議員歳費削減でお茶を濁すな!


 議員秘書絡みの事件が相次ぐ中、国会議員の歳費削減が今国会で実現しようとしている。歳費削減を主張する側は、削減理由について「議員歳費を10%カットする」という自民党の公約実現と議員自身の痛みの甘受にあると説明しているが、私は政治改革についてこの程度の事柄しか議論されないのかと、あきれている。
 公約実現を言うのなら、企業・団体献金を即刻禁止すべきだ。そもそも同献金は政治腐敗の温床であり、政治過程を不当にゆがめるという重大な弊害を抱えている。95年1月施行の改正政治資金規正法の付則10条は、法律施行5年後の「寄付のあり方についての見直し」を規定した。マスコミも国民もこれが00年からの企業・団体献金全面禁止を意味し、「国会公約」と理解してきた。
 だが、共産党を除く各政党は企業・団体献金と政党交付金の「二重取り」を続けている。
 政党や議員が「痛み」を受けるというのなら、年間310億円超の税金が費やされている政党交付金を廃止すべきだ。政党助成法は「民主主義のコスト」を賄うとして導入されたが、つじつま合わせに過ぎない使途報告によっても、調査研究費はわずか2%にすぎない。「民主主義のコスト」としては、すでに議員歳費、立法事務費、選挙公営などが十分に用意されてきたのであるから、このような事態は必至であった。
 政党助成法は企業・団体献金以上に憲法上問題がある。政党交付金の受け取りの資格と配分の基準が、衆参の各選挙における投票結果に連動しているので、民意を正確に反映しない小選挙区の選挙結果が助成額を決定づけてしまう。また、選挙の投票だけをして政党助成の「投票」をしないことも、選挙の投票先とは別の政党に助成の「投票」をすることもできない。これは有権者の政治的自己決定権を侵害するものだ。
 小泉内閣が国民に自己決定、自己責任を強要するのであれば、政党自らが国庫に頼らず自己資金調達すべきであり、結社の国家からの自由(財政的自律権)を保障している憲法の立場に立ち戻るべきだ。
 歳費を1年間、10%程度削減したぐらいで、「資金中毒」状態の政党・議員の免罪符にしてはならない。

北九州市立大学助教授(憲法学)上脇博之

「私の視点」『朝日新聞』2002年1月27日(日)掲載

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