イラク人批判者たちが占領と選挙について声を挙げる

ダール・ジャマイル
NewStandard原文
バグダード発2004年11月20日


ファルージャを中心にイラク情報を紹介しているFallujah, April 2004 - the bookとのダブル・ポストです。


米国内では、イラク占領と「国家建設」をどのようにすれば最もよいかの議論が続いているが、自分たちの国に何が起こるかをめぐるイラク人自身の考えは西側では完全に黙殺されている。

イラクの人々は、概ね、米国の影響のない自由選挙と、そして外国の制圧のもとでイラクが陥った血にまみれた泥沼から抜け出す解決策の一つとして軍隊の撤退期限を設けることを望んでいる。

はっきりしているのは、すべてのイラク人にとって、占領の継続とそれに対する抵抗の増大が最大の焦点となっていることである。「サダムの時代に言ったことを今もまた繰り返そう。これは政治問題であって軍事問題ではないのだ」。項語るのは、バグダード大学政治学教授でベテランの非宗教的活動家でもあるワミド・オマール・ナディミ博士である。

サダム・フセイン政権に対する歯に衣着せぬ批判者であったナディミは、今日の状況にサダム時代と不吉なまでの類似を見ている。1990年代バアス党に反対する危険を知りながら、彼をはじめとする反対派たちは解決策を呈示した。「我々は次のようなスローガンを掲げた:政治的対話、民族和解、民主主義への移行」。バグダード自宅で行われた最近のインタビューで語ったことである。「そして今、私は同じ解決策を繰り返すことになった」。

ナディミ教授はまた、イラク民族設立会議(Iraqi National Foundation Congress)の公式報道官でもある。この組織は、知識人、コミュニティ・リーダー、聖職者などからなり、イラクの状況改善のために活動する政党の連合を創設することを目的とする。この組織のメンバーには、著名なシーア派指導者からムスリム学者まで、幅広い人々が参加しているという。さらに、キリスト教徒、トルクメン系・クルド系イラク人、さらにはサダム以前のバアス主義者たちまでいるという。

「我々は、占領軍と暫定政権に、イラク選挙における四つの要件を呈示した:国際的な監視委員会、空襲とミサイルの中で選挙はできないから即時の停戦、選挙の一カ月前までに米軍が主要都市から撤退すること・・・・・・」。ナディミは、いったん言葉を止めたあと、四番目の要求事項について述べた:「我々は、この国際委員会に立候補者の中で気に入らない人物がいたらリストから除外する権利さえ認めた」と。

イラク民族設立会議の提言----ナディミは、これは自由で民主的な選挙のために必須の前提であると語った----を受け入れるかわりに、暫定政権は戒厳令を発布した。

「戒厳令のもとで自由選挙を行うことがどうすれば可能だというのでしょうか?」と彼は問う。「停戦するどころか、彼らはファルージャを攻撃しました。ファルージャの後、さらなる流血がこないとでも信じているのでしょうか?戒厳令は、暫定政権にとって、自らの柩の蓋に撃ち込んだ釘の一つです。民主主義という口実に残された最後の一つが今や失われたのです。戒厳令の宣言は、政治的破産の宣言でもあります」。

10月末、イラク民族設立会議は、1月の選挙をボイコットするよう呼びかけた。

バグダード大学の別の教授ゲナン・ハメッド博士は、解決策は、米軍がイラクから完全撤退することであると考えている。「アメリカ人は、もとの場所に戻るべきだ」と彼女は電話インタビューで述べた。「イラク軍に国の統制をさせること、それが唯一の解決だ」と。

さらに、ハメッドは、現在の状態、とりわけ以前米国が運営していた連合軍暫定当局が一定のお気に入り政党に他の政党を支配させているような状態では、選挙は実現可能ではないと考えていると語った。「今は選挙をすることができる時期ではない」とハメッドは言う。「スンニ派は政党を持っておらず、クルド人は多数派だと主張し、誰もが混乱している」と。

イラクの政治活動家たちの中には、イラクに対する解決策として、西側の多くの評論家やアナリストたちが占領の初期から論じていたと似通ったものを考える人々もいる。

「解決策は、米国が失敗を宣言し、すべてを国連の安保理ではなく総会に委ねることだ」とアブドゥル・カリーム・ハニ博士は言う。彼はサダム・フセイン政権時代の社会問題相だった。ハニは、総会が権限を持つことが望ましいという。というのも、総会のほうが、米国が拒否権を有する安保理よりも「米国の覇権」が少ないからである。「むろん、世界問題のすべてにわたって米国は大きな影響力を持っているが、少なくとも総会では少しそれが少ない」と彼は語る。

ハニは、唯一の解決策は、国連が指名する暫定政権----米国に癒着していない暫定政権----であるという。米軍占領当局の元局長ポール・ブレマーが発布した「ブレマー諸法」のもとで行われる選挙はすべて、悲惨な失敗に終わるだろうと彼は警告する。

「我々は、誰もが、ブレマーの法律には何ら合法的基盤がないと考えている。ここでもどこでも」と彼はバグダードの自宅から語る。「ジュネーブ条約とハーグ条約に従えば、占領軍は被占領国の法律を変更する権限はない」。

米国も批准している1907年のハーグ規定そして米軍の陸上戦闘法は、被占領地の法律を変えるのは不法である。

「彼らはそれを知りながら、それにもかかわらず、イラクの人々の安寧を傷つけるようなこれらの法律を発布したのだ」とハニは言う。「毎日毎日、彼らはますます多くの問題を作りだしている。ファルージャそしてイラク全土で現在起きていることは、米国が問題の解決を望んでいないことを証明している----さらに問題を引き起こすに熱心なのだ」。

もちろん、イラクの人々は、一般に、荒れ果てた治安状況の改善が極めて重要であり、どのような政治的前進もそれを解決することなしにはあり得ないと考えている。

バグダードに住む失業中のアフメド・マフムード(33歳)は、「治安問題は国境が開かれていることからくると思う」と言う。米軍はイラクの諸都市から撤退し、イラク人が自分たちの治安を扱うべきだと彼は感じている。「[隣国からやってくるテロリストのせいで]治安が悪くなっているとアメリカ人たちが言うのなら、米軍が国境地帯に言って、その侵入を阻止すればいい」。

イラク人の多くは、占領軍である米軍が違うアプローチを採っていれば大きな違いが出ていただろうと考えている。「イラクで米軍はすべての戦闘に勝利している」とナディミ博士は言う。「けれども米軍は戦争に負けている。というのも、傀儡政権を持ち込んだからだ」。

ナディミは一息ついて続けた。「自尊心があり、それゆえ人々の敬意を受けるイラク人指導者は、誰一人として米国をはじめとするいかなる外国勢力の傀儡ともならないだろう」。

55歳の今は職を失った大工、サルマン・オバイディは、米国施設や行政、将軍、大使たちよりも自分のほうが上手くやれたと考えている。「ファルージャ爆撃にアメリカ人たちがつぎ込んだ資金を私にくれていれば」、「イラク人を助けるためにその金を使うことで、問題を解決することができる。人々が闘っているのは、アメリカ人が自分たちを助けに来たのではなく占領しに来たと見なしているからだ」と。

問題の核心がかくも単純で、米国が捕らえることができるくらい近くに解決策があるとすると、ファルージャ侵略を続けることの、2005年1月27日に予定されている選挙への影響をめぐる政治的「死の灰」はどんなに強調してもし過ぎることがない程大きい。

11月9日火曜日、ファルージャ包囲攻撃が生み出した最初の政治的犠牲が現れた。イラクのスンニ派の主要政治勢力であるイラク・イスラム党が暫定政権から撤退したのである。「我々はファルージャ攻撃そしてファルージャの罪のない人々に加えられている不正に抗議する」と同党の党首ムフシン・アブド・アル=ハミドはアルジャジーラに伝えた。「我々がこの攻撃の一部であるわけにはいかない」。

その翌日、影響力の大きいイスラム法学者協会(AMS)が全国選挙をボイコットするよう人々に呼びかけた。

AMSの書記長ハリス・アル・ダーリ博士は、イラク占領に合法的に抵抗する権利がイラク人にあることを擁護して次のように語る:「我々は、イラク占領開始のとき以来、レジスタンスを支持すると述べてきた」と彼は火曜日の語っている。「それは私たちイラク人の権利である。したがって、この問題についてファトワは必要ない。論点ははっきりしているのだから」と。

さらに11月10日、イラク・イスラム党の報道官アヤド・アル=アジが、同党は暫定政権から完全に撤退し、また、選挙ボイコットを真剣に検討していると発表した。

11月13日、ムクタダ・アル=サドル師の報道官アリ・サマスムが、自分たちも1月の選挙をボイコットすると述べた。

この発表の前に行われた電話インタビューで、バグダードのサドル・シティのムクタダ・アル=サドル事務所報道官アフメド・アル=ビデリは、選挙プロセスに対するアル=サドル師の支持は終わりを告げたと仄めかしていた。「我々は様々な問題で力を分散させたくないので、選挙で誰を支持しようか決めようとしているところだ」と当時アル・ビデリは言っていた。彼はまた、サドル派の運動は、公正で透明な選挙を実現すべく活動したいと希望しているとも述べていた。

「アメリカ人たちはイラク政策全体をみなおし、賢明な結論を下さなくてはならない」とナディミ博士は言う。「現実を見えなくさせない限りは、イデオロギーは悪いわけではない」。


それにもかかわらず、米国は、ファルージャを襲撃して多くの人を殺し、さらに米兵をつぎ込むことを画策しています。

こうした米国の政策を冷静に見るならば、最初からわかっていたことですが、米国政府は、イラクがどんな状態にあろうと、自分たちの利益を使い回し石油利権を略奪することさえ確保できれば、あとはどうでもいと考えていることが理解できます。

いくつか、関連&無関連情報を紹介いたします。

最初は、12月2日、毎日新聞にイラクについての意見広告を掲載しようというキャンペーン。イラクで支援活動を行なってきたPeace Onの相澤さんなどのほかに、大学関係者も呼びかけ人となっています。詳細は「イラク意見広告の会」のホームページをご覧下さい。

二番目は、経団連が武器輸出解禁を働きかけていることに対して、次のように反対行動が計画されています。
 日時:11月26日(金)18:30集合 デモ出発19:30
 場所:坂本町公園(東西線茅場町駅5分 坂本町小学校となり)
 呼びかけ:核とミサイル防衛にNO! キャンペーン2004
  グループ武器をつくるな!売るな!
  新しい反安保行動をつくる実行委(FAX:03-3234-4118)

最後は、アジア・フォーラム Peace Week 2004 の企画
「生き残ったチャモロの少女たち」
----日本軍によるグアム先住民虐殺の証言----
 第1日:12月10日(金)18:30から
  神宮前区民会館(JR山手線原宿駅徒歩8分、
  地下鉄千代田線神宮前駅徒歩2分。ラフォーレ原宿そば)
  会場案内はこちら
 第2日:12月11日(土)18:30〜 立川市女性総合センターアイム
  (JR中央線・南武線立川駅徒歩5分)
  会場案内はこちら
 資料代 当日 一般1,200円 学生1,000円
     前売り一般1,000円 学生800円
     ※高校生以下無料
 証言
 フアニータ・クルスさん 日本軍による虐殺の生存者。
 当時8歳だったフアニータさんの目の前で、お母さん
 は日本軍にレイプされた後殺された。また5歳の弟も
 強制収容所で舌を切られて殺された。昨年12月に、
 初めてグアムの戦争被害再調査委員会で証言。
 講演
 ホープ・クリストバルさん 元グアム議会議員。チャ
 モロ博物館を主宰し、チャモロ民族復権運動に活躍。
 現在、戦争被害者のケアに奔走している。
 パトリシア・タイマングロさん フアニータさんのト
 ラウマの心理的ケアに携わっているドクター。
 お問合せ先
 アジア・フォーラム2004実行委員会
 〒101-0046 東京都千代田区神田多町2-8-7神田加藤ビル3F木村事務所内
 tel&fax 03-3256-0177
 e-mail asiaforum3tama@hotmail.com
益岡賢 2004年11月23日

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