■歴史を歪め教科書を歪める地方議会決議に反対する■

                        1996年 12月 24日
                        歴 史 教 育 者 協 議 会

 12月にはいって、いくつかの県議会ならびに市町村議会で、陳情・請願また
は議員提案の形で、「従軍慰安婦」についての記述を中学校教科書から削除する
ことなどを求める意見書を採択しようとするうごきがおこっている。
 これらの主張は、すでに防衛庁所蔵史料をはじめとする多くの文献や、被害者
の証言などによって明らかにされ、1993年の官房長官談話によってさえ不十
分ながら認められてきた歴史の事実を、なんの根拠も示さず無視するものである。
 かれらの意図は、過去における日本の戦争犯罪を覆い隠そうとするところにあ
る。かれらは「国家に誇りをもたせるため」と称しているが、真実を隠した虚構
の上に組み立てられた「国家への誇り」こそは、かつて無謀な侵略戦争へ国民を
かりたてたものであり、私たちが二度と繰り返してはならないことである。アジ
アをはじめとする諸国民との友好と信頼に結ばれた未来は、過去に対する真摯な
反省の上にはじめて成り立つものである。
 歴史の事実について慎重な検討を加えることもなく、日本の未来について深く
考慮することもなく、このような決議が次々と採択されていくならば、日本人の
歴史認識と国際感覚について、世界に大きな疑念をいだかせる結果となり、今後
の国際交流と友好親善に大きな障害をひきおこすことになるであろう。
 さらにまた、学問的教育的真理にもとづいて執筆されるべき教科書を、議会決
議という政治的圧力によって歪めたり、文部省による検定強化を促して教科書の
内容を変えさせようとするようなことは、教育へのきわめて乱暴な政治的介入で
あり、教育基本法に定められた基本原理を大きく歪めるものである。
 よって私たちは、このような歴史の真実を歪め、教科書を歪めようとする地方
議会決議のうごきにたいし、強く反対し、多くの心ある人々とともに、このよう
な決議を阻止するために力をあわせていく決意である。