よそ事ではない。自衛隊イラク派兵師団のある北海道で今何が起こっているのか?
−−軍隊が発言力を増し表舞台に出てくる恐ろしさ−−


 イラクに最初に派遣される自衛隊師団のある北海道で今、自衛隊と「日の丸」「君が代」、自衛隊と憲法(言論・表現・集会の自由)、自衛隊と地方自治体、自衛隊と市民のイラク派兵運動をめぐって、きわめて重大な問題が発生しています。しかしこの事実は主に北海道新聞など地元の新聞でしか取りあげられず、事柄の重大さにも関わらず全国紙・マスコミではほとんど報道をしていません。
 従って私たちはまず全国の皆さんに、何が起こっているかをお知らせし、事の重大さ・深刻さを共に考えていただきたいと思います。その上で、今回の事態で明らかになりつつある自衛隊の本質を暴露・批判し、イラクへの派兵反対を確認し、さらに自衛隊という武装組織=軍隊が再び民主主義そのものを脅かすことのないよう民衆世論の力で歯止めをかけていくことを確認したいと思います。

(1)陸上自衛隊師団長の驚くべき発言。−−「君が代斉唱ない」と新年行事(互礼会)への欠席を通告。「デモや街宣活動があれば、雪まつりから撤退する」と恫喝。
 地元新聞等が伝える所によると問題のあらましはこうです。1月6日午前、第55回札幌雪まつり(2月5〜11日)で雪像製作などを行う陸上自衛隊第11師団の雪まつり協力団の編成完結式(於:札幌市南区の真駒内駐屯地)において、竹田治朗同師団長が、自衛隊のイラク派遣に対する反対運動に触れ「度が過ぎたデモや街宣活動があって協力する環境にならない場合は撤収も含めて検討する」と述べました。竹田師団長のあいさつは、同駐屯地内のグラウンドに整列した約900人の隊員を前に行われ、派遣反対運動に関し、「時節柄、筋違いのデモや街宣活動が行われるかもしれないが、毅然とした対応をしてほしい」とも師団長は述べたのです。
 札幌市はこれを受けて、都市公園条例をたてに、反対派の街頭宣伝などがあれば退去を指導する方針を出しました。そして、7日までに、雪まつりの会場に初めて監視カメラを設置するなど厳重な警戒態勢で臨むことを決めました。陸上自衛隊のイラク派遣に反対する「過激派」の活動や、「テロ」などを警戒、警備員も大幅に増強し、陸自真駒内駐屯地内の真駒内会場では客の手荷物検査も行うというのです。

 こうした師団長の恫喝発言の背景の一つに、昨年12月2日に札幌上田市長が自衛隊のイラク派兵反対を表明したことに、陸自および隊員が不満を募らせていることがあると言われていますが、ここに端を発し、なおかつ今回の問題の予兆のような事件がそれに先立ち起こっています。札幌市主催の新年互礼会で「君が代」の斉唱が行われなかったことを理由として陸自の幹部が新春恒例の互礼会を欠席した、というものです。
 上田札幌市長は弁護士時代の2002年2月、札幌南高校の卒業式での「君が代」斉唱をめぐり、札幌弁護士会人権擁護委員長として、生徒への人権侵害を認める勧告を同校校長に行っています。また翌2003年7月の市議会では国旗、国歌に対する考え方を聞かれ、「内心の自由に関する市民の意見を踏まえ必要な議論を行う」と答えていました。現在の時代状況の中でとても勇気ある発言だと思います。
 ところが、市長が互礼会で「君が代」斉唱を行わないことを決定したことに対し、陸上自衛隊北部方面総監部(同市中央区)と陸自第11師団(同市南区)は、同会への幹部の出席を取りやめたのです。理由について同師団広報は「(国歌斉唱がなくなったことで)出席しにくくなった」と述べたそうです。市長への公然たる恫喝に他なりません。
※札幌市都市公園条例 札幌市の設置した公園の利用法などについて定めた条例。この中で、他人に危害を及ぼす恐れのある行為や迷惑となる行為、市長が公園の管理上特に必要があると認めて禁止したことは行うことができない――と規定。催しなどのために公園の全部、または一部を独占して使う場合は、事前に市長の許可を受ける必要がある、としている。

(2)「武官」が直接違憲行為(言論・表現の自由を侵害)を率先する恐ろしさ。戦前・戦中の出来事を想起せよ。
 第一に、「武官」が直接イラク派兵反対運動への批判と牽制を行い、自治体に運動への弾圧を要求したことです。事件の発端の発言が、「文官」ではない、一つの師団を動かせる「武官」である師団長の口から出たものであることは、それだけで重大な問題をはらんでいます。曰く、「度が過ぎたデモや街宣活動」「筋違いのデモや街宣活動」。しかし、言論・表現の仕方に関する事柄に「度がすぎた」であるとか、「筋違い」であるとか、そもそも自衛隊が干渉する問題でも、コメントする問題でもありません。仮にそれがイラク派兵反対に関することでも、何らかの政治的課題に対してでも、賛成であれ反対であれ意思表示することは、憲法が認めている言論・表現の自由で当然にも保証されていることです。それとも自衛隊は、イラク派兵反対の運動が怪しからぬとでもいうのでしょうか。師団長自身が個人的に思うのは勝手です。しかし師団長が、およそ公の場で発言することは許し難いことです。こうした行為は明らかに反対運動を牽制し、言論・表現の自由を率先して侵すもの、違憲行為を率先するものでしかありません。

 第二に、師団長は、単に「言葉での牽制」にとどまらず「行為で示せ」と要求しているのです。師団長すなわち自衛隊が本来関係のない雪まつりをいわば「人質」に、派兵反対運動を押さえ込みにかかっているのです。曰く、派兵反対で行き過ぎたデモなどがあり「協力する環境にならない場合は撤収も含めて検討する」。この発言に対しては、素直な、率直な感情として、「汚さ」を感じないでしょうか。札幌の一般市民の感情を逆撫でするものでもあります。

 しかし、雪まつりに果たす自衛隊の役割が依然として大きいと判断した札幌市は、残念ながらこの発言に屈服・迎合し、「自衛隊員には気持ちよく雪像製作にあたってもらいたい」として、都市公園条例をたてに、「反対派の街頭宣伝などがあれば」「メーン会場となる大通り公園で無届け集会などが行われたときには」「作業に支障の出ることが予想されるデモや集会があった場合には」退去指導に乗り出す方針であるとしたのです。
 さらに、大通公園周囲の市道と国道でデモなどがあった場合には、市ではなく、道警の管轄となるため、同市は道警との連携も模索していく考えということです。

 確かに今の所、自衛隊が直接出動してイラク反対運動を抑え込むというわけではありません。(こんな事態になれば大変です。もはやそれは“戒厳令”です!)しかし、「雪まつり」を「人質」に取られた札幌市(警察)が、いわば自衛隊の意を受けて反対運動を抑えにかかるというのです。それもどの範囲で抑え込もうというのかわかりません。自衛隊員が「気持ちよく」仕事できなかったら、「作業に支障が出る」と判断したら、反対運動は「度を過ぎ」ていると自衛隊が判断したら、札幌市は退去指導に乗り出すというのです。しかもそれは公園内に止まりません。周辺の市道と国道まで含むというのです。まことに由々しき問題です。自衛隊という国の最大最強の唯一の武装組織が(それも歴代自民党政権が解釈改憲で無理矢理「合法化」した、日本国憲法下では存在そのものが違憲であるものが)気に食わないと言えば、市民の言論・集会の自由が妨害されるというのです。こんなことを放置すれば大変、違憲行為がまかり通る許し難い事態にエスカレートしていきます。

 第三に、自衛隊と「日の丸」「君が代」の特別の結びつき、不可分一体性、また「日の丸」「君が代」を介しての自衛隊と天皇制の結びつきも明らかになってきたことです。「君が代」のない所には自衛隊は行けない、おれないというのです。逆に言えば「日の丸」「君が代」ある所には自衛隊あり、ということです。実際、自衛隊の一日は「日の丸」掲揚から始まるし、イラクへ派遣される自衛隊は「日の丸」で飾られています。まさに自衛隊は「国家を象徴する国旗、国歌」と共にあり、自己の存在そのものがそれだということです。

(3)警戒しよう。イラク派兵反対運動、言論・表現の自由への弾圧が全国に拡大する危険性。
 今回の事件はイラク派兵の部隊がある北海道だからこそ表面化したというのは事実ですが、しかし真剣に考えなければならないのは、北海道だけに止まるのではなく、今後似たようなことが全国で起こってくる可能性、危険性があるということです。まずイラクに派遣される自衛隊員は、今後ローテーションで全国の各方面隊から出ることになっています。そして、その各自衛隊が存在する地方自治体あるいは地方機関で、今回は「雪まつり」準備というケースですが、さまざまな行事、あるいは災害援助等々を通じて自衛隊と関係がない、「お世話」になっていないところなどまずないはずです。さらに言えば、今後予想される「地震対策」、「災害対策」、それに「テロ対策」、しまいの果てには「有事法制」「国民保護法」が施行されると、地方自治体は自衛隊と好むと好まざるに関わらず密接な関係を持っていかざるをえないのです。

 ということは、日本全国どこででも自衛隊員が「気持ちよく」イラクへ行けないなら、自衛隊のその他の活動がスムーズに行かないのなら、自治体(警察)を使って、あるいは自治体(警察)を巻き込んで、イラク派兵反対運動を押さえ込め、自衛隊に反対する運動を弾圧せよということになりかねません。現に新聞報道では、この師団長は昨年末に北部方面総監部でイラク派兵反対派市民の「人間の鎖」行動があったことを意識していたのではないかと伝えられています。すなわち、自衛隊が派兵反対運動に対して、自治体に対して何かを「質草」に、あるいは「担保」に、運動に対する弾圧をけしかけ、自治体(警察)がそれを実行するという構図が日本全国でできあがるということになってしまうのです。

 もう一つ問題なのは、今回のような強引な事態がタブー視され定着していけば一体どうなるかということです。曰く。「師団長には、(イラク)派遣隊員を国民こぞって温かく送り出してほしいという思いがあるのだろう。」「また、雪まつり協力に対しても市民の支持をもっと得たいのに違いない。組織の長としてはそう思うことは理解できる」等々。師団長の心を文字通り「おもんぱかって」いく風潮も広がりかねません。また、札幌市には「自衛隊員には気持ち良く雪像製作にあたってもらいたい」という配慮が働いているといいます。まるで腫れ物にさわるような対応です。

 しかし、イラク派兵に対して「国民こぞって温かく送り出」せとか、「市民の支持」とか、「気持ちよく」とかいう心情を持つことなどできるでしょうか。そもそも、イラク派兵とは何か。それは、ありもしないでっち上げの「大量破壊兵器の保有」を口実に、米英軍が国際法、国連決議、国際世論を無視して始めた何の正義も大義名分もないイラク侵略戦争と占領支配のその一翼を軍事的に担うためです。小泉政権が国内世論を踏みにじりブッシュとの勝手な約束で決定した文字通りの侵略行為、憲法違反の行為なのです。そして米英のゲリラ掃討作戦と、米英占領に抵抗するレジスタンス、武装抵抗運動の応酬によって「再戦争」ともいわれる戦場への派兵なのです。さらに、送られるサマワは、米軍が使用した劣化ウラン/ウラン弾によって、自衛隊員の放射線被曝が確実といわれる場所なのです。限りなく「戦死者」が出る危険性・現実性のある派兵です。だからこそ「温かく送りだす」ことのできない、むしろ「戦争に行くな!殺すな!死なせるな!」というべきものなのです。だからこそ派兵反対運動も全国で燃え広がりつつあるのです。

(4)私たちはなぜ自衛隊員を「温かく」「敬意を持って」送り出せないのか。
 問題はこの先です。当然、自衛隊と自治体(警察)の対応に対して、イラク派兵反対闘争を闘う市民たちは反対するでしょう。言論・集会の自由に対する弾圧があれば抗議が起こるでしょう。せめぎ合い、小競り合いも起こります。個々の自衛隊員にしてみれば「命令だからやっているのに」「国のために命を懸けているのに」と、派兵の正義・大義は問わずに不満も出てくるでしょう。姑息さ、ずるがしこさで天下一品の小泉首相のこと、こんな状況を逆手に取るのは間違いありません。
 現に、派兵をめぐって争いなどせず、自衛隊を「敬意」をもって「温かく」送り出せという小泉主導の「挙国一致」キャンペーンが始まっています。小泉首相は、石破長官が派遣命令を出した9日夜の記者会見で、「危険を伴うかもしれない困難な任務」「イラクの安定は日本の国益に直結する。日本の役割を果たす責任を負っていく自衛隊に対し、敬意を持って温かく激励してほしいと語っています。
 一方で「戦争に行くのではない」と言いながら、「危険を伴う」すなわち戦地への派遣であることを繰り返し強調し、「国のため戦地に赴く自衛隊員」と「銃後で国益を享受する国民」という図式を作りだし、国民に対し、自衛隊員への敬意、「温かい」激励を要求し、戦争に協力し、その行為を賛美せよとの雰囲気を演出しようとしているのです。ある翼賛新聞の10日付の社説の見だしはイラク派兵を「政争の具にするな」です。国民あげて自衛隊を「温かく」送り出せというのです。

 警戒しなければならないのは、そんな中、実際イラクで自衛隊の関わる戦闘が起こった場合、あるいは「戦死者」が出たような場合です。そうした場合、小泉政権が第三者面をして、「争い」を仲裁するかのように、「国のために」「血を流した」「尊い犠牲」となった人がいるのにと、「戦死」を利用して、「国のために海外で働く人、血を流している人がいるのに、国内で争うな」と派兵反対派を弾圧し、「国民あげて自衛隊の活動を見守ろう、歓迎しよう、賞賛しよう」(戦前・戦中で言えば「銃後を守れ」)の大合唱を、マスコミ等を利用して上からそして下から組織しないという保証がどこにもないことです。侵略行為に反対できない風潮、戦争行為を尊重する風潮を社会に蔓延させようとするでしょう。ことにこの間、政府にきわめて翼賛的になっているマスコミを見れば、懸念される所です。少なくとも政府自らの決定で戦死者を出したことの政治責任は棚上げにして、国内の反対派、イラク国内の反米派に自衛隊員の死の「責任」を転嫁し、国民の怒りの矛先を向けさせる世論操作を行うことだってありえます。自衛隊の活動を批判する者、楯突く者は「非国民」だ、というわけです。イラクで殺害された外交官の死の、政府による利用を見れば、それは容易に推察できます。さらに、「人道復興支援」を隠れ蓑にした、結局は自衛隊の軍事行動そのものを国民に無理矢理認めさせていくということになります。

(5)軍隊が発言力を持つ恐ろしさ。戦前の過ちを繰り返さぬよう警戒を。タブー視する危険を芽のうちに摘み取ろう。
 さらに今回の事件は将来的に大きな問題をはらんでいます。軍隊による政治や言論への介入、いやそれにとどまらぬ社会生活・市民生活全般への介入、さらに言えば好戦的な風潮の社会生活・市民生活全般への浸透・蔓延というきわめて憂うべき事態です。
 今回の札幌での事件は、自衛隊(軍隊)というものの本質をはからずも暴露しています。しかし軍隊が政治や言論の表舞台に出ればこの程度のものでは済みません。日本の民衆は戦前・戦中に軍隊が一体何をやったのか、いかに言論や民主主義を踏みにじったか、基本的人権を圧殺したか、否そもそも民衆の命を奪い去ったのかを骨身にしみて体験したはずです。それが政治・生活全般の中で発言力を増してきた時、いかに一般市民の権利に対して横暴極まるものになり、暴力そのものであり、日本全体を戦争に巻き込んでいき、同国民でも足手まといと見るやこれを守るどころか虐殺し(沖縄戦の例を見よ)、一般の兵士は平然と見殺しにされ(南方戦線を見よ)、今なお遺骨すら南方の島々に置き去りにする身勝手さ、天皇を筆頭に軍部上層部は何の責任も一切取らぬものであるのかを骨身に染みて知ったはずです。その体験が日本国憲法の平和条項、基本的人権条項を戦後に生かす一つの礎となってきたはずです。

 戦後久しく、軍隊というものが否定的なもの、ネガティブなものであったのは、何よりも敗戦とそうした軍隊経験に裏打ちされていたからです。しかし、戦後50年。警察予備隊として発足した自衛隊は、本来違憲の存在であるはずのものなのに、歴代自民党政権の解釈改憲に庇護され、着実に「市民権」を拡大してきました。そしてことに小泉政権によって、テロ特措法、「有事法制」の制定から、ついにイラク派兵によって念願の「戦場」への海外派兵の仕事まで与えられ、政治の檜舞台に登場してきたのです。
 自分自身戦場へ行った体験も軍隊経験もなく、政治家の二世議員としてそんな経験をする必要もなく、ただ派兵と戦死を命令する側にしか立たないと約束された、従って戦争の悲惨さをこれっぽちも知らないし知る必要もない小泉や福田や石破といった大臣達が自衛隊に最大に「活躍」の場、自由気ままに振る舞える場を与えようとしています。それに伴って自衛隊のいわゆる「制服組」の発言力がどんどん増しています。とうとう自衛隊運用の際の保守政治家たちのきまり文句であった「文民統制」も怪しくなり、防衛庁は「制服組」の国会出席まで提言したいというところまで来ています。自衛隊を「軍隊」と呼んで憚らない小泉政権は、軍隊(自衛隊)が発言権を増し、ついには市民運動、イラク派兵反対運動にまで口出しする土壌を与えたということです。実際イラクで活動を始めれば「私たちは国のために海外で汗を流し」「血まで流しているのに」と自衛隊自身が言い始めることでしょう。そして社会全体に軍事優先のきな臭い風潮が一層立ちこめるのです。

 さらに小泉政権は、機密保持を名目に、「軍隊」「軍事」を秘密のベールで包み込もうとしています。防衛庁は9日マスコミ各社にイラク派兵に関し「報道自粛」を求めました。真実の軍隊の姿が国民の目から隠された時、そこから発せられるものが常に「大本営発表」であり、結局は国を滅亡の淵に追いやるものであることは、過去の日本の歴史が教えた苦い教訓だったのではないでしょうか。私たちはこうした政府・防衛庁の姿勢を決して許すことはできません。

(6)師団長は発言を撤回せよ。札幌市は反対運動への牽制、弾圧をやめよ。
−−一切の責任は違憲・違法・非人道的な自衛隊派兵を強要する小泉政権にある。

 私たちはまず、竹田師団長が、雪まつり協力団編成完結式で行ったあいさつを撤回することを求めます。少なくとも、自分の発言が、市民の言論・集会の自由を牽制し、イラク派兵反対闘争に一定の判断、「偏見」を押し付けるという重大な違憲行為であることを認めることを求めます。さらに、反対デモがあれば「撤収する」などと言った言葉は、札幌市にとっては、イラク派兵反対運動を弾圧せよとの「脅迫」とも「恫喝」とも取れる言葉であることを認めることを要求します。
 札幌市に対しては、自衛隊の脅しに屈することなく、イラク派兵反対という市民の正当な抗議活動に、日本国憲法に保証された言論・集会の自由という最大限の保証を与えることを要求します。まして札幌市公園条例を濫用して、正当な反対運動を抑制・弾圧することに反対します。

 このような問題が生じてきた一切の責任は小泉政権によるイラクへの自衛隊派兵決定にあります。この正義も大義もなき憲法違反の派兵、「人道復興支援」を隠れ蓑にして米英のイラク侵略戦争・占領支配の一翼を担い、イラク人民のレジスタンス、抵抗運動を抑圧・弾圧するだけの派兵に強く反対していきましょう。派兵反対の声をあげることは今からでも決して遅くありません。陸自の本体派遣はこれからです。イラクの武装抵抗運動は「フセイン拘束」後も益々強まっています。大義なき「戦死者」を自衛隊員からも出さぬためにはここで派兵断念を政府に迫るしかありません。

 そして私たちは不幸にして自衛隊員が派兵されることがあっても、それを注意深く監視せねばなりません。イラク人民を自衛隊が殺害することがあってはなりません。また、自衛隊員を死なせるわけにもいきません。さらに万一不幸にして「戦死者」が出た場合、その死を政府が美化・賛美して、自衛隊の活動そのものが良いものであるように描くことに反対しなければなりません。その際は政府の責任を追及し、直ちに撤兵を要求するべきです。そして、イラク派兵や、海外派兵「恒久法」制定、さらには有事法制の整備、ミサイル防衛など、新たな軍事力増強そのものに反対し、自衛隊そのものの発言力が増していくことに反対しなければなりません。そして自衛隊が軍隊として再び政治・社会生活に進出してくること、社会全体が好戦的風潮に染まり、基本的人権の侵害が平然と行われていくことに最大限の警戒をしなければなりません。

2004年1月10日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局

【参考情報】
※「さっぽろ雪まつり『デモ激化なら撤収も』イラク派遣で陸自師団長、反対運動懸念か」2004/01/06(北海道新聞)
http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/backnumber.php3?&d=20040106&j=0022&k=200401069307
※「雪まつり*見過ごせぬ師団長発言」
http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/backnumber.php3?&d=20040107&j=0032&k=200401079641
※「デモ退去指導へ−師団長発言で札幌市 雪まつり準備優先」2004/01/07
http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/backnumber.php3?&d=20040107&j=0022&k=200401069595
※「さっぽろ雪まつりで市、会場に監視カメラ 真駒内では手荷物検査」2004/01/08
http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/backnumber.php3?&d=20040108&j=0022&k=200401080077