シリーズ:自衛隊派兵のウソと危険
シリーズ2: 自衛隊の「給水活動」のウソ・ごまかし@
給水活動は誰のため?−−−−−−−−−−−
最初の計画は米軍への給水だった!


1.自衛隊派兵だけが計画通り。後は何もかも場当たり的で泥縄式。−−ここにも本質が出ている。
 「復興支援活動」に当たる自衛隊。現地の人々のために給水活動、医療支援、学校・病院の再建、等々、尊い任務に命をかけて取り組むために派遣される自衛隊員。心温まる自衛隊員と現地の人々との交流。等々。−−政府やメディアが連日発表し報道するその内容のデタラメさには呆れ返る。大きな顔をして「人道復興支援」を言うなら、どんな壮大かつ厳密な計画があるのか。その全体像をまず明らかにすべきである。
 しかしそんなものはない。自衛隊派兵の粛々たる進行、その前の射撃訓練・殺戮訓練、日本やクウェートでの日米共同訓練等々、軍隊の出兵はほぼ計画通り進められている。「人道」や「復興」など、そもそも付け足りのものは何もかも泥縄式、全てがこれからなのだ。
 先遣隊が行き、本体が出発した後に、大慌てで取って付けたように「人道復興支援」のニーズをご用聞きのように調査し聞いて回る自衛隊員の姿。羊を献上し、それ以外にも札束やおいしい買収話を持って、イラク人の関心を買って回る自衛隊員の姿。−−これらは滑稽でさえある。日本の世論が、こんな単純なウソ・デタラメにごまかされるなら、ごまかされる方が問題だと言い切ってもいい。

 2月19日に新聞やTVのトップをにぎわした「自衛隊、サマワで医療支援開始」なるものは一体何なのか。防衛医大で学んだ医官3人が、サマワ病院からの強い要請で急きょ派遣され「症例検討会」に参加した。ただそれだけのことだ。直接医療行為をする予定はないと言う。これが果たして「医療支援開始」と大口を叩くほどのことなのか。サマワ病院側は医療器材・医療機器・医薬品の支援を要望している。−−結論は明白だ。自衛隊である必要などどこにもない。医官である必要はどこにもない。憲法違反まで犯し重武装で陣地を作ってまで陸海空3軍を派兵する必要はどこにもない!

 万事がこの調子。「人道復興支援」の美名の下、米軍支援のために何が何でも自衛隊をイラクに送り込みたい。「人道復興支援」と言えば誰もが自衛隊派兵に反対できないと、政府は考えているのだ。「人道復興支援に反対するのか」「助けに行くことがなぜ悪い」。政府与党や派兵支持勢力が頻繁に口にする言葉である。

 今回は、“自衛隊の「給水活動」のウソ・ごまかし[その1]”として、「給水活動」が持ち出された当初、その目的が純然たる米軍給水支援であり、民衆への給水支援は事実上全く眼中になかったことを明らかにしたい。自衛隊による「人道復興支援の柱」である「給水活動」なるものが、決してイラク民衆の支援を目指したものではないこと、それがあくまでも自衛隊派兵の口実であることを跡付けていきたい。


2.給水活動の対象は米軍−−自衛隊の「人道復興支援」の“原点”は昨年の「イラク復興特別委員会」の議論にある。
 昨年6、7月の「イラク人道復興支援並びにテロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する特別委員会」(イラク復興特別委員会)では、「給水」支援に関する政府の本音が次々と語られた。改めてその時の議事録を読み返してみるならば、現在サマワで進められている「支援活動」の真意を疑わざるを得ない。「給水」の主要な目的が米軍支援であることを、政府は堂々と、明確に主張しているのである。
 給水活動が誰を対象にしているか、駐屯している米兵に対してか、あるいは一般人に対してか。「イラク復興特別委員会」における委員からのこのような質問に対して石破長官は次のように回答している。

安定支援活動(米兵支援)も、それから人道支援活動(民衆対象)も、これは両方ともそれを行うことがございます。基本的にはイラクの人道支援ということがより重点を置かれることになるかとは思いますが、実際問題、それでは安定化支援活動というものを排除するかというと、そういうことにはなりません。それが、我が方が行う行為が武力の行使に当たらないということであります限り、そしてまた、再三答弁申し上げておりますように、例えば米軍の行う活動が、それが国際的な武力紛争の一環としてのものではなくて、地域の安定化に資するものであるとすれば、それを支援することは何ら問題になるとは考えておりません。
(イラク復興特別委員会 2003年7月2日)

 米軍への給水活動によって「地域安定化」が実現しすればイラク民衆のためになることである、それは自衛隊支援の理念に合致するものだ、このようなことを石破長官はぬけぬけと言い放っているのである。この当時、「給水活動」の対象は米軍兵士だったのである。

 さすがに「人道支援に…より重点が置かれる」と発言しているが、これは本音ではない。なぜならば当時政府は、米軍からバグダットの兵士への給水支援の要請を受けていたのである。政府答弁の基礎となっている「与党イラク現地調査」(訪問期間:2003年6月20〜25日)に加わった一人は、米軍から「支援要請」について次のような感想を述べている。

「…バグダッドやその周辺に展開している米軍兵士に配給されているのは、飲料や生活用に2リットルボトルで一人1日2本だけ。大量の水を浄化できる自衛隊の浄水装置には強い関心を持っていた」(山本保 公明党参院議員)。

 当時、深刻な水不足が米軍兵士を襲っていた。調査団は、CPAブレマー行政官から直接、米軍への協力(給水)を求められたのである。米政府から直接の圧力もあった。このような圧力を受け、石破長官の発言がなされているのである。「イラク復興特別委員会」では、米軍が完全に掌握しているバグダッド空港なら比較的な安全な場所だ、水源地が近くにある等々、積極的かつ具体的な提案も参考人、委員からなされた。「給水」が米軍支援であること、これが当たり前の雰囲気の中で粛々と審議が進められたのである。
 またイラク復興特別法案が可決された後、米軍がバグダッド北方のバラドへの給水支援を求めたことが明らかになった。バラド周辺に展開する米軍部隊はバグダッド周辺以上に深刻な水不足だったようだ。このように政府は常に米軍からの圧力を受け、それに応えるべく国内の世論操作を進めていったのである。戦地に展開する米軍への給水活動が実施されなかったのは、国内世論の反発が予想以上に強く、またレジスタンス勢力の活動が活発化し誰が見ても当地が「非戦闘地域」と言える状況になかったからに過ぎない。

 このように当初の議論を振り返ると、対米支援の自衛隊派兵がまず最初にあり、その理由を後からこじつけ、その理由もコロコロ変えていることが分かる。そして世論の反対が強く、現地情勢も危険な方向に急変したため、最後の最後にやむなく南部サマワの「人道復興支援」に変わっていったのである。給水活動ひとつ取って見ても、当初はイラク民衆は事実上全く念頭になかったのだ。「イラク民衆のためにイラクに派遣される自衛隊」、「民衆のために汗を流す支援」。このようなイメージは後から巧みにすり替えられていったのである。
※「イラク人道復興支援並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する特別委員会」 会議録。http://www.shugiin.go.jp/index.nsf/html/index_kaigiroku.htm
※「与党イラク現地調査団報告」(2003年6月26日)
http://www.jimin.jp/jimin/saishin03/pdf/seisaku-006a.pdf
※山本 保(公明党参院議員)の感想  公明党デイリーニュース(2003年7月1日)
http://www.komei.or.jp/news/2003/07/01_06.htm
※毎日新聞 米がバグダッド北方のバラドへ自衛隊派遣を打診(2003年7月17日)
http://www12.mainichi.co.jp/news/search-news/897806/83o838983h81408b8b9085-0-2.html
※毎日新聞 米軍支援を再検討 防衛庁 (2003年7月23日)
http://www12.mainichi.co.jp/news/search-news/897806/8b8b9085814083C838983N-40-47.html


3.対米給水支援をすることで、米軍に「治安確保」(民衆弾圧)に専念してもらう。
 国会で議論された内容は、それにとどまらない。自衛隊に米軍支援を実施させたい勢力は、参考人に元防衛庁防衛研究所副所長・前川清氏を担ぎ出し、「イラク復興特別委員会」の場で米軍支援に向けた露骨な議論を仕掛けたのである。7月1日の委員会の発言において前川氏は自らを「(元)防衛駐在官として中東に広く勤務し…」と紹介したが、彼は「日本戦略研究フォーラム」の“政策提言委員会”の一員でもある。「日本戦略研究フォーラム」には、多くの衆参の自民党議員(例外として民主党小沢一郎議員)や大企業トップ等政財界人が多く加わり、元大本営参謀である瀬島龍三が会長を務めている“うさんくさい”組織である。

「バグダッド周辺の連合軍、これは米軍主体ですけれども、これは飲み水の大半をクウェートから自隊であるいは役務で長距離を運んでいるわけですが、自衛隊がイラクに参りましてバグダッド周辺で浄水・給水支援をするということができるようになりますと、それ自体非常に有益なことですけれども、同時に、治安確保に多くの勢力を割いている連合体、特に米軍ですね、その分を治安確保の方に回すことができるということですね。それによって、治安確保を早期に実施できるという効果があろうかと思います。
 治安確保と人道復興支援というのは非常に密接な関係がございますのは御存じのとおりですけれども、治安復興がなくして人道復興、人道支援というのはできませんし、人道支援ができないと、これは生活危機からいろいろ犯罪が起こるということで、相互に密接に関係しているわけです。」

 言い換えれば彼は、給水支援は自衛隊が担う、米軍は占領支配、イラクの民衆弾圧に専念して下さい、と述べているわけである。イラクの占領支配を、米軍と自衛隊が役割分担し共同で担うべきだというのである。このような暴言が、国民にほとんど知られることもなく、堂々と国会でと討論された。彼の発言は政府はもとより、多くの財界の、自衛隊の給水活動の真の目的を率直に表明したものであろう。彼らの発想に中のどこに、民衆への「人道復興支援」への配慮があるのか。まったくない!イラク植民地支配を今なお続け居座り続ける米国、露骨な民衆弾圧を繰り広げる米軍に何とか後方支援したい、これが自衛隊の「人道復興支援」の本質である。
※イラク復興特別委員会 参考人質問 2003年7月1日
http://www.shugiin.go.jp/index.nsf/html/index_kaigiroku.htm
※日本戦略研究フォーラム:http://www.jfss.gr.jp/
 フォーラムの理念として、「経済一辺倒ではなく軍事防衛、軍事貢献にも努力せよ」、「米国との同盟を更に強化し、米国と対等の立場で協調し、共同して世界の平和、発展に尽くすべし」、このようなことが掲げられている。フォーラムの人脈は「政・産・軍」を広く網羅しており、軍事外交政策の提言のみならずMDの積極推進を掲げるなど、兵器産業の利害代弁者でもある。

 今回は、給水活動をめぐる初期段階の議論を紹介したに過ぎない。その具体的な活動内容、派兵される自衛隊の部隊構成、これらをさらに見るならば、「人道復興支援」の柱である「給水」は結局、米軍支援、自衛隊を何が何でも派兵するための「錦の御旗」に利用されているに過ぎないことが分かるだろう。そもそも彼らの主張する崇高な目的−−イラクの人々を助ける−−は、当初まったく念頭に置かれていなかった。イラクにおけるレジスタンス勢力の強まりとともに、自衛隊を強硬派兵する条件、環境が厳しくなるとともに、人々を欺くために付け加えられた屁理屈に過ぎないのだ。
 「人道復興支援に反対するのか」「助けに行くのがなぜ悪い」このような自衛隊派兵を正当化する強弁に対して、本当にイラク民衆のための「人道支援」なのかどうか、次回ももう少し給水問題にこだわって問い詰めて行きたい。

2004年2月23日