ホンジュラス危機をめぐる米国とコロンビアの役割
2009年10月27日
ギャリー・リーチ
ColombiaJournal原文


アナリストたちの多くや主流派メディアの一部では、ホンジュラスの危機を米国政府がうまく解決できないのは、超大国たる米国が米州に行使してきた影響力が衰えつつあることの証左であるかのようにことが論じられている。ブラジルが断固として、ホンジュラスのクーデター政権の退陣および民主的に選ばれたマヌエル・セラヤ大統領の復帰を求めていることから、米州地域の勢力関係が変容していることがわかるというのである。けれども、そうした結論を出すのは時期尚早かもしれない。結局のところ、ロベルト・ミチェレッティ率いるクーデター政権が強情に政権に居座っている状況を考えれば、ホンジュラスでは、米国、そして米国の同盟国コロンビアの意図こそが通っているのであって、ブラジルおよび同盟左派政権のベネズエラとボリビアの主張が通っているのではないと論ずることができるからである。

『タイム』誌やロサンゼルス・タイムズ紙などをはじめ、ホンジュラス危機は、中米の問題に対する米国の影響力低下を示しているとする主張の多くは、オバマ政権が状況を解決できない点を指摘する。むろん、この議論では、オバマ政権と米国議会が実際にサラヤを大統領に復帰させたがっていることが前提となっている。しかしながら、6月29日のクーデター以後、米国政府が取った行動----さらに米国議員の多くが語った言葉----は、この前提を覆すものである。ホンジュラス軍が大統領を拘束し、無理やり国外退去させたにもかかわらず、オバマ政権はセラヤ政権転覆に軍事クーデターという用語を使わなかった。サラヤ追放を軍事クーデターと呼ぶならば、オバマ政権は即座にホンジュラスに対する軍事援助と経済援助を停止しなくてはならなくなる。米国は、結局、クーデター政権に対する軍事援助と経済援助を停止したが、大使は帰国させなかった。

また、やはりクーデター後、世界中のほとんどの国が民主的に選ばれた大統領の無条件政権復帰を求めたのに対して、オバマおよびヒラリー・クリントン国務長官はホンジュラス危機を交渉で解決するよう呼びかけた。セラヤがベネズエラ大統領ウーゴ・チャベスと密接な関係にあったため、米国政府はセラヤの大統領復帰に熱心ではなかった。米国が民主主義を支持するかのように思わせるために注意深く文言は選んでいたものの、交渉を支持したり断固たる態度を取らなかったりしたところから、オバマ政権には、無条件で政権の座を明け渡すようクーデター政権に圧力をかける気はまったくないことが伺える。8月、セラヤ大統領は、米国がホンジュラスの民主主義を防衛することに後ろ向きであることを指摘して、「クーデター政権を5分で終わらせるためには、米国が圧力を強めさえすればよい」と語っている。

一方、議会の共和党議員の中には、あからさまにクーデター政権を支持し、ホンジュラス危機に対するオバマ政権の対応を自分たちの意図通り方向付けようと強力に働きかけた。西半球に関する下院小委員会の委員でもある共和党有力者でフロリダ州選出のコニー・マック議員は、7月にホンジュラスを訪れ、ミチェレッティと面会している。マックはそこで、ホンジュラスは「我々米国がウーゴ・チャベスのような西半球の『ヤクザ政権ども』の味方になることを望んでいない」と宣言した。10月上旬、米国共和党議員がさらに4人ホンジュラスの大統領府にミチェレッティを訪れて、クーデター政権を支持する姿勢を示した。

もう一国、ホンジュラスのクーデター政権に圧力をかけたがらない国がある。米国政府の同盟国コロンビアである。実際、ウリベ政権はクーデター政権の使節団を歓迎した。また、使節団員によると、コロンビア政府高官は、ホンジュラスの新政権に支持を表明したという。さらに、過去10年に米国が提供した60億ドル以上の軍事援助によりコロンビア軍は強化されたため、「汚い戦争」を遂行するために右翼準軍組織「死の部隊」に頼る必要は減っている。その結果、ウリベ政権はこの数年でコロンビア準軍組織の多くを「解隊」することができた。今や、米軍の支援を受けたコロンビア軍が、人権侵害を直接犯しているのである。一方、「解隊」されたことになっている準軍組織は、今や、他国の裕福な土地所有者や産業家を守るためにサービスを提供できるようになった。まさにホンジュラスでは、それが実行されている。コロンビアの準軍組織40以上がホンジュラスに輸入され、右翼クーデター政権の黙認のもとで、エリート層の経済利益を守っているのである。

この間、ブラジルはこの危機に対し、地域の主要アクターとして振舞おうとしてきた。ブラジル大統領イナシオ・「ルーラ」・ダ・シルバは、セラヤの復帰を率直に求めた。ベネズエラのウーゴ・チャベスやボリビアのエボ・モラレスなど、南米の他の国々の左派大統領も同じだった。9月21日、秘密裏にホンジュラスに帰国したセラヤは、首都テグシガルパのブラジル大使館に避難した。ブラジル大統領ルーラがクーデター政権に、大使館に侵入しないよう、また、外交特権を尊重するよう警告したため、セラヤはホンジュラスに留まることができた。

このようにブラジルが断固たる態度を示している一方、米国が何もしていないように見えることから、ホンジュラスの危機は米国政府の中米に対する影響力の衰えを示すものだと指摘する人々が増えたのである。けれども、ブラジルの努力はこの間ほとんど効を奏さず、ホンジュラスのクーデター李政権は頑迷に権力を握り続けている。したがって、オバマ政権がどうやらセラヤの無条件大統領復帰を望んでいないようであること、クーデター政権が権力を握り続けていることは、実際にホンジュラスで政治的目的を達成しているのはオバマ政権であることを示しているのである。その間、セラヤの追放を適当に批判して自分は民主主義の擁護者であるかのように見せかけながら。

ホンジュラスの危機は、米国の中米における影響力が大幅に減じたことを示す明確な証拠とはなっていない。過去何年かで影響力の質が変わり、残忍な軍事独裁政権の支援ではなく「民主主義促進」政策により中米政権をワシントン・コンセンサスに確実に従うよう仕向けてきただけであり、対応してホンジュラスの例が示すように、米国の政治的および経済的利害に好都合な場合にはただ何もしないことにしただけである。中米地域に対する米国政府の影響力をより正確に計る尺度は、米国と同盟関係にある右翼政権が暴力的に追放されたときに訪れるだろう。そのような危機に対して米国とそのイデオロギー上のお仲間がどう反応するかを見れば、私たちは、正確に、ホンジュラスをめぐって米国政府が何もしていないのは、影響力が減じたためなのか、単に効果的な戦略を採用しているためなのかがわかるだろう。


■ 辺野古通信

辺野古通信ご覧ください。



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     ※毎日時間が変わりますのでご注意ください。
 場所  京都大学吉田南総合館 共南11教室
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益岡賢 2009年11月13日

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