5 奥大使ら日本人外交官2名の殺害について の情報――前回の4のつづき (2004年11月29日記)

 本欄のNo.4「香田証生さんの殺害について」の中で、私は、橋田さんら殺害の真相は、CIAとの誤認だったとの説が『週刊読売』(9月12日号)によって報じられたことを紹介し、「こんな重大なニュースが、なぜ、『週刊読売』だけで、他のマスメディアがまったく報じていないのか、理解に苦しんでいます」と書きました。
 これと似たような記事が12月10日号の『週刊ポスト』に掲載されているので、それもご紹介しておきます。この記事は、「武冨薫(ジャーナリスト)と本誌取材班」の署名になる4ページのもので、タイトルは、「ブッシュのための『自衛隊派遣延長』でいいのか 奥大使『米軍誤射』に 政府がひた隠す 新たな『証拠』」というものです。イントロには、「……本誌は米軍誤射の疑いを一段と深める新たな資料を入手した。……」とあります。
 現在発売中のものですから、ぜひどこかでご覧くださったらと思いますが、要は、外務省や警察庁などが、必死に隠そうとしたり、別の印象を持たせるような発表の仕方をしているのだが、奥大使らは米軍による誤射による殺害だったのではないかという疑惑を、いくつもの論証をあげながら論じた記事なのです。
 それが正しいかどうか、私には判断の材料はありませんが、記事はくどいくらいに、外務省・警察庁の発表や報告書を引用して、その中の疑点を指摘し、公開された奥大使らの乗用車の弾痕を調べた民主党代議士の首藤信彦氏の調査結果を詳しく紹介 して、殺害犯人は、外務省や政府が強く示唆した「反米テロリスト」によるものではなく、米軍自身ではなかったか、と示唆しています。
 私は知らなかったのですが、この記事によると、外務省の報告書の中には、《米軍の犯行》を直接語った目撃証言も入っているとのことです。それによると、大使館が派遣したイラク人専門家の現地調査として8人の証言が記録されているが、その中の《子供C》が、「誰がやったか」との問いに対し、「米軍」と答えているというのです。ただし、外務省は、それに続けて、この証言が周囲にいた「地元の大人」によって無理やりに言わされたように――例えば「(背中に回した手で背中をつねっているような様子で)」などという解説を挿入したりして――印象づけるような「恣意的な書き方」になっている、とこの記事は述べています。
 こういう記事が、奥大使らの殺害から1年経ってから出てくるということを見ても、やはり、前回のべたように、日本人の非戦闘員や民間人の殺害事件から、ただちに「イラク武装集団」への非難や抗議を表明するのは、早すぎるような思いを強くしています。