反占領・平和レポート NO.17 (2002/05/17)

5/11テルアビブ10万人行動:ニューインティファーダ始まって以来最大の大衆行動
○ガザ侵攻を阻止する圧力にも
○「今すぐ占領地から撤退せよ!」「もうたくさんだ!」の声を結集
○シャロン支える労働党に見切りをつける新党結成の動きも


■5月11日に「ピース・ナウ」主催の反占領・平和行動が行われ、「今すぐ占領地から出ろ!」をスローガンに、10万人が結集しました。4/27に反撃の狼煙をあげたイスラエルの反占領平和運動は、シャロン=ペレス政権打倒を明確化して反転攻勢に転じました。
 今回のシャロン政権の暴挙は、イスラエル国内の反戦平和運動の新たな飛躍をもたらしました。「女性連合」や「グッシュ・シャロム」を中心とした運動は、パレスチナ人民と固く連帯し、主要スローガンでパレスチナ人民と共通のスローガンを掲げ、4/27に1万人を結集しました(「反占領・平和レポートNo.16」)。それから2週間後、「占領地からの撤退(1967年国境までの完全撤退)」を掲げる「ピース・ナウ」を中心とする運動が、「女性連合」や「グッシュ・シャロム」なども協力・参加して、10万人を結集しました。
 この大衆行動の画期的な意義は、1)占領地からの完全撤退を要求して、従来より1桁飛躍した10万人を結集したこと、一昨年9月末のニュー・インティファーダ勃発以来最大の大衆行動になったこと、2)その大衆的な圧力が、イスラエル軍によるガザ侵攻を思い留まらせる重要な要因になったこと、3)労働党内で連立離脱を求めていた人々が、大衆的支持のもとに、ついにシャロンを支え続ける労働党に見切りをつけ新党結成へ動こうとしていること、にあります。

■5月7日、テルアビブ近郊のリション・レツィヨンでハマスによる自爆テロがあり、15人のイスラエル人が死亡しました。訪米していたシャロンとブッシュの会談に合わせて行われたものでした。シャロンは即刻帰国し、8日夜には緊急治安閣議で「報復攻撃」を決定し、ガザ周辺に軍部隊を終結させ、予備役の緊急召集も行いました。しかし、結局ガザ侵攻は中止されました。その主要な理由は3点だと考えられます。1)ジェニンに象徴されるパレスチナ人民の死に物狂いの抵抗が、ガザ侵攻に伴うイスラエル軍の犠牲の大きさと軍内部の動揺を、シャロン政権と軍中枢に考慮せざるをえなくさせたこと。2)イスラエル国内の反占領平和運動の再活性化と反占領の国内世論の高まり。3)不十分ながらも国際世論の一定のたかまり。

■大手メディアの報道では、ブッシュ=シャロン会談でアメリカがイスラエルに圧力をかけて、国際会議の開催とパレスチナ国家樹立に努力しているかのように描かれました。しかし新聞報道では、会談後ブッシュは「(シャロン)首相に、何をしろと言うつもりはない。」「イスラエルは主権国家だ。」と述べたことが報じられました。これは、イスラエルが再び「報復」という口実で新たな軍事侵攻を行うことにゴーサインを出したものに他なりません。
 アメリカの支持のもとでも、今回イスラエルはガザ侵攻ができなかったのです。シャロン政権の超強硬路線は、実はその基盤は極めて脆弱です。攻め続けること、侵略行為を続けることで、やっとのことで様々な諸矛盾を押さえ込んでいるのです。
 シャロン政権は、一時的な支持の高まりの後、左右からの攻撃にさらされ、政権の外からもうちからも批判が高まり、再び政権の危機を迎えはじめるに違いありません。

 イスラエル内の反占領平和運動の新たな前進を、ギラ・スヴィルスキーさんが報告しています。その翻訳を以下に紹介します。

2002年5月17日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局




5/11テルアビブ10万人行動
ひっくり返る転換点?(Tipping Point?)

 2002.5.12
 友人の皆さん、

 この週も、ぞっとするようなことが連続しました−−リション・ラツィヨンとベエルシェバでのパレスチナ人の自爆、トゥルカレムへのイスラエル軍の再侵攻、いたるところでの冷酷な外出禁止令−−。しかし、潜在的なものとしてある最悪のシナリオ、ガザへのイスラエルの侵攻は、遠ざけられたようです。世界で最も人口密度の高い地域のひとつであり、底知れぬ貧困と既に耐え難いほどの生活条件にあるガザ地区、このガザ地区への攻撃が行われていれば、その諸結果はジェニンの悲劇が小さく見えるほどの大悲劇をもたらしていたことでしょう。

 何がシャロンにこの侵攻を思いとどまらせたのでしょう? イスラエルの解説者たちは次のように述べています。軍事行動の詳細が何人かの将校と政治家によって漏らされ、それがテロリストに隠れるチャンスを与え、また軍の通るところに仕掛け爆弾をしかけるチャンスを与えた、と。あるいは、国連の調査団をジェニンに入らせなかったことで国際的な支持をある程度なくしてしまった直後に、シャロンは世界を再び怒らせたくはなかったのだ、と。それで、侵攻と世界的な非難のかわりに、シャロンは、アメリカの納税者の苦労して稼いだお金から2億ドルの追加支援を与えられました。

平和活動

 この週は、また、イスラエル平和運動の活発な活動に満ちてもいました。「公正な和平をめざす女性連合」のメンバーは、静かだが力強い会議をもちました。イスラエルの、平和と社会的正義をめざす諸組織の指導者200人を一堂に会し、当地での占領と貧困の結びつきについて、戦略的討議を行いました。イスラエルは入植地と「安全保障」とに金を注ぎ込むので、イスラエル経済は、深刻なリセッションと10%の失業とどの先進国よりも貧富の差が大きいという事態におちいっています。「金は、占領のためではなく、貧者のために」という一般的なテーマの下に、いくつかの行動が既に行われました。(そしてまだ他にも計画されています。)

 軍務拒否者−−占領に奉仕する軍務を拒否する兵士−−の隊列が、大きくなってきています。現在までに450人以上が軍務拒否の声明に署名し、数百人が「イェッシュ・グヴル(限界がある)」に加わりました。何十人もが収監され(その中には私の娘の親友も含まれています−− we're proud of you, Amichai!)、そして、もう釈放された人もいます。イスラエルのメディアは、現在、この現象が広く知られるようにすることを控えています。イスラエルで現に起こっていることのレポーターとなるのではなく、現政府のチアリーダーとして振舞うという方針の不可分の一環として。

 「タ・アユッシュ(アラブとユダヤの友好)」の組織は、身を切るような連帯活動を続け、砂漠の中の軍事収容所への訪問を計画しました。そこには、数千人のパレスチナ人が「行政拘束」で−−裁判なしで、正当な手続きなしで、証拠の開示なしで−−、テロリストであるという告訴理由のもとに収容されています。ガザ侵攻が切迫したとき、「タ・アユッシュ」は人員を再編成して、攻撃を挫折させようとガザへ向かいました。別なところでは、「グッシュ・シャロム」の活動家の勇敢なグループが、アラファトを追放しようとする企てを阻止するためにラマラに入りました。その効果についてのうわさは一般に知れわたりました。

「ピース・ナウ」

 しかし、この週の、これまでで最も人々を力づけるイベントは、昨夜テルアビブで行われた「ピース・ナウ」の大衆集会でした。約10万人のイスラエル人が、「今すぐ占領地から出ろ!」を要求して街頭に出ました。これは、20か月前にアルアクサ・インティファーダが始まって以来最大の大衆集会でした。(実際、集会が終わるまでに「ピース・ナウ」は15万人が参加したと発表しました。)

 メディアは、それを最小限に描き出そうとし始めました。すなわち、6万人に「すぎなかった」とか、たくさんの人々が現れたが熱心ではなかった、とか。それは全く事実とは異なります。私達を含む参加者は、自分自身の目で見たことを祝うことができます。ラビンが暗殺される前、最後の大衆演説をおこなったラビン・スクウェア、テルアビブのあの巨大なプラザが、イスラエルのあらゆるところからやって来た人々であふれ返りました。その人々は、シャロン=ペレス指導部が私達を連れて行こうとしているところ−−いっそう深い悲劇に突き進み、以前にもまして平和からはほど遠いところ−−について、「もうたくさんだ!」と叫ぶためにやって来たのでした。

 昨夜の政治的ハイライトのひとつは、労働党が政府内にいることへの激しい反感を、愛党心の強い労働党員をも含む主要なスピーカーたちが示し、そして、「平和党」−−次の選挙で労働党に取って代わるであろう社会民主主義政党(a social democratic party) −−の形成を要求したことです。私たちは新党の出現をここ数か月のうちに見ることになると思います。

 また、感動的なハイライト(少なくとも私にとって)が、いくつもありました。ヤファ・ヤルコーニは、軍の行動を批判し軍務拒否者を支持したために、メディアその他から激しく非難された歌手ですが、彼女が登場して歌ったとき、一大拍手喝采がありました。もうひとつ別な感動の瞬間では、2か月前に死んだ兵士の母親が、次のようにきっぱりと述べました。ただひとつの入植地も、私たちの子供たちの血を一滴たりとも流す価値はない、と。そして最後に、ヨシ・ベイリン(労働党の中心的メンバーの一人で、この間、労働党の連立離脱を主張し続けてきた−−訳者)がこう宣言しました。「彼らはラビンを二度も殺そうとしています。かつて私たちは、まさにここで、このスクウェアーで、彼を守ることができませんでした。しかし、今現在の、彼を殺そうとする試みを、私たちは決して許しはしません。」と。(ここでは、ラビンは和平という意味で使われている−−訳者)

 昨夜のデモンストレーションは、広範な世論に影響を与えるという点で決定的でした。この努力は、世界中の行動によって強められ、同時に当地で、イスラエル人とパレスチナ人の平和同盟によって強められねばなりません。占領は、やめさせることができるし、また必ずそうなるでしょう。

ギラ・スヴィルスキー
エルサレムより