ハイチ人良心の囚人より

アネット・オーギュスト
ZNet原文
2004年5月27日

ペティオンヴィル・パニタンティアリ、ハイチ、2004年5月23日。

今日、私は、世界に向け、ハイチの「良心の囚人」として話をします。政治的信念のために拘留されている良心の囚人として、です。

私は5月10日、ハイチの首都ポルトープランスの郊外ダルマで、米軍海兵隊により拘束されました。海兵隊は、爆発物と大きな武器を持って真夜中に私の家に野蛮な襲撃をかけ、中にいた全員---とりわけ私の家族の小さな子どもたち---を恐怖に陥れました。安全を守るために私たちが持っていたのは2匹の小さな犬だけで、この2匹は、海兵隊たちが敷地に入るときにすぐさま殺されました。私たちの家の表玄関を開くために爆発物を使ったあと殺されたのです。これらの男たちが、私の一家で一番幼く傷つきやすい子どもに残したトラウマについては決して忘れることも許すこともできません。その夜拘束を逃れるためにバルコニーから飛び出した3人のティーンエイジャーと青年のうち、一人は重傷を負い、緊急な医療処置が必要でした。ブッシュ政権が、私の祖国に彼の言うところの「民主主義を構築する」という名目で加えている暴力行為の中で私たちが被った非人間的な扱いについて、私たちの誰も決して忘れることはないだろうと思います。

本当の真実は、米国政府が私の家に暴力的に押し入り、私を拘束し、そして私が入っている刑務所の房の鍵を持っているのも米軍だけなのです。この事実を誤魔化すために、米国は、ハイチの司法制度を使うふりをしています。けれども、実際には、私の家を侵略したのは米軍兵士だけであり、この米軍兵士たちは逮捕状を持っておらず、米軍兵士たちが私に手錠を掛けてむりやり連れ去るとき、ハイチ警察は外の警察者で何もせず座っているだけでした。

ブッシュ政権の米軍海兵隊は、私と私の家族に対するこの暴力行為を実行したのは、私が米軍攻撃を計画し、私の祖国ハイチの治安と安定を脅かしているからだ、と言いました。

2004年2月29日に、私たちの憲法に則った大統領をむりやり排除したのが米国とフランス政府であったことを自分たちでもはっきり知っているくせに、どうしたらここまでシニカルになれるのでしょうか? 憲法に則った私たちの政府を追放するにあたり、元ハイチ軍と「死の部隊」を訓練しその武力を解き放つことで私たちハイチの安全を掘り崩したのは自分たちであることを知っているくせに、どうしたらここまでシニカルになれるのでしょうか?

米国政府が傀儡のラトゥルトゥー---実質的に首相として振舞っている---とハイチの司法制度を操り、私に偽の罪状を被せたのは、海兵隊が不法に私を拘束したあとのことです。この偽の罪状は、アリスティドとラヴァラの立憲政府に対して2003年12月5日「デモ」を行なっていた「学生反対派」と称する一団に、私が攻撃を仕組んだ、というものです。私は、その日にその出来事が起きるまで、それに関係もせず、また知りもしませんでした。私へのこうした非難は、この恥ずべき舞台の小さな行為に過ぎないことは明らかです。

いずれにせよ、ブッシュ政権とハイチにいるその軍隊が私を拘束したというのが事実であり、再び、私の刑務所の房の鍵を持っていて、私の釈放を命ずることができるのもブッシュ政権と米軍だけだというのが事実なのです。腐敗したハイチ人官僚に不正な賄賂を支払ったり、ハイチの司法が命じた罰金を払えば私が釈放される可能性はありますが、それでも、ブッシュ政権の上級政治レベルでの承認が必要なのです。

私が投獄されている間を通して、ラバラの政党に対する弾圧と暗殺の止むこと無いキャンペーンが続いていました。私たちの運動の中で信頼できる、近隣でよく知られた指導的役割を果たしている戦闘的な人々は、MIF(多国籍暫定部隊)と言われるところの統制と司令のもとにある軍事化された警察に暗殺されています。MIFは、実際の所、米軍海兵隊の指揮下にあるのです。私たちの運動の指導者たちは今も逮捕されたりまた身を隠したりしています。ジャン・ベルトラン・アリスティドを唯一の政党で合法的に選ばれたハイチ大統領と今も見なすラバラ運動の屋台骨を折ろうとする試みが進められているからです。

私が刑務所の房にむりやり入れられいる中、私たちの党の一部にシニシズムが見られます。弾圧と脅迫、暗殺の作戦により引き起こされたシニシズム。私には、これらの人々の恐怖がわかります。私自身、単なる個人の帝国と富という夢を築くために貧者が道具としてしか使われないのでないハイチを作ろうとする希望と大義を破壊しようと言う目的のキャンペーンの犠牲者だからです。

今もラバラとハイチの大部分を占める貧しい人々を代表すると考えるすべての人々に、米軍が私たちの祖国を最初に占領したときの教訓、そしてハイチの偉大な殉教者シャルルマーニュ・ペラルトを思い出すよう促したいと思います。ペラルトは誠意を持ってアメリカと和平を結び、占領に反対する武装抵抗を解散しました。その結果、アメリカの嘘と悪意の犠牲となったのです。彼は誘拐され暗殺されました。今日、ハイチの主権と正義を信ずるラバラ運動の多くの人々は、同様の運命を辿る危険を持っています。

この刑務所から、私は、今日ハイチの人々が苦しめられているこの不正に反対して挙げられた多くの声に希望を与えられています。私は、議員マキシーヌ・ウォーターズをはじめとする数え切れないほど多くの人々が、ハイチの人々との連帯に立ち上がり、流血を止め、外の世界に私たちが今日直面している真実と現実を知らしめようとしていることに感謝します。

ハイチの現状をめぐって嘘と真実とを区別すべく決然としていることについて皆さんに愛と感謝を送ります。私の祖国で貧困に追いやられた大多数の人々の権利を求める自由なハイチ人女性として、皆さんに私の祝福を送ります。

彼らは私の体を投獄することはできても、私の魂が知っている真実を投獄することは決してできません。最後の最後まで、私はハイチの正義と真実のために闘います。

アネット・オーギュスト ペティオンヴィル・パニタンティアリ、ハイチ

ハイチについて、本当に久しぶりに、一つご紹介します。米国がイラクでやっていること、イスラエルがパレスチナでやっていること、ロシアがチェチェンでやっていることにも通じる、ハイチ人「良心の囚人」からのメッセージです。

アネット・オーギュスト(ソ・アン)は、著名なハイチの歌手。海兵隊の一団が手術後の休養をしている家に押し入り、11人の友人と家族を拘留しました。拘留された人々は、このとき、手錠をはめられ連れ出されました。その中には、5歳と12歳の子どももいました。米軍は家を略奪しました。

ソ・アンの「犯罪」とは何だったか?滋養プログラムを組織し、ホームレスに食料を提供し、文化プログラムを上演し、ラバラを支持したこと(ハイチの人々の大多数と同じように)。2004年2月29日のクーデター以来、数千人ものハイチ人が、同様の「犯罪」で、殺されたと言われています。また、身を隠している人々も数千人います。

抗議のメールやfaxを、ハイチのポルトープランスの米国大使、米国国務長官、国務省ハイチデスク担当官に送って下さい。

駐ハイチ米国大使:
Ambassador James B. Foley U.S. Embassy, Port-au-Prince, Haiti phone: 509.223.7011 or 509.222.0200 fax: 509.223.9665 email: acspap@state.gov
http://usembassy.state.gov (for address and additional phones)

コリン・パウエル米国務長官
Colin Powell, U.S. Secretary of State fax: 202.647.2283 or 202.647.5169 phone: 202.647.5291 or 202.647.7098 email via: http://contact-us.state.gov/ask_form_cat/ask_form_secretary.html

米国国務省ハイチデスク担当:
Haiti Desk Officers, U.S. State Department:
Joseph Tilghman fax: 202.647.2901 phone: 202.647.5088 email: tilghmanjf@state.gov
Lawrence Connell fax: 202.647.2901 phone: 202.647.6765 email: ConnellLF@state.gov

例文:

Dear XXXX,

I am writing this letter to urge you to release immediately Annette Auguste (So Anne), who was illegally arrested by U.S. marines on Mother's Day and detained since then.

Freedom of speech, assembly and protection of property are no longer civil rights for Haitians, especially for Lavalas supporters. The U.S. soldiers are massively promoting this repressive political atmosphere, carrying out by themselves illegal raids, arrests, detentions and interrogations.

I call upon you to immediately release So Anne and investigate the surroundings of her "arrest". I urge you to stop supporting repressive regime and promoting initimidation and violence immediately.

Sincerely,
お名前

あまり知られていませんが、実状は米国のイラク侵略と非常に近いことが伺えます。関連する記事として、反戦翻訳団さんのアブ・グライブから中南米へ:合州国による虐待模様の地図が拡がってゆくも、ぜひお読み下さい。米軍の「拷問訓練所」、スクール・オブ・ジ・アメリカズをウォッチしている団体「SOAW」からの記事。

ハイチの歴史年表については、ハイチ年表(力作です)を、ラテンアメリカに対する米国の介入について多少整理し分析したものとしては、ラテンアメリカにおける帝国の歴史をご覧下さい。ハイチの背景についてはここここを、今回のクーデターについての簡単な整理とアリスティドの声明はここを、アリスティドへのインタビューはここをご覧下さい。また、ポルトープランスからの声については、ここをご覧下さい。

イラク派兵をはじめとする様々な問題について、色々な情報(へのリンク)がwww.creative.co.jpにアップされます。良心の囚人と言えば、日本国内では、反戦のビラを自衛隊宿舎に配った人たちが逮捕されたことについて、アムネスティ・インターナショナルは、この3人を「良心の囚人」とし、即時釈放を日本政府に求めました。憲法を無視して侵略戦争への荷担に自衛隊を派遣したことから予測されたような、市民的自由への弾圧が進行しています。

「自己責任論」について、http://d.hatena.ne.jp/shiraishi/20040521に面白い文章がありました。

また、次のような集会が予定されているようです。
 守ろう!平和といのち6・10集会
 自衛隊の即時撤退!STOP!有事法制
 とき◆6月10日(木)午後6時30分〜
 ところ◆赤坂区民センター(港区赤坂4−18−13) 
         (集会後のデモはありません)
 呼びかけ◆陸海空港湾労組20団体、市民緊急行動、キリスト者ネット、
      宗教者ネット(連絡先:航空連
 TEL.03(3742)3251 FAX03(5737)7819 HP:http://www.stop-yuji.jp)

なお、4月19日沖縄県名護市東海岸の辺野古で、おばぁやおじぃの座り込みが始まったとの連絡を受けました。辺野古に住む92歳の島袋ヨシさんは、昨年からボーリング調査が始まれば、自分は波の上に座ると言っておられました。さる5月26日ヨシさんは那覇防衛施設局の職員たちに「戦前戦後、何もないときも海のものを食べ、子どもや孫を成長させてきた。この海を埋立てて何の利益があるのか」と抗議しています。

沖縄全島から3000人の兵士がイラクに送られています。辺野古にあるキャンプ・シュワブは海兵隊の新兵の基地(3000人)ですが、この基地19歳以上の1700人がファルージャを含むイラクに送られています。イラク戦争とともに演習が激しくなっています。昨年11月訪れたとき、おばぁたちが爆発音に恐れを強めているとの話を聞いていました。

辺野古沖の基地は、普天間基地の単なる代替施設ではありません。強化され、新鋭化されるとのことです(辺野古弾薬庫からの弾薬の陸路輸送が海上輸送に合理化され、最新鋭のヘリが投入されるとのこと)。日本政府は住民や自然保護団体の要求に耳を貸そうとはまったくしていません。那覇防衛施設局が4月19日に着手したボーリング調査は、護岸工事のためなので環境影響評価(アセスメント)法の適用を受けないというごまかしのもとに強行しようとしているそうです。

4月19日からの座り込みは、瞞着政治と沖縄差別と強権的軍事支配と自然破壊に対する効果的な異議申し立てです。

詳細は、沖縄ジュゴン環境アセスメント監視団をご覧下さい。
2004年6月6日

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