選挙のときに聞くことがある「きょうたくきん(供託金)」ということばがあります。これってなんでしょう? 私たちと、どう関係があるのかなあ?
もくじ
- 選挙の「きょうたくきん」ってなあに?
- 立候補するとき、「きょうたくきん」って、いくら払うの?
- 「きょうたくきん」を返してもらえないこともあるの?
- 「きょうたくきん」って、必要?必要でない? それはなぜ?
1、選挙の「きょうたくきん」ってなあに?
選挙の「きょうたくきん(供託金)」とは、選挙に立候補するときに法務局にはらう預け金のことです。選挙がおわったら返してもらいますが、条件があって、返してもらえない時もあります。
2、立候補するとき、「きょうたくきん」って、いくら払うの?
選挙に立候補するときにあずける供託金は、選挙によって、ねだんがさまざまに変わります。
下が、選挙ごとの供託金の金額です。

みなさん、この金額を見て、高いと思われましたか? こんなぐらいでちょうどいいんじゃないか、あるいは、安いと思われましたか?
3、選挙の「きょうたくきん」って、返してもらえないこともあるの?
はい、あります。
選挙で、ある数以上の票を有権者から投じてもらえないと、バツとして供託金を取り上げられてしまいます。これを、「没収される」と言います。

では、没収されないために、どれくらいの票数が必要なのでしょうか?
おおよそで言うと、投票してくれた有権者の、すべての有効な票数の、
10%以上です。議員なら、投票してくれた有権者の票数を、議員定数で割った数の10分の1以上です。
たとえば、2023年の八尾市の選挙では、
市長選挙の有効な投票数は、97,009票、市会議員選挙は96,841票でした。
ゆえに、
市長選は、97009÷10=9700.9票未満 で、没収。
市議選は、96841÷26÷10=372.465 票未満 で、没収。
つまり、市長選では、9700票以下、市議選では372票以下の候補者が、供託金を返してもらえなくなりました。
2023年の八尾市の市議選では、候補者のみなさんは全員30万円の供託金を返してもらえたようですが、市長選では2人の方が100万円の供託金を没収されていますね。
100万円かあ。けっこう、つらいですねえ。
以下が、総務省による、くわしい説明です。

https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/naruhodo/naruhodo14.html
このような制度が、なぜあるのでしょうか?
4、供託金の制度って、必要?必要じゃない?
選挙供託金のいいところと、よくないところについて、現在、意見がさまざまに出ているようなので、それぞれの意見を、すこし、見てみましょう。
① 供託金のいいところについての意見
<法務省(政府)の意見>
「供託は、当選をあらそう意思のない人が売名などの理由で無責任に立候補することを防ぐための制度です。」
(総務省ホームページより)
https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/naruhodo/naruhodo14.html(2023.5.1参照)
つまり、
ほんとうは、当選して知事や議員になって政治をおこなう気もなくて、ただ、名前を知ってもらうため、目立つため、など理由にならない理由で、むやみやたらと、無責任に、立候補することに歯止めをかけるためにつくられた制度だ、
と言っています。
② 供託金のよくないところについての意見
<弁護士さんたちの組織の意見>
- 国会議員の立候補者にとって、今の供託金は高すぎて、負担が重すぎます。
- そのため、今の供託金は、憲法で保障された人権である被選挙権(立候補する権利)をこわすものです。
- 国会議員の選挙での供託金は、金額を大きく減らすか、または無くすべきです。
と、言っています。
(「国政選挙における選挙供託金制度について、供託金額の大幅減額または制度の廃止をふくめた抜本的見直しを求める意見書」日本弁護士連合会、2022年11月6日)をまとめた。
つまり、まとめると、

① 供託金のいいところ
- 遊びで立候補する人が出にくくなる
- やたらと候補者が多くなり選挙運営にお金がかかることをふせげる
- 政治をするより、名前を売るために立候補する人をふせげる
② 供託金のよくないところ
- 金額が高すぎて、立候補する人が少なくなる
- とくに、経済的にこまっている人や、介護・子そだて・仕事のある人は立候補しづらくなる
- 人々から立候補する権利をうばっている
さまざまな意見がありますね。
調べてみると、供託金については反対意見のほうがたいへん多い気がしました。
さて、みなさんは、供託金の問題をどう考えますか?また、さらに考えるために、どんな情報を必要としますか?よければ、ご意見を やおプラス☆ に送ってください。
<参考文献>
・総務省「なるほど!選挙 立候補」https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/naruhodo/naruhodo14.html
(2023.4.30 参照)
・総務省がつくった研究会の報告書
「地方議会・議員のあり方に関する研究会報告書」総務省、令和2年9月
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/chihogikai_giin/index.html
(2023.4.30参照)
・大学の研究者の意見
早稲田大学行政法研究部
「選挙供託金制度の違憲性について~東京地裁判決(2019 年 5 月 24 日)の問題点~ 」
https://www.f.waseda.jp/katagi/touben200417.pdf
(2023.4.30参照)
・弁護士の全国組織の意見
日本弁護士連合会
「国政選挙における選挙供託金制度について、供託金額の大はば減額または制度の廃止をふくめた抜本的見直しをもとめる意見書」2022.11.6
https://www.nichibenren.or.jp/document/opinion/year/2022/221116_2.html
(2023.5.1参照)

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