<医者の目から見た電磁波健康障害>

 私は医者で、医学的知識が多少なりともあり、臨床場面で得た経験も多少ありますのでご参考になればと思っています。私自身、神経症や電磁波過敏症で苦しみましたが、お恥ずかしいながら現在の医療では関心はもたれていないと実感しています。自分自身苦しみましたので、私の意見が多くの人に役立てばと筆をとった次第です。

 まず、電磁波過敏症や不定愁訴についてですが、私見から言いますと、電磁波過敏症は神経症の一種で心身症を呈したものと思われます。神経症とは、情報の洪水による恐怖心のため、偏った思い込みで多様性の価値・考え方が認められず袋小路の思考になっている状態と思っています。だから人の成熟や新たな経験、他の人の多様性の価値観を学び、自己を確立していくことで徐々にその状態からのがれられる病気ではないか、というのが私の到達した考えです。
 これは電磁波過敏症に対する私見ですが、電磁波過敏症・鬱病その他神経症や心身症から器質的疾患に移行し、さらに発がんに至ることを考えた時、電磁波は心身に大きな関連と影響をもっていると考えています。

 極低周波電磁場は、電場と電流を誘導することで生体・細胞組織に影響することが知られています。しかし、「私たちの身のまわりにふつうに存在する極低周波電磁場によって誘導される電流は、心臓の鼓動を調整する際に発生する電流のような体内で自然発生する最も強い電流に比べるとはるかに低いものである」(当学会資料より)、と認識されています。
 私は、自身の経験や臨床において、微量の電流によっても生体の細胞レベルからの中枢神経系・免疫系に対する影響はある、と思っています。

 国立環境研究所が行なった「がんの抑制する脳内ホルモンのメラトニンの働きが、電磁波によって妨げられる」という実験があります。(当学会資料)
 さらに近年、鬱病・欝状態ががん発症に関与し、その背景には免疫機能の低下が関与するという報告があります(日本医師会雑誌)。小児白血病、発がんは、個人のDNAと種々の原因による免疫能の低下により発症するのではないかと考えられています。このように個人の資質・体質・環境に負っている面が大きいので、電磁波のみの影響を考える時疫学的証明はたいへん難しいと思えるのですが。
 私は、環境ホルモンが内分泌系に影響するように、極低周波電磁波は最大の要因でなくても、中枢神経系・免疫系という生体の基盤に悪影響を及ぼすものとして特質していかなければいけないと思っています。

 高周波電磁波はDNAへの直接的障害が考えられていますか。
 私は、免疫能の低下という漠然とした情報や不安に個人はどう対処したらいいか、ということを常々考えています。免疫能の低下であれば免疫能の向上をすればいいのです。免疫能は精神的に安定することが大事だと思っています。小さなストレス・大きなストレスを学習しよりよい精神的安定が得られるわけで、家の中で音楽を聞いていればよいというわけでもないのです。
 精神的安定や免疫能の向上は、よい刺激で体液性免疫力を循環させることだと思っています。いまはやりの“癒し”も大事ですが、人生に対して立ち向かう姿勢こそ大事だと思っています。これは私の人生観でもあるのですが。

 私は臨床に携わる者として、一番心がけているのは患者さんに安心感を与えること、だと考えています。患者により求めているものはいろいろですが、そのニ−ズに応えられるようにいろいろな安心感を与えるのが医者の使命と考えています。変な言い方をすれば、大丈夫でない状態でも「あなたは大丈夫、きっと治ります。一緒にがんばりましょう」と言えば、たいていの人は自らの抵抗力で立ち向かう力を獲得していく、という場面をみているからです。私はやぶ医者ですが、医者は自ら治ろうとする患者の個々の状況においてベストの状態になるよう手助けするのが仕事だと思っています。

 ここでまた電磁波の話に戻りますが、電磁波は環境ホルモンと似ていて環境ホルモンと同じようなメカニズムで人体に悪影響を及ぼしていると思われます。しかしながら、利便性・経済性が優先され弱者や子供が真っ先に被害に会い、被疑者不特定の公害とよく似た様相を呈しているように思われます。
 われわれ弱者は利害にとらわれない市民の目で、社会に危害や汚染の実態を一つ一つていねいに知らしていかなければいけない、と思っています。
 “極低周波電磁場は免疫能の低下を惹起する可能性が大きく、万病のもと”と考えています。


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