永久占領?

ウィリアム・ブルム
CounterPunch原文
2003年11月8日


マレーシアのマハティール・モハメド首相が最近「ユダヤ人がこの世界を代理人を使って支配している」と宣言し、ムスリム国家に、「数百万人のユダヤ人に敗北させられる」ことを避けるために団結するよう呼びかけたとき、かれは、西洋世界から、反ユダヤ主義だとして大きな批判を浴びた。しかしながら、同じ演説の中で、マハティールは同胞のムスリムに対してはるかに辛辣で、ムスリムを遅れた人々と呼び、宗教的迷信に力を奪われ内部紛争で衰弱していると批判していたことは、ほとんど曖昧にされてしまった。けれども、西洋の誰一人として、彼を反ムスリムと非難しはしなかった。そして、米国上院が---満場一致で---(彼のユダヤ人に関する発言のため、ムスリムに対する発言のためではない)マレーシアへの軍事援助制限を採択したとき、マハティールを批判した者たちの誰が、この決議はユダヤ人の影響力に関するマハティールの発言にいささかの信憑性を与えたと認めたであろう?

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パット・ロバートソン尊師は、最近、国務省への核攻撃を提唱した。「もしフォギー・ボトム[国務省がある]に核兵器を持ち込めるならば」、「それが答えになると思う」と彼はラジオで語った。ムスリムの大臣が---あるいは誰であれムスリムが---同じことをラジオで---あるいは私的な会話で---言ったと想像してみよう。今この時代に、影響力のある保守的クリスチャンやユダヤ人以外の人間が、同じことを言ったと想像してみよう。その結果を想像してみよう。

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ジョージ・W・ブッシュは最近、自分の西半球イニシアチブ特使オットー・レイクに、「グレナダでの民主主義回復」20周年記念式典に出席する使節団を率いるよう指名した。レイクは73人を殺した航空機爆破を行なったテロリストを賞賛した人物で、1983年10月にグレナダで起こったことが実際には米国が誰にとっても脅威ですらない政府をまた一つ転覆したことで、それを今日のイラク侵略が起こるまでは比類のなかった嘘のキャンペーンで塗り込めたことは全く十分にひどいことだった。けれども、「グレナダ民主主義回復」は、次のようなものであった:1984年末、元首相ハーバート・ブレーズが首相に選ばれ、ブレーズの政党が議会15議席のうち14議席を獲得した。ブレーズは、侵略後、米国に「我々は、心の底から感謝する」と述べていた、レーガン政権のお気に入りだった。議会で唯一野党議席を獲得した候補は、「外部勢力による八百長と選挙干渉」があったと述べ、議員にはならないと発表した。その1年後、ワシントンを拠点とする西半球問題委員会は、人権侵害に関する年次調査の一部として、グレナダについて次のように述べている。


囚人が殴打され、医療処置を拒否され、弁護士に会うことなしに長期間閉じこめられているという信頼できる情報が出ている。グレナダの、新たに米国から訓練を受けた警察隊は、残忍さ、恣意的逮捕と権威の濫用で悪名を馳せている。


さらにこの報告は、音楽だけを流すラジオ番組が不快だとして閉鎖され、米国が訓練した対ゲリラ部隊が市民権を蝕んでいると付け加えている。1980年代の後半までに、政府は海外から輸入された多くの本を没収していた。その中には、グレアム・グリーンの『ハバナの男』や『ネルソン・マンデラの演説』といった本が含まれていた。1989年4月、政府は80タイトル以上の輸入禁止本リストを公表した。その4カ月後、ブレーズ首相は議会を閉鎖した。彼を批判する者たちが「ますます権威主義的になってきたスタイル」と呼ぶ態度のために、議会が不信任決議を行おうとしたことを阻止するためであった [1]。

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つい最近、一見奇妙な論争が、ホワイトハウスと大多数の議員との間で起きた。議員の側には多くの共和党員も含まれていた。イラク再建基金の性質をめぐっての論争である。議会は、基金のかなりの部分は貸付というかたちにすべきだと主張した。一方、ブッシュ政権はすべて寄付金であるべきと主張し、議会がイラクに金の返済を求めるならば、予算法案を拒否するとまで脅した。最終的にホワイトハウスが主張を通した。けれども、これらはそもそも何だったのだろう?ブッシュギャングたちが、イラクの人々により親切にしたがっていたということだろうか? それは、同じイラクの人々を爆撃し、侵略し、占領していることと合致しない。そうではなく、これは恐らく、ブッシュ政権がイラクを立ち去る意図を持っていないことを示すもう一つの出来事なのだろう。返済義務のある貸付は、米国占領当局が手にするもので、貸付である場合、ハリバートンやベクテルをはじめとするジョージやディックのお仲間たちに与える資金が減る。

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現在のイラクの泥沼状況と悪名高きベトナムの泥沼状況との比較が最近ますます多くなされている。けれども、ある決定的な違いが指摘されてこなかった。すなわち、ベトナムでは、米国は一時的な目的を持っていたが、イラクでの目的は恒久的なものである。ベトナムでは、米国による侵略の目的は、他のアジア諸国に資本主義開発モデルへの代替を示すような国ができる可能性を粉砕することにあった。これを、親米政権を据えることで達成するのが理想だった。親米政権を据えて実現することはワシントンにとって無理であることがわかったが、ベトナムを爆撃しナパームを投下し枯葉剤を投下したことで、使命は達成したとして米国はベトナムを去ることができた。イラクでの目的は、一連の帝国のニーズのためにイラクを植民地化することであり、それゆえ今後近い将来イラクを撤退する計画は見られない。

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クリントンの元参謀長ジョン・ポデスタは新たなシンクタンク「アメリカ進歩センター」を創設した。ワシントン・ポスト紙 [2] は、これを「保守的なヘリテージ財団に対するリベラル派の回答」と述べている。この、ネオコン(政治的スペクトラムの極右にいる)とリベラル(中央からほとんど左ではない)がイデオロギー的な両極を構成しているという考えは、主流派メディアと一般の人々の間に非常によく見られる誤解である。それゆえ、ネオコンとリベラルが出てくるラジオやテレビ番組は、自らを「バランスのとれた」ものと考える。けれども、保守---とりわけホワイトハウスとペンタゴンに助言したりそこで職を得る新種の保守---の反対派は左派急進主義者、進歩主義者あるいは社会主義者である。リベラル派はしばしば、とりわけ外交政策では、極左のグループによりも、はるかに保守に近い。この観点からは、メディアは保守偏向かリベラル偏向かという、いつまでも続けられる議論は、あまり意味のあるものではない。


注:

1. 詳細については、ウィリアム・ブルム 「Killing Hope: US Military and CIA Interventions since World War II」 第45章を参照。

2. Washington Post, November 5, 2003, p. C3.


少し拡散した記事ですが、「それゆえ、ネオコンとリベラルが出てくるラジオやテレビ番組は、自らを『バランスのとれた』ものと考える」ことを巡る議論、「メディアは保守偏向かリベラル偏向かという、いつまでも続けられる議論は、あまり意味のあるものではない」という点には大いに共感します。「両論併記」とは自称リベラル大新聞がよく主張することであり、自称不偏不党の公共TV放送が利用することでもあります。不思議なことに、両論併記すると称するこうしたメディアから、イラクの人々の声は全く聞こえてきませんが。

人種差別を主張し不法侵略を主張し憲法を無視する見解と、人種差別撤廃を主張し法に従い平和的な紛争解決を主張し憲法に従うべきと主張する見解とを、「両論併記」で並べられるのは困りものです。自民党と民主党が政治的スペクトラムの両端にあるかのように主張されるのも、やはり困ります。最悪と最悪よりちょっとマシという選択肢しか無くなるならば、楽しさも自由も知性も理性も民主主義もカッコ良さも無くなっちゃう。
益岡賢 2003年11月11日

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