われる/基地内に入る者への射殺命令
S-19 乞食行進/嘉手苅林昌さん『陳情口説』/沖縄全島へのたたかいの拡大/全国からの支援物資
S-20 生きるための爆弾拾い/解体中の二人の爆死/演習地外での農民射殺
S-21 米軍による核模擬爆弾投下訓練/パラシュート訓練/ベトナム少年兵との出会い
S-22 本土の経済急成長と沖縄の犠牲について、本土の人々ヘ知らせる事の重要性を認議
S-23 ミサイル撤去闘争/たたかうベトナム民衆との連帯
S-24 アメリカ民政府・立法院前で爆音を流す
S-25  われわれは立派な農民だ、鬼畜なんかには負けない
S-26 平和運動のための学習の重要性について/若者20名を中央労働学院と一燈園へ派遣/63歳で阿波根さんも中央労働学院に人学/社会の仕組み・戦争の原因について知る
S-27  畑田重夫さん(中央労働学院で阿波根さんに教えた事)
S-28  松田むつさん(中央労働学院で阿波根さんと共に学んで)
S-29 農民の学習の場として、基地ゲート前に団結道場をつくる
S-30  元海兵隊員のアレン・ネルソンさんの話(苛酷な海兵隊新人訓練/沖縄の基地で殺人訓練の総仕上げ/アジアの人々は虫けらであるという洗脳/ベトナム戦争に従軍/平和運動を始める/沖縄の基地前で、海兵隊員に呼び掛ける)
S-31  ネーネーズ『平和の琉歌』/日本山妙法寺の人々とアレンさんの平和行進
S-32 新崎盛暉さん(沖縄の米軍基地・安保条約が、アメリカと日本で世界のGNPの40%を独占するためにあることを視野に人れたたたかいを)
S-33 村上有慶さん(伊江島の人たちのたたかい方/国際連帯の視点の重要性)
S-34 伊江島土地闘争の初期に応援にかけつけた、宣教師のリカードさん(若い人々も世界の平和のためにたたかってほしい)
S-35  阿波根さん(平和運動をたたかう人々ヘのメッセージ)
S-36 ネーネーズ『黄金の花』/沖縄で平和運動をたたかう人々/米軍機/5.15集会


沖縄・一坪反戦地主会 関東ブロック