小泉靖国参拝違憲訴訟を傍聴して
〜アジア訴訟原告の一人として〜

 現在、大阪でのこの違憲訴訟は、3つの訴訟をかかえています。第一に、2001年11月1日、六百名以上の原告によって提訴された訴訟(アジア訴訟)、第二に、この提訴の際に原告たちに向けられた小泉首相の「おかしい人」発言についての名誉毀損訴訟、第三に、2003年2月17日、台湾原住民を中心とする236名の原告が提訴した第二次訴訟(台湾訴訟)です。
 アジア訴訟の提訴の時こそ、マスコミも注目しましたが、名誉毀損訴訟や、台湾訴訟に至っては、マスコミは黙殺状態です。傍聴人については、アジア訴訟の最初の数回は、原告側の傍聴が多かったのですが、現在では、靖国関係者が大量動員をしてきています。しかし、原告には、一定数の傍聴券が割り当てられていますので、この間、原告として傍聴できなかったことはありませんでした。ですから、できるだけたくさんの人にこの裁判の傍聴に来てほしいと思います。

台湾訴訟の意義
 7月に傍聴に行った時、裁判所の庭には、マスコミ関係者がテレビカメラなどを用意して、大量に陣取っていました。一瞬、「この訴訟もけっこう注目されているようだ」と思いましたが、後になって、別の裁判の取材であることがわかりました。もちろん、その日のニュースでは、台湾訴訟については何も触れられていませんでした。8月の傍聴の時も、報道関係者の姿は見ることがありませんでした。
 このように、マスコミではあまり取り上げられていない台湾訴訟ですが、実は、非常に大きな意義があります。台湾の植民地支配の実態が日本の裁判所で問題にされるのは、この訴訟が初めてだということです。
 正直言って、私自身もそうですが、この訴訟に関わっている人々でさえも、台湾における日本の植民地支配については、具体的なことを、ほとんど知らないのが実状だと思います。
 それは、台湾の人々にも知らされてきませんでした。今回来日された原告の一人、高金素梅(民族名チワス・アリ)さんは、日本軍による原住民族虐殺の写真をまったく偶然に見たことで、自分の民族の歴史を知ったのです。この怒りと悲しみが、彼女をこの訴訟の原告として突き動かす大きな原動力になっています。
 もう一人の原告、陳明忠さんは、台湾における日本の植民地支配の実態を明らかにするために、自分が少年時代に日本人から受けた屈辱を生々しく物語っておられました。これは、日本の復古的な人々だけでなく、台湾の親日派によっても、日本の植民地支配が美化され、正当化されている状況があるだけに、非常に重要なことです。

有意義な報告集会
 ところで、あまりに傍聴希望者が多くて入廷できなければ、行っても無駄だと思われている方はおられませんか。(今のところ、残念なことに、そういう心配はありません。)もしも、そうなったとしても、その後の報告集会も、原告の方々が、裁判では時間がなくて語れなかったことなどを、ざっくばらんな雰囲気の中で話されるなどして、とても有意義だと思います。
 お連れあいといっしょに来日された陳明忠さんは、日本の敗戦後、台湾を統治した国民党政権にも失望し、1947年、その打倒のための武装蜂起に参加しました。そのために、二度にわたる合わせて21年間の監獄生活を強いられました。お連れ合いとは、最初の10年の監獄生活の後、結婚されたという話を聞いて、何という深い結びつきのご夫婦だろうと、つくづく感銘を受けました。
 もう一人の原告、チワス・アリさんはタイヤル族出身の立法議員(日本の国会議員にあたる)です。元々政治活動には無縁の“アイドルタレント”出身だったのですが、いまや、台湾の原住民族の尊厳を取り戻す運動を率先して行っています。その、なにものをも恐れない気迫と、はつらつとした姿に、私は思わず“ジャンヌ・ダルク”を想像してしまいました。この台湾訴訟に関して、台湾の元日本軍軍人やその遺族が、靖国神社側の補助参加人として参加していますが、彼女は、この人々について、植民地支配の中で徹底した皇民化教育を受けてきたのだからそうする気持ちも分かると、個人的な非難はしませんでした。私は、この言葉の中に、彼女の優しさと根深い悲しみとを感じました。

 裁判での発言等々は、報告集に掲載されるとは思いますが、やはり、現実に自分の目で原告の人々の姿に触れ、その肉声を聞くと、深い印象が心に刻まれることと思います。

今後の公判に一人でも多くの傍聴を

 9月26日には「おかしい人」名誉毀損訴訟の判決があります。10月、11月も多くの公判があります。ぜひ、原告および支援者の方々が傍聴席を埋めつくされんことを願います。

(この報告を書くにあたっては、原告意見陳述書、「反天皇制市民ネットワーク」第15号(特集 台湾先住民の靖国訴訟)およびアジア訴訟団の報告集「非戦」第11号を参考にしました。)                                 
(8/30 大阪 Na)


今後の予定についは、詳しくは、小泉首相靖国参拝違憲アジア訴訟団 大阪訴訟ホームページをご覧下さい。
http://www005.upp.so-net.ne.jp/noyasukuni/

小泉首相靖国参拝違憲台湾訴訟
第4回 日 時  2003年11月 6日(木)午前10時00分〜
     場 所  大阪地裁202号法廷
第5回 日 時  2003年11月27日(木)午前10時30分〜
     場 所  大阪地裁202号法廷
第6回 日 時  2003年12月25日(木)午前10時30分〜
     場 所  大阪地裁202号法廷
第7回 日 時  2004年 2月19日(木)午前10時00分〜
     場 所  大阪地裁202号法廷

小泉首相靖国参拝違憲訴訟
第8回 日 時 2003年10月 6日(月)午前10:00〜
     場 所 大阪地裁 202号法廷
第9回 日 時 2003年11月10日(月)午後1:30〜
     場 所 大阪地裁 202号法廷

「おかしい人」発言名誉毀損訴訟 
第6回 日 時  2003年 9月26日(金)午前11:00〜
     場 所  大阪地裁