hon-small-orange.gif (121 バイト) 小田実さんのベ平連時代の新評論集(2冊)刊行(01/03/29

 ベ平連の代表だった小田実さんのベ平連時代の評論集が、新たに刊行された。多くはすでに小田さんのこれまでのさまざまな評論集に載ってはいるが、いずれも今では入手困難になっていたもので、今回、筑摩書房から刊行中の『小田実評論撰』全4巻のうち、〈1〉〈2〉が出たことで、ベ平連時代の全体がカバーされ、入手できるようになった。ベ平連運動だけの評論集ではなく、文学論、歴史論、知識人論、天皇論などの代表的論文も多く含まれているが、ここではベ平連との関連の主なものだけを紹介する。

 『評論撰』〈1〉は「60年代」で、彼の思想の原点となった「難死の思想」(1965年1月)から始まり、1968年1月の佐世保エンタープライズ反対闘争について論じた「『物』と『人間』」、68年10月の新宿闘争と関連しての「ふたたびベトナム反戦を」、69年1月の「デモ行進とピラミッド」にいたるまで、運動の中で書かれた主要な論考が含まれている。もちろん、米反戦脱走兵およびそれへの援助活動を論じた「人間としての思想と行動」「人間・ある個人的考察」なども入っており、ベ平連活動の前半の小田さんの主要論文集となっている。

 『評論撰』〈2〉はベ平連運動の後半の時期、70年代の論集で、71年1月の「『生きつづける』ということ」に始まり、激化する新左翼闘争と武力闘争、ベ平連「トンネル」論などを論じた「『武器をもたない』こと」(72年7月)、そして、「世直しの倫理と論理」(1972年1〜2月〉などが含まれ、「あとがき」では、74年1月のベ平連解散集会のことにも触れられている(この「あとがき」では、その日付が「1970年1月」とされているが、小田さんが、この日付を間違えるはずはないから、これはかなり重大な校正ミスとしか思えない)。この巻でベ平連の運動との関連で重要な論文の一つは、最後に収められた「ある手紙」だろう。これは、1968年7月号の雑誌『文芸』に発表された小田さんの小説『冷え物』が、関西の「部落問題研究会」から「差別小説」だと批判され、それを契機にベ平連内部でも激しく展開された議論、そして対立、混乱がおこった中で書かれた批判者への公開状で、差別問題をめぐる基本的な、歴史的とも言える文献である。(この小説『冷え物』自体は、河出書房新社では在庫切れ・重版未定だが、それを収録している『筑摩現代日本文学大系』84巻の『小田実・柴田翔集』定価\5,000 は在庫があり、それで読むことができる。第三書館から刊行中の『小田実全小説』の第5巻も収録予定だが、その刊行予定は現在不明。

 現在、アメリカ、欧米諸国など、民衆がかつてベトナム反戦運動を活発に展開した国ぐにで、60〜70年代の歴史的再検討が盛んになりつつある。第三書館から出ている小田さんの『「ベ平連」・回顧録でない回顧』(1995年 \5,000)とともに、今度のこの2冊は、ベ平連の全活動を俯瞰し、再評価する上での小田さんの書いた必読の書といえる。

 『評論撰』〈1〉は2000年10月刊 定価\7,500、『評論撰』〈2〉は2001年3月刊 定価\7,500 いずれも+税 筑摩書房。なお、このあと、80年代、90年代の評論撰がつづく。全4巻。

 現在、アメリカ、欧米諸国など、民衆がかつてベトナム反戦運動を活発に展開した国ぐにで、60〜70年代の歴史的再検討が盛んになりつつある。第三書館から出ている小田さんの『「ベ平連」・回顧録でない回顧』(1995年 \5,000)とともに、今度のこの2冊は、ベ平連の全活動を俯瞰し、再評価する上での小田さんの書いた必読の書といえる。

 『評論撰』〈1〉は2000年10月刊 定価\7,500、『評論撰』〈2〉は2001年3月刊 定価\7,500 いずれも+税 筑摩書房 なお、このあと、80年代、90年代の評論撰がつづく。全4巻。

 この『小田実評論撰』〈1〉〈2〉の「あとがき」の一部で、ベ平連に関係ある記述の部分は、旧ベ平連の資料のホームページ中の「最近文献」欄に転載されている。左の欄の「リンク」から、そこへ飛べます。