米軍用地特措法改悪のための閣議決定に対する抗議声明


 沖縄内外の世論が、議会決議、声明、署名運動等で、くり返し反対の意思表示をしてきたにもかかわらず、政府は、ついに「緊急使用の申し立て」すら行うことなく、米軍用地特措法改悪に踏み切った。しかも、「核も基地もない平和な沖縄」を願ってきた故屋良朝苗氏の県民葬に首相自ら出席した翌日という日に。わたしたちは、政府のこのような侮辱的行為に、激しい怒りを通りこして、深い悲しみすら感じざるをえない。

 米軍用地特措法の改悪は、戦時中の日本軍による土地収用、多くの住民が収容所に入れられている間に白地図に線を引くようにして行われた軍用地囲い込み、銃剣とブルドーザーによる土地強奪、公用地法によるその正当化、地籍明確化法付則による公用地法の延長、三回にわたってくり返された特措法による強制使用の歴史に、新たな屈辱の一頁を加えるものである。

 政府が、現行法の枠内における唯一の問題解決の手段である「緊急使用申し立て」すら行わずに法改悪に踏み切ったことは、政府のいいなりにならない沖縄県収用委員会に対する不信感の表れのみならず、より一般的には、九五年秋以来、日米安保体制という戦後日本の構造的沖縄差別の根源を直視しはじめた県民世諭に対する不信感の表明であるとわたしたちは受け止めざるをえない。

 同時にわたしたちは、特措法の改悪が構造的沖縄差別の固定化・強化を意味するばかりでなく、日本の法体系そのものを否定するファッショ的暴挙であることも指摘しておかなければならない。

 政府はこれまで、特措法改正は、収用委員会で審理中の土地について裁決が出るまでの暫定使用を求める緊急避難的措置であり、必要最小限の法改正である、と称してきた。しかし、いざ蓋を開けてみると、それは、一切の中立的第三者機関の判断を事実上排除し、那覇防衛施設局長、総理大臣、建訟大臣といった政府内部機関の談合によって、一方的に土地所有者の権利を奪うことが明らかになった。たとえば、特措法改悪案は、かりに収用委員会が却下の裁決を行ったとしても、那覇防衛施設局長が建設大臣に審査請求を行えば、その結論が出る間、土地の継続使用ができるとしている。

 周知のよう、反戦地主百十数名は、五年前の県収用委員会の裁決を不服として、建設大臣に審査請求を行っている。しかし、五年前の強制使用期眼が切れようとしている現在まで、審査の結論は出ていない。この事例からも明らかなように、政府は、収用委員会がいかなる裁決を行っても、政府内部機関のたらい回しによって、暫定使用の名の下に、無期限に土地所有者の権利を剥奪することができるのである。

 もし権力者のこうした暴挙が是認されるならば、やがて、一方には極端な政治的無気力無関心が、他方には、自己の要求貫徹にはあらゆる手段が是認されるといった風潮が蔓延するのは必至であろう。

 わたしたちは、一人でも多くの人びとが、とりわけ国会議員が、この法案を熟読し、その意味するところを深く考え、小異を残して大同に就く立場から、この法改悪を阻止するために、ともに立ち上がることを訴えるものである。

  一九九七年四月三日

                沖縄軍用地違憲訴訟支援県民共闘会議  
権利と財産を守る軍用地主会  
一坪反戦地主会  
反戦地主会弁護団  
一坪反戦地主会弁護団  


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