hon-small-green.gif (121 バイト)   鶴見俊輔・吉岡忍『脱走の話』はとくにお勧めの本 (07/05/17掲載)

 この4月に発行された鶴見俊輔・吉岡忍『脱走の話―ベトナム戦争といま』  (京都・編集グループSURE  2007年4月 \1,000 + 税)は、とくにお勧めしたい本です。かつて、ベトナム反戦市民運動「ベ平連」がとりくんだ米反戦脱走兵への援助について、著者二人がそれぞれの実践体験に基づいて、昨年暮、京都で行なった講演の記録ですが、その当事者が語るだけに、内容が実に具体的で、わかりやすいだけでなく、サブタイトルにあるように、40年近く前の運動の思い出話の域にとどまることなく、イラク戦争や自衛隊の海外派兵という現実とともに憲法改悪へのドライブが進められている現在、個人はどのように国家に対すべきか、市民としての抵抗はいかにあるべきか、また、アメリカという国をどう理解すべきかなど、極めて現在的な問題への示唆に富む対話が行なわれています。
ただ、残念ながら、この本は書店に並ばず、出版社への郵便振替による直接注文でしか入手できません。それほど高価な本ではありませんから、是非、下記にご注文され、ご一読くださるようお勧めいたします。
 入手方法は
 郵便振替で、口座番号:00910-1-983863 口座名:編集グループSURE あてに、住所、氏名、電話、書名、冊数を記入して申し込んでください。
 連絡・問合せ先:編集グループSURE  〒606−8301京都市左京区吉田泉殿町47  電話・ファクス 075-761-2391
Eメール: info@groupsure.net    URL: http://www.groupsure.net  へ
 なお、編集グループSUREからの刊行にあたっての本書「ごあいさつ」を以下に転送します。

なんだかぱくぜんと、戦争が近づいているようで、こわい。
 そんな思いがあります。

 そういうことが言われだしてから、すでにずいぶん経っているようなのですが、この重苦しい空気は「好景気」だと言われるようになっても、深まっていくようです。

 憲法も変わる(変わりそう)らしい。
 イラクやアフガニスタンでは、いまも戦争状態が耗いているらしい。
 日本の国も、自衛隊の活動を通して、この戦争の継続に力を貸している、らしい。
 20代、30代の者たちで(40代もいますが)、顔を合わせたとき、そんな話をすることがありますが、らしい、らしい、と続くばかりで、気が晴れません。ひとことで言うなら、私たちの疑問は、こういうことになるようです。
 
 ふだん、この社会では「人を殺してはいけない」と教えている。
 なのに、いったん戦争になったら、国は「敵を殺せ」と命令する。
 やっぱり、それは、おかしいのでは?

 殺されたくない。
 たとえ戦争でも。
 これは、はっきりしている。
 でもそれだけではなくて、人を殺したりしたくない。
 たとえ戦争でも。

 殺されたらすべておしまいですが、殺すというおこないも、破滅的な行為です。人を殺す――それをやってしまっては、うまく生きられなくなるでしょう。
 戦争が、なにか美しい行為のように言われかねない世の中になってきています。私たちを包む空気の重苦しさは、こうした言い方に隠されている「ずるさ」とつなかりがあるのではないか。
 いま、たとえばイラクでの戦争を統けることが、いったい何を守ることになるのでしょうか。
 国の利益を守るために、郷土を守るために、家族を守るために、戦争に行って、敵を殺して(あるいは、死んで)こい。――そんなふうに人に求める権利は誰にもない、それがたとえ肉親であろうと、親しい友人や恋人であろうと。ましてや国家になどは、ないんじゃないかと思います。

 そいういところから、本書、吉岡忍・鶴見俊輔『脱走の話――べトナム戦争といま』での討論の企画は始まりました。ベトナム戦争って、映画などではよく見かけるけわで、いったい何だったの?ということです。
 1960年代後半から70年代初頭にかけて、東南アジア・ベトナムの見知らぬ戦地でたたかうことを命じられた米国の若い兵士たちが、日本駐留の基地らから逃げだす事例が続いたそうです。
 彼らは、10代、20代の、ごく普通の米国の若者たちでした。遠いアジアの国で、自分が人を殺したり、あるいは殺されるかもしれない事態が目前に迫って、こわくなったのかもしれません。
 日本では、そうやって基地から脱走してきた若い米兵たちを、自分の家にかくまった人が大勢いたそうです。彼らはごく普通の家庭でくらしてる日本人たちてした。けれど、互いの顔さえ知らないまま、その人たちは家族ぐるみで協力しながら、多くの脱走米兵たちを、戦争と無関係な第三国へと出国させました。(なかには脱出に失敗した事例もあったそうです。)

 これが、どんな経験だったか、まず知りたい。
 だけど、これから、もしもいよいよ戦争の世の中になった場合、私たちは、逃げだしてきた(たぶん日本人の)若い兵士をかくまっったりできるだろうか?
 そんなことしたら、つかまるかも。
 だったら何ができる?
 そもそも、そんなことにならないほうがいいわけだし、そのためには?
 
 そういう疑問や意見を自由に議論しあえる場を持ちたいと思いました。本書は、私ども編集グループSUREが京都で催した、この「公開寺子屋」の記録です。

 ホストは、いつも私たちの「寺子屋」のお師匠役をつとめてくださっている、今年85歳、京都在住の哲学者・鶴見俊輔さん。
 ゲストは、当時19歳で米軍脱走兵援助活動に加わったジャーナリスト・作家の吉岡忍さんです。
 お二人を中心に、ジャーナリストの筑紫哲也さん、作家の山田稔さん、建築家の池田武邦さんらも、飛び入りゲストとして議論に加わってくださっています。
 この一冊を、ぜほともお目通しいただきたく、お届けする次第てす。何なりと、ご高評をたまわれれば幸いでございます。

        2007年4月
                          編集グル−プSURE 代表 北沢街子
                                      黒川 創