2004年11月、イラク中部の都市ファルージャは阿鼻叫喚に包まれました。昼夜を問わない爆撃、病院への集中砲火、動く者は反射的に銃弾にさらされ、遺体は故意に路上に放置され、埋葬する肉親も容赦なく狙撃され、……瞬く間に6000人もの住民が殺されたと言われています。
 このような米軍の無差別殺戮に対し、日本に住む私たちはどれだけ関心を払ってこれたでしょうか? 残念ながら私たちはまだ、真実を知るところから始めなければならないというのが現状です。日本のマスメディアはこの米軍の戦争犯罪についてほとんど報道しませんでした。日本は現地に自衛隊という名の軍隊を送り出しているにもかかわらずです。

 私たちはなんとかして隠されたファルージャの惨状を訴える手段を持ちたいと考えていました。そんなとき、ダール・ジャマイルさんのウェブログ“Iraq Dispatches”に出会ったのです。ジャマイルさんはインターネットを通じて、イラク現地からイラク戦争・占領支配の現実、生々しい犠牲者の姿を発信し続ける、数少ない欧米系の独立ジャーナリストです。私たちはジャマイルさんと連絡を取り、日本でファルージャの現実を知らせるためにジャマイルさんの写真をパネル化したいと申し出たところ、ジャマイルさんの快諾を得ました。
 2005年2月19日〜20日、大阪市阿倍野区・阿倍野市民学習センターにて
 2005年2月、私たちは初めてのジャマイル写真展を大阪市内で開催しました。
 参加者からは、「むごすぎる」、「これがマスコミが報道しなかった大虐殺の実態なのか」、「米国に怒りを感じる」など、多くの感想が寄せられました。特に犠牲者の写真については「イラクの津波」として発表されたジャマイル氏のレポートが添えられ、今にも腐臭が漂ってくるかのような衝撃的な写真に「目を背けたくなるがこれが戦争なんだ」などの感想がつづられました。「ベトナム戦争世代」の参加者からは、「昔ベトナム戦争の写真で米兵士が『ベトコン』のボロボロになった死体を片手で下げていたのを突然思い出しましたが、印象はもっと深く強いものでした」と、米軍の侵略戦争の歴史の中でも類を見ないほどの「ファルージャの大虐殺」のすさまじさを感想として寄せられました。
 多くの参加者は、写真を撮ったジャマイルさんに、「生命がけの仕事に敬意を表します」「キケンな場所での活動なので、体に気をつけてこれからも写真を撮り続けてください」など活動への賛辞と感謝のメッセージを寄せられました。
 「ファルージャの大虐殺」は、「アブグレイブの拷問・虐殺」と並んでブッシュのイラク戦争・占領支配の無法性・犯罪性を明らかにする大事件であるとともに、最低でも10万人が殺害されたとされるイラク全土の犠牲の氷山の一角です。そしてその戦争は今も続いています。

 皆様の街・職場・学園でもジャマイル写真展を開催してみてはいかがでしょうか? 非営利目的であれば、どなたでも無料でお貸しいたします。
 詳しくは事務局までメールでお問い合せ下さい。
●第1部:ファルージャ難民 2004年11月
 ファルージャはあらかじめ予告された虐殺といえます。そのため20万人ともいわれる人々がファルージャから逃れ難民となりました。街に残った(米軍によって追い返された人も含む)のは5万〜10万人といわれています。
 難民の中には、虐殺から命辛々逃れてきた人もいます。彼らは口々に米軍の蛮行を告発し始めました。
●写真パネル10枚
●解説・引用キャプション5枚
●第2部:バグダッドの病院にて 2004年11月
 ファルージャ攻撃に際し、米軍はまず病院を襲撃しました。亡くなった者、傷ついた者の映像が報道されることを防ぐためだといわれています。その後も米軍はファルージャ市内に臨時に開設された病院などを執拗に攻撃しています。ファルージャの多くの住民は、治療さえ受けられれば助かるはずの命を喪い続けました。
 一部の患者はバグダッドの病院に移送されました。傷ついた人々を、私たちはこうして知るほかありませんでした。
●写真パネル6枚
●解説キャプション3枚
●第3部:ファルージャで虐殺された人々 2004年11月
 ファルージャの街は米軍に封鎖され、長時間誰も入ることのかなわない状態でした。ここにある写真は、米軍によって遺体の埋葬を許可されたイラク人男性によって取られた約100体の遺体の一部です。そのイラク人男性は、身内の安否を気遣う人々のためにその写真を撮ったのです。多くの遺体は腐敗し、犬に喰われています。
 米軍は長い間、死者を埋葬することを許しませんでした。そればかりか米軍の狙撃兵は、埋葬しようとする人の頭蓋を撃ち抜き続けたのです。
●写真パネル10枚
●解説・引用キャプション12枚
●第3部の写真は正視に耐えがたいものが多く、教材などには向かないかも知れません。(詳しくは事務局までお問い合せ下さい。)
●第4部:ファルージャ虐殺 2004年4月
 2004年11月のファルージャ虐殺は、突然おこった出来事ではありません。それを半年遡る4月には約1000人もの住民が米軍によって虐殺されました。しかしこのとき住民側は多くの犠牲にもかかわらず抵抗し続け、ついには米軍の撤退を勝ち取りました。
 この4月の敗北があったからこそ、米軍は選挙前にファルージャの街を根絶やしにしておきたかったのです。
 米軍による11月の完璧な報道管制は、4月の教訓でした。おこされた悲劇に対し、私たちにはあまりにも情報が少なすぎます。4月の写真は、11月の現実に少しでも迫る手助けになるでしょう。
●写真パネル15枚
●解説キャプション3枚
●第5部:劣化ウラン被害 拷問と虐殺
 イラク戦争で、米軍は大量の劣化ウラン弾を使用し、イラクの大地は放射能で汚染されています。放射能の影響を真っ先に受けるのは、何の罪もない幼い子どもです。多くの子どもがガン・白血病・先天性障害に苦しんでいます。この苦しみは半永久的に続きます。
 またアブグレイブに象徴されるように、米軍はだれかれかまわず日常的にイラク人を拘束・収監し、虐待を加えています。これはアブグレイブが明らかになった後でも基本的には変わっていません。米軍による占領が終わる日まで、止むことはありません。
●写真パネル10枚
●解説キャプション4枚

◆全部でA3サイズのパネルが91枚あります。
◆ダール・ジャマイルさんのウェブサイトはこちらです。

●パネルのサイズはすべてA3サイズ。ラミネート仕様です。

 ※ 裏に通し番号がふってありますが、展示の際には順番通りにこだわらなくても結構です。趣旨に合わせてご利用下さい。返却の際には、枚数を確認し、通し番号順にして返却して下さい。

●非営利活動のため、貸出料は無料ですので、貸し出した写真・パネルも決して営利目的では利用しないで下さい。また往復の送料だけはご負担ください。
 ※ 通常ゆうパックの着払いで送付しています。地域によって料金は異なりますが、1000円〜1600円ほどの負担を見込んでおいて下さい。(大阪発送・100サイズ

 また写真パネルに対するご意見・ご感想などをお寄せいただければ、幸いです。

●その他詳しくは、事務局までお問い合わせください。
          e-mail: stopuswar@jca.apc.org

ダール・ジャマイル氏プロフィール

 米テキサス州ヒューストン生まれ。テキサスA&M大学卒業。米国領ジョンストン島の大気モニタリング研究所に勤務し、古くなった化学兵器を焼却するプラント付近の大気のモニタリングに従事。
 1996年、アラスカに移り、翌夏デナリ山(マッキンリー)に登り、そこにとどまってガイドと救助の仕事をした。四肢麻痺のある友人の登山を援助した時に、その友人が生きるためにしている努力と、政府の政策が彼の人生に与える影響を知り、「政治的に目覚め、古いアメリカでの、無関心と無知の心地よい生活から引っ張り出された」。
 2000年、ブッシュが大統領職を「盗んだ」ことで、更に行動に駆り立てられた。9.11への軍事報復、イラク侵略に反対する活動を行う。
 「米国の『主流』メディアが、不法なイラク侵略と占領の真実をほとんど伝えていない」中で、真実を伝えようと、自らイラクに入る。2003年11月、自らのウェブログ“Iraq Dispatches”でイラク現地報告の連載を開始。2004年1月には、米軍のイラク人拘留者に対する拷問・虐待について、いち早く報じる。同4月と11月には、米軍による包囲、市民の虐殺が行われたファルージャについての記事を多数発信。
 とりわけ、ファルージャでのイラク人犠牲者の姿を数多くウェブサイトで公開し、「一般市民の犠牲は少ない」という、米軍とイラク暫定政府の宣伝が全くのウソであることを暴いている。目を背けたくなるような惨い写真も多いが、あえて公開する理由について、次のように語っている。「西洋のほとんどのメディアは、負傷したり死んだりした兵士や市民の、イラクでは日常的な恐ろしい映像を見せない」、「私がこのようにしたのは、戦争がどのように見えるかということを、人々が知ることは重要だと信じているからだ」と語っている(“The Face of War”2005.01.20より)。
 現在、自らのウェブサイトの他、米国の「ピープルズネットワークス」が運営する「ニュースタンダード」紙などに寄稿している。記事は、ポーランド語、ドイツ語、オランダ語、スペイン語、日本語、ポルトガル語、アラビア語に翻訳されている。

ダール・ジャマイル氏からのメッセージ

 親愛なる日本の皆さんへ

 この写真展が、イラクで起こっていることについての皆さんの知見を深める助けとなりますように。これは、皆さんにとってきわめて重要なことです。というのも、皆さんの国は今、占領下のイラクに軍隊を派遣しているからです。皆さんが心を開いてこの情報を受けとめて、そして大部分のイラク人が日々経験している真の苦しみを正しく認識してくださることを願っています。
 そしてこの情報によって、皆さんの行動が促進されることを願ってやみません。この不法で残忍な占領を支持するのではなく反対するよう政府に圧力をかけてください。

 敬具

 ダール・ジャマイル
 バグダッド

For the good people of Japan...

May the work of this organization assist you in deepening your knowledge about what is occuring in Iraq. This is of vital importance to you, since your country now has dispatched troops in occupied Iraq. May you take in this information with an open mind, and allow yourself to appreciate the genuine suffering most Iraqis are experiencing on a daily basis.
And may this information prompt you to act-to pressure your government to oppose, rather than support, this illegal and brutal occupation.

Best regards,

Dahr Jamail
Baghdad


 ジャマイル氏のウェブサイト http://dahrjamailiraq.com/
 「ニュースタンダード」紙のページ http://blog.newstandardnews.net/iraqdispatches/
 ジャマイル氏の活動を支える紹介ページ http://newstandardnews.net/dahr/index.cfm

 翻訳、情報発信しておられる益岡賢さん、いけだよしこさんのブログ『ファルージャ 2004年4月』ブログ