hon-small-green.gif (121 バイト)   図書紹介  ベ平連と関わる2冊の書籍(鶴見俊輔『言い残しておくこと』と杉本秀太郎・甲斐扶佐義『夢の抜け口(10/02/15)

 最近読みました2冊をご紹介します。
 鶴見俊輔『言い残しておくこと』(2009年12月 作品社 
2,400円+税 )は、ベ平連のサイトにも紹介を載せてありますが、この書籍は、『すばる』2008年6月号から8月号まで連載した初出で、インタビューは2007年11月21日に京大会館で、続いて2008年1月29日に山の上ホテルで行なったものをもとにまとめたものです。インタビュー・構成は増子信一さん、見返し写真撮影(右が3点のうちの一つ)は秋元孝夫さんですが、どれも見事な表情の写真です。
 それぞれのインタビューには、それとは別に、「ミモラビリア」という、鶴見さんの著作、対談などから関連したものが多数引用されていて、各テーマごとに鶴見さんの索引のような役割を果たしてくれています。これは実に便利です。編集者は大変な苦労だったろうと思いますが、ありがたいことです。
 第二部の「『まちがい主義』のベ平連」や、「東大から小田実のような人間が出たのは奇跡だ」など、ベ平連についての話もかなり出てきます。
 本書には「付録」の冊子として、大江健三郎「そら、人間だ(エクセ・ホモ)」、竹内寛子「遠くからの謝辞」、山口文憲「俊輔さんの『懺悔』」の三篇(全16ページ)が入っています。山口文憲さんの文では、ベ平連や、脱走兵への米スパイの潜入問題などに触れています。

 杉本秀太郎(文)+甲斐扶佐義(写真)『夢の抜け口』(2010年2月 青草書房 1,900円+税)は、ベ平連についての本とは言えません。この本の帯には、
「京都の綾(あや)と澱(よど)みを、夢現(ゆめうつつ)のさかいなく、響きあう文と写真をとおし、心ゆくまで堪能してほしい。――井上章一」とありように、これは京都についての本で、ほとんどの毎ページの右側が京都の写真、左側が京都の文になっています。甲斐さんの写真は、「京都美術文化賞」の受賞となっています。
 この書籍にある、著書紹介は以下のとおりです。文も写真も実にすぐれたものですが、その一部に、「ほびっと」と鶴見俊輔さんに触れた部分があります。そこで記述されている鶴見俊輔さんの印象、意見は、さまざま書かれている鶴見俊輔論の中でも、最も優れたものの一つだと思えました。岩国でのベ平連「ほびっと」の凧揚げに関連した文のところは、ベ平連のサイトに抄が4点ほどの甲斐さんの写真とともに載せてありますので、そこもご覧になってみてください。

杉本秀太郎
(すぎもと・ひでたろう)

1931年、京都市生まれ。京都大学仏文科卒。国際日本文化研究センター名誉教授、日本芸術院会員。『洛中生息』で日本エッセイストクラブ賞、『文学演技』で芸術選奨文部大臣新人賞、『徒然草』で読売文学賞、『平家物語』で大佛次郎賞を受賞。著書は他に『大田垣蓮月』『伊東静雄』『徒然草を読む』『花ごよみ』『火用心』『ひっつき虫』など。主な訳書にボードレール『悪の花』、アラン『音楽家訪問』、フォション『改訳 形の生命』など多数。生家は寛保3 (1743)年創業の京呉服商「奈良屋」。

 甲斐扶佐義
(かい・ふさよし)

写真家。1949年、大分市上野生まれ。4歳のとき山香に転居。同志社大学政治学科入学(即除籍)。べ平連の運動に参加。岩国市内の反戦喫茶店参加。京都今出川に「ほんやら洞」オープン。京都木屋町に「八文字屋」オープン。2009年、第22回京都美術文化賞受賞。主な写真集に『京都出町』『ぼくの散歩帖・地図の無い京都』『美女365日』『猫町さがし』『京都の子どもたち』『生前遺作集』『路地裏の京都』『インドちょっと見ただけ』など多数。