世界一の戦争屋

ギャリー・リーチ
2005年2月21日
コロンビア・ジャーナル原文


ブッシュ政権によると、アンデス地域を不安定化しているのは、ベネスエラ大統領ウーゴ・チャベスがロシアから武器を買いたがっていることであり、ワシントンがこの5年間にコロンビアに提供してきた30億ドルの軍事援助ではないらしい。同様に、中東を不安定化させているのは、シリアが純粋に防衛用の対空ミサイルを入手しようとしていることであって、イスラエルに対する米国の年間10億ドルの軍事援助ではないらしい。核について言うと、イランが核兵器を開発している証拠はないにもかかわらず、中東地域をさらに不安定化させているのはテヘランの政権であり、ブッシュ大統領が将来イスラエルがイランを攻撃した場合にイスラエルを支持すると約束したらしいことではないらしい。一方、北朝鮮が核兵器を開発するために核不拡散条約(NPT)から撤退したことにより北朝鮮は「無法国家」とされたが、ワシントンがミサイル防衛システムを構築するために対弾道弾ミサイル条約から撤退して宇宙の武装を始めようとしていることは、どうやら各国から米国が「無法国家」と呼ばれることを正当化はしないらしい。

2004年12月、ブッシュ政権はワシントンDCにあるロシア大使館に抗議の手紙を送ると同時にロシアの国防相と外務相に、モスクワがベネスエラにAK−47の売却を決定したことに憂慮を表明した。チャベス大統領による武器購入は隣国コロンビアに脅威となり地域の軍拡を促してアンデス地域を不安定化するとブッシュ政権は主張した。けれども、ブッシュ政権は、米国の巨大な資金を受けてコロンビアが最近軍事力を強化していることが地域の不安定化をもたらすのではないかという点には注意を向けていない。

ある米国国務省報道官は次のように述べる:「ベネスエラが様々な武器を大量に購入しようとしているのは極めて問題である。私たちは、ベネスエラがこうした武器を購入する際には隣国に相談すべきであると考えている」。明らかな疑問が思い浮かぶ:過去5年間にコロンビア政府がワシントンから大量の軍事援助を受け取っていたとき、米国はコロンビア政府に、チャベス大統領をはじめとするアンデス地域の指導者に相談すべきであると示唆したことがあっただろうか? 答えは完全にノーである。

ブッシュ政権はまた、2004年12月コロンビアがあからさまにベネスエラの主権を侵害した際にコロンビアを支持することで、アンデス地域の不安定化を増大させた。駐コロンビア米国大使ウィリアム・ウッドは、米国はウリベ政権を「100%」支持すると述べた。コロンビア政府が当初FARCゲリラの代表ロドリゴ・グランダはコロンビアのククタ市で逮捕されたと嘘を就いたことを認めたあとでさえである。実際には、コロンビア政府はベネスエラの首都からグランダを誘拐するために金を払って傭兵を雇い、彼をコロンビアに連れ去ったのである。

ブッシュ政権の敵対的レトリックには、ベネスエラのチャベス大統領を否民主的と繰り返し呼ぶことも含まれている。2002年4月民主的に選ばれたチャベス政権を軍事クーデターが一時的に転覆した際、ブッシュ政権が軍政をただちに承認したことを考えると、こうした批判には偽善の煙が立ち上っている。このクーデターに米故国自身が関与していた可能性については言わないでおくにしても。西半球でワシントンの指示に従いクーデター政府をただちに承認した唯一の国がコロンビアだったことは驚くにあたらない。

ベネスエラが米国にとってまったく軍事的脅威ではないことは明らかである。しかしながら、ラテンアメリカに対する米国軍事介入の恐ろしい歴史を考えると、ブッシュ政権の反チャベス・レトリックと米=コロンビアの密接な軍事関係から、チャベス政権はワシントンを恐れる膨大な理由があることがわかる。それにもかかわらず、ブッシュ政権官僚たちは我々に、米国がベネスエラに脅かされていると信じさせようとしている。ベネスエラが唯一手にしている武器といえば、貧しい人々を助ける社会政策と、ラテンアメリカでの米国の帝国主義を批判する言葉だけであるにもかかわらず。

ブッシュ政権は、ロシアによるベネスエラへの武器売却だけでなく、モスクワが最近発表したシリアへの対空ミサイル売却意図をも非難している。米国はロシアに経済制裁を加えると脅している。というのも、米国はシリアをテロリズム支援国家とみなしているからである。ブッシュ政権は、はるかに強力なイスラエル軍による攻撃行為から自国を防衛したいというシリアの正当な憂慮を考慮していない。2003年9月、イスラエルのエージェントはシリアの首都ダマスカスで自動車爆弾を爆発させ、またイスラエル空軍は繰り返しシリアの主権を侵害してパレスチナ人訓練キャンプとイスラエルが称するところを爆撃している。

ブッシュ政権によると、シリアがイスラエルのあからさまな領空侵害から自国を防衛するために防衛専用の対空ミサイルを購入することは、中東地域への脅威であるという。シリアが中東地域の混乱に貢献していることはあり得るが、ブッシュ政権は、年間10億ドルもの軍事援助を米国がテルアビブに提供し、またイスラエルが繰り返し米国が提供した武器を使ってシリアやレバノン、占領地といった隣国を攻撃していることもまた重大な不安定化要因であるということは認めようとしない。

報道によると、最近、ブッシュ政権はまた、イスラエルが米国提供の兵器でイランを攻撃する際にはイスラエルを支持することを表明したという。ブッシュ政権がイランに向けた脅迫的レトリックは、ベネスエラやシリアに向けたものと同様、イランを国際的なパーリア(のけ者)にして体制変更をもたらそうと意図したものである。ブッシュ政権は繰り返し、米国政府関係者はテヘランが核兵器を開発する意図を持っていると信じているため、イランを核不拡散条約(NPT)に違反していると非難してきた。驚いたことに、ワシントンがイラン政府を脅迫しているのは、イラン政府が核兵器を開発しているからではなく、核兵器を開発するかも知れないからである。これは明らかに、ブッシュ政権が導入した「予防攻撃」を極端にまで押し進めたものである。

米国政府関係者はイランがウラニウムを強化しようと計画していることに最も憂慮している。これは核エネルギーのために必要だが、核兵器にも使うことができる。しかしながら原子力発電所の建設もウラニウムの強化も、NPT違反ではない。実際、イランの核エネルギー計画をもっと丁寧にモニターしたがっている国際原子力機構は、テヘランはNPTに違反していないと明言している。さらに、NPTの第4条は、核エネルギー開発は各国の「不可譲の権利」であり何事もそれを侵害することはできないと述べている。

イランがNPTに違反していないという事実は、米国市民と世界にイランはNPTに違反していると信じさせようとするブッシュ政権のプロパガンダ・キャンペーンを押しとどめるものではない。反イランの宣伝を続ける一方で、ブッシュ政権は自らNPTに違反し、「ミニ・ニューク」や「バンカーバスター」と呼ばれる新世代の核兵器を開発している。これらの新兵器は、諸国に「核兵器やその他の核爆発装置を製造したり入手したりしない」よう求めるNPT第2条に違反している。

ブッシュ政権はまた、NPTの第6条が規定する責務、核軍縮に尽力すべき責務を遵守していない。ワシントンのプロパガンダはイランが核兵器開発の意図を持っていることが中東地域の脅威となっているというが、米国のイラク侵略と占領の不安定化効果やイスラエルが行いうるイラン攻撃を声高に支援していることの不安定化効果は認識し損ねている。

ブッシュ政権の偽善はまた北朝鮮との関係でもはっきり示されている。米国は新世代核兵器を熱心に開発しているにもかかわらず、ブッシュ政権は核兵器計画を持っていることを理由に北朝鮮を政治的に孤立させようと熱心に努めてきた。しかしながら、イランとは異なり北朝鮮はNPTから2003年4月に脱退したためそれにもはや拘束されない。その結果、北朝鮮は、イスラエルやインド、パキスタンとともに核兵器を所有する非NPT国家のカテゴリーに入る。

それにもかかわらず、どうやらイスラエルとインドとパキスタンは米国の仲間だから核兵器を持つことは許されるとブッシュ政権の論理は進むらしい。それに対して北朝鮮は以前から米国の敵であり、ワシントンのますます強まる脅迫レトリックと国境の南に駐留する3万人の米軍兵士および何十機もの米国空軍爆撃機に晒されている。

ブッシュ政権は、北朝鮮がNPTから脱退したあとも、核兵器の開発を阻止しようとしてきたが、米国が対弾道弾ミサイル条約から撤退してミサイル防衛システムを構築していることを考えると、これは偽善にすぎない。ブッシュ政権は北朝鮮を核兵器計画によりアジア地域を不安定化していると非難しているが、米国は宇宙への兵器配備を含む対ミサイル・システムを開発している。防衛計画立案者が提案するように地球の軌道に米国が兵器を配置すれば、地上の一地地域が不安定化されるばかりでなく、地球全体そしてそれ以上の範囲が脅威に晒されることになる。

多くの国にとって世界的核軍縮は望ましい目標だが、米国は、自らの新世代核兵器を開発し他の核開発国の一部を無視しながら選択的に一部を標的とすることで、世界的核軍縮の可能性の足を引っ張っている。同時に、世界のあらゆる隅々にわたって国々----とりわけ米国の世界的軍事・経済計画に批判的な政権----を脅しているのはブッシュ政権である。ブッシュ政権が標的とする諸国について憂慮すべき妥当な理由があることもあるが、それらの国々が米国のお仲間や米国自身よりも大きな不安定化要因であることはない。

ブッシュ政権の偽善は、米国が述べる無法国家----ベネスエラ、シリア、イラン、北朝鮮----を標的としながら、あきらかいに同様に非民主的で抑圧的なサウジアラビアやエジプト、ウズベキスタン、カザフスタン、アゼルバイジャンの政府を支援していることからも明らかである。ブッシュ政権の軍事主義的レトリックと行動は世界中で米国の海外政策を国際関係における巨大な不安定化要因と見なす人々の数を増加させており、また、はっきりと米国自身が世界第一の戦争屋であることを示しているのである。


1987年12月7日、「国際テロリズムを予防する手段、テロリズムの背景にある政治経済的要因の研究、テロリズムを定義し、それを民族解放闘争と区別するための会議の開催」に関する国連総会の決議42/159は、賛成153反対2で採択されました。反対2は、米国とイスラエルでした。「対テロ」を声高に叫ぶ米国は、実際にテロリズムを禁止し予防する議論を開始しようと世界中が言うときには、反対します。

●アムネスティ・インターナショナルの緊急アピール●

UA ナンバ―: UA 20/05
国際事務局発信日: 2005年2月9日
AI INDEX: ASA 22/002/2005
期限: 2005年3月4日
国名: 日本
ケース: 強制送還/拷問、虐待のおそれ
対象者: カザンキラン一家、エルダル・ドーガン一家

カザンキラン一家の仮放免は2月24日まで、ドーガン一家は2月21日まで(注:更に1ヶ月延長)延長されました。日本政府もカザンキラン一家の第3国出国の可能性を示唆し、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)がその調整を行っています。

エルダル・ドーガン氏の難民申請は司法審査中で2月後半に判決が出る予定です。敗訴した場合、トルコへ強制送還される可能性が十分にあります。日本の政府関係者らが現地の警察と共にトルコのドーガン氏親族を尋問しました。ドーガン氏やその家族がトルコヘ強制送還された場合、容疑不在のままの拘束、拷問を受けるおそれがあります。

支援者らの尽力により、この件に対する一般の関心が高まり、日本政府の対応も改善しつつあります。高校の先生が中心となってカザンキラン一家とドーガン一家に難民認定を求める署名を63000筆あまりも集め、入国管理局に提出しました。

東京入国管理局は1月24日にカザンキラン一家の仮放免を1ヶ月延長しました。1月25日には、日本の大臣が庇護の問題に言及することは珍しいのですが、この決定は人道上の配慮にもとづくものと法務大臣がマスコミに語りました。同日、法務省は書面で1月18日のUNHCRが難民と認めた二人のクルド人の強制送還を非難するUNHCRの意見に対する反論をUNHCRの日本事務所に送付しました。1月26日には首相が参議院での答弁の中で強制送還を擁護する発言をし、残された家族はUNHCRにより第3国に再定住するであろうと述べました。

強制送還された二人はこれまで当局から迫害を受けたとの報告はありません。長男は兵役が義務付けられているため徴兵されました。日本に残された家族は連絡を取るのに苦労しています。

<行動要請>
これまでご協力いただき、ありがとうございました。引き続き英語またはあなたの母語で以下のアピールを送って下さい:
・上記二家族の仮放免が延長されたことに対し、歓迎の意を表して下さい;
・日本が批准している難民条約および拷問等禁止条約にもとづき、深刻な人権侵害を受けるおそれがある地域へいかなる人も強制送還してはならないことを日本政府へ要請して下さい;
・エルダル・ドーガン氏らトルコ国籍クルド人を、拷問や人権侵害を受ける可能性があるトルコへ送還しないよう要請して下さい。

宛先: 法務大臣 南野知恵子
住所: 100-8977千代田区霞が関 1-1-1 法務省
E-mail:  webmaster@moj.go.jp (法務省ホームページ)
Fax: (03)3592 7088、または(03)5511 7200
要請文の書き出し: 法務大臣 南野知恵子 様

宛先: 外務大臣 町村信孝
住所: 100-8977千代田区霞が関 2-2-1 外務省
E-mail:  webmaster@mofa.go.jp (外務省ホームページ)
Fax: (03)5501 8239
要請文の書き出し: 外務大臣 町村信孝 様

アピールのコピーの送付先:
朝日新聞
住所:104-8011 中央区築地5-3-2 朝日新聞社 
Fax:(03)3545 0285 (社会部)
  (03)3593 0438 (司法記者クラブ)

読売新聞
住所:100-0004 千代田区大手町1-7-1 読売新聞社
Fax:(03)3245 1277 (社会部)
  (03)3217 8247 
E-mail:dy@yominet.ne.jp

PUBLIC AI Index: ASA 22/002/2005
09 February 2005

Further Information on UA 20/05 (ASA 22/001/2005, 21 January 2005) - Fear of Forcible Return/Fear of torture or ill-treatment

JAPAN Erdal Dogan (m) and his family ]
Zeliha Kazankiran (f) ]
Hatice Kazankiran (f) ] Turkish Kurds
Mercan Kazankiran (f) ]
Safiye Kazankiran (f) ]
Mustafa Kazankiran (m)]

The Kazankiran family have had their permission to remain in Japan extended to 24 February, while Erdal Dogan and his family may now remain until 21 February. The Japanese government have indicated that the Kazankiran family will be resettled in a third country, and the United Nations High Commissioner for Refugees (UNHCR) is working towards this.

Erdal Dogan's application for asylum is still under consideration and a final decision is to be issued later in February. If his application is rejected, he and his family are liable to be forcibly repatriated to Turkey. Officials from the Japanese Embassy have interviewed his family in Turkey, with the help of local police. If he and his family are forcibly returned, they risk being detained without charge, and tortured.

Campaigning by human rights activists, including the UA network, has raised the public profile of these cases, and may have contributed to the Japanese government's improved treatment of the families. A local high school teachers' group collected 63,000 signatures on a petition calling for the Kazankiran and Dogan families to be given refugee status, and handed this to the Immigration Bureau.

The Tokyo Regional Immigration Bureau extended the Kazankiran family's stay on 24 January, after interviewing them. It is very unusual for Japanese government ministers to speak publicly about asylum issues, but on 25 January the Minister of Justice told journalists that the decision on the Kazankiran family had been made on humanitarian grounds. The same day, the Ministry of Justice unexpectedly made public a written statement it had sent to the Japan office of the UNHCR, presenting its counter-argument to the UNHCR's criticism of the 18 January deportation of Ahmet Kazankiran and his son Ramazan, who had been recognised as refugees by the UNHCR. The following day, the prime minister defended the deportation during a speech to the upper house of Japan's parliament but also indicated that the rest of the family might be resettled in a third country by the UNHCR.

Ahmet and Ramazan Kazankiran have not faced any persecution from the authorities since they were returned to Turkey. Ramazan Kazankiran has been conscripted to fulfil his compulsory military service. The men's family in Japan have been able to contact them, but with some difficulty.

Many thanks to all who took action on this case. If possible, please send a final round of appeals, in English or your own language:
- welcoming the decision to extend the permission to remain in Japan that has been granted to Erdal Dogan, his family and the five members of the Kazankiran family;
- reminding the authorities that Japan is a party to the UN Refugee Convention and the Convention Against Torture, which prohibit the return of any person to a country where they would be at risk of torture;
- urging the authorities not to return Erdal Dogan and the other Turkish Kurds to Turkey, where they would be at risk of torture and other serious human rights violations.

APPEALS TO:

Minister of Justice
Minister NOONO Chieko
Ministry of Justice
1-1-1 Kasumigaseki, Chiyoda-ku,
Tokyo 100-8977, Japan
Fax: +81 3 3592 7088

+81 3 5511 7200 (via Public Information & Foreign Liaison Office)
Email: webmaster@moj.go.jp
Salutation: Dear Minister

Minister for Foreign Affairs
Minister MACHIMURA Nobutaka
Ministry of Foreign Affairs
2-2-1 Kasumigaseki, Chiyoda-ku
Tokyo 100-8919, Japan
Fax: +81 3 5501 8239
Email: webmaster@mofa.go.jp
Salutation: Dear Minister

COPIES TO:
National Newspaper
Asahi Shimbun
5-3-2 Tsukiji, Chuo-ku,
Tokyo 104-8011, Japan
FAX: +81 3 3545 0285/3593 0438

National Newspaper
Yomiuri Shimbun
1-7-1 Ohtemachi, Chiyoda-ku
Tokyo 100-0004, Japan
Fax: +81 3 3245 1277
+81 3 3217 8247 (newsroom)
Email: dy@yominet.ne.jp (newsroom)

and to diplomatic representatives of Japan accredited to your country.

PLEASE SEND APPEALS IMMEDIATELY. Check with the International Secretariat, or your section office, if sending appeals after 24 March 2005
益岡賢 2005年2月24日

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