平和と服喪の行進

12月28日 −− 陽光の一条の光り

by.ギラ・シヴィルスキー





 今日は、暗澹たる中東における、陽光の一条の光であった。

 午前9時30分、主催者は、行進をひとまとまりでいくか2手に分けるかということをまだ議論していた。というのも、警察が我々に道路上を歩く許可を与えるのを拒否し、多少広めの歩道上に我々を押しとどめようとしたからである。10時半ごろまでには、我々は、既に集まっていた大群衆を抑えられる見込みはないであろうと見てとった。

 驚くべき数の人々が、たいていは喪服を着て、今日の行動のために集まり、占領(the Occupation)のあらゆる犠牲者−−パレスチナ人もイスラエル人も−−のための哀悼の行進を始めた。「公正な和平をめざす女性連合」の呼びかけに応えて、世界中からの人々が今日、この監視の広場にわざわざ足を運んだ。行進開始の合図があると、我々は皆、お互いに混ざりあって−−イスラエル人、パレスチナ人、ヨーロッパ人、アメリカ人−−、そして、ゆっくりとした厳かな行進を始めた。大部分は黙して、しかし、長い行進の列の中央で二人の女性ドラマーによる葬送のリズムだけは鳴り響いて。極右が我々の行く手で対抗デモを演じたが、彼らの少人数(約30人)と怒りの叫びは、我々自身の尊厳に満ちた存在感の力を劇的なものにするのに役立っただけだった。

 我々は、巨大な横断幕「占領は我々すべてを殺しつつある」を先頭に掲げて進んだ。同時に、黒地に白文字で「占領をやめろ」と書かれた幾百のプラカード、平和を求め、イスラエル国家と並ぶパレスチナ国家を要求する標識、この美しい都市エルサレム、かくも長くかくも多くの人々に愛されたこのエルサレムを分かち合うことを求める標識、等々が数多く掲げられた。季節はずれの暖かくすがすがしい冬の朝であった。そして我々は、このように共に行進しながら、にわかに希望に満ち力強く感じていた。警察は我々全員に歩道を歩かせようとしたが、すぐに我々は、道路を人で埋め尽くして路上いっぱいに広がり、予定のコースに沿って交通を遮断した。そしてエルサレムの「黒衣の女性たち」の長期にわたる支援者である「エズラ」が我々の間を歩き、1000本の赤いバラの花を黒衣の女性たちに配っていた。バラの花が尽きるまで。ただし女性たちの数は尽きなかった。

 我々は、エルサレムの旧市街に入る主要な入口の一つである歴史的に有名なジャファ・ゲイトのすぐ外の、広く新しい広場へ向けてゆっくりと歩を進めた。みんなが到着するまでに、我々は、もうこの広場を完全に埋め尽くし、ゲートの中やそれに続く道路に沿って人が溢れた。ステージの向こうに背景として、美しい城塞が旧市街の壁から聳え立ち、ゲッセマネの谷が息をのむような光景で広がっているのが見えた。

 全プログラムが、共同司会進行役のダリット・バウムとカミリア・バデル・アラフによって、ヘブライ語とアラビア語で進行されていった。彼女らは、このイベントに参加したクネセット(イスラエル議会)議員−−Muhammed Barake, Naomi Chazan, Zehava Galon, Tamar Gozansky, Anat Maor, Issam Makhoul, Mossi Raz−−に謝意を表し、さらにベルギー、カナダ、イギリス、フランス、イタリア、ポルトガル、スペイン、アメリカの代表団に謝意を表した。前イスラエルMKで「黒衣の女性たちの」長年のメンバーであるマルシア・フリードマンが、この同じ日に連帯行動が計画された世界中の118か所のリストを読みあげた。(アデレードからザラゴザまで、我々のウェブサイトでその全リストを見ることができる。http://www.coalitionofwomen4peace.org

 スピーチは、イスラエルにおける人権問題の第一人者で前外交公使シュラミット・アロウニーで始まった。彼女は、占領を終わらせようとする我々の闘争を、ネルソン・マンデラやマルティン・ルーサー・キングに導かれた闘争に比肩するものと評価し、この闘いは苦難に満ちたものであるけれども必ず勝利の王冠を獲得するであろうということを、我々の心に強く印象づけた。彼女に続いて力強いスピーチが次々に行われた。−−ヌリット・ペレッド・エルハナン、EU議会から表彰を受けたサハロフ平和賞受賞者で、エルサレムでのテロリストの爆弾で殺された13歳の女の子スマーダルの母親。ザヒラ・カマル、勇気あるパレスチナ人平和運動活動家であり女性と労働者の権利のための活動家でもある。彼女は、エルサレムに来てこの集会に参加するために、封鎖の裏をかいて出てきたのであった。ルイザ・モルガンティニ、怒りを抑えられないイタリア人EU議会メンバーで、中東の女性平和運動の献身的な支援者である。クフルード・バダウィ、「イスラエルのアラブ人学生連合」の議長。ヴェラ・リッチェンフェルズ、17歳のポルトガル平和運動活動家で、平和のために活動している世界中の若者を代表して。

 これらのスピーチは、聴衆に強く訴え感銘を与え、鼓舞するものであった。それにもまして私自身は、平和と人権のための活動に並々ならぬ献身を示してきたイスラエルの13の組織による、燈明のセレモニーに特に感動した。各々の代表が、自分たちの活動に関わる一つの側面につき一つの燈明をともした。−−殺された人々、負傷した人々、家を取り壊された人々、果樹を根こそぎにされた人々、生活を破壊された子供たち。更に、絶望に屈することを拒否し、この悪夢を平和と友好に転換させるために闘い続ける人々の、さまざまな努力。(これら諸組織の名前と簡単な紹介は後に示している。)

 このようなスピーチなどでの言葉は、この地域では全くといっていいほど聞かれないものである。しかもイスラエル人とパレスチナ人がいっしょになって、これほど公然と、というのは全くない。そういう状況のもとで、我々は、中東ではめったに聞けないコンサート−−パレスチナ人とイスラエル人の演奏者による「平和ハプニング」−−を催したのである。それは、エリシェヴァ・トリオ−−ディモナから来た3人の黒人ユダヤ人プロ演者−−が、ソウルとロックのアレンジで平和の歌を歌って始まった。詩の朗読があり、寸劇もあった。またリダ/ロッドから来た驚くべき若いパレスチナ人のラップのデュオが、アラビア語とヘブライ語の政治的叙情詩を披露した。最後を締めくくってエリシェヴァ・トリオが再登場し、その希望に溢れた歌声に、多くの人々が腕をつき上げ、身体を揺らし、いっしょに歌った。

 コンサートが終わった時、ほとんど誰も立ち去りたくないと感じ、平和が本当に可能なことであるという実感から離れたくないと感じていた。幸いにも我々は本当に解散する必要がなかった。というのは、「ピース・ナウ」がジャファ・ゲイトのすぐ内側で独自の楽天主義的な集会をやり始めたからである。そこではパレスチナ人とイスラエル人が「平和宣言」に署名して、市街の空高くハトを放つという趣向であった。パレスチナ人とイスラエル人が旧市街の路上を行き来し、このすばらしい暖かな雪解けの空気をしっかり抱きしめようとしていた。暴力と悲劇のこの長い冬のなかで。

 この日の夕刻、私はイスラエルのテレビを見て、今日エルサレムを席巻した平和への希望について何らかの報道があるかどうかを確かめた。「女性連合」のイベントについても「ピース・ナウ」のイベントについても何もなかった。もっとも、「女性連合」の行動は今日何回かラジオニュースになったのを聞くことができたのだが。我々は、これまでもこういうことには慣れている。私は、今日の朝シュラミット・アロウニーが述べた言葉を思い浮かべた。「たとえイスラエルの“愛国的な”メディアがあなたがたを無視しようと努めても、あなたがたの声が広く伝えられ、多くの人々があなたがたの大義に加わるであろうことは、疑いありません。あなたがたの声は、自由と正義と平和というヴィジョンであるが故に、黙殺を打ち破るでしょう。」

 それが実現するようになることを切に願う。今日私は、これまでずっと長らく抱いてきた希望をずっと上回るほど希望に満ちた気持ちでいる。

 今日私たちに連帯して参加して下さった世界中のあらゆる人々に感謝します。集会に直接参加された方々にも、様々な形で寄与して下さった方々にも、心のなかだけで参加された方々にも。

 Shlom,salaam,(ヘブライ語とアラビア語で「平和」−−訳者)
 ギラ・シヴィルスキー
 エルサレムより


(燈明のセレモニーの13組織。アルファベット順。)
●「Bat Shalom」−− The Jerusalem Link のイスラエル側窓口 A Women's Joint Venture for Peace 。パレスチナ女性との友好を通して平和を追求している。
●「Gush Shalom」−−占領を終わらせるために闘う確固とした闘士たち。最近“Alternativeノーベル平和賞”を受賞。
●「High School seniors」−−占領を支える軍隊への兵役を拒否することを宣言した書 状に署名した、イスラエルの高校の高学年生のグループ。
●「Israel Committee Against Home Demolition」−−パレスチナ人の家屋を取り壊すという犯罪を暴露し終わらせることを追求している。
●「Machsom Watch」−−軍事検問所でのパレスチナ人の虐待をなくすために、検問所を監視している女性たち。
●「Mothers and Women for Peace」−−以前は4つの母親たちの運動であった。それら はレバノンからイスラエル軍を撤退させることに大いに貢献した。
●「New Profile」−−イスラエル社会の軍国主義を終わらせようと、良心的兵役拒否を 支援している。
●「Peace Now」−−占領を終わらせるために大衆を動員している。また占領地での入植 の不法性に焦点を当てている。
●「Rabbis for Human Rights」−−占領という不正義を終わらせるために、ユダヤ人の 宗教的観点でもって闘いに貢献している。
●「Ta'ayush」−−イスラエルのユダヤ人市民とパレスチナ人市民の友好。占領地中で援助を提供し、占領への抵抗を支援している。
●「TANDI」−−アラブ女性の諸権利のために、またイスラエル内でのユダヤ人とアラブ 人の共存のために闘っている。
●「Women in Black」−−占領を終わらせるために1988年にエルサレムで設立され、暴力と不正義をやめさせるために世界中に監視所をもっている。
●「Yesh Gvul」−−占領地での兵役を拒否するように兵士たちに呼びかけている。



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