人報連結成40年記念シンポ 岡口基一元仙台高裁裁判官の記念講演の記録(2025.7.12)

(作成・中嶋啓明さん)
 私に対する弾劾裁判所で行われた弾劾裁判についてお話しします。とんでもない裁判で、私は敗訴したのですが、何があったのか、ということをきちんと世の中に知ってもらう必要があると思います。
 その記録を本に書いて出版しようとしたら、4社から出版拒否されています。いまだに漂流しています。この国で真実を伝えることがとても難しいんだということを、私は今実感しています。断ってきた4社というのは全部大手なんですけど、現場の人は、「ぜひ本にしてください」というので、本にしたんです。本はできあがったんですが、上層部がつぶすんです。去年の11月にそういうことがありました。その後に、別の1社が来て、「うちがやります」と、大手で、ほぼ完成したんですが、上層部がつぶすんです。今4社目と掛け合っているところです。もちろん、自分のyoutubeでやればいいじゃないかと言うかもしれませんが、影響力とかいろんなことを考えると、大手出版社で出版してもらうということは意味があることなので、難しさを感じています。
 弾劾裁判というのを、5年ぐらい前に裁判所当局とケンカになりまして、裁判官なのにね。私がケンカを売ったわけじゃないんです。私は単にSNSで個人的にツイッターとか投稿していただけなんですが、「これはケシカラン、ケシカラン」と処分されたわけです。
 私は一方的にケンカを売られただけで、私は「えー、なんだ」とバタバタしているうちに、裁判所当局は情報戦というのを仕掛ける訳です。正直、情報戦に完敗しました。情報戦はどうやって仕掛けるかというと、マスメディアに情報を流して報道させるわけです。「この人はとんでもない裁判官なんです」という情報戦を仕掛けます。なんで裁判所は簡単に情報戦を仕掛けられるのかという話をしたいと思います。弾劾裁判は3年ぐらい続いたんですが、その間、ほぼ完敗でした。
 うちの弁護団は、司法修習で同期の弁護士がボランティアで弁護団を作ってくれて、その中に西村正治先生という弁護士がいるんですけど、情報戦で勝たなきゃいけないというのはみんな分かっていて、期日があるたびに記者会見をやって「きょう、こんなにおかしかったんですよ」と言うんですけど、翌日のマスコミを見ると、1社として報道しないんです。ここまでマスコミって一方的なんだって思いました。
 実体験で分かりました。本当にマスコミって一方的な報道をするんだって。今までは他人の話だったから半信半疑で、「いや、マスコミはそこまでひどくないじゃない」って思っていたんですけど、自分が経験しちゃうと「ああ、やっぱりそうなんだ」と思いました。こっちが言っている「こんなにひどいんですよ」っていうのは一切、報道しないのに、他方で、ある期日で、訴追委員長がおかしなことしたんです。裁判員の新藤義孝さんですけど。ウルトラ保守の衆院議員ですが、この点はみんな笑っていたんです。私もちょっと笑っちゃったんです。翌日の新聞を見たら「岡口裁判官が法廷で笑う」って書かれていて、そういうのは報道するわけです。ネガティブな報道は散々されました。最終的に罷免になっちゃいました。その日にNHKが、NHKは多事公論っていうのを夜11時からやっているんですが、多事公論を見ていたら、NHKの人は「確かに岡口さんのやっていることは、罷免に値するかというと、ちょっと疑問かもしれない。しかし岡口さんは法廷で笑った」っていうんですよ。「そこかよ」と。NHKの人は「岡口さんは罷免されても仕方ない」っていうので「え?」と思いました。「笑っちゃダメなのか」と。何で笑ったかは覚えがないんです。笑った経緯を言わないから、単に私がゲラゲラ笑って、すごく不真面目な裁判官かのように報道されました。「NHKでもそうなんだ」と、私はNHKを信じていたんですが。自分がそういう目に遭うと、マスコミってやっぱり考えていかないと、やられっぱなしになっちゃうと思います。
 なんで、裁判所はそういうふうになったかと言うと、私は30年以上裁判所にいましたが、昔は判決があった後、裁判官が記者会見していたんです。古い人はたぶん知っていると思いますが、教育裁判の家永裁判と言うのがありましたが、ああいうのがあると、東京地裁の裁判長が記者会見して、なんでこれはこういう判決になったのかとちゃんと説明していたんです。そういう時代が昔はありました。昔の裁判官は戦前への反省というのがあって、ドイツも日本もそうなんですが、裁判官が官僚支配されていて、すごく統制されちゃっていたんです。それがとてもよくなかったということで、戦後になってそれを反省して、ドイツはそれが徹底しています。日独裁判官物語っていう映画がありますが、いかにドイツの裁判官が今、官僚統制をすべて廃止していて、裁判官が自分たちで何でもやろうとしています。一番大事にしていることは、裁判官は一般市民のことを知らないとダメなんだ、一般市民のことを知らないと正しい判断ができないと、当事者は市民なので、ドンドン市民の中に出て行って、集会にも参加して、政党にもかかわっています。共産党に入っている裁判官もいます。
 そういうふうにドンドンやっていったんですけど、日本も最初はそういうことをやろうとやっていた裁判官たちもいまして、そういうグループも作ったりしていたんですが、それが日本の場合は、戦前の裁判官というのは、司法省というのが、お役所であったんですが、それがそっくり最高裁事務総局というところに形だけ変えて残ってしまいました。日本はドイツと違って、戦前とまったく変わっていないんです。特に戦後何十年も経つと、50年、60年経って、裁判所みたいに、何も変わろうとしないインセンティブがない組織は、ドンドン、ドンドン、硬直化していくだけなんです。例えば宝塚歌劇団とか、よくしようというインセンティブがなくても何とかなっちゃう、結局、ドンドン、ドンドン硬直化していって、記者会見を裁判官がやるのはケシカランということになって、裁判所当局が事実上、やめさせるようになったんです。今、裁判官は記者会見していないですし、裁判所というのはオープンスペースだから、新聞記者がドンドン入ってこれるじゃないですか、裁判官と廊下で会うわけです。昔は裁判官がぶら下がりの取材も受けていたんです。判決言い渡しが終わると、新聞記者が裁判所の中をウロウロうろついていて、裁判官が「これはこういいうことなんですよ」って、リップサービスでいろいろ説明していたこともあったんです。30年前はそれがあったんです。今はそれも無くなっちゃって、裁判官の出入り口が別にできちゃったんです。人々に会わないように。それもなくなって、今は裁判官というものが、まったくモノを言わなくなっちゃいました。今は裁判員にそれをさせています。
 判決が終わったら、裁判員が記者会見しています。裁判員ってそういうもののためにいるわけじゃないのに。裁判員制度が導入されたとき、裁判所は反対でした。素人に裁判はできる訳がないと、反対していたんですが、最終的に賛成したのは、オールマスコミも野党も弁護士もみんな賛成したわけです。
 裁判官一人と裁判員4人、あるいは裁判官2人と裁判員8人とか、裁判官を絞ろうとし初めて、それはまずいいんじゃないかと、せめて裁判官3人は維持しなきゃいけなくなって、最高裁当局が自民党に働きかけて、裁判官3人は死守してくれって。分かった、それで吞むからと。裁判官3人と裁判員6人の9人の形になったんです。やむなく裁判所当局としては自民党を巻き込んで何とかやろうとしたんです。実は裁判所側にも裁判員制度を取り入れるメリットがあって、その一つは裁判批判をかわせるということがありました。刑事裁判でとんてもない奴なのに、無期懲役にしやがってと、すごく裁判所が批判されるわけです。「なんであいつ、死刑にしないんだ」などと。だけど、「いやいや、あれは裁判員も一緒に決めたんですよ」と言うと、批判されないんです。だって「9人いて、6人が裁判員ですよ。そのメンバーで決めたんですよ」って言うと、批判しにくくなるんです。批判が妨げられるんじゃないかっていう思惑もあって、あと裁判員制度というのは、裁判所内部の権力闘争に使われたんです。裁判所内部にどういう権力闘争があるかと言うと、民事裁判官と刑事裁判官が権力争いをしているわけなんです。民事組と刑事組、ずっと民事組が強かったんですけど、裁判員裁判というのは、刑事組の千載一遇のチャンスでした。
 最高裁長官というのは、事実上裁判所が決めていますけど、実際の指名権というのは内閣にあるんです。だから裁判員導入のときに刑事組は、自民党と結託しまして、裁判員導入は飲みましょうと、その代わりに長官は刑事組から出してくれと。それで刑事組が最高裁長官を奪い取ったんです。それで最高裁長官を一回、奪い取ると、次の長官は今の長官が決めるんです。だからずっとその後は刑事組が続いているんです。今の最高裁長官も刑事組ですけど、そういう形で続いていて、そういう思惑もあったりします。裁判員裁判を導入するという話があったんです。結局、今裁判員が記者会見している。ただ、裁判員も一応、守秘義務で評議の秘密はしゃべっちゃいけないということになっています。結局、感想めいたことしか言わないんで、それ以上のことは言えないんで、深く知りたいということになるとやはり裁判官から聞くしかないんです。そうすると、裁判官と個人的に仲良くなるしかないということになる。そこで始まるのが裁判官個人とマスコミとの癒着です。これは、警察とマスコミの癒着とか、あるいは検察とマスコミの癒着と同じ傾向になっています。これは公然の秘密ですけど、警察や検察、裁判官とマスコミは癒着しているって、あまり分からないでしょ。それが完全に明るみに出た事件がありました。黒川検事総長が賭けマージャンをやっていたときの話です。辞任されたことがあるじゃないですか。賭けマージャンの相手は誰かと言うと、産経新聞と朝日新聞の記者だったんですね。こんなにベッタリなんだって。すごくオープンになってよかったです。あれで国民は分かりました。こんなに司法とマスコミはベッタリなんだって。もし賭けてなったら記事になってなかったでしょう。賭けてくれてよかったんですけど、ということは、賭けてなくて付き合っている方はいっぱいいるということです。そうしないと情報が入ってこないんです。
 そうなると、警察とか裁判所の中の話が全然入ってこなくなるので、必要悪なのか何なのかよく分かりませんが。ただ、力関係は、警察、検察、裁判所のほうが上ですから、マスコミはお願いベースになるわけでしょ。そうすると、マスコミは言いなりになっちゃうんです、検察、裁判所の。ここが何とかならないといけないんですが。瀬木弘さんという方がいまして、元最高裁長官、元裁判官の、今は明治大学教授ですけど、瀬木さんが去年、ネット記事にも書かれていまして、去年、瀬木さん、精力的にネット記事を書かれていましたけど、現代メディアとか。瀬木さんも書いてました。司法とカスミの癒着が一番ひどいって。
 瀬木さんは最高裁の調査官をやっていて、最高裁の内部に入っていた人で、私は最高裁の中に入ったことないんです。最高裁には、最高裁長官だけではなくて、いろんな人が事務局とか、調査官とかいまして、あの白い建物に入っているとだいぶわかるんですが、私は入ったことはないんで、東京高裁どまりなんですよ。だから瀬木さんをここに呼んで、お話を聞いたら、より分かると思うんですけど。きょうは私が知っている範囲でお話ししますけど、どうやってマスコミが食い込んでいくのかというお話をしますけど、どこの裁判所にもあるんですけど、記者クラブと裁判官の懇親会というのがあります。何処の裁判所へ行っても。小さな裁判所にも。私は水戸地裁の土浦支部っていう小さな支部にいましたけど、そういうところにも、あるんです、キシャクラブとの懇親会が。土浦にいる新聞記者とかテレビの記者とかが、みんな来て、こっちは裁判官がみんないて、懇親会をやるんです。新聞記者はみんな大卒で入社すると警察周りになるんです。警察周りが終わると裁判所周りになるんで、裁判所にきた新聞記者って、だいたいみんな若いですね。20代後半の方々です。その人たちと裁判官が、裁判官は土浦支部も結構若いひとが多くて。裁判官も20代ぐらいで、お互い世間知らずですが、やたらとプライドだけでは高くて、言い合ったりしていました。裁判官と個人的に仲良くなろうとして、こっちはしっかり、裁判所というのは情報公開しているし、オープンな組織ですよというのをアピールしていました。
 土浦支部ぐらいだと、裁判官と仲良くなっても、そんなに大きな情報なんか、持っているわけがないんですが、そんな大した話じゃないんですけど、マスコミは近づきたい大きな裁判所で、東京地裁とかになると、東京高裁、最高裁、そのあたりに食い込みたいんですね。東京地裁は、マスコミに説明しなきゃいけないことがあったりして、大きな裁判所は。裁判のこともそうですし、裁判以外に制度の話とかいろいろありまして。記者レクというのがありまして、あそこは定期的に記者レクをやっています。記者レクを担当していたのは、東京地裁の所長代行というのがいまして、所長代行というのもものすごい出世ルートなんです。所長代行になれたら、裁判官はみんな大喜びなんですが、所長というのはほとんどみんな名誉職で、ほぼ何もしません。そのまま定年になっちゃうか、あるいは最高裁に行ったりしますけど、所長はそんな感じで、実際現場を仕切っているのは所長代行です。所長代行が記者レクをやっていて、所長代行は記者レクが上手いんですよね。
 いかにマスコミに、裁判所側がいい情報を流すかっていう、そのために利用しているわけです。まずい情報は、なんかうまくけむに巻く、そういうのが上手い人が所長代行になっていくんです。ただ、裁判所職員の不祥事は隠さないですね。これは隠しちゃうとまずいんですよ。職員の不祥事は隠しちゃうと、後でバレちゃうんと大変なんです。そのときの方が酷いんです。なんで隠したのと、そこが批判浴びるんで。だから不祥事は基本的に隠さないです。まずそれを言う、不祥事がありましたって。その話から記者レクが始まるんです。不祥事の中でも絶対に言わないのがあります。それは何かって言うと、厳重注意なんです。厳重注意は言わないですね。厳重注意って、どういうときに受けるかって言うと、裁判官が判決の主文を間違えちゃったときなんです。これはとんでもない話です、事件当事者にとっては一生に一度の話なのに。主文を間違えるなんて。
 ただし、民事訴訟は主文を間違えても更正決定という裏技があるんで、後でいくらでも、いつでも直せるんです。だから民事裁判官は、間違えることをあまり怖れてなくて、後で直せばいいんでしょって終わっちゃうんです。でも刑事はそう言うわけにいかないんで、刑事は、懲役4年で執行猶予をつけちゃったりとか、執行猶予を付けられないような、そういうのが出てくると、検察や弁護人から指摘がある場合もあるんですが、だいたい裁判所内部で気づくんです。「あ、これは間違えてるよ」って。しょうがないんで、控訴してもらうしかないんです。検察か弁護人で電話して、「これ間違えました」って。そういうとき、とんでもないんで、これは厳重注意になるんですが、これを公表しないんですよ。毎年、何人も厳重注意になっています、裁判官は、間違えて。これはなんで公表しないかというと、裁判官は、多くの人が民事裁判官になりたかったんですね。刑事の人だけ、間違えたとき、控訴とかになるんで。それでマスコミに公表しちゃうと、だれも刑事裁判官にならなくなっちゃうんです。刑事はちょっと危ないねって。1回、そういうことで名前が載っちゃうと、もう出世できなくなる。知れ渡っちゃいますし、世間に。これはダメ裁判官って。だからそこだけはマスコミに公表しないんです。それ以外は一切、公表するようにしています。 
 私は何度か厳重注意処分で公表されています。それは裁判所当局と侃々諤々、ケンカ状態になっていましたから、私の場合は厳重注意処分を公表されちゃったんですけど。私が侃々諤々、厳重注意処分になっていたころに、最高裁でも、記者クラブとの懇親会がありまして、最高裁は毎年、2回やっているのかな、記者クラブと懇親会をやっているんですよ。それは本当に大事な会です。最高裁判事と記者クラブの懇親会。なぜ大事かというと、マスコミ側としては実力者と繋がるチャンスで、土浦支部の若い裁判官と繋がっても何でもないんですが、最高裁判事と繋がったら、もし一緒にマージャンしたら、どんな情報をもらえるか分からない。それはありがたい話です。最高裁当局としてもマスコミは、私たちに従わせるいいチャンスなんですよね。そこを利用しているわけです。お前たち、ちゃんと最高裁の言う通りに記事を書けよと。割と司法記者は若いでしょ。20代、30代ぐらいで、裁判官は60代ぐらいで、ほとんど親子なんですけど。立食でやっていて、一人ひとり回って、総長とか事務局の人もいるんです。事務局はだいたい逆回りするんですけど、一人ひとりくぎを刺しているんです。「お宅、何新聞?」「何とかです」などと。「君のとこ、岡口のこと、悪く書いている?」って。「あ~、はい~」って。「ちゃんと書かなきゃだめだよ」って。そう言って、また次の記者のところに行って「君の所は岡口を悪く書いている?」って。新聞記者は私ともつながっていて、後で連絡してくれるんです。「きょうは、こんなことがありましたよ」って。そんな感じでやっているわけなんです、結構露骨ですね。
 前、旧優生保護法ですが、最高裁が原告団を勝たせたでしょ。あれも、勝たせるっていうのはミエミエで、旧優生保護法でものすごい被害を受けた方々っていうのがいて、最高裁大法廷に、その方に補助の通訳とか全部用意しましたって、2、3日前からマスコミに流すわけですよ。最高裁はこんなに被害者のことを想っていますって、記事にしてもらうわけですね。そんな記事を書いていたら、被害者が勝つってわかるじゃないですか。だから、これはもう絶対勝つなって私も思いました。出る前から思ってましたけど。こんなにお膳立てして、私たちはこんなに被害者のことを考えていますよって、通訳も用意しましたって。車椅子の方にはこうしますって、全部マスコミに流して。で、本番を迎えて、被害者勝訴って。裁判所って、すごく人権意識高いですよねって、やっているわけです。そういうのをマスコミを利用して、裁判所は人権意識が高いところだっていうイメージを国民に植え付けるっていうことをやっています。優生保護法の件は、本当に計算してやっていました。判断はあれでいいんですけど、全然問題ないと思いますけど。あれは政治部門とケンカしない事件だったんですね。大昔の話で、厚労省も、あれは違法だって認めていますから。今さら最高裁が国を負かせても、政治部門は何も怒らないどころか、むしろあのとき、岸田さんも政治解決しようとしていて、側近にやらせようとしていたんですが、側近がスキャンダルを起こしちゃって。政治部門の解決があまりうまくいかなくなったと、そういう状況がありました。最高裁としても、岸田さんがゴーサインを出しているってわかっていたので、全然安心して被害者を勝たせたんです。そういう事件なんですよ。だから最高裁判決を勝ち負けを予想するときは、政治部門が困るかどうかっていうことです。困るやつは最高裁は躊躇するっていう、そういう構図でみていけばいいと思います。
 最高裁は、記者クラブとの懇親会を利用して、持ちつ持たれつになっていて、そういうふうにマスコミも最高裁に気に入られるように記事を書かないと情報をもらえなくなっちゃいますから。この関係は、警察も検察も同じだと思いますが、この関係をどうしたらいいかというのは結構難しい問題だと思います。じゃあ、そういうのは癒着しかないからやめた方がいいかというと、そうなると情報が出てこなくなっちゃう。それは国民としては痛しかゆしで、国民としては賭けマージャンしていてもらって情報を引き出してもらったほうがいいわけです。いろんなことが分かるから。それは国民にとってもよかったりするので、本当に難しいです、この問題は。こういうのは専門の浅野先生に、諸外国とかどうしているんですかというのをお聞きしたいように思います。
 私が情報戦で負けたっていう話をするんですが、私は5年か、もっと前から裁判所当局にケンカを売られた、私としては売られたと思っていますが、例えば最初私が、一般私人の立場で、裁判官と名乗らずに上半身裸の写真をSNSに載せていたということで厳重注意になるんですが、法廷で脱いだわけでもないし、裁判官と名乗ってもない、SNSで。裁判官と名乗っていたら問題かもしれませんが、そういうので厳重注意になりました。厳重注意は公表しないっていうルールがありましたが、読売新聞がそれを載せたんです、夕刊で。なんで読売新聞が、記者レクではないんです。記者レクだと各紙一斉に載せますから。読売だけが載せて。なんで読売は知っているんだろうなあと。そのころから非常に不思議に思っていたんですが、その後、今度はある刑事事件の判決について私がSNSに載せたんです。こういう判決がありましたって。それが、遺族の方々が、自分の被害が出た判決を載せられてしまったって東京高裁に抗議に来られたっていうのがありました。それは遺族の方がマスコミに訴えたんで、各社一斉に載せました。刑事判決を載せたっていうだけですから、それで傷つく方がいらっしゃるんですけど、処分を受けるっていう話ではないんですよ。その話はいったん沈静化したんですけど、ある日東京高裁の事務局長に呼ばれまして、江崎さんという人で、ペラペラしゃべる人なんですよ。「岡口君、あした新聞に出るからね」って。「ああ、新聞に出るんですか。じゃあ心しておきます」って答えました。次の日に新聞に出て、岡口裁判官が刑事判決を載せちゃったから裁判所は厳重注意を検討せざるを得ない状況になっていますっていうことが載ったんです。また読売新聞でした。だから吉崎さんが読売にリークしたんだなって。
 私が実体験として分かったことは、東京高裁は読売と仲がいいですね。なんで東京高裁がそういうことを載せたかっていうと、単に刑事判決を載せただけだから、そんなんで厳重注意処分にしてもいいのかっていうことは、感触を見ていたと思うんです。一応、読売に報道させて、世間がどう見るかというのを、アドバルーン的に書かせたんだと思うんです。すると、世間は何も言わないわけです。むしろ「厳重注意は当然でしょ」、「被害者がかわいそうでしょ」みたいな反応で、いいんじゃないのということで、その2ヶ月後ぐらいに厳重注意処分になりました。厳重注意になったときは、記者レクでマスコミに話したんで、各社一斉に載せたんですけど、こんなに東京高裁と読売新聞ってお友達なんだなと思いました。さらに話がありまして、その後、今度は分限裁判にかけられたことがあります。これは私がSNSで、ある民事事件を紹介したっていうだけなんですよ。犬の所有権をめぐる争いが新聞のネット記事になっていたから、これを私がリンクを貼ったっていうだけなんです。なのに、それでケシカランって分限裁判にかけてやるって言われて、「えー」と思って。
 私はよく「闘う裁判官」って言われていますけど、全然闘っていなくて、闘わされているんです。「それで分限裁判になっちゃうの」って。「それはおかしいでしょ」と思って、同期で西村正治先生とか弁護士さんがいらっしゃって、弁護団をつくって一緒に闘ってくれたんですけど、結局、最高裁大法廷に呼ばれまして、会議室みたいなところで、非公開で、マスコミを締め出しちゃって、裁判は1回しかなかったんですけど。「1回で終結します」って、「いつ決定が出るかもいいません」って。それでもう終わっちゃったんです。で、いつ出るのかなと思って、2ヶ月ぐらいしたらとっても不思議なことが起りました。読売新聞が、こういう決定になりそうですって出しているんですね。「決定は出てないのに、なんで読売新聞は知ってるの」と思いました。理由まで出ている。報道してしまうっていう。私は直感的に分かりました。最高裁が読売に事前にリークしたんだと。事前に情報をリークしたっていうのは、最高裁は前にもやっていて、問題になったことがあるんです。
 例えばアメリカ大使館にリークした話もありました。リークしたっていうことで、最高裁判事が全員、訴追委員会にかけられたこともありました。リークの話って結構、センシティブだったりするんですけど。だから、「これはまずい」って、私はそのときに思いました。リークだと。そして、リークしたということは、間もなく決定が出るんだと分かりました。案の定、1週間ぐらいして決定が出ました。読売が書いていた通りの理由でした。私が分限裁判で戒告になったっていう。これは本当にまずいですよね。それを誰かがまずいって言わなきゃいけないのに、誰もまずいと言わないで、話がスーッと流れてしまうんです。私は何としてもこれを歴史に残しておかなきゃいけないと思いました。分限裁判で戒告になった後、私はそれを本に書こうと思いました。そうしたら岩波書店の方から声をかけてくれまして、「何でも書いてくれ」と言われて私は「最高裁に告ぐ」っていう本を書いたんです。その中に、この話も書きまして、もっと詳しく書いています。読売新聞はそのころ、「恐怖新聞」と言われていて、「恐怖新聞」というのが昔、漫画であったんですけど、未来が予想できちゃう新聞です。たぶん、つのだじろうの漫画です。いろんなところから情報を仕入れてきて、先んじて報道しちゃう。「恐怖新聞」と揶揄されていたんで、本の中で書きました。読売新聞は、決定が出る前から分かっていて、すごいですね。「恐怖新聞」みたいですね、そういうことも書きました。
 「最高裁に告ぐ」は先月、電子書籍にもなりました。おかげさまでとても売れましてよかったんですが、「最高裁に告ぐ」が売れたんで、またマスコミが各社取材に来るわけです。私は岩波の担当者と一緒に取材を受けたんですが、写真をいっぱい撮られて記事もでき上がったのに、また上層部がつぶすわけです。だから皆さんは「最高裁に告ぐ」の記事は読んだことないと思います。実体験しちゃうと分かりますね、本当にマスコミっていうのは難しいなと。本当に現場はいい人たちがいっぱいいて、応援してくれたり、メールしてくれたり。いるんだけど、いざ記事になると出ないんです。見えない力がどっかで働いてしまう。読売と東京高裁の癒着が、唯一公刊物で出たのは私の本です。「最高裁に告ぐ」っていう本は、癒着を歴史的に残さないといけないと思いましたので、それはしっかり書きました。マスコミと公権力の関係を考える一つの資料として、「最高裁に告ぐ」はお読みいただければいいんじゃないかと思います。
 最後に実名報道の話を若干して終わりにします。実名報道は、いろんな意味でまずいんですけど、特に少年です。裁判官は若いころ、みんな少年事件を担当させられるんです。1回、裁判官をやると分かるんですが、ものすごく時間をかけて少年を更生させるんです。保護観察という処分にして、いきなり少年院にはいれないんです。保護観察にして経過観察ということで、調査官が付きっきりでみるんです。ちゃんと就職先まで探してあげるんです、調査官が。どの裁判所も委託先っていって、少年を面倒みてくれる奇特な方がいらっしゃるんです。そこにお願いに行って、そういう子たちをみてもらうんですね。そこで大工さんの腕とか、いろいろ教えて自立できるようにして、それを裁判官はずっとみるわけです。1年とか、2年とか、そういうことをやるんです。そして裁判官が「ああこの子は大丈夫だ」と判断したら最後、保護観察とかを終わりにして、少年院にいれないで、そういうふうにものすごく丁寧にやるんです、少年事件って。それなのに、今18歳成人とかあって、少年を重罰に課すべきだとか言って、少年刑務所に入れてしまえとか、それで実名報道してしまえというんです。実名報道してしまうと、終わりですよ、その人の人生。そうしちゃうと、その子はもう立ち直れなくなるから、結局、犯罪して生きていくしかなくなります。犯罪者が再犯を繰り返すだけの話になります。社会としては、そうじゃなくて、ちゃんと一人でも犯罪者を減らしたいんだったら、裁判所が更生させる、そのための予算も人間もいるわけですから、その方がよほどいいに決まっているじゃないですか。なのに刑務所に入れて実名報道すべきだっていう人たちがいる。たぶん逆効果です。むしろ世の中に犯罪者があふれてしまう。今、多くの犯罪者は再犯なんです。再犯率は今、非常に高くて。みんな立ち直れないわけです。今、そうじゃなくてもネットとかで身バレしちゃう時代ですから。本当に実名報道されたら、それで終わりです。犯罪者としてしか生きていけない、犯罪者として再犯を繰り返すわけです。そうならないためにも、この実名報道の問題、大事なポイントがあると思うし、実務をやっていた人間としては、一番大きな問題はそこです。少年はきっちり更生させることが大事です。一応、裁判所は頑張っているんです。
 一つは、マスコミの問題ってとても大きいです。私は自分で経験しましたけど、偏向報道というのがあって、とても中立公正ではない。裁判所、警察、検察は持ちつ持たれつになっているんで、そこをなんとかしないといけないと思います。普遍的な問題だと思います。実名報道の問題は、我々が一番気にしているのは少年事件の報道です。その3点をきょうはお話させていただきました。ありがとうございました。