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党議拘束

2005年10月09日Web掲載

〔2006年11月18日更新〕  ← ここをクリック


【党議拘束】に関しては、【旧】と【新】は同じ内容です。

 毎日新聞2005年09月24日「余録」には、「余録:自民党の総務会で郵政民営化法案が了承された…」が掲載されています。

 思い起こせば、2005年度「解散・総選挙」の幕開けは、2005年06月28日自民党総務会において、従来の慣例であった「総務会参加者合意(全員一致)」という方法ではなく「多数決」という方法により郵政民営化を強行したことだった、と思っています。

 テレビ、新聞等のマスコミ報道によると、「衆議院で議論されていた郵政民営化の法案」に反対していた多くの自民党議員は、「2005年06月28日自民党総務会の採決で党議拘束がかかった」と認識していなかったように思われます。

 「2005年06月28日自民党総務会の採決で党議拘束がかかった」としたのは、当然ですが自民党執行部であり、このことが徐々に明らかになってきます。明確になったのは、解散・総選挙のときに、自民党の公認が得られなかった、という時点ではなかろうかと思われます。

 この経過については、別途の議論として、問題なのは「過半数の賛成で、党議拘束をかける」ということではないかと思っています。私の認識では、「この時点で自民党は変質した」というものです。

 この「党議拘束をかける」ということですが、「賛成できない事案にも強制して賛成させる」というの問題点があります。政党政治なので止むを得ないという考え方もあるかも知れません。が、私としては、重大な事項に関するほど、「党議拘束をかける」ということが行われるので、賛同できません。

 アメリカに目を向けると、アメリカ共和党下院議員の「アメリカとの契約」というのがあります。今回の自民党の「党議拘束」のありようというのは、まさに「アメリカとの契約」に似ていると思います。詳しくは、[G.W.ブッシュ政権とアメリカの保守勢力](久保文明編)をお読み下さい。「第二章 ブッシュ政権とその政策形成について」(吉原欽一)の「四 共和党多数議会の成立と政策形成過程の変化」あたりに詳しく記載されています。

 余談ですが、この[G.W.ブッシュ政権とアメリカの保守勢力]という書籍は、私にとって、現在のアメリカを理解する上で非常に参考になった書籍です。
 で、2005年10月09日の日本経済新聞社書評欄に「米国民主党」(久保文明編・日本国際問題研究所・2,800円)が掲載されていました。出来れば、この書籍も読んでみたいと思っています。


 関連記事として、以下のものを紹介します。
毎日新聞2005年09月23日「自民党:郵政法案・提出了承 総務会、様変わり−−多数決から発言ゼロに」
毎日新聞2005年09月24日「近聞遠見:後藤田正晴の「遺言」=岩見隆夫」

 それから、ちょっと意味合いが違いますが、
毎日新聞2005年09月10日「近聞遠見:やはり「重複」はおかしい=岩見隆夫」
毎日新聞2005年09月27日「ヘンな民意=三連星」
 などがありました。

 「近聞遠見:やはり「重複」はおかしい=岩見隆夫」ですが、「政党政治」とか「2大政党」などを推進する立場からすると、「小選挙区で落選した議員が比例区で救われて当選する」というのは、なんら問題ではないと思います。「マニフェスト」を基準にして投票を呼びかけている点から、既に「代議制民主主義」ではなく「政党政治」になっています。選挙の投票行動は「人物本位」ではなく「政党」の「マニフェスト」を基準にと、新聞社等も言っているわけです。
 要するに、極端なことを言えば「議員の資質は問わない」ということです。当選した議員に対して、「議員の資質がない」と言っているわけではありません。「マニフェスト」に賛成の人であれば、誰でも構わない、というのが、今回の選挙で明らかになったことだと思っています。

 ところで、この「マニフェスト」作成に、今回当選した議員は、どの程度関わりましたか?
 自分が作成に関わっていない「マニフェスト」に責任を持てるというのは、私からすると、非常に気持ちの悪いことです。作成に関わっていない「マニフェスト」などには、責任をもてない、というのが私の立場です。聞くところによると、イギリスの「マニフェスト」は、党員が議論して作成するようです。ですので、決まった「マニフェスト」には、不満があっても異議は申し立てない、ということのようです。首長の「マニフェスト」については、首長ひとりが責任をもつので問題ないでしょう。しかし、議院内閣制のもとでの「マニフェスト」で、党の執行部のみが関与し作成した「マニフェスト」に、党の各議員は、どの程度の責任がもてますか?

【2005/10/21追記】
 毎日新聞2005年10月21日夕刊5面3版「米国:銃器業者への訴訟制限、下院が可決 市民団体など反発」
 なぜ、この記事が「党議拘束」のページなの、と不審にお思いかもしれません。
 実は、この記事は「アメリカとの契約」の典型的な例だと思っているからです。
 下院共和党候補者の選挙公約ともいえる「アメリカとの契約」というのは、「共和党支持団体のシングルイシューといえるものの寄せ集め」と私は理解しています。
 先に紹介した[G.W.ブッシュ政権とアメリカの保守勢力](久保文明編)の28ページの「おわりに」に、次のように記載されています。
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 かくして、共和党は一九六〇年代あるいは七〇年代前半と比較すると、はるかに南部的かつ保守的に変容している。七六年まで大統領選挙綱領において男女平等憲法修正案(ERA)を支持し、八〇年の綱領でも辛うじて男女平等への支持を表明した政党の面影は今日もはや存在しない(ちなみに同党は八四年には正面からERA反対を謳った)。党内では保守派集団が主導権を握っているが、その中心は経済保守派であり、また中小企業団体である。それに銃所持者団体や反環境規制団体などが連なり、さらにはそこに宗教保守派や議員任期制限運動やさまざまな企業集団が連携している。宗教保守派は党内で依然強い影響力をもつが、それは一定数の議員や政治家に限定されており、彼らがATRのように幅広い連合をつくることは容易でないだろう。
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 キリスト教原理主義者とか全米税制改革協議会(ATR)、全米ライフル協会(NRA)などが支持団体であり、それぞれの団体の要求が「選挙公約」になっていて、「その選挙公約全てに賛成」しなければならない、というものです。
 「妊娠中絶に反対」・「銃規制に反対」・「増税に反対」等々の「公約全てに賛成」し、議会での投票時には、その公約に従わなければならない、ということになっています。
 集合論で言えば、「和」になりますので、議会勢力としては強いですね。
 「情報科学・システム工学 教育向け フリー素材集」をスクロールした下の方に「和」の図があります。

 「党議拘束」をかけるということは、これと同じ効果を生みます。

【2005/11/05追記】
 毎日新聞2005年11月05日朝刊5面13版「自民・久間総務会長に聞く:「多数決」否定できない」
 「党議拘束」をかけるような議案は、重要な議案に決まっています。
 で、「「重要な議案」を「自民党の過半数」で決定できる」ということが異常なのです。別途「集合論の和」ということで記載しましたが、自民党内にも色々な考え方をする人がいるでしょう。全ての重要な議案が、選挙の前から分かっている、ということでもないでしょう。また、議案は分かっていても、細目まで最初から決まっているわけでもないでしょう。
 それを「党議拘束」にかけて、纏め上げ、国会を通す、ということであれば、極端なことを言えば、現在の国会の勢力からすると、自民党の過半数で、全ての法案が採択される、ということになります。
 これが「民主主義」なのですか。

【2005/11/10追記】
 毎日新聞2005年11月10日夕刊5面3版「英下院:反テロ条項案を否決 ブレア政権提出で初−−起訴なし拘束、短縮し可決」
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 与党・労働党は354議席を占め野党を66議席上回っているが、野党・保守党、自由民主党の反対に加え与党から多数が造反した。
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【2005/11/13追記】
 日本経済新聞2005年11月13日朝刊5面13版「地球回覧:共和党「本家」争い 穏健派挑む」
 記事中の
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…(省略)社会的保守派のお墨付きがないと共和党から立候補できない地域も増えた。(省略)…
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という個所は、私の理解するところでは「アメリカとの契約」がないと立候補できない地域のことです。

【2006/09/09記載】
 後日談、というわけではないのですが・・・
 毎日新聞2006年09月09日朝刊3面13版「近聞遠見:「出ていった」のではない=岩見隆夫」
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…(省略)…
 ところが、最近になって、自民党側から復党論が出ている。来夏の参院選対策上、離党議員の集票力をアテにしだしたらしい。小泉は、
 「離合集散は世の習い。自民党を出ていった人が自民党に戻ってきたり、世の習いなんです」
 と述べ、復党を認める意向という。またも、小泉一流のかわし話法である。

 出ていった、のではなく、追い出された、のだ。自由意思による離合集散ではない。小泉が仕掛けた一種の権力闘争だった。
 麻生太郎外相が言うように、これはやりすぎだ。そうであるなら、反省するか非を認めないかぎり、離党組もおめおめとは戻れない。
 「わびを入れて土下座して謝ってもらうならよいが……」
 と老綿貫が憤るのがよくわかる。第3波は深刻だ。
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【2006/09/19記載】
 毎日新聞2006年09月19日朝刊5面13版「社説:自民党総裁選 「造反組」復党」
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 郵政民営化法案に反対し、自民党を離党した衆院議員の復党問題が急浮上している。ポスト小泉政権にとって最大の関門は来夏の参院選だ。与野党逆転を阻止するには、「郵政造反組」の協力が欠かせないとの見方が強まっている。総裁選に出馬している3候補だけでなく、小泉純一郎首相までもが「郵政民営化だけが政治じゃない」「離合集散は世の習い」と、容認の構えだ。
…(省略)…
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 まぁ、なんという政党なのだろうか。
 原理・原則というものはないようだ。
 でもって、「党議拘束」なんぞというものがあるのが不思議だ。

  
【2006/11/18(土)記載】
 久々に「党議拘束」ぴったりの話題だ。
 是非、お読みください! お勧めします。
 毎日新聞2006年11月18日朝刊3面13版「近聞遠見:平沼赳夫の「ここ一番」=岩見隆夫」
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…(省略)…
 採決の前に、安倍晋三幹事長代理(当時)から、
 「憲法や教育基本法の改正が控えているので、なんとしても賛成し、自民党に戻ってほしい」
 と懇願されたが、平沼は、
 「郵政民営化反対は私の政治信念だ。ここで賛成すれば政治家としての分(ぶん)が立たない」
 と断ったという。分は、本分という意味だろう。
 これまで、平沼はその理由として、
 一、郵政民営化はアメリカの要望に盲従したにすぎず、改革の名に値しない。
 一、民営化法が成立すれば、国民の虎の子ともいうべき総額340兆円もの郵貯・簡保資金が海千山千の外資の餌食になる恐れが十分だ。
 一、従って、この<えせ改革>には、国家的見地から信念をもって反対する。
 −−などと述べてきた。2度目の反対のときは、無所属だから党議拘束はなく、<全国民の代表>としての1票である。
 今回の復党条件として、中川秀直幹事長は、自民党の政権公約の順守などをあげ、
 「踏み絵を踏んでもらう」
 としてきた。平沼には郵政民営化賛成に切り替えることを求めているわけだ。
…(省略)…
 最近の核論議にしろ、一政党のなかで多様な意見が渦巻く時期だ。党議拘束のシバリをかけ過ぎるのは、政治の活性化のうえからも好ましくない。
…(省略)…
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