これに対し、検察官は被告人がワゴン車に乗り込んだ直後からと主張し、被害 者も「いきなり体に触ってきたので、その場を逃れて候補者カーに乗り移るため 『トイレに行きたい』と言った」旨述べている。
しかし、被害者が口実として「トイレに行きたい」と言ったのであれば、(ワ
ゴン車を降りて)すぐ候補者カーに乗り移れば済むことである。
さらに、ワゴン車には運転手、警護の私服警察官がおり、被害者が少しでも声
を上げれば、たちどころに被告人の行為が公になる状況にあった。
そのような場で犯行に及んだこと自体は責められるべきだが、少なくとも被告 人がワゴン車に乗り込んで毛布を掛けるや、いきなり体に触ったということは考 えにくく、不自然である。さしたる抵抗がなかったため、たまたま行為をエスカ レートさせたというのが自然であり、真相であると考える。
後部座席において被害者が脚を踏ん張って抵抗し、その身体が左石に傾くほど の状況にあったとすれば、当然、警察官として気付くはずである。にもかかわら ず、警察官が全く気付かなかったということは、後部座席の状況が被害者の証言 するような状況ではなかったと考えられる。
被害者の受けた多大な苦痛を考えれば、このような態度が決して許されるもの でないことは当然だが、なかなか真実を言い出せなかった心情については、一個 の人間の弱さとして理解できる部分も存在する。
被告人としてはこの間、一片の反省の情もなかったというのではなく、むしろ 知事という要職にあったが故、周りのだれにも打ち明けられず、もんもんとした 日々を過ごしたであろうことは容易に推察できる。
本法廷における被告人の言動は逐一、報道され、被害者のもとにも伝わってい るものと考えられる。マスコミを通じて、より被害者を傷つけた被告人として は、手紙や面談による直接の謝罪よりもふさわしい選択と考えたうえで、本法廷 において謝罪の言葉を述べたものである。
また、被告人はあまりにも有名人でありすぎた故に本件があまねく知れ渡り、 どの世界にも復帰は見込めない状態にあり、社会人としては完全に抹殺された状 況に置かれている。
そのような釈況のなか、被告人は次の目的地まで時間があったことから、休憩 のために毛布を持ってワゴン車が)ガソリンスタンドを出てから、たばこを一服した 後、今回の事件を起こしたのであり、その事実関係の流れから考えても、偶発的 な犯行であることは明らかである。
被告人に対しては執行猶予の寛大な判決をお願いする次第である。