解放(戦後)60周年、日本軍『慰安婦』問題解決のための世界連帯の日
8・10 669回目の水曜デモ
“韓日民衆の国際連帯”を粘り強く追求する


横断幕の文字は
解放(戦後)60周年、日本軍『慰安婦』問題解決のための世界連帯の日
”日本軍『慰安婦』に正義を”
2005年8月10日(669回水曜示威) 12時 日本大使館前


 解放(終戦)60周年を迎えた韓国、日本軍「慰安婦」問題解決を求める、ソウル・日本大使館前の水曜デモは、1992年1月8日から14年間にわたってとぎれることなく続けられてきた。中止されたのはわずかに1度。日本が阪神大震災に見舞われた直後だけである。この時、日本軍『慰安婦』被害者であるハルモニ(おばあさん)たち自身が「隣人」の苦難と心情を察して中止を申し出られたという。私たちは果たしてその思いにふさわしい行動をとってきたのだろうか。


世界9カ国27カ所以上で世界同時行動
 今回、韓国挺対協の呼びかけに応え、8・10水曜デモに連帯して、9カ国・27ヶ所以上で世界同時行動が取り組まれた。韓国内では、水原(スウォン)、春川(チュンチョン)、釜山(プサン)、蔚山(ウルサン)、晋州(チンデュ)、全州(チョンヂュ)、光州(クァンヂュ)の各地で、海外では、台湾、ドイツ(2ヶ所)、スイス、アメリカ(7ヶ所)、カナダ、オランダ、フィリピン、そして日本でも東京、大阪、京都、広島、神戸、名古屋、福岡で取り組みが報告されている。
 ソウル・日本大使館前には、悪天候にもかかわらず、「ナヌムの家」のハルモニたちやソウル在住の黄錦周(ファン・クムヂュ)ハルモニをはじめ各地からこの日のために駆けつけた被害者ハルモニたち10数名を中心に250〜300名の参加者があふれた。いつものように歌と音楽で始まり参加団体のアピールが続く。日本からは沖縄から10人以上で参加した若者たちのグループが連帯の挨拶と歌を披露し、「ナヌムの家」で以前住み込みで働いていた日本人ボランティアの方から届いたメッセージなどが読み上げられた。


ナヌムの家の横断幕

 朝から断続的に雨が降り、強い陽射しがさしたと思えば数分後にはまた雨粒が落ちてくる。何度も傘を広げたりたたんだり、それでも11時半に始まった集会は2時間を過ぎても参加者が減らない。ますます熱気を帯びシュプレヒコールの声が高まっていく。「被害者ハルモニたちに正義を!」「日本政府は国連勧告を受け入れよ、公式謝罪と法的賠償を行え!」「歴史を歪曲するな!」「ハルモニ、私たちが一緒です!私たちは世界市民と連帯する」―――。

 この日、今年6月の訪韓で知り合った若い日本人留学生と再会した。ソウルに住みながら水曜デモには初めて参加したという彼の真剣なまなざしに、「継続は力」の言葉をかみしめた。14年に及ぶ水曜デモを支えてきた人々の粘り強さ、執念が彼をここに連れてきたのだ。
 水曜デモの参加者はいつもながら若い人たちが多い。親子連れや小中学生らしい姿もここではめずらしくない。大使館前にズラリ並んだ機動隊の重々しい光景が対照的である。


ソウルの日本大使館前 機動隊がデモ隊を阻む

民衆の国際連帯が前面に
 今回現地に参加して強く感じたのは、日本政府への糾弾、公式謝罪と法的賠償、真相究明、責任者処罰などの要求はもちろんであるが、ここ数年で明らかに国際的な「民衆連帯」を追求する姿勢が強められていることである。転機となったのは2000年12月に東京で実現した「日本軍性奴隷制を裁く2000年女性国際戦犯法廷」と、これに続く2001年の教科書採択をめぐる闘いである。
 4年前、韓国・中国をはじめアジア各国の国際世論に支えられながらとはいえ、「つくる会」教科書を0・1%の採択率に押さえ込んだ結果は、私たちが知る以上に強いインパクトをもって韓国の人々に受け止められたのかも知れない。2001年8月、水曜デモで初めて「韓日国際連帯」が正面に掲げられた。以来、地道な交流と連帯行動が積み重ねられ信頼関係が築かれてきたことを実感する。

 日本国内ではほとんどまともに報じられることのなかった「2000年法廷」はしかし、国際的には高い評価を受け、世界にこの問題の所在と闘いを知らしめる役割を果たしつつある。黙殺したはずの日本でも、極右勢力と安部氏らの政権中枢の介入・圧力によるNHK番組改ざんと、製作ディレクターの勇気ある内部告発によって、再び注目をあびることになった。取るに足らなかった視聴率の番組を、黙殺しようとした当人たちがその存在を宣伝してくれたのである。このことは、はからずも日本軍「慰安婦」問題が決して過去の問題などではないことを、まさしく現在の日本政府・国家権力自らが証明している。彼らにとってこれは、侵略戦争と「天皇の軍隊」のつくろいようもない汚点、逃れることのできない戦争責任そのものなのである。でなければ、ここまでなりふりかまわず封じ込めようとする醜態をどう説明できるというのか。

 しかし、どれほど歪曲、隠蔽、中傷と卑劣な攻撃を繰り返そうと、もはや闇に葬り去ることなどできない。屈することもあきらめることもなく、「国民基金」による懐柔・買収をも毅然としてはねのけ支援者と共に闘い続けてきた被害者ハルモニたち。民衆の国際連帯を前面に出しその姿勢を鮮明にした8・10水曜デモは、彼女らの闘いが、国際的に着実な広がりをみせていることを確認するものとなった。それは、高齢化がすすむハルモニたち被害者に希望と力をもたらしたにちがいない。苦痛に満ちた60年の歳月、日本政府と右翼勢力からは踏みにじられ続けてきたが、彼女たちは日本の侵略被害国だけでなく全世界に真実と正義を発信し、戦時性暴力の被害女性たちを目覚めさせ闘いに導き、歴史を開き、確かな支持と共感を勝ち取ってきたのである。


ハルモニたちに「70周年」はない。私たちの重い責任
 すべての中学校教科書から多くの加害事実と共に「慰安婦」問題の記述が消え、「つくる会」教科書の採択は1%前後と見込まれている。彼らが目標とした10%には遠いが、私たちはこの現状に胸をはることができるだろうか。
 戦後60年の区切りは終わりではなく新たな闘いの出発点である。多くのハルモニたち、戦争被害者たちにとって「70周年」はもうないだろう。やるべき課題は山積している。まずは、日本の右傾化、さらなる軍事力強化に立ち向かい、教育の反動化、教育基本法と憲法の改悪を何としても阻止することに力を傾注したい。韓国民衆の「国際連帯」のエールに真に応えるためにも。

2005.8.25 吉岡祈子

 以下は、集会の最後に読み上げられた「声明書」の訳文です。

解放(終戦)60周年 日本軍「慰安婦」問題解決のための世界連帯の日

声  明  書

 “日本軍「慰安婦」被害者に正義を!”

 ・ 解放(終戦)60周年、日本軍「慰安婦」被害者に正義を!
 ・ 日本政府は国連勧告に従い、日本軍「慰安婦」被害者たちに法的賠償を実施せよ!
 ・ 戦争犯罪の清算なしの、日本の国連安保理常任理事国入り断固反対!

 ドイツと日本によって犯された第二次世界大戦による残酷な人権蹂躙と人間の尊厳の抹殺を経験した世界は、戦争が終わった後、再びこの地に戦争が起きないことを願った。その後60年の間、ドイツはナチス戦犯たちを探し出して処罰し、被害者への物的、精神的賠償を実行するなど、戦争犯罪に対して法的責任を全うし、類似の犯罪の再発防止のためにたゆまず努力をしてきた。ところが日本軍によって犯された戦争犯罪は、戦後60年を経て今にいたるまで真相究明も、犯罪者処罰も成し遂げられないまま、なおも歴史の中に隠蔽されてきた。被害者たちは謝罪も法的賠償も受けられないまま、傷と苦痛が染みついた60年を生きてきた。

 本日は、解放60周年を迎え、「日本軍『慰安婦』問題解決のための世界連帯の日」として全うし行動する日である。これは、1992年1月8日から14年間、大韓民国ソウルの日本大使館前で粘り強くデモを行い、日本軍「慰安婦」問題解決を促してきた韓国の日本軍「慰安婦」被害者たちと挺対協(韓国挺身隊問題対策協議会)の運動を支持し共に連帯する世界連帯の行動である。われわれは、もう一度世界市民の力で、戦争において苦痛を受けたすべての日本軍「慰安婦」被害者たちに解放を宣言しようと思う。日本軍国主義による人権と名誉を蹂躙され生きることを根こそぎ奪われた性奴隷被害女性たちに正義を回復させようと思う。過ぎ去った60年間の苦痛の歳月と傷の染みついた歴史をうちこわし、希望に向かい、本当に解放された世に向かっていこうと思う。

1. 日本政府に要求する。
 日本は、おびただしいアジア人民を拉致・虐殺し、強制労役によって人権を蹂躙し、女性たちを性奴隷として利用し、人生を根こそぎ踏みにじった過去の犯罪に対して反省しているのか? 反省も法的責任も取らないで、日本軍性奴隷被害者たちに謝罪と賠償をせよという国連の勧告も遵守しないで、どうやって国連安保理常任理事国になって世界の平和を論じることができるというのか? われわれは、世界市民の力で反対する。戦犯国・日本政府は国連安保理常任理事国になる資格などない。日本政府はまず、過去にしでかした日本軍性奴隷犯罪とすべての戦争犯罪に対する真相究明と謝罪、法的賠償を実施せよ! そして再びこのような犯罪を犯すことのないよう正しい歴史教育、追悼館建立などを推進せよ!

2. 国連とILOに要求する。
 1990年代初め、日本軍「慰安婦」問題が国際社会に知られるようになり、国連人権委員会とILO基準適用委員会においても日本軍「慰安婦」問題は重要な問題として取り扱われるようになった。そして女性の人権の問題として、強制労働の問題として、日本政府に法的賠償を勧告した。ところがこれらの勧告は拒否された。この間、国連とILOは日本政府が勧告を受け入れるように、どのような積極的な役割をしたのか? 日本の財政的寄与度のために、日本の顔色ばかりをうかがいながら傍観していただけではなかったか。われわれは要求する、日本政府が国連勧告を受け入れるよう促せ! カネではなく真実が、無責任ではなく正義が確立される、そのような国際秩序をつくる仕事の先頭に立て!

3.世界市民社会の連帯を希求する。
 世界では依然として戦争が継続しており、その戦場の真っ直中で女性たちはまたしても性暴力の犠牲者になっている。歴史歪曲と侵略戦争称揚など過去への回帰を夢見ながら、軍事大国化しつつある日本軍国主義はまた、依然としてアジアと世界平和の脅威となっている。われわれは希望する。この地上から日本軍「慰安婦」問題が完全に解決されるその日まで! 世界の市民たちが正義の監視者として、人権の守護者として、日本軍「慰安婦」被害者たちの長い長い闘いに共に連帯してくれることを願う。われわれはまた、日本軍「慰安婦」被害者たちに正義が回復されるその日まで、戦争と女性への暴力がなくなる時まで、最後まで連帯するであろう。

2005年8月10日
解放(戦後)60周年、日本軍「慰安婦」問題解決のための世界連帯の日 参加者一同