ソウルの集会に参加して

「我々民族による統一を」揺るがぬ自信



女子中学生(米軍による轢き殺し事件)一周忌追悼キャンドルデモと6・15南北共同宣言記念行事
03.06.14〜6.16訪韓記

 

「我々民族による統一を」このスローガンを強く感じた今回のソウル訪問だった。

朝鮮半島に平和を!6・13反戦アクション実行委員会の代表団として、女子中学生一周忌追悼キャンドルデモと6・15南北共同宣言記念行事へ参加してきた。

韓国の運動のエネルギーにふれてみたい、星条旗を引き裂くほどの集会に参加してみたい。全国リレー行動の5月の集会で日韓ネットのKさんから代表団派遣の話を聞いたとき、まず思った。
帰国した今思う、あのときお話を聞けて本当によかったと。

同時に、あのエネルギーを日本の多くの人に知ってもらいたい。特に平和について考えている人たちに、韓国の運動のたくましさを感じ元気を分けてもらいたい。


一周忌追悼集会

ソウル市「ミソン、ヒョスン1周忌追慕大会、自主平和実現蝋燭大行進」行事は13日、市庁前広場で開かれた。
(午後5時〜 第1部コンサート、7時〜 第2部集会とデモ)

私たちが到着したのは第1部の終わりで、コッタジ(労働者の間から結成された人気のグループ)が演奏していた。

広場といってもふだんはロータリーで車が走っている所だ。ここに特設ステージを作り大スクリーンを置いて会場の奥からも見えるようになっている。ステージの両側には殺された二人の大きな人形が鳩に囲まれて立っている。

最前列には闘争を続けてきた高齢者の席が設けられ、その後ろは若者がいっぱいだった

*二人の人形 間にステージがある

*ローソクを掲げる若者たち
ステージでは2部も音楽や舞踊が続き、合間にスローガン「米国は謝罪せよ」「SOFA改定」などが叫ばれた。またビデオでこれまでの集会の様子などが流された。

配られたローソクの灯をスターの歌にあわせて揺らしたり、琴や笛の演奏で古典的な追悼の舞が演じられたり、さながら「芸能の夕べ」といった感じだった。若者にも古くからの文化が受け継がれているのだろう。

途中ステージ上で飛びいりが星条旗を燃やし主催者に止められた。しかし、その後ひとりひとりに紙の星条旗が配られ、合図と共にそれぞれがローソクの灯で燃やした。
今回は12月の集会とちがい非常に警戒がきびしくなったそうで、主催者も演出外のことには配慮したようだ。

集会後、二人の人形を先頭にアメリカ大使館に向けて出発した。装甲車で道路が封鎖され一時緊張した雰囲気だったが、デモ隊がほかの道に回った。

周辺の道路はいっぱいに人があふれ、車が通っている道も徐行運転で警官の姿がない。交通規制された通りでは高校生や大学生のグループが記念撮影したりダンスをしたり、まさに解放区のようだった。

参加者は3万人と発表された。

事件現場へ

二日目はまずミソンさん、ヒョスンさんの二人がひき殺された現場を訪れた。

 途中、かなりにぎやかな地方都市の駅前に、米軍基地が並んでいるのには驚いた。

 事件現場付近は幹線道路から離れたのどかな山間の村だ。牛舎のすぐ上に射撃場がみえる。射撃場や施設が点在していて、村々の間を予告なしに米軍の車が行き交うとのことだ。

アメリカが建てた慰霊碑の上に、韓国国民による慰霊碑建立が計画されているという。

* 米軍による女子中学生ひき殺し事件 
http://www.korea-htr.com/chuo/japanese/siryou/02/2sgkeika2.htm

 *キャタピラの跡が道路からはみ出し、
 靴がころげていたという。

非武装地帯(MDZ)

パジュ市のチェックポイントで身分審査を受けてからバスに乗って民間人統制区域へ。

バスの中は家族連れでいっぱい。運転手の厳重な注意となんともそぐわない。検問所の兵士もかわいくて写真に撮りたかったくらい。でもバスの車窓からは地雷注意のどくろマークが見える。

イムジン川を渡る。水量が豊かで緑が濃い。長く浚渫してないので、川底が浅くなっているそうだ。両岸には水田が広がる。ここにも村があり学校もあるという。

*記念館前の統一を目指したモニュメント
記念館へ到着。ここはかつて反共宣伝展示館だったが、2000年以降は統一と非武装地帯の自然の豊かさを訴えるものへと変わっている。

正面には統一をめざしたモニュメントがあり、上映されているビデオは非武装地帯を世界自然遺産にというものだった。

トラサン展望台へ。兵士が英語・日本語OKで案内してくれる。北朝鮮のケソン市まで10km足らず、あいにく霧がかかっていて見えなかったが。

眼下に広がるMDZは本当に緑濃い自然の宝庫だった。

トラサン駅

今日6月14日この駅で京義線の連結工事の着工式があり、真新しい駅は輝いていた。式典はすでに終了していたが観光客は多く、期待を感じた。枕木を寄付した人の名が記された掲示板は長く続いていた。

この駅から北に向けて列車が出発し、ユーラシアの果てからロンドンまでつながるのはいつの日だろうか。

*駅正面から

6・15前夜祭


*集会準備中 このあと車道に座り込む
大学路という原宿のような通りに商店街の許可を得て学生たちが座り込んでいる。通りの先にステージを設け歩道の片側にはいすを並べて、老人席となっていた。

イラストや風船が飾られ本当に前夜祭だ。「私たち民族による統一を」とのスローガンがはためく。買い物客が集会に参加したり参加者がお店に立ち寄ったり、そこここで挨拶が交わされる。 物売りのおばさんが籠を頭に売り歩く。

ステージでは歌や踊りが披露され、アピールやシュプレヒコールが続く。私たちも紹介された。
最後に統一を題材とした劇が上演された。南の若者と北の娘が共に鉄道建設に協力する中で恋が芽ばえる。一方統一をきらう米軍とそのお先棒をかつぐ役人は工事を邪魔する。しかし民衆の力で線路は完成し、北と南両方から走ってくる列車に乗った花嫁・花婿はめでたく結ばれる。

そのあとは全員でダンス。はじける。

6・15共同宣言記念式典

共同宣言3周年記念式典は民和協、宗教団体、統一連帯の共同主催で行われた。

こちらはホールで、アメリカ・日本の平和運動の活動家たちも参加していた。また、SARSの影響で不参加となった北朝鮮からはメッセージが寄せられた。

「今民族共助のときであり、アメリカが北の脅威を作って統一に反対している。日本は有事法制等でアメリカと一緒になっている」といった発言が続いた。ノムヒョン政権に対しても厳しい見方が多かった。

韓国大学総学生連合による集会

ソウルの街は機動隊や装甲車が目に付きものものしかった。

激しい雨の中、学生たちがヨンサン基地前で共同宣言3周年記念集会を行った。

基地前の歩道にステージを作り座り込む。その横には装甲車が並ぶ。車道側は警官、婦人警官が多かった。しかし反対側の歩道には機動隊が集まり、さらに基地内にも武装した兵士たちが見える。

統一連帯の挨拶・集会の宣言などが続くが悪天候に大幅に繰り上げられた集会に、参加者がおさまらないのか一時緊迫した場面も。

ソウル在住のSさんによると婦人警官の出動や主催者への注意の呼びかけなど、これまでと比べてかなりソフトムードだったらしい。政府としては弾圧のイメージをやわらげたいのだろう。

*手前が機動隊。車道の向こうに警官
     歩道に集会参加者。その向こうが装甲車

    屋根には機動隊が待機。
    撮影者の後ろがヨンサン基地
アメリカ大使館付近は夕方まで警戒態勢だった。3・20に東京の米大使館前がすごいと思ったが、それ以上だ。軍隊のいる国だと、まざまざと感じた。


韓国の方々と話して

滞在中は、前述のSさん、統一連帯のKさんに大変お世話になった。また統一連帯の方や良心的政治犯として服役されていた方、大学新聞の学生たちなどと話す機会があった。これらをまとめてみる。

6・15共同宣言は統一への画期的な行動だった。このような自主的な政府を求める民衆の支持を得て、ノムヒョン政権が誕生した。

米国は統一によって在韓米軍の縮小・撤退が予想されることを恐れ、北朝鮮の脅威を宣伝している。世界一核兵器を保有している米国が、使えるかどうかもわからない1個か2個の核爆弾で騒いでいる。

*前夜祭に参加したオモニ 
軍事政権下で投獄されていた
日本の政府は有事法制を施行しマスコミは反北朝鮮キャンペーンを煽っている。しかし日本の国民には冷静に判断してほしい。

韓国でもマスコミはイラク戦争の頃から米追随の報道を行い始めた。ノムヒョン大統領は米と屈辱的な外交を結び国内でも右傾化している。

これらは活動している人々の意見であり、朝鮮戦争経験者や軍隊経験者には統一運動や反基地運動への反発もあるという。だが北朝鮮が攻めて来るとか戦争が近いといった危機感はない。


終わりに 

韓国の人々は民主化闘争の中で軍事政権を倒し、自分たちに近い政府を作った。国際的にも認められる国家となった。その自信があふれている。

彼らは三つの闘争を経てきた。日本の植民地支配に対して、朝鮮戦争下でのアメリカ軍支配に対して、軍事政権に対して。それぞれの世代が闘いを担ってきた。


ウリ ミンジョ
我々民族の力で!

(集会で配られていた風船)
 「我々民族による統一を」── 統一すればアメリカ軍はいらない、さまざまな基地問題もなくなる。これが今韓国の運動のスローガンだ。

日本にいる私たちはこれに応え、北朝鮮脅威論に反論していきたい。国境から直線30kmに住む人々が平和的解決を信じているのに、海を隔てた日本人が何を怯えているのかと。

韓国の若者たちを見ていると未来もそう悪くないように思えてくる。彼らはきっと自分たちの手で平和的な統一を成功させるだろう。


(Y.A)