21世紀の初めにあたり

WaterWatchNetwork 代表 草島進一

A Happy New Year!!!
あけましておめでとうございます。

21世紀があけました。Stern 草島です。年越しは、羽黒山恒例の松例祭の火の神事を見、21世紀のカウントダウンは、近くの雪原で、親愛なる相棒と「こころ」のランプの火とともに、平和と自然と人間のつながりの再構築、そしてすべての組織に、仕事に「こころ」の再生を祈りました。
 
東北、山形、歌「雪の降る町を」の発祥地 鶴岡は、今、雪、外の気温は零度以下で道路はキンキンに凍っています。

元旦は、TMスキーで湯殿山へ。2時間かけて鳥居まで登り、仙人岳にむけて参拝しました。吹雪の中、足跡も全くない雪原に足を踏み入れるとき、少なからず自分の中のパイオニア(開拓者)のような思いが蘇ります。途中、吹雪が強くなり、何度も立ち止まりますが、でもゆっくりと、登っていきました。夏、車で行けば10分でいける車の車道が、除雪車の入らない冬はズボズボとスキーでも埋まりながら、一歩一歩、歩んでいかないといけません。でもしんとしずまりかえった静寂と、山道に沿って立ち並ぶブナ林の幹の美しさは、そうしてはじめて歩く時間の中でかみしめることができます。ひとりぼっちで登って疲れてくると、そうした美しい木々から、ささやかな応援をもらうことができるような気もしてきます。木々は静かにそこにあり、その間に自分が無理矢理分け入っているだけなのですが、何か、少し彼らと対話できたような、そんな気にもなってくるのです。途中、ボクのお気に入りの太い老木があります。その木を超えると、それからもう3回ほど右折すると鳥居がみえるところにいけるのでひとつの目安になっているのですが、今回、訪れると、枝が少しはらわれてかわいそうでした。
静けさの中で何かそうした木々が語りかけてくれているような気がするのです。
今回で冬ここをのぼるのは4回目です。いままで 2度鳥居までいっていますが、今回は、吹雪がすごかったのでとても苦戦しました。でも、真っ白な静寂の中、何か、ブレイクスルー(Breakthrough)する、新しい道を切り開く感覚を体感できたような気がしています。

これは、94年の夏に、釧路川を一人でカヌーで下った時にも得た感覚です。

これは実にささやかな冒険でしょうが、このような事を行う自由がボクらにはあるんですね。阪神大震災の際、神戸元気村でプロジェクトを展開していったときも、これに似た感覚だったかもしれません。

今までがどうだ、こうだでなく、未来を考え過ぎて臆病になるでなく、今。未来をみつめて必要だと感じた事、を一歩踏み出してみる。行動する。今を精一杯やる。動きながら探し求めると見えてくる。そして、サポートしてくれる人や物や金とのつながりが生まれていく。ビジョンが、一つ一つ実現にむけて動き出す。

そうした中で、何か、今までとは違った「豊かさ」というか幸福を見いだしているような気がします。物質ではなく、とても精神的な、充実感と、とても純粋な喜びです。その中で大きな金が生み出せるわけではありませんが、人間として、自信をとりもどしたり、真の仲間を得たり、何か計りしれないパワーを獲得できるのではないでしょうか。ボクは神戸で、そして、米国のNPOのインターンを通じて、このような喜びの中で、素晴らしい仕事をしている仲間達に出会いました。

ところで、湯殿山の登り口には、湯殿山ホテルというがあるんですが、ここの温泉がいいんです。雪まみれで冷たくなった体を、湯殿山のご神体から出るお湯に似た成分のお湯で暖める。そして風呂上がりに飲む水が美味い。まさに浄化される思いがする。とてもシンプルなのですが、何か、生まれ変わったような気がするのです。

21世紀、心ある人たちと一緒に、このような喜びとともに、新しい文化を創造し、時代を切り開いていきたいと思います。

今年は、巳年。私の干支でもありますが、次々と脱皮をし、成長していく。21世紀の時代の変動期、常にブレイクスルーしていく姿勢が求められている象徴ではないでしょうか。

20世紀の終わりに、ボクらの親愛なる先駆者が次々と亡くなりました。昨年は、諫早湾の山下弘文であり、そして、デビッドブラウアーです。双方とも、日本のテレビでは「2000年に逝く」特集にはでてきません。でもボクにとっては少なくとも、この20世紀のヒーローであり、米国のアクティビストの間では、最も尊敬をされていた2人でもあります。
2人のアクティビストが教えてくれたこと。「信じて行動することの尊さ」そして、ホンモノの「地球を愛する心」ではないでしょうか。又、スポーツや優れたジャズのインプロビゼーションを見て感激すると同様の、「人間の可能性」なのかもしれません。

今、日本では、「環境問題」は、ホンネとタテマエのところでふらふらしているように思えます。私たちは、もっと強く、はっきりと、意思表示しなくてはならないのではないでしょうか。ダムはムダだとみんな気がついているはずです。破壊してきた20世紀の反省をもとに、今、ボクラは、自然環境をRESTORE(再生)していかないといけないのです。

デビッドブラウアーや、山下さんのスピリットは、いつも、行動する私たちの胸にあります。行動すれば、彼らを思いを同じくする世界中の仲間が応援してくれます。

先日、未来学者 アルビン トフラー博士が、テレビ番組でインターネットの効用を論じた際、「21世紀は個人の時代であり、今は、インターネットを通じて、個人でも力をもてる時代」と称しました。まさに、インターネットは、私たちアクティビストにとって、最高に有効なツールであり、このツールこそ志をもつ市民のためのメディアであると信じています。

デビッドブラウアー氏や山下さんのスピリットをこうしたツールで正しく伝え、しっかりと次世代につないでいきたいと考えます。

勇気をもって、行動する世紀。私は、神戸で生かされたこの命と、そしてこの2年半とりくんできた水に関する問題を軸に、この21世紀、大いに前進をしていきたいと考えています。

とにかく、「信念に基づいて、はっきりと意思表示。そして行動!」

シエラクラブの代表のとき、税制面の優遇措置もそっちのけで、MISSIONであるダム反対を主張したデビッドブラウアー氏の志は、NPOの本来のあり方を私たちに学ばせてくれます。
彼の運動は、結局、全米のナショナルパークや、世界遺産制度をつくり、そして、ダム先進国だったアメリカに、ダム撤去の時代をつくりだしました。はじめ、それこそキチガイ扱いだった彼は次第に世に認められ、ノーベル平和賞にもノミネートされています。それを言えば、「沈黙の春」を書いたレイチェルカーソン女史も同様です。

昨年1年、とにかく行政と保守系議員などによるいろんな妨害にもめげず、必死で取り組んだ、鶴岡の広域水道の問題。「未来の子供達にとって、大切な水の問題。孫や子ども達のためにがんばろう」と、立ち上がった鶴岡市民1万2千もの「鶴岡の水道の住民投票を求める署名」は、市長によって「反社会的」などという意見がつけられ、自民、民主、公明、社民系議員達によって、ろくに議論も調査もおこなわれないまま、否決されました。(運動の全体像は昨年12月16日号の週刊金曜日に掲載されました。)

今年、山形県の庄内に、公益文化大学というのができるわけですが、
真の公益とは何でしょう。未来の子供達にとって、本当に有益なことを目指すのが「公益」ではないでしょうか。志ある市民の行動や活動を「反社会的」などと決めつける姿勢は、どうも、この「公益」や「市民活動」や「市民社会」を論ずる論点から完全にはずれているとしか思えません。

私は、少なくともNPOを運営する一人として、真の公益を論じていきたいし、鳩山由起夫氏も翻訳された「成長の限界」を認知し、人口減少の時代、どのようにまちをつくっていくか、何が真の豊かさなのか、何に金をかけ、何を削らないといけないのかを真剣に議論をしていきたいと思っています。もう、過去の既得権益や、利権に縛られて、未来に目を向けない悪循環を断ち切って、新しい再構築をしないといけないのではないでしょうか。

夢と希望をもって、行動する21世紀。官僚でなく、権力者でなく、市民であるボクラが、切り開く21世紀。日本のもつ文化、風土をしっかりと見つめながら新しい文化をつくっていく21世紀。みんなでやっていきたいものです。

まだまだ、足りないところばかりですが、何とぞ今後とも、ご指導、ご鞭撻の程、よろしくお願いいたします。

では、みなさまにとって、心豊かな出会いに満ちた1年、そしてよい100年でありますことを願いまして、新年のごあいさつとさせていただきます。




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