アフガニスタンに対する米の非人道兵器使用に反対する
2001.10.13



(1)アメリカは非人道兵器=クラスター爆弾の使用を開始した。

 アメリカは、アフガニスタンに対してクラスター爆弾の使用を開始した。米国防総省は、タリバンの「軍事拠点」に対する、B-52およびB-1爆撃機からのクラスター爆弾投下を認めた。湾岸戦争以降、ユーゴ・コソボに続く、三度目の使用である。クラスター爆弾=非人道兵器の使用に断固として抗議する。
 ディスペンサー爆弾、集束爆弾とも呼ばれるクラスター爆弾は、地表近くで炸裂し、その胴体部分に詰め込まれているたくさんの子爆弾を、広範囲にまき散らす。対装甲車両・対人殺傷を目的とするクラスター爆弾の場合、子爆弾は散布後直ちに爆発、無数の金属片を飛散させ、周囲の車両をずたずたに引き裂き、人間を肉片に変える。湾岸戦争で多用されたCBU-87は多目的用途の子爆弾を202個内蔵しており、1発の爆弾で、およそ400m×200mの範囲内の対象物をことごとく破壊する。各子爆弾に赤外線センサーを装着し、目標車両への命中率を高めたCBU-97も配備されている。精密誘導兵器が、ピンポイントの破壊をその目的とするのとは対照的に、広域を面として制圧するために、無差別の破壊・殺害を行うことがクラスター爆弾の特徴である。アメリカは「ピンポイント」の空爆だと言うが、それはまったくの嘘である。対空レーダーや対空砲などごく限られたターゲットはトマホークや精密誘導爆弾によって破壊するが、軍事キャンプや基地等を広域を破壊するためには、クラスター爆弾が使われる。湾岸では6万発以上のクラスター爆弾が使用され、コソボでも1千発以上のクラスター爆弾が使われた。しかも、軍事施設だけではなく、一般住民の居住区域にも投下されている。今回のアフガニスタンへの戦争でも、湾岸やコソボでの場合とまったく同じく、限られた目標へのピンポイント爆撃に続いて、広域・無差別なクラスター爆弾による破壊と殺傷が本格的に開始されようとしている。
 小爆弾のタイプは、対装甲車両から、対人殺傷用、あるいは対人・対戦車地雷まで用途に合わせて多様な組み合わせが存在する。対装甲・対人用の場合は、散布直後に爆発するが、子爆弾が地雷の場合は、広い地域を一瞬にして地雷原に変えてしまう。より悪質である。また、復旧作業を困難にするため、通常爆弾に地雷や時限爆弾を混ぜることも行われている。
 10月12日付けの英ガーディアン紙は、使用されたクラスター爆弾の中にCBU-89が含まれていたと報じているが、このCBU-89は、対戦車地雷と対人地雷をばらまくタイプの爆弾である。この爆弾1発でおよそ13万平米が地雷原と化す。タリバン兵士の行動を制約し、狩り立てる戦術であろうが、これまでの内戦によって、対人地雷で国土をメチャクチャにされているアフガニスタンに、さらに地雷をまき散らすなど言語道断である。
 通常爆弾であっても、すべてが爆発するわけではなく、沼地や砂地に落下したものなど、全子爆弾の5%〜12%が不発弾として残り、これらの眠り爆弾は、ちょっとした衝撃などで爆発する(あまりにも不発弾率が高いので、遅延殺傷・地雷的効果を狙って故意に不発化されているのではないかとも言われている)。
 アメリカ政府は、湾岸戦争時に3000万個の子爆弾をばらまいたとしている。不発率を5%とすると、150万個の不発弾が残存していることになる。コソボでは1万5千発の不発弾が残っており、戦後も被害が拡大している。国際赤十字は、子爆弾によって、コソボで多くの人々が戦後も犠牲になり続けているという悲惨な実態を告発している。ベトナム戦争で大量に投下されたボール爆弾も、一種のクラスター爆弾であり、この爆弾による被害の悲惨さは、広く知られている。
 クラスター爆弾はまず第一に、無差別の破壊と殺害を目的とし、すさまじい殺傷効果を広範囲に及ぼす兵器であり、第二に戦闘終了後も長期に渡って、何の罪もない民間人を殺傷し続ける兵器である。明らかな非人道兵器である。アメリカは「アフガニスタン人は友人」「人道援助」などど許し難いデタラメを言い続けているが、クラスター爆弾のような兵器を使用している事自体、戦後の復興も、住民の安全も未来も何もまったく考えていないことの動かぬ証拠である。
 国際赤十字は昨年度、クラスター爆弾の使用禁止を国際社会に要求した。ヒューマン・ライツ・ウォッチや、対人地雷・非人道兵器反対に取り組む諸団体も、湾岸やユーゴでのアメリカによるクラスター爆弾使用に対して抗議の声を上げてきた。アメリカ独りだけが反対に回った1996年の国連人権委員会の決議において、核兵器、劣化ウラン、生物化学兵器等と並んでクラスター爆弾は、非人道兵器として使用禁止の対象に挙げられている。
 しかしアメリカはコソボ攻撃に対する報告書の中で、クラスター爆弾を「広域目標に対する有効な兵器」と位置づけ、その使用をやめないばかりか、アフガニスタンに対しても大量使用を開始しようとしている。ピンポイント攻撃とは名ばかり、その実態は無差別大量殺戮である。タリバンの兵士をバラバラに引き裂き、戦闘終結後もアフガン人民を苦しめ続ける兵器をまき散らしているのである、絶対に許してはならない。

【主なクラスター爆弾のスペック】
 名称 CBU-89 名称 CBU-87CEM
 用途 対戦車・対人地雷敷設 用途 広範囲収束爆撃
 重量 710ポンド(320キログラム) 重量 950ポンド(431キログラム)
 全長 2.34メートル 全長 2.34メートル
 直径 41センチメートル 直径 39センチメートル
 弾頭 BLU-91/対戦車地雷×72 弾頭 BLU-97/B 多目的子爆弾×202
    BLU-92/対人地雷×22 単価 14,000ドル
 単価 40,000ドル 湾岸戦争での使用 10,035発
 湾岸戦争での使用 1,105発

 名称 CBU-97 名称 CBU-59(Mk-20)
 用途 対戦車・装甲車両爆撃 用途 対装甲広範囲収束爆撃
 重量 927ポンド(417キログラム) 重量 490ポンド(222キログラム)
 全長 2.34メートル  全長 2.34メートル
 直径 41センチメートル  直径 34センチメートル
 弾頭 4飛翔体にBLU-108/B 子爆弾×10  弾頭 Mk-118装甲貫徹威力弾頭×247
 単価 360,000ドル  単価 ?
 湾岸戦争での使用 ?  湾岸戦争での使用 186発


(2)戦術戦闘機が搭載する兵器の中では、核兵器に次いで強力な新兵器、GBU-28バンカーバスターをアメリカは使用した。

 アメリカはアフガニスタンに対して、GBU-28バンカーバスター、通称ディープスロートを使用した。10日に行われた開戦後最大規模の空爆で、タリバンの地下軍事施設を目標に使用され、アメリカはこの爆弾によって目標を完全に破壊したとしている。バンカーバスターは、その名の通り、塹壕(バンカー)を破壊するための誘導爆弾である。地上に激突後、7メートルの厚さの強化コンクリートを貫通し、30m以上掘削、地中深くで爆発して地下施設を内部から破壊することができる。
 重量約2.1トン、炸薬量590kgであり、全世界の戦術戦闘機が搭載する兵器の中では、最大かつ、最強の破壊力を持つ爆弾で、核兵器に次いで強力な兵器である。通常は、F-15ストライクイーグルあるいはF-111アードバーグにのみに搭載可とされているので、今回使用されたバンカーバスターは、F-14に搭載できる小型のものか、あるいはB-2に搭載できる改良型だと言われている。
 バンカーバスターは、湾岸戦争での「教訓」を出発点に、対途上国戦用に開発、配備が進められてきた新兵器であり、現在までに150発の製造が確認されている。湾岸戦争時、「♯タジ2」と呼ばれる、非常に強固なシェルターを通常の誘導爆弾では破壊できなかったため、アメリカ軍は急遽110榴弾砲(203mm榴弾自走砲)の砲身を研削、炸薬を詰めた爆弾を作成し、これを使ってシェルターを破壊した。湾岸戦争では、この急ごしらえのバンカーバスターが2発使用されたことになっている。
 今回使用された、GBU-28は、湾岸戦争時に急造されたバンカーバスターを改良し、貫通力や破壊力を高めた正規品となっており、従って、今回のアフガニスタンに対する使用が、正規品としての初めての使用となる。タリバンの軍事施設がどのような設備であったかは不明であるが、通常の誘導爆弾では破壊不可能で、バンカーバスターが必要なほど堅固な要塞であったとは考えにくく、実験的な使用であった可能性が高い。核兵器に次いで強力な新型爆弾、GBU-28バンカーバスターの、アフガニスタンに対する使用は、過剰な破壊力の行使である。


もう一つのバンカーバスター、戦術核B-61-11

 今回のバンカーバスターの使用と同時期に、パキスタン西部のクエッタの北西88kmを震源とするマグニチュード3の地震が観測された。一部報道では「戦術核使用」との観測も流れた。強力とはいえ、たかだか590kg程度の炸薬量では、マグニチュード3クラスの地震を引き起こすようなエネルギーは出せないからである。しかし結局使用された爆弾はGBU-28で、地震の原因は、地下施設に貯蔵されていたTNT換算数百トン分の弾薬類の誘爆によるものとされている。確かに純軍事的観点からも、政治的にも、現局面での戦術核の使用はほぼありえないと思われ、周辺国での大気中の放射能濃度上昇等の報告もない事などから、今回のバンカーバスターは間違いなく通常爆弾によるものであると思われるが、地震との関係等、詳しいことは分からない。
 地震の他に、一時「戦術核」が疑われたもう一つの理由は、バンカーバスターと呼ばれる爆弾には、GBU-28のような通常兵器のものと、戦術核兵器のものの二つのタイプがあることである。
 GBU-28でも破壊できないような堅固な地下施設を破壊するために、B-61-11バンカーバスターと呼ばれる戦術核が開発、配備されている。この兵器は通常の戦術核兵器B-61を改良したもので、先端部を尖らせ、重量を重くしたもので、地表に激突後、何層にも重なったコンクリートを突き破りながら、掘削して進み、地下で核爆発を起こす。爆発のエネルギーは下方に集中するように設計され、数百メートル下までのあらゆる物体を破壊する。地表には巨大なクレーターが残るという。
 B-61-11は1990年代に開発が進められ、1998年には投下実験に成功、配備が進められている。地下にある弾道ミサイルのサイロや地下司令室を破壊することを目的としたもので、北朝鮮に対する使用を想定したものだと言われている。爆発力は10キロトンから500キロトンまでコントロールできるとされているが、最低の場合でも広島型原爆に匹敵するような爆発力である。このようなものが使われれば、その破壊と汚染は想像を絶するものとなる。
 今回アフガニスタンに対して使われたバンカーバスターは「幸いにして」戦術核ではなかったが、軍事的・政治的条件が整えば、アメリカはためらうことなく使用するに違いない。また、たとえ使用しなくとも、B-61-11バンカーバスターのような兵器の開発と配備は、彼らが「ならず者国家」と呼ぶ途上国を攻撃対象としたものであり、途上国に対する明白な核による恫喝である。アメリカは、対途上国戦においても、核の使用を想定し、そのための準備を進めているのである。



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