秘書の小部屋 2004.2

2004年2月29日(日)晴

ご無沙汰いたしました。23日から本日まで、忙しい、の一言で済ませさせていただきます。では、また来月お目にかかりとうございます。

・・・なんぞと言っておられましょうか。溜まりまくったストレスは今月のうちに発散して置かねば、夢見が悪うございます。

23日から本日まで、天気は概ね晴れなれど、確かどっかで1日、春の嵐が吹き荒れました。秘書の心は全日嵐でありました。内職に追われっぱなしで前半が過ぎ、忙しくて目が吊り上がっているというのに、「湾岸報道に偽りあり」の再版の編集はどうしたかね、だとぉ。

あれは急がなくていいことになったと言ったのは、編集長ではありませぬか。出来上がっている本と手持ちのデータが合致していないので、ゆっくり丁寧に照らし合わせましょう、それは編集長がやりましょう、と確かそういう話だったですね。遠い昔を懐かしむような眼をして、とぼけようったって、そうはイカのキンタ・・・(失礼しました)、そうは行きませぬ。

照らし合わせたんですかっ。まだあっ? で、印刷所には月曜日に入れることにしてしまったんですね。いつ組むんですかっ。グレてやるう~。

と毎度お馴染みの事態の展開となり、秘書は300ページを必死こいて二日で組み上げます。その間にも、あっチラシ直してね、だの、名刺刷っといてね、だの、事態を把握しとるのか、このオヤジ。

と、秘書のトサカに血が逆流してぷるぷると震えます。しかし、秘書の形相がいくら変わっても、この御仁は事態をちっとも把握しちゃおりません。ちょいと目を離すと好き放題をしおって、今日の今日こそは、仕上げるんじゃ、という日曜日、気分転換と称してプールに逃げて行きました。

逃げていけない秘書は、パソコン相手にぶつくさぶつくさ。怒りのあまり、バカあとか○○ッタレえとか連発したもので、パソコンが拗ねちゃって固まりまくります。あんたに言ってるんじゃないよ、となだめても、固まっちゃったパソコンは動きだしてはくれませぬ。ファイルを分割して、また分割して、やっと反応します。そんなこんなで、週末が過ぎて行きます。

秘書がなにをした。どんな因果があるんじゃ、と溜め息をついていると、ふと記憶が甦ります。昨日も今日も朝っぱらから切れとったのがいけなかったのでしょうか。

秘書んちにときどき来る置き薬屋の営業のご面相が、どうにもこうにも不景気で、秘書は密かに、bimbo神と呼んでおりますが、この神様が昨日の朝9時に来ると言ったのに来なくて、週末だというのに会社に行ってお仕事しなくちゃならない秘書が確認の電話を入れたら、いきなり「ごめんなさい」とやられまして、おいあんたはどっかの会社の営業だろう小学生並みのセリフで詫びるなっ、と切れまして、もう二度と来なくていいと思ったのに、お詫びに日曜の朝伺いますとやられて、日曜の朝から気分は大不況、この世の終末が来た感じ。いちおう薬屋の営業だからいろんな薬をすすめてくれるのですが、説明するあんたの顔色は最悪、そんなに効くのならまず自分が飲めやっ・・・と、ああ、思い出すだに腹が立つっ。

俗人秘書の悩みは来月に尾を引きます。

2004年2月20日(金)晴~21日(土)晴れ~22日(日)晴れ

秘書、内職に追われるの巻。

2004年2月19日(木)晴

歩くぞっ、と編集長が宣言いたしました。

いくらご忠告申し上げても、この御仁は、パソコンにへばりついてはストレスを溜め込んで、ときどき切れ上がっております。とばっちりを受けるのはまっぴらご免ですが、せまい社内では逃げていくところがありません。そこで秘書は事態を改善すべく、先日テレビで聞いたことを編集長に囁きました。歩くと血流がよくなって脳が活性化するそうですよ、外に出て歩きなされ・・・と。この手の話が編集長は大好きです。

思惑通り、プール通いの道具を背負い込んで、ニコヤかに玄関を出て行きます。

「では歩いてプールに行って泳いで帰ってきます!」

へ?

見送る秘書の頭の中に、はてなマークが飛び交いました。秘書が怪訝な顔をするもので、編集長はもう一度元気に「では歩いてプールに行って泳いで帰ってきます!」と怒鳴ります。

へ?

いつもは自転車に乗ってプールに行きますね。今日は歩いて行くんですね。

いつもは自転車に乗って帰ってきますね。今日は泳いで帰ってくるんですか。

五月の緋鯉と真鯉ならいざ知らず、編集長がお空を泳ぐんですか。途中でくたびれたと言って電柱に掴まってニカニカとはためくんですか。ビルの屋上のフェンスにひっかかって吹き流されるんですか。

ばっかもん、と怒られたことは言うまでもありません。

2004年2月18日(水)晴

先日秘書がコンサートなぞを聴きに行きましたのは、アークヒルズ、という高層高級住宅と文化施設が合体した所でありました。たしか昔はこんなもの無かった筈、と首をひねりつつ周囲を徘徊したのですが、空間というものは変貌してしまうと、以前の記憶が根こそぎになります。

七日越しの便秘のごとく、うーんうーんと記憶をひねり出そうとしたのですが、なーんにも出て来ません。未練がましく潜在意識にしまいこんで、本屋で立ち読みしておりましたら、ピカピカッ、と閃きます。雑誌「東京人」に失われたもの特集がありまして、秘書の敬愛する赤瀬川源平氏(路上観察学会)が、今アークヒルズ元麻布谷町について言及しておりました。

そうでありました。あそこはビルに沈む町、麻布谷町でありました。銭湯の煙突があって、学会関係者が昇って、高所恐怖症が卒倒しそうな写真を撮っていました。あの一帯は、地方都市でも珍しくなった木造隙間風自由通行戦前戦後昭和色濃厚住宅密集地帯でありました。とっくに消え失せたごとくに言われている人情がころころと転がっていそうな地域共同体でありました。

と、見てきたようなことを言いますが、行ったことはございません。赤瀬川氏の「超芸術トマソン」を読んで、擬臨場体験をしただけでございます。タイムトラベルできるものなら行ってみたいです。東京のど真ん中に、つい20年前にはこんな空間があったのでした。霊南坂教会もお城みたいな姿をしておりました。

谷町には行きませんでしたが、その昔、愛宕山には昇ったことがあります。標高だけ基準にすればたいした山ではございませんが、そこで田舎者秘書は、新橋駅から歩いて行ける所に出現した鄙びた光景に、空間がずれてどっかへワープしちゃったような目眩がいたしました。

未整地の(コンクリート敷きでない、という意味)原っぱに茶店がござって、秘書はたしか、ごりごりと手で回すかき氷機で削った氷ミルクか氷カルピスを頂いたのでした。と、いうことは季節は夏。草いきれがムッと甦ります。なぜか、安達が原、という言葉が浮かんだのでした。

愛宕山には、愛宕山ヒルズなるものが出来ております。時代の趨勢とはいえ、こうヒルズだらけでは、蛭に吸いつかれる悪夢をみます。

2004年2月17日(火)晴

過日秘書は、図書館で読めるものに金は出さない、というポリシーをちょいと曲げて「週刊新潮」をコンビニで買い求めました。昨今暇な人種が多いのか、図書館にほぼ1日たむろして雑誌を片っ端から読みふける手合いが多く、人気雑誌が所定の棚にあったためしがないのです。

秘書がどうしても読みたかったのは真面目な記事です。覚えている方もおいででしょうが、昔大阪の銀行に立てこもって4人を殺した挙げ句射殺された男の話。広告にそそられて期待し過ぎたようで、読み終わった感想は、なんだよ何が魔性の女なんだ・・・ 週刊誌の記事なんてこんなもんです。

あほくさ、とページをぱらぱらめくっておりましたら、むふん? 浮世絵が、というか枕絵が1頁大で・・・ 歌磨の作かどうかは知りませんが、海の向こうの女性たちが日本男児に熱い視線を注いで囁く「ウタマロ君」がむっくりと載っておりまする。ぐっ。いつから日本はこんな国になったのでしょう。

おりしも秘書はアドルフ・ツィーグラーについて調べようとして、確か昔買った美術雑誌の特集にあった筈、と押し入れをごそごそ掻き回して、紆余曲折ののち発掘したのですが、なんで紆余曲折したかと申しますと、この本の特集が2本立てでありまして、1つが「30年目に公開されたナチス芸術」、もう1つが「江戸の発禁本」。メインは江戸の方だったらしく、背表紙にナチス芸術の文字はなかったのでした。

発禁特集に美術的な興味から目を通しますと、こちらは「ウタマロ君」の部分が、スパッとカットされて、例えば「吾妻源氏」見開き頁の4分の1くらいが、上から下まで真っ白け。印刷インクが少なく済んで助かったでしょう、という問題ではありません。1975年の発行。思えば慎み深い時代でした。

インターネットを覗いていると、キーワードがちょいヤバかったりすると、とんでもないサイトが大漁になります。その手のものが嫌いとは言いませんが、しかしまあ、発情ニッポンどこへ行くバチが当ってこの国は絶滅するぞ、とぼやきたくもなります。

さて、ツィーグラーです。ナチスの退廃芸術撲滅運動の先頭に立たされちゃったこのオジさん、それなりに任務には励んだようです。発掘した本をきちんと読み返していないので、知ったかぶりはいたしませんが、ツィーグラーのヌードはナチスに認められて名声を得たとのことですので、どんなに健康明朗な絵でありましょう。きっと武者小路実篤さんのカボチャに目鼻をつけたくらい、と思いきや、これが実によろしいのです。バレエシューズとリボンのみを身に付けた「裸婦」なんぞ実に退廃的でシニカルでぞくっとするくらい刺激的。

そう言えば、「地獄に落ちた勇者ども」も実に退廃的でぞくぞくする映画でしたな。凡人秘書は、ナチスそのものが退廃の極みであったような印象を持ちまする。

これから、ハンス・ベルティングの「ドイツ人とドイツ美術ーやっかいな遺産ー」という美術史の本を読みまする。

2004年2月16日(月)晴

お昼用のパンをせっせと捏ねて、新松の排熱孔に乗せて1時間。何故かふくらみません。時々こういうことがあって、何を間違えたか水の温度が高すぎてイーストを煮てしまったか、と思いつつ岩石のようなお昼をいただくことになります。

はて?

つらつら考えてみます。湯温は適度であった。入れるべきものの順序もいつもどおりだった。ちゃんと捏ねた。何故? 

イーストを入れ忘れていました。タネなしパンでした。マリア様のお腹はタネなしでも膨らんだのに・・・ ボカッ(殴られた理由は聞かないで下さいまし)

2004年2月15日(日)晴

秘書のお散歩シリーズ。本日は歩数にして33,000歩きました。こうなると、自分でも「馬鹿か」と思いかけます。

本日は品川界隈。駅から5分ほど経過した所でびっくらこきました。田舎もんの目が潰れそうな高級住宅街であります。写真で見たことのある朝吹邸(現高輪クラブ)も聳えたっています。あんぐり口が開いたままうろつき回りました。

島津山御殿山という地名からして、秘書の守備範囲じゃありませんな。秘書は昔、吉祥寺近くの御殿山という地名の所に住んでおりまして、それなりにちょいとした高級住宅地と思っておりましたのですが、わはは、規模が違います。本物のランボルギーニとミニチュアモデルのランボルギーニくらい。

うはは、わはは、わはは・・・住みたいよお。

2004年2月14日(土)晴

気がつけば家の中がぐしゃぐしゃ。きれい好き片付け魔を自称していた秘書ですが、近頃どうも勤務先の惨状に慣らされてしまって、人間埃で死にゃせんとか・・・

いかんです。人間誇りを捨てちゃいかんです。

というので、大掃除の始まり。お洗濯もしてせっせと買い込んだ本も置き場所を作ってしまってと。そういえば図書館の本も借りっぱなしで読んでない。だいたい限度一杯20冊も借り出すのは間違っているよなあ。2週間で読めねえよな・・・

ゴミを掃き清めて玄関掃除に移ります。靴を片付けて、傘立てが一杯だから余計なものは仕舞わなくちゃ、とそこで秘書の目が丸くなります。

へ? 傘立てに長い傘が4本。これは真っ当。折り畳み傘のたたんでないのが1本・・・いつ使ったんだろ。骨が錆びていそう。自転車の空気入れ・・・玄関だもんな。他に置くとこないもんな。大型の三脚・・・使うときは担いでいくもんな。ネギ・・・が傘立てに突っ込んであるのはどうしてか自分でも分かりません。秘書の心の闇が露出した気がします。

2004年2月13日(金)晴

編集長の大風呂敷その2。

「湾岸報道に偽りあり」の再版だけでは飽きたらなくて、『雑誌』を発行するんですと。タイトルも版型もページ数ももう決めたんですと。ほおぉ。それはそれはおめでとうございます。せいぜいお気張りやす。

・・・なんで秘書が面倒みなきゃいけないんですか。

ここでまたおさらいを致しますと、秘書は憎まれ愚痴社の社長秘書です。断じて編集長付きではありません。立ってるものは、親でもカドでも腹でも使え、という方針はそれはそれなりの意義がございましょう。なにしろ、寝た子も起こすようなお方ですから。とっくに薹(とう)が立っている秘書ではございますが、職務範囲を超えてこき使うなら、給料上乗せしろっ、と言いたいいでございます。

雑誌の名前は、『真相の深層』。4月1日発行予定です。エイプリルフールではありません。

2004年2月12日(木)晴

よたりきっているので仕事なんぞする気にならへんです。だもんで、午後ニコやかに早退いたしました。どうせ金になる仕事があるで無し・・・

実は夕刻都内某所でコンサートなんぞをお聞きする予定ですので、ついでにちょっとお散歩を、と思ったのでした。エリアは麻布~六本木方面。えーっと、六本木から行くかなぁ、それとも赤坂見附から行くかなぁ・・・ なんだ、赤坂見附なら四谷から歩いていけるじゃん。

ということで、延々3時間、歩数にして28,000のお散歩の始まりい~。見栄張ってヒールのある靴履いて来たのはちょっとよろしくなかったです。

歩きましたよぉ。上智大学から清水谷公園、麻布中~アメリカ大使館霊南坂スペイン坂神谷町緑道、この辺でお勧めコースを外れてタイムトリップしたような裏町に入り込み、昭和の雰囲気ぷんぷんの庶民住宅の向こうににょっきり超高層住宅アークヒルズ。近過去と近未来を行ったり来たりは目眩がしそうです。

うろうろきょろきょろで時間を使い果たし、アマンド辺りで挫折。もうコンサート会場に向かわなくっちゃ。昔、飲み会で酔っぱらうと何故か仕上げにアマンドに連れて来られました。しこたま飲んだ後でケーキなんぞ食らうのはゲロッピへの道をまっしぐらだったような気がします。

酔っぱらっちゃってるのと、地下鉄に乗せられて、あるいはタクシーに押し込まれて移動するもので、位置関係の把握がめっちゃくちゃで、アマンドが六本木にあることは知っていても、それが具体的にはどの辺りか長いこと不明でした。歌舞伎町の隣にあるとは思やしないけれど、ふーん、ここでしたか、ご無沙汰いたしました。

急げ、とコンサート会場を目指して歩き始めます。とことことことこ・・・会場が見えて来ないです。来た道を引き返しているはずなのに、おかしいなあ、なんで東京タワーがあっちにみえるんだろう・・・

普通はその時点で気がつくもんですな。

なおも前進し続けて、彼方に見えるは麻布十番。そう、方向を90度間違えて90度間違えて合計180度、逆方向にばく進していたのでした。むんぎゃあ。

2004年2月11日(水・犬国祈念日・・・ポチの願望)晴

秘書はテレビに子守りして貰った口なので、お家にいるときは殆どつけっぱなしです。真面目に見ている訳でなし、電気代がもったいないから消せ、と心の声が命ずるのですが、心の中のもう一人が(実は多重人格です)、フン、と鼻息で吹き飛ばします。

夕方のニュースで、アメリカの狂牛病のあおりを受けて牛丼店の牛肉が不足、いよいよ販売中止となり、さようなら牛丼!、みたいなニュースが流れておりました。秘書は貧乏人ですが牛肉が好きでないので(貧乏人だからだろ、の指摘あり。うるさいわい)、どうでもええです。むしろ好物の鶏肉のインフルエンザの方が大事(おおごと、って読んで下さい)です。

しかし、ま、本題は、鳥か牛か、ではありません。ニュースが終わった後で、アナウンサーが頭を下げておりました。曰く、

ニュースの中で、差別を助長させる「屠殺」という不適切な表現を使いましたことをお詫びいたします。

ふーん。屠殺って差別表現なの。だからかなあ、カート・ヴォネガット・ジュニアのスローターハウス5の題名がカタカナなまんまなのは。秘書はぱあだから、slaughterhouseという綴りが思い浮かばなくて、slowter house=遅い家=亀の家、かと思ったぞ。総重量2,978トンの爆弾を投下されて、広島と並ぶ十数万と言われる犠牲者を出したドレスデン空爆の話だって分かって、だから屠殺なんだって思ったぞお。

ついでだから言うとなあ、アメリカ映画で、大都市シカゴからど田舎に転校した高校生が、スローターハウス5の話題が出たとき、即座に「あれは名著です」と言って問題視されるのがあったなあ。ガッコの図書館から教育上よろしくない本を運び出して焚書をするような町の話だぜえ(この辺の秘書の人格はかなり品性が欠落しておりますが、おめこぼしを)。音楽もダンスも禁止で、転校生がダチの車ん中でカセットテープ掛けたら、お巡りが追跡して来てテープ没収するんだぜ。あ、そのテープ、ポリスんだぜえ。ポリス知ってるよな。スティングがいたバンドだぜえ。バンドをベルトと間違えるなよ、ジジイ。

と、失礼しました。ああ、疲れる人格だこと。因みにこの映画は「フットルース」です。秘書のお気に入りの映画でした。

秘書とて、差別を助長する積りはこれっぽっちもございません。屠殺は普通の日本語だと思います。食肉加工とでも言い換えればよろしいのでしょうか。それでは、スローターハウス5は人肉加工場みたいになっちまいまして、かなりエグい題名になります。実際その通りだったのでしょうが。

2004年2月10日(火)晴

・・・・・・(記憶喪失)

2004年2月9日(月)晴

同居人がおフランスはパリへ行っていたのは、そろそろ1年前の話になります。お土産に、おフランスのお紅茶なんぞをいただきまして、貧乏人としては飲むのが勿体なくて大事にしまっておりましたが、本日愛用の格安紅茶が切れていることが発覚しまして、やむなく封を切りました。

パリで買った紅茶はさぞかし美味しいことでありましょう、と期待に胸を膨らませて丁寧に入れます。嘆息しつつカップに注いでミルクを落として、さあ

さあ? さあ? さあ?

カレーの味がするよ、これ。

へっ、と缶をひっくり返してしげしげと眺めます。見て分かるのか、と冷笑しないで下さいまし。これでも秘書は昔アテネ・フランセに通っていたのですぞ。紅茶のラベルくらいなんだ・・・ なんだ英語で書いてある。なに、flavoured with seven spicesだって。紅茶に七味唐辛子をぶち込んでどうするっ。あっspicesは唐辛子とはかぎらないか。

落ち着いて飲すれば、味は紅茶です。匂いがカレー。味は匂いでごまかされてしまうものですな、

同居人よ、あなたはどこに目を付けてお買いになったのでしょう。秘書は常々言われる通りのぱっぱらぱーですが、あなたは確か中高大、と10年間も英語を学習なさったのではござりませんか。確か大学ではフランス語もなさいましたよね。

秘書は日本の外国語教育に非常に不安を覚えます。これでいいのか、文部省(教育省だっけ? 文部科学省? あっそう)

2004年2月8日(日)晴

秘書のお住まいの団地は、犬猫を飼ってはいけないのに、エレベーターに大小とりどり乗込んだりしております。秘書は嫌いじゃないからいいんですけれど、ハラワタが沸騰している方も多いことでしょう。

さて、エレベーターの常連に、角刈りポメがおります。御存じポメラニアンは毛がふわふわの小型犬です。それがなんでだか、つんつんつっぱらかった角刈りなのです。これがまあちょいとイナセで可愛い。人間で言えば中学出たばっかの坊やがキリリと刈り上げて鉢巻き絞めたような、で分かりますかな。(秘書は中学出たばかりの坊やが格別好きなのではありませんので、勘違いなされませんように)

あのこましゃくれの代表みたいなプードルだって、プードルカットにするからお高くとまります。プードルの角刈りとかモヒカンとか河童とかあるいはつるっぱげとか見てみたいものです。

と思いつつ歩いておりましたら、ぐっしゃ、と、とある物体を踏み付けました。ぐっ。それでも秘書は犬が好きです・・・ 始末をしない飼い主は嫌いです・・・

巷に黄色いリボンやらハンカチやら、イラクの自衛隊の無事を祈る運動があります。一緒に祈って、と言われると秘書は大いに困ります。祈るあなたの善意は十分お察し申し上げますが、反戦運動の積りかもしれませんが参戦運動になっておりまする。

2004年2月7日(土)晴

今日はぶっ通しで寝るぞっ、と宣言したのに、何故か内職のお呼びがかかります。

よたりきったパジャマを脱ぎ捨て寝癖つんつんの頭に水を振りかけシーツのシワの刻まれた頬をぱしぱし叩いて伸ばし、仕上げにイランの薔薇水をシュッシュッして原稿を戴きに伺います。

ちなみにこの薔薇水、高かったのにちっとも香りがしません。おまけに、「イラン」と発音しているにも関わらず、淫乱の薔薇水、とわざわざ聞き違えて下さる方までおりまして、どれどれちょっと嗅がして、とむさ苦しいのに寄って来られたりしまして、ちょいとしたフェロモンもどきではありますが、詐欺に合ったようなもんです。

ちわーっす、と御用聞きのように裏口からお伺いしますれば、ちょいとここで仕事して行って、で1時間経過。秘書はいつから派遣業になったかいな。まっ、でも、お茶いただいてお菓子もいただいたからいいや。

片付いたらそのまま隣町へまっしぐら。このところお散歩づいているのです。本日は井の頭公園をとことこ抜けて高台の住宅街へ参ります。東京は案外でこぼこがありまして、大昔から金持ちは高い所に住み付くようであります。となれば、秘書の目指す高級住宅街もきっとこの辺・・・ うろうろきょろきょろ歩いていると、まるでサムターン回しの物件探しをしている気分になります。秘書は手先が器用です。鞄の中にはおりよくヘアピンなども入ってござりまして・・・ という話をしてはいけません。

ありましたよぉ、絵に描いたような豪邸が。ひいひいと急坂昇れば、さぞかし眺望の良かろうことよ、と溜め息のでるような日本家屋やら超モダンコンクリート住宅やら。ここまで来ちゃうと手がでる範囲を大幅に超えておりますもので、うらやましくもありませんな・・・というのは嘘ばっか。

秘書だってこんな家に住みたいよぉ。ぶちぶち言いながら歩いて行くと、すれ違う人が皆身を潜めて避けてくれます。はて秘書はそんな大物に見えるのかしらん。あらん、手にペンケースをナイフみたいに握ってるわん。

マンションの売り出し広告を見ると、買えもしないのに、管理費や積立金が気になります。物件により結構まちまちで、高いものは家賃並だったりします。せっかく買ってもさらに家賃払ってるみたいでは気分が悪い・・・と秘書は何をしみったれた妄想に励んでいるのでしょう。貧乏が憎いぞよ。

2004年2月6日(金)晴

秘書、ぐれてます。昨夜久しぶりに飲んじまいました。

ギンナンかぶれ全身腫れ上がり事件の際、若い見目よろしいお医者様から、飲まないほうがいいですねえ、と言われて以来、酒断ち生活を送って来たのですが、これが飲まずにいられよか。さんざんこき使われてようやく本を出して、やっと温泉にでも行って、お骨を休ませようか、という段になって、2月は湾岸報道~を発行するぞっ!、と高笑いされたのであります。

かっかっかっわっはっはっいっひっひ、って、あんたは笑い袋か。しおれた七福神みたいに目尻を下げて笑うなっ。福袋くらい下げて来いっ・・・ と胃袋にストレスが溜まります。

家に帰って台所をかきまわしたのですが、酒のストックがありませんでした。かくなる上は消毒用エタノールを・・・ と、ここで我に帰ります。まだ人間をやめちゃいけません。

ハーブティーでも飲むかと棚をみれば、おやおやん、トースターの蔭に料理用に買い込んでおいた二級酒がちらり。近頃煮物をとんとしなくなりましたもので、そっくり手付かずであります。お酒には寝かしておくと美味しくなるものと、さっさと飲んじまえというものとがあります。大方のワインは前者、大方の日本酒は後者。このお酒さんは、秘書んちで暫く寝てしまいました。これ以上惰眠をむさぼらせてはいけません。本日封を切るのは、お酒さんのためでもあります。地球資源のためでもあります。人類平和のためでもあります。では、いただきます。

くーっ。

(快楽の後には鉛のような朝が訪れるものです。)

2004年2月5日(木)晴

また、編集長の大風呂敷が広がりました。木村書店で、911~イラク三部作を出しちゃったもんで、勢いづいて、絶版まで後1部残るのみの「湾岸報道に偽りあり」を木村書店で再発行するんですと。

して、誰が準備を、と聞くまでも無く、インクジェットプリンターで急拵えのうすぺらな辞令が飛んで参ります。

やだよぉ、少し遊びたいよぉ、の抵抗の声虚しく予定が組まれて行きます。前回出版社に渡したテキストあるからね、ったって、それは最終稿のテキストじゃないじゃないか。誰が全部読んで完成本の通りに直すんだよお。資料リストの分無いじゃないか。入力しろって? やだあ。ぐすん、ぐすん。

なんでいつもいつも、秘書が大風呂敷を洗濯して糊付けしてアイロン掛けてたたまにゃならんのだ。ぐれてやるうっ。

2004年2月4日(水)晴

目覚ましに叩き起こされたものの、睡眠不足が祟っているので、秘書は目を開けたまま眠っております。こういう時は、目玉焼き食べて栄養つけて、あっ黄身の固まり具合がいい感じ、とか言いつつ火を止めて盛り付けのお皿を出します。さあ、と蓋をとると、なんでだか目玉が硬直してかちんかちん。ぐっ、火を止めたつもりで火力調整のレバーを動かしただけでした。ぐあ~ん。

自宅のレンジと会社のレンジとレバーの構造が違うので、それぞれに混乱しております。家では止めたつもりで弱火にしますが、会社では弱火にした積りで火を消しています。なんでメーカーはばらばらに作りたがるのでしょう。なんとかならんかしらん。

水道の場合だと、秘書んチのはレバーを上に向けると水が出ますが、お友達の家に行くと下に向けると出ます。秘書が気を利かせて洗い物なんぞをいたすと、即ちぎゃあぎゃあわめいた挙げ句に台所が水浸し。おとなしく座っていろ、と申し渡されます。

思えば、ビデオだって、秘書はベータを買ったのに、世の中はVHSへまっしぐら。取り溜めたビデオの山をどうしてくれる・・・(ぐ、また愚痴ってしまった)

ぼけーっと目が覚めないまま、ゴミ捨てしながらご出勤。ゴミ置き場のコンクリートの囲いになんか黒いのもが乗っかってるな、と思いつつゴミをネットの下に押し込んで、ひょいと横を向けば、おや目が合った黒い物体はゴミ狙いのカラスじゃありませんか。秘書が気がついちゃった途端、カラスは、なななな何だよ、とのけぞって囲いのブロック塀から足を踏み外して転げ落ちそうになります。

いつぞやもこんなことがありましたな。

地域の運動会のお知らせビラをお配り申し上げていた秘書、早く終わらせたい一心でせかせかと回っておりました。アパートは集合郵便受けに入れればいいので楽です。アパートばかりが混み入った路地奥のポストにせっせと突っ込んでおりまして、ふと気付けば足下に猛犬。秘書が気付いた途端に向こうも気付いて、ななな何だコイツは、と飛び上がってウワンと吠えて下さいました。秘書が気が付かずにすたこら行ってしまったら、お犬様はつまらなそうな顔したまま通りを眺めていたのでしょう。

高徳のお方は動物に警戒されないと聞きます。秘書が相手では、カラスも犬も、取って食われる気分になるようです。秘書が取って食えるのは蜂の子ぐらいなんですが。(そういえば、子どもの頃、蜂に顔面さされて暫く人相が変わっていたよな)

2004年2月3日(火)晴

今年は初っ端から色々ござったもので、年賀状のことをすっかり忘れておりました。巷の噂を聞けば、お年玉付き年賀状の1等賞品はパソコンやら液晶テレビやら・・・ 欲しい、と秘書の物欲がむくむくと頭をもたげます。そこで一計。

編集長に、年賀状の整理をしてさしあげましょう、と申し出て、葉書の山を抱えて秘書部屋に閉じこもります。いっひっひ。編集長宛ての年賀状は、枚数だけは凄いのです。

まず末尾番号で振り分けて10個の山を作り、1等から照合していきます。パソコンパソコンテレビテレビ・・・無いっ。2等デジカメデジカメ出痔亀・・・無いっ。3等ふるさと小包1個・・・ねえよっ。4等おたよりセット・・・ねえったらねえよっ。5等お年玉切手シート・・・おめでとうございます、4枚も当りました・・・いらねえよっ。

悔しいので編集長に叩き返してやろうかと思ったのですが、そこは秘書、0から9まで末尾の数字順に並べただけの葉書を「整理済み」と称して束ね、満面の笑みを浮かべて恩着せがましく、しまっておきますね、と囁きまして、お礼に到来モノの菓子箱をせしめました。しめしめ、と思ったらお菓子は既に半分食われていました。

2004年2月2日(月)雨

毎度のことながら、気が付いたら1月が終わっていました。べりべり、と会社のカレンダーを引き剥がして2月に突入いたします。年末に地元の時計屋さんで貰ったこのカレンダーは、老舗らしく旧暦併記で、「つちのとう」とか「二黒友引」とか「三りんぼう」とか、訳のわからない符号がいっぱいで、エキゾチックです。捨てようと思ってふいっと見れば、あら、下のほうに人生指南のようなご教訓があるではないですか。どれどれ。

「幸福な生活の基本は健康である」

ごもっともです。とくに今年は秘書は大層な実感を持ちました。顔がパンパンに腫れ上がると、世間の風当りは木枯らしよりも痛い、と思い知らされました。ちょいと目鼻の具合が違うだけで、なんでこうも扱いが違うのでしょう。美男美女ばかりが人間ではありません。(そうは言っても目の保養はしたい・・・ ああ、人生複雑)

ちなみに2月のご教訓は
「十分な誠意が人の心を動かす」だそうです。

2004年2月1日(日)晴

田舎もん秘書は、昨日青山に出かけて都会の美にいたく感激しましたもので、本日も四谷市ヶ谷神楽坂方面へお出かけです。ここいらには古き良き時代の空気が残っていそうな気がいたします。

秘書の同居人は、東京生まれの東京育ちですが、今回連れ回してみたところ、東京の人間は案外東京を知らない、ということが判明いたしました。人間、自分のテリトリーからは中々はみださないようで、地方から雲霞のごとく押し寄せる田舎者の方がトレンドスポット(死語だよねえ)を熟知跋扈しております。

地図を片手にきょろきょろうろうろの秘書は、どこからどうみてもお上りさん。しかし、恥もかかねば裏もかけません。

東京の現風景をここいらでしっかり頭に叩き込んでおかないと、東京中が「経済」に侵食され六本木ヒルズみたいな建物で埋め尽くされるのを、ぼーっと見届けてしまうことになります。進歩発展が万能ではござりませんぞ。景観は失ってみて初めて大切さが分かります。

てんでんばらばらなまとまりのない三人連れが、オテル・ドゥ・ミクニの裏階段をよじ上ろうとしたり、市谷八幡宮の急階段を昇ったり降りたり(抜け道が分からなくて、二度と昇りたくないと思った急階段を再度息を切らして昇るはめになった)、近隣の皆様にはさぞかし挙動不審に思われたかもしれません。ご迷惑でしょうが、また押し掛けますので各ご町内の皆様、よろしくお願いいたします。