3 障害者手帳で得すること、損すること  (2001/10/10記入)
  
     
いい人は介護する(?)――障害者として、介護者としての雑感  (その3)

(1) 有料道路の半額割引

 私は障害者手帳の4級、連れ合いは2級を持っています。障害者手帳を持っていると、どんな利点があるのかについて、かつて私は拙著『いい人はガンになる』の中でこう書きました。

 これをもっているとどうなるのか。いろいろ他に手続きをしなければならぬものもあるのだが、JRなどの運賃(乗車券だけで特急券や指定席はだめ)の半額割引、航空運賃の 25パーセント割引、それに自動車税の免除など。そして、パウチやフランジなどの装具購入への市からの補助金も貰える。私にとってかなりありがたいのは、実はそういう規則には入っていない面だった。公会堂だの図書館だのといった公共施設は、駐車場があっても一般の利用は認めていないところが多い。だが、事前に電話をして身体障害者だがと言うと、手帳を見せれば利用できる、というところがほとんどだ。これは確かに助かる。そして何となく、特権を行使しているような優越感みたいなものさえ感じるから困ったものだ。なんだか、身体障害者手帳が助さん格さんの見せる「葵のご紋の印籠」みたいなのだ。 ……

 ところが、いいことばかりではないのです。私は、この手帳との関係で、ミスミス6万円もの損をしました。その顛末を書くことにします。

 連れ合いの身障者手帳を受け取りに市役所へ出かけたときに、ガソリン代の補助と有料道路の料金の半額補助の話を聞きました。「ああ。視覚障害者で2級だとそういう援助もあるんですね」と私が言うと、「いや、有料道路料金の援助などは、身障者手帳の保持者なら誰でも受けられますよ」という返事。

 「えッ、私も身障者手帳の4級を持ってますが、貰っていませんよ」と答えると、「いや、貰えますよ。必要なら、今、差し上げます」と言われて、その場で、連れ合いの分のほかに私の分も60枚つづりの半額券を渡されました。

 これには驚きましたし、悔しい思いもしました。というのは、連れ合いが、昨年、目の手術のために伊勢原市の病院に入院中の約1月間、私はほとんど毎日、中央高速を往復したほか、毎週の大学への通勤にも、多摩川稲城大橋の有料道路を使い、料金全額を払ってきたからです。この半年に、3万円のハイウエー・カードを4枚以上は使い果たしています。もし半額割引券を持っていたら、6万円以上が助かったはずです!新旧の障害者手帳

 おかしいな、と思い、私の持っている「身体障害者手帳のしおり」(平成3年度――1991年発行)のものと、今度貰った「平成11年8月――1999年発行」のものとを比べてみました。(右の写真の上が1991年版、下が1999年版)

 明らかに違っています。

 連れ合い用に貰った1999年発行のものには、「有料道路 対象者 (1)自ら運転する身体障害者手帳所持者 (2)介護人が運転する自動車で移動する第1種身障」(ママ)とあります(下の図の左側)。そして私が10年程前に貰った「平成3年度」のものには、「対象者 身体障害者手帳(肢体不自由)所持者で、自ら運転するもの」 とあります(下の図の右側)。  私が持っている手帳は、(肢体不自由)ではなく(社会活動制限)という手帳なのです。ですから、私は有料道路の割引券交付はないものと思っていたのです。

 それを市役所に言うと、「ああ、おそらく途中で変更になったんでしょう。あなたのは、ずいぶん前の発行のものですからね」という返事でした。

 「途中で変更……ですか!」 

 何で、変更された時、それまでの手帳保持者に新しい『しおり』を送ってくれるなり、変更箇所の通知がないんだろう! そんなことは一度もこれまでありませんでした。

 いつ変更になったのか? 市役所の窓口ではわかりませんでした。「だいぶ以前だと思いますよ。私(応対に出た窓口の担当者)が、ここへ来てからじゃありませんから……」というような返事でした。そこで、数日のち、 それを、「東京都福祉局障害福祉部在宅福祉課」(ここにたどり着くまでに、あちこち、何度電話をかけ直さねばならなかったことか!)に問い合わせてみました。

 確かに、この割引は、9年前には「肢体不自由」の障害者だけに適用されていたのだが、7年前(1994101日)に、運輸省から厚生省を経て都に通知があり、それまでの制限を廃止して、すべての身障者手帳保持者に割引券が交付されるように変更された、ということでした。 これは改善ですね。

 そのことは手帳保持者に通知されたのですか?と尋ねますと、都からは各市区町村の方に通知したので、そこから先、身障者個人への通知は、それぞれの自治体に任されているとの答えでした。障害者への通知の問題は、都ではなく、市役所の仕事だ、というわけです。(このことについては、別稿であらためて書くつもりです。)

 6万円以上をみすみす損したのは残念至極なのですが、ま、これからは使えるんだから、と思い直し、連れ合いには、「友人たちか送られたお見舞金の追加分には、『温泉行きに使うこと』という条件がついているんだから、大いに有料高速道路を使って遠い温泉までぶっ飛ばそうや」と話した次第です。

(2) 航空運賃の割引率

 障害者手帳の有料道路割引措置をめぐる問題を何人かの友人に話したところ、その一人から、似たようなことはいくらでもある、たとえば、自分の知り合いの障害者から聞いた話だが、最近、航空運賃の割引率が変わったのに、その通知はなかったという、吉川さんはそのこと、知ってた? と言われました。知りませんでした。

 私たちが持っている2冊の障害者手帳で調べてみました。この件は、2冊とも同じでした。身障者と、その介護者には、航空運賃が25パーセント割引になるという記述です。それが変わっているというのです。そこで、日航、全日空など、 各航空会社につぎつぎと電話をしてみました。すべて、身障者およびその介護者には航空運賃の約37パーセントの割引が適用されます、という返事でした。いつ変わったのか、一昨年4月、運輸省からの指導もあって、各社ごとに、割引率を再検討し、身障者には 約37%の割引を適用することになっている、という返事でした。

 さて、この変更も、もちろん、運輸省からも、厚生省からも、都からも市からも通知はありませんでした。