87 故 村井吉敬さんから新著『パプア』発行。 (2013年04月04日  掲載)  

 村井吉敬さんが3月23日に逝去されたことは、本サイトの「News」欄の242号でお知らせしましたが、今年の3月15日に発行となっている村井さんの新著が本日送られてきました。メコンから発行されている『パプア――森と海と人びと――』(2,500円+税)です。 
 昨年の11月23日という日付になっている本書「あとがき」には、こうあります。
 ……わたしも二〇一二年に大きな手術をうけることになった。自分も周囲も、予想だにしなかった膵臓ガンだった。幸い手術により膵臓と胆管一部、胆のうを取り除き一応ガンは消えている。……
 しかし、続いて、……わたしは膵臓ガンと医師に聞かれた時「やはりオトウェリか?」と一瞬思った。存外にわたしは科学的で、こんな思いに陥ることは滅多にない。もう一度オトウェリに行かねばならないとすら思っている。/パプアの大きな自然はちっぽけなわたしたちの近代科学観すら簡単に凌駕してしまうような気がする。……とある。「オトウェリ」とは、2006年3月に村井さんが訪ねたパプア、ピントゥエ湾にある村の名です。その「近代科学観を凌駕する」という経緯は、ぜひ、この本の「あとがき」を見て下さい。
 とにかく、昨年の暮は、村井さんは、ガンは回復されたと
思っておられたのです。しかし、贈られたこの本に挟んである「早稲田大学アジア研究機構」の津留歴子さんと佐伯奈津子さんの今年3月7日付の文書には、「二〇一三年一月末、村井先生から膵臓癌の転移と余命宣告を受けた」とあり、しかし「村井さんが元気になり、パプアに戻ってきてくれるのを祈っています」ともあります。
 申し訳ないが、私は、村井さんのガンのことは知りませんでした。でも、昨年暮れまでは、このガンも消えているとされていたわけで、ご自分も周囲も、僅か3ヵ月のうちで再発、転移、逝去とは予測されていなかったのだと思います。新著を、亡くなられた方から、その逝去の直後に頂いて、あらためて悲しみを強く思っています。私も
「オトウェリ」のせいとは思いませんが、とにかく残念です。前にご紹介した『ぼくが歩いた東南アジア』と同じく、この新著も毎ページに村井さんが撮ったカラーの写真が多数載っている美しい本です。ぜひご覧になって下さい。