[投稿]橋下財政再建案:教職員・公務員給与削減に反対する
軍隊的統制と制裁、分断と切り捨てでどうしようというのか!?

 20日に行われた大阪府橋下徹知事と府労連との団体交渉は7時間に及ぶ議論の末決裂しました。マスコミは、公務員のワガママのように宣伝していますが、それはあらぬ方向へ世論を誘導するものです。先だって6月17日、橋下知事は陸上自衛隊信太山駐屯地を訪問し、府庁職員の自衛隊体験入隊を「ぜひ検討したい」と語り、「40代くらいの府庁の事務にどっぷりと慣れ親しんだぐらいの人」を対象とし、「自衛隊員のあいさつや姿勢などを学ばせたい」「チーム力、団結力を養い、次の一手に備えたい」と語っています。軍隊式の規律と国や府への忠誠を自衛隊でたたき込み、公務員・教員らに自らの方針を貫徹しようとでも言うのでしょうか。12日には、給与削減に疑問を呈した職員に「私のやり方が合わないなら職をかえろ」と暴言を吐きました。今年はじめ、岩国住民投票に際して「国政の防衛政策に地方自治体が異議を差し挟むべきでない」などと住民の権利行使を冒涜した発言、知事になる以前の「ニート対策は、拘留の上、労役を課す」「税金を払わない奴は生きる資格がない」等々の暴言を思い起こせば、橋下知事は徹底して府民を蔑視し、公務員を自分の従僕のように扱い、エリート以外は生きる資格がないかのような考えを持っていることがわかります。
 橋下知事の財政再建案はそのような考えが凝縮しています。とくにここでは、公務員と教員の給与削減に強く反対し、橋下に迎合する形で公務員や教員をバッシングするような風潮に警鐘をならしたいと思います。

 教職員・公務員の給与削減に反対する

 橋下大阪府知事は、公務員バッシングを利用して、職員給与・退職金の一方的カットを強行しようとしています。ブログなどでも、教員が給与の削減に反対するとでもかけば、炎上する事態になっています。「民間企業では倒産すれば職を失うが、公務員は給与をいくら減額されても職を失うことはない。それだけでも公務員は優遇されている。民間には、年収200万円以下の給与しか得ていない人は山ほどいる。公務員が財政危機の責任を取るのは当たり前」などです。マスメディアは、民間労働者とくに非正規雇用労働者の窮状に対する怒りが、公務員労働者・教育労働者に向けられるように執拗に煽っています。しかし、教職員も含めた公務員の給与が徐々に引き下げられていく中で民間企業の労働条件と給与水準が著しく悪化し、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の分断が強化され、非正規雇用労働者への著しい低賃金と不安定雇用状況の押しつけの中で、相対的に公務員労働者が優遇されているかのような状況が生み出されているにすぎません。
 労働者が内部対立に陥れば、いっそう状態が悪化するだけです。対立と分断をあおっている橋下自身は年収3億円ものタレントでした。橋下知事の、マスメディアの、もっといえば経営者や資本家の分断策に乗せられてはいけません。橋下知事が狙っているのは、府民の未来を保障することではありません。公務員給与を象徴的に削減することによって、「公務員も血を流したから、府民も犠牲を甘受せよ」と、府民生活に関わる財政支出の大幅カットを認めさせようとしているのです。財政赤字の責任が、教員の責任でも府職員の責任でも、また府民の責任でもないということは明らかです。一方で、りんくうタウン2593億円、泉佐野コスモポリス200億円超(いずれも府の損失負担)の巨額損失に加え、執行予定として「維新プログラム」が認めた「未執行額」=1兆5000億円もの巨額の継続公共事業とツケ払いを継続しようというのです。橋下知事は、これら国の直轄事業を「聖域」とした理由を「大阪府に裁量権がない」としています。国にものを言っていくためにも、まず全国のトップを切って大阪府職員給与を全国最下位にし、府民生活の大胆な「切り詰め」を行うのだとしています。府民に犠牲を強いるが、とりあえず「国策」には協力する!?これほど人を馬鹿にしたごまかしはありません。府民と職員の生活より、この巨額支出を保障することが重要だというのでしょうか。これが橋下の狙っていることです。民間の労働者も非正規の労働者も、そして広範な勤労人民にとっても、責任追及すべき相手は労働者の内部にいるのではありません。橋下知事は「聖域無き」と言いながら実際には国とは争っていません。世論の批判の強い淀川4ダムについてさえ、いまだに「勉強する」「内容を十分に理解した上で」と「慎重姿勢」を崩していません。公務員や社会的弱者、府民に対しては、当選直後から給与削減と医療・福祉・文化の切り捨てを「大胆に」「十分に理解もせずに」やりながら、国に対しては謙虚な、慎重な姿勢をいつまでも堅持する。これが橋下知事です。財界とマスメディア、国と自民・公明党が持ち上げるはずです。公務員や社会的弱者にとってばかりでなく、非正規労働者や民間の労働者、広範な府民にとっても、敵は、国家と独占資本であり、その意を実行する橋下です。労働者は民間も公務員も、非正規も正規も、いまこそ団結し、生活のために闘わなければなりません。

 新人事評価制度と給与カットの結合は、教育破壊を加速する

 大阪の教員の給与が高すぎる訳ではありません。今回の削減案がそのまま強行されれば、全国最低レベルとなります。その上で、橋下知事は、「『大阪維新』プログラム(案)」に新しい人事制度の導入について08年度中に結論を出すと明記し、公務員給与削減を新しい人事評価システムと結合しようとしています。昇給に差を付けるのではなく、給与カットに差を付けようというのです。橋下知事は、5月13日の講演で、「がんばって仕事をしている人としていない人の差を出すことは必要。一律カットは解消しなければならない」「がんばった人の給与は上げる」と話し、09年度にも新人事評価制度を実施する姿勢を示しました。民間労働者と公務員との対立を煽ったあと、今度は公務員の内部を分断して支配しようとしています。
 そもそも、「がんばった人」「がんばっていない人」という発想そのものが、教育労働や公務労働を全く理解していないと言わざるをえません。橋下知事の出身校である府内「有数の進学校」である北野高校で言えば、東大へ合格した生徒が「がんばった人」で、それをさせた先生が「がんばった人」になるとでも言うのでしょうか。習熟度別クラスの発想は、現状の少ない教員数のままで、効率よく一握りの「勉強ができる人」を「発見し伸ばす」のために、「出来ない人」と切り離すシステムです。
 学校には、さまざまな子どもたちがいるようにさまざまな教員がいます。その教員たちは、学年担任団や教科担任団として集団で互いに協力しながら、子どもたちの現状をとらえ、どの子どもたちも伸びていけるように援助しています。子どもたちは、様々な家庭環境にあり、さまざまな性格、特徴をもっています。その教員たちが、「できる人」と「できない人」に区別され、「できない人」には制裁措置として給与を削減されるとなると、教員の目は「できない子」「できそうもない子」には向かいません。管理職の目に見える形で「できる子」を作ることが、分断された教員の目標にされてしまいます。まさに、教育の破壊です。
 橋下財政改革は、府民と府職員の生活を奪い、公務員を分断し、子どもたちの教育を破壊するものです。府民として絶対に反対します。

(2008.6.21.A)



参考:大阪新勤評反対訴訟ホームページ
http://www7b.biglobe.ne.jp/~kinpyo-saiban/index.html