プラン・コロンビア:アフガニスタンでの新たな軍事戦略?
2009年3月30日
ギャリー・リーチ
ColombiaJournal原文


アフガニスタンに駐留するNATO主導の連合軍が再び力を取り戻してきたゲリラとの戦いにもがき、ケシ栽培が増加する中、米国統合参謀本部長のマイケル・ミューレン米国海軍大将は、先日、米国が現在コロンビアで採用している対ゲリラ作戦と対麻薬作戦のモデルをアフガニスタンに導入すべきだとの見解を示した。「プラン・コロンビア作戦展開の大成功がどのようにして実現されたかを見ることで、世界各地で我々は多くのことを学べると思う」とミューレンは語り、さらに、コロンビアで使われた対ゲリラ戦略をアフガニスタンでも使うことができると述べた。しかしながら、プラン/コロンビアの「展開の成功」をべたぼめする中で、ミューレンは、米国が後押ししたこの作戦により多数のコロンビア人が負の影響を被っている点を、自分の都合にあわせて無視している。

当然のことながら、ミューレンをはじめ、プラン・コロンビアのモデルをアフガニスタンに移入せよと主張する面々は、この数年、コロンビアの人口の集中する都市部で治安が改善され、殺人や誘拐が劇的に減ったことを指摘する。実際、それら治安改善からかなりのコロンビア人が恩恵を受けているが、ミューレンをはじめとする面々は、「治安」の確立がもたらした人道危機、そしてプラン・コロンビアが対麻薬作戦としては完全に失敗したことを都合よく無視している。

国境なき医師団によると、コロンビアはこの数十年、世界でももっとも報道の少ない人道危機を経験してきた。この人道危機の中心にあるのは、強制追放の問題だった。国内避難民を400万人近く抱えるコロンビアは、スーダンに次ぎ世界第二の国内避難民数である。プラン・コロンビアを支持する人々はいつも都市部の「治安」が改善されたことを指摘するが、批判的な人々は、特にここ数年、コロンビア軍が農村部で進める強引な対ゲリラ戦略のためもあって、国内避難民危機は悪化したことを指摘する。2008年の上半期6カ月間で、27万人以上が暴力的に自宅から追放された。2007年の同時期と比べて41パーセントの増加である。人権と追放のコンサルタンシー(CODHES)の代表ホルヘ・ロハスは、「毎日、平均1503人が家を追われています」と述べる。下半期にも同様のペースで強制追放が続いたならば、2008年は過去20年以上の中で、最悪の強制追放数を記録する年となる。

コロンビア政府の治安戦略に見られるもう一つの問題は、失踪の劇的な増加である。とりわけ、政府の政策に批判的な市民社会のメンバーの間で失踪者が増えている。コロンビア検察は、現在、2008年に失踪した1015人のケースを調査中であるが、この失踪者数は2007年の4倍、2005年と比べると1300パーセントの増加である。コロンビア検察庁によると、調査中のケースのうち90パーセント以上で、コロンビア政府軍のメンバーが容疑者となっている。

オブザーバの多くが憂慮しているのは、軍が関与した失踪だけではない。ここ数年で、コロンビア政府軍による超法規的処刑の数も激増している。「超法規的処刑と不処罰を監視する国際使節団」によると、2002年から2007年の間にコロンビア軍が犯した超法規的処刑のうち少なくとも955ケースで誰も処罰を受けていないという。その前の5年間における577ケースから2倍近い増加である。多くの場合、殺されるのは民間人で、軍事作戦の際に敵の死者数を水増しするために、軍は民間人の遺体をゲリラの死者として示すのである。

さらに、対麻薬作戦としてのプラン・コロンビアの「成功」について言うと、2000年にプラン・コロンビアが始まったときに宣言された目標は、5年間でコカ—この植物の葉にコカインの原料が含まれる—栽培の半減だった。しかしながら、昨年、政府説明責任局(GAO)が昨年発表した報告書は、プラン・コロンビアはその目標に近づきさえしていないと述べている。実際、GAO報告書によると、プラン・コロンビアが実施された最初の6年間で、コロンビアでのコカ栽培は15パーセント、コカイン生産は4パーセント増加している。

プラン・コロンビアのこうした記録を考えるならば、ミューレンが示唆するようにアフガニスタンで同じモデルが適用されるならば、人口の多い都市部で治安が改善され暴力が減るだけでなく、大規模な人権侵害と大規模な難民危機、記録的なケシ栽培ももたらされる可能性がある。


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益岡賢 2009年4月29日

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