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新刊 環境教育はじめの一歩
監修:宇井 純、西尾 漠、丸谷宣子
編著:全国環境教育ネットワーク 編
出版:アドバンテージサーバー   
   定価:¥1,250+税
       

同書 あとがき より
 多くの人々がいま、世界各地で起こっている環境破壊に心を痛め、重大な関心を抱いています。そして、環境問題の解決に向けて、多くの人たちがさまざまな方法で取り組んでいます。そのなかにあって、とくに近年、教育の果たす役割に関心が寄せられるようになりました。もちろん、ここでいう教育とは学校教育だけを指すわけではありません。しかし、環境教育のなかで学校教育の果たす役割は決して小さくはありません。
 全図の学校で、熱心な教職員が環境教育のあり方を模索しながら、数多くの実践をしています。しかし、熱意をもって取り組んでいるにもかかわらず、思うような教育効果が得られずに、挫折感を味わっている人も少なからずいます。

 それは、これまでの学校の環境教育が「一部の熱心な教職員の献身的な努力のたまもの」に頼っており、ほとんどの学校では、全体的・組織的なとりくみになり得ていないことがその一因です。また、自らのとりくみに疑問を感じている人も少なくありません。
 たとえば、「子どもといっしょにゴミ拾いをしているが、いつまでたってもゴミがなくならない」「リサイクルを学ぶために空き缶アートをし、家からたくさん空き缶をもってくるように指導したが、これは本当に環境教育なのだろうか」等々。また、「原発はCO2を出さないから環境にいい」とか「現在の環境問題はみんなが加害者でもあり被害者でもある」という喧伝に対して、本当だろうかという疑問をもっている人も少なくありません。

 日教組全国教研の「環境と公害・食教育」分科会でも、環境教育をすすめていくための疑問や悩みが毎年のように出され、議論が行われています。そのたびごとに、共同研究者がそれらの議論について一定の整理をしますが、それが全国の教職員の共有財産になかなかならないというジレンマがあるのも事実です。         
 2001年の東京教研でも同様の議論が繰り返され、「それらの議論を本にして全国の教職員に問題提起してはどうか」という提案が出されました。それを受けて、共同研究者、司会者に「全図環境教育ネットワーク」のメンバーを加えて執筆をしたのが本書です。                                 
 書店に行くと環境教育に関する出版物は数多くあります。しかも、そのほとんどがノウハウものです。もちろんそれも大事ですが、どんな考え方や視点をもって環境教育を行えばいいのか、そこを誤ると同じ教材を扱ってもまったく違う方向に展開してしまうことは、教壇に立つものなら誰もが経験していることです。        
 文部省(現:文部科学省)はいち早く「環境教育指導指針」(1992年)を出し、環境教育をすすめていくための方向性を示しました。その内容には批判も多くありますが、残念ながら私たち学校現場サイドには、それに対峠できるものがありませんでした。「ならば現場の教職員でつくってみよう」。この本はそうした思いで書かれたものです。読んでおわかりのように、この本はノウハウ本ではありません。読んですぐ授業に使えるものでもありません。
 むしろ「授業を行う前にこの点だけは押さえておいてほしい」、どちらかというとそんな環境教育の視点に内容をしぼった本です。

 ここに示した内容は私たち自身、完全なものとは思っていません。扱いたかった内容もまだまだあります。いま、執筆者たちで考えているのは、できればこの本を読んでいただいているみなさんからご意見をいただきながら、さらに内容を高めていきたいということです。その意味で環境教育に取り組んでいる全国の教職員みんなでこうした環境教育の視点を考える、まさに「はじめの一歩」だと思っています。
 「21世紀は環境の世紀」だといわれています。学校に「総合的な学習の時間」が導入され、そのなかで環境教育が取り上げられていくでしょう。そういった意味でも、環境教育はいままでにもまして重要になりつつあります。だからこそ、「いわれたからする」「いわれたようにする」のでなく、「どんな環境教育を実践していくか」が大切です。私たちが自らの意思で主体的に実践し、模索し、時にはともに悩むことも大事だと思います。
 「社会に対し自分の考えをもち行動する人間になってほしい」と子どもたちに願うのであれば、まず自らがそうならなければならないのではないでしょうか。その意味でも、環境教育は格好の教材だろうと思います。この本が、みなさんの一助になれば幸いです。
                    全国環境教育ネットワーク代表 竹本 伸
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