米政界を揺るがす一大政治スキャンダル−−−
ブッシュは同時多発テロを事前に知っていた!
9・11の2日前から準備されていた対アフガン戦争

■大揺れに揺れる米政界
 今アメリカの政界は激震に揺れています。ブッシュ大統領らブッシュ政権トップがハイジャックによる同時多発テロを事前に知っていた、対アフガン戦争は実は9・11の2日前にすでに大統領の署名寸前にまでいっていた、否99年からその度肝を抜くようなテロ計画が警戒され報告されていたというのです。これは「陰謀史観」の3流ジャーナリズムの報道ではありません。ブッシュ政権がわざわざ正式の記者会見を開いて弁明せざるを得なくなった事実なのです。

 もはやブッシュ政権が何らかのハイジャックテロ攻撃があることを知っていたのは事実です。ここまでは渋々認めました。ただ、ライス補佐官やフライシャー報道官は、それは一般的な情報で、現に起こったようなものではなかったと弁明しています。17日には、ブッシュ大統領自身が、沈黙を破って「後知恵ばかり」「政治的思惑だ」と弁明しました。民主党ダシェル院内総務は、なぜ8ヶ月もこの事実を隠していたのか、と追及しています。

 もし潔白なら少なくとも以下の疑問にはっきりと答えるべきでしょう。
@ 今俎上に上っている「事前警告」情報は2つあります。一つ目は昨年8月にブッシュ大統領に報告されたCIA報告。二つ目はFBIアリゾナ事務所から本部へ行われた内部資料です。そもそも誰からのどんな情報だったのか。まずはその情報そのものを全面的に開示し、米国民はもとより全世界の前に公開すべきです。
A その上で、ブッシュ政権はどんな対処をしたのか。その情報に基づいて現にブッシュ政権が取った具体的な措置を明らかにすべきです。問題は、あれだけの大規模な侵略戦争を勃発させるのならば、なぜ「テロ撲滅」を事後にではなく事前に行わなかったのか。
B また2日前に大統領令の署名寸前までいっていたという対アフガン戦争は、なぜ、いかなる経緯から策定されたのか。その大統領令の署名は、ペンタゴンですでに準備万端であり後は署名だけということだったのか、それともそれから準備開始に入ることになっていたのか。あるいはその準備途中だったのか。


■私たちも無縁ではない。自衛艦は即刻引き揚げるべき。
 私たちも無縁ではありません。あの「テロ撲滅」を大義名分にした戦争が、半ば「陰謀」めいた形で行われたのなら、小泉政権の「テロ特措法」の大義名分もなくなるはずです。小泉政権も、あの貧しいアフガニスタンに侵略し、タリバン政権を倒壊させ殺戮し破壊しまくった米軍を支援し加担したのです。しかも19日には、インド洋への自衛艦派遣をもう半年、延長することを政府は決定したのです。今の時点の疑惑だけでも、その点からだけでも自衛艦は即刻引き揚げるべきです。
 小泉政権は、ブッシュ政権に対して責任を持ってこの疑惑を問い質すべきです。そして私たち日本の国民は、小泉政権に対して、この一大スキャンダルについての責任追及を始めなければなりません。こんな疑惑を持つ政権の戦争政策に一切加担することは許されないはずです。

 米で5月15日に突如浮上したこの事件は、日本の新聞・TVではまだほとんど扱われていません。なぜか分かりません。有事法制の審議に影響するからでしょうか。それとも19日の自衛艦の派遣延長に影響が出るからでしょうか。私たちは意図的に抑えているとしか思えません。しかしニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポストなどの有力紙、NBCなどのTVネットワークは連日この問題がトップニュースになっています。またイギリスのBBCやガーディアン紙も大きく報道し始めています。Yahoo!USやケーブル・テレビを見ると事態の大きさがお分かりになると思います。日本では小さく(だんだん大きくはなっていますが)隅っこに扱われているだけなのでお気づきにならないと思い、急遽、この一大政治疑惑について急いでとりまとめお知らせすることにしたものです。緊急のため若干不正確なところがあると思いますが、ご容赦下さい。

 要するに、昨年の9月11日の世界貿易センタービル(WTC)ビルへのテロ攻撃が、実はブッシュ政権が知りながらやらせた疑いが出てきたのです。死者数千人とも言われる犠牲者は、さらにはるかに多くのアフガン民衆を犠牲にした戦争を始める口実のための、生け贄だった可能性が出てきたのです。軍需産業とエネルギー独占の利潤確保と政権維持のためには、数千人の命を何とも思わないブッシュ政権の本性がはっきり現れた信じがたい事実です。
 私たちは、この疑惑をフォローし、真実は何であったのかを多くの人に知らせ、小泉政権が加担して行っている対アフガン戦争がどんなものであったのか、有事法制によって準備されようとしている、ブッシュ政権の次の戦争がどんなものであるのかを、訴えていかなければならないと思います。


■5月15日のニューヨーク・タイムズのスクープ記事が発端。
事の発端となったのはニューヨーク・タイムズの記事「ビンラディンを引き合いに出した攻撃前メモ」(「Pre-Attack Memo Cited Bin Laden」2000/05/15)なるスクープです。これを受けて、米マス・メディアは一斉に報道合戦になりました。一大政治スキャンダル、政治疑惑事件になったのです。

この騒動に押される格好で、米ライス大統領補佐官は、5月16日に渋々緊急記者会見を開かざるを得なくなり、その場で公式に「事前警告」を認めました。ライス補佐官によると、ブッシュ大統領は、昨年8月6日にCIAの報告を受け、1ページ半の文書を受け取っていたと言います。(ただライス氏はFBIメモの存在は曖昧にしました)さらに、テロ攻撃の情報は、昨年4、5月からあり、ブッシュ政権は既に臨戦態勢に入っていたといいます。米連邦航空局は、6月22日から8月16日の間に少なくとも5回にわたって航空会社に警告を発していました。
9.11同時多発テロが、米政権やCIAが知っていたことについての情報は、これまでからもありました。しかし今回の特徴は、ハイジャックした航空機による攻撃を事前に知っていたことを、ブッシュ政権自身が公式に認めたことです。

 米国内では、この15日付ニューヨークタイムズの報道をきっかけに、民主党のダシュル上院院内総務が、ライス氏が明らかにした8月のCIA報告内容とニューヨーク・タイムズが暴露したFBIの内部捜査資料の全面開示を要求しました。16日のライス補佐官の緊急記者会見も、この民主党の厳しい説明要求に余儀なくされたものですが、会見は「防戦一方の印象をぬぐえなかったうえ、補佐官が時折、緊張からか珍しく声を震わせるなど、政権側の非常に苦しい対応をうかがわせた」(読売新聞)というほど、ブッシュ政権を危機に陥れています。
 さらに、17日には、米NBCなどが、CIAは既に2年前の1999年9月に、航空機の乗っ取りによるホワイトハウスやペンタゴン、CIA本部への突入の可能性を指摘する報告書を作っていたと報じました。私たちには、それまで想像すらできなかったあの実際に起きた攻撃とそっくりの攻撃について、米政権は報告を受けていたのです。

    Pre-Attack Memo Cited Bin Laden (The New York Times)
    http://www.nytimes.com/2002/05/15/national/15INQU.html (日本語訳

    同時多発テロ:事前に情報を得ていたと発表 米ブッシュ政権(毎日)
    http://www.mainichi.co.jp/news/selection/archive/200205/17/20020517k0000e030031000c.html
    米同時テロ・大統領への事前情報、民主党が開示要求(読売)
    http://www.yomiuri.co.jp/05/20020517i104.htm
    同時テロ、CIAが2年前に「突入の恐れ」指摘(読売)
    http://www.yomiuri.co.jp/05/20020518i102.htm


■対アフガン軍事行動は9・11の2日前から準備されていた!
 そして、もう一つ重要な事実が明らかになりました。アルカイダ掃討の「詳細な戦争計画」が、9.11の2日前に、ブッシュ大統領に渡され、大統領令を発動する準備が進められていたというのです。5月16日に米NBCが報じ、17日にはフライシャー報道官も正式に認めました。(「U.S.planned for attack on al-Qaida」
 9.11後の、ブッシュ政権の異常に早い報復戦争宣言と実際のアフガン戦争開始もこれでうなずけます。

 思い出してみましょう。昨年9月11日早朝の航空機激突の翌日、12日の記者会見でブッシュ大統領は早くも、「戦争」と呼び、「ビンラディン氏の組織壊滅を目指す軍事作戦を検討」、13日には「テロとの戦争」「21世紀の戦争」を宣言し、ビンラディンを犯人と断定、「継続的な軍事作戦」を開始したのです。14日には、上下両院が武力容認決議を採択し、「非常事態」が宣言されました。これら犯人の特定・逮捕から戦争動員に至る過程のどこまでが、今回暴露された事前の「戦争計画」に盛り込まれていたかは別にして、少なくとも、現に行われた対アフガン戦争が事前に計画されていたことは確かです。

 NBCは、計画書は大統領の机の上に載っていたが、テロ後まで署名のチャンスがなかったと伝えていますが、果たしてそうでしょうか。こんな子供だましのような弁解が通ると思いますか。そうではなく、ブッシュ政権はテロ攻撃を事前に知っており、用意周到準備を整えた上で9.11を待って実際に発動したのではないでしょうか。(ただ準備が途中だったことはあるかも知れませんが。)ブッシュ政権が、もしそうでないというなら、その証拠を示すべきです。

    U.S. planned for attack on al-Qaida (MSNBC)
    http://www.msnbc.com/news/753359.asp   (日本語訳

    米政府のアルカイダ掃討作戦、テロ事件以前にすでに策定(Yahoo/ロイター)
    http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20020517-00000279-reu-int
    米政府、テロ前にアルカイダ解体を計画=大統領報道官(Yahoo/ロイター)
    http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20020518-00000324-reu-int


■善意的に見ても「未必の故意」、悪意に見れば・・・。
 仮に、9・11から10・7までの全てをブッシュ政権が仕組んだとまでは言わないにしても、今回政権が自ら認めた事実だけからして、どのようなことになるでしょうか。
 要するに、@ブッシュ政権が自らがテロの存在を知っていたこと、しかもその情報源が2つあること、Aその情報源を本気で突き止めなかったこと、B従ってテロを本気で止めようとしなかったこと、Cテロの存在を利用して対アフガン戦争を実際に準備したこと、D大統領が大統領令に署名寸前にまで至っていたこと、です。
 ここまででも、ブッシュ政権は、WTC攻撃の「共謀者」であったことになります。いわば、「未必の故意」による大量殺人事件、あるいは「不作為の作為」、あるいは「不作為犯罪」とも言えるものです。私たちは、9.11の数千人の犠牲者は、テロの犠牲者であるだけでなく、アメリカ自身の侵略戦争と軍事介入に対する犠牲者でもあると主張してきました。しかし、今回の政治疑惑を見る限り、間接的にだけでなく、直接的に、米政権の戦争政策のための「陰謀」の被害者であった可能性がますます濃厚になってきました。
 しかしアフガニスタンの民衆に対してはどうでしょうか。ブッシュ政権は、2日前に戦争準備を終えていたとなると、9・11があろうとなかろうと、難癖を付けて、いずれは侵略行動に打って出ることは必至でした。ブッシュ政権はアフガン民衆から見れば「確信犯」です。

 だが私たちは、もっと恐ろしいことがあり得ると考えています。9・11は最初から最後までブッシュ政権が指揮命令したという単純な「陰謀史観」には賛成できませんが、上記の善意の理解よりももっと「陰謀」的要素が強い可能性です。ペンタゴンの一部、CIAの一部、FBIの一部が、従ってブッシュ政権のあるグループが、本当に関わっていなかったのか。そういうもっと直接的な「共犯関係」も否定できないのです。ブッシュ政権とビンラディン氏との緊密な関係については、これまでからもいくつか報告が行われています。例えば、共和党重鎮たちの会社がビンラディン家を国防産業への投資で儲けさせているとか、昨年7月(テロの2ヶ月前!!)にビンラディンが中東ドバイのアメリカン病院で入院中にCIA要員が面会に訪れていたとか。米国史上現にあったどの侵略戦争にも陰謀や策略はつきものでした。ベトナム戦争でも、湾岸戦争でも。戦争屋・石油屋だけから成る今の特異なブッシュ政権に、うさん臭さを見るのは決して突飛な見方ではありません。

    「田中宇の国際ニュース解説」より
    http://tanakanews.com/c0124wtc.htm
    http://tanakanews.com/b1105osama.htm

    http://uk.indymedia.org/front.php3?article_id=19316&group=webcast


■ブッシュ政権の戦争拡大路線の行き詰まりと「厭戦気分」の静かな広がり。
 なぜ、今になってようやくこの問題がクローズアップされたのでしょうか。5月16日付ワシントン・ポストは、これまで、「議会の誰も、それに触れたがらなかった。ジャーナリストもまたそうで、大部分は避けてきた」と指摘しています。明らかに大手マス・メディアの自粛が緩和され始め、「戦時体制」下ということで真実の報道をせずに、翼賛報道に終始してきたアメリカの新聞やTVに変化が出てきたのです。何か潮目が変わり始めたのではないでしょうか。

 第一に、おそらく直接のきっかけは、今秋の中間選挙に向けた民主党の巻き返しでしょう。5月15日今回の事件の発端になったスクープ記事を報道したニューヨーク・タイムズは民主党を支持しています。民主党は危機感を持ったのでしょう。今のまま「戦時体制」が続けば、ブッシュと共和党に反転攻勢に出れない可能性があるからです。しかしそれだけではありません。

 第二に、ブッシュ政権の戦争拡大政策に対する内外からの批判と離反が次第に広がり始めている事情があると思います。アフガン戦争の圧倒的勝利の後、アフガンで長期駐留を始めるだけでは物足りず、フィリピン、グルジア、コロンビアに軍事介入を拡大し、「悪の枢軸」など物騒な新戦略を打ち出し、「まだやるか」と言うくらい次々と侵略と介入を拡大してきたのです。
 転換点は中東政策でした。何よりも、シャロンの対パレスチナ全面戦争を公然と支援するブッシュの中東政策に反発と批判が拡大したことです。また同じ頃南米ベネズエラのチャベス大統領の失脚と追放を狙った軍事クーデタに、これまたブッシュ政権が深く関与したことが、南米諸国は言うまでもなく世界中から総批判を受けました。自業自得といえばそれまでですが、世界中に軍事介入と侵略戦争を推進してきたやり方が、皮肉にもアフガニスタンでの勝利の直ぐ後から、ことごとく裏目に出始めたのです。戦争、戦争、戦争、戦争の拡大しか知らないブッシュ政権のやり方に「もう付いていけない」と悲鳴を挙げ始めたのではないでしょうか。併せて「テロとの戦争」一色だった米国内の空気もようやく変化し始めて来ました。ブッシュ政権が進める戦争政策、とくに当面の最大の目玉であるイラクに対する戦争準備は、中東諸国やEU諸国など世界中から孤立し始めています。

 第三に、9.11犠牲者の家族が、事件の真相と責任を明らかにすることを求めて、活動を続けてきたことが挙げられます。おそらくその粘り強い活動が、政権の関与、あるいはサボタージュを示す疑いのない事実を明らかにしていったのではないでしょうか。

 第四に、4月20日のワシントン大行動に見られるように、米国内の反戦平和運動が、「戦時体制」の下で、前進し拡大してきたこと。これが、テロ後の熱狂を冷まし、戦争政策に批判的な報道を可能にする雰囲気を作り出したのではないでしょうか。
 ブッシュ政権は、また一つ大きな弱点を抱えることになりました。もちろん、窮地を打開するために、逆に危険な賭けに打って出るかもしれません。対イラク戦争が、ブッシュにとっての一発逆転の賭けです。

私たちは、ようやく明らかになり出した9.11事件の真相を広く訴え、米国だけでなく日本においても、「テロに備える」ことを口実にすれば何でも押し通せる今の雰囲気に政治的雰囲気に風穴をあけていこうではありませんか。
 小泉政権が強行採決を狙っている有事法制の「有事」とは、実は、米政権が作り出すものだということがはっきりしました。有事法制をなんとしても廃案にしなければなりません。


2002年5月18日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局



アメリカはアルカイダへの攻撃を計画していた
  U.S. planned for attack on al-Qaida (MSNBCより)

ホワイトハウスは9月11日の2日前に計画を与えられていた
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ワシントン5月16日−ブッシュ大統領は、アルカイダに対する全世界的な戦争への詳細な計画に、9月11日の2日前に署名することになっていた。しかし、ニューヨークとワシントンでのテロリストの攻撃以前に署名する機会がなかった。アメリカと外国の情報筋がNBCニュースに語った。

 公式な国家安全保障大統領令であるその文書は、「この地球上からアルカイダを一掃するための戦略計画」といえるものであったと、情報筋の一人はNBCニュースのジム・ミクラスゼウスキーに語った。
 その計画は、アフガニスタンでの外交的イニシアチブから軍事作戦まで網羅していて、アルカイダに対する戦争の全側面を扱っていると、その情報筋は匿名を条件に語った。
 NBCニュースで述べられているように、その文書は、ホワイトハウス、CIA、ペンタゴンが9月11日の攻撃の後に行動に移したものと、多くの点で本質的に同じ戦争計画の輪郭であった。政府があれほど迅速に9.11の攻撃に対応できたのは、この計画を「棚から下ろして」くるだけでよかったからだ、というのが最もありそうなことだとミクラスゼウスキーは述べた。
 その文書通りに対処すれば、まず第一にアメリカがすることになっていたことは、他の国々を説得して情報を共有したり司法警察諸機関を動員したりすることを追求して、アルカイダの容疑者を検挙しようとすることであった。
 その計画はまた、アルカイダの全世界的な金融口座の凍結とグループのマネーロンダリングを阻止するための行動を求めていた。約60カ国におけるアルカイダの細胞に狙いを定めた秘密調査活動を、この文書は立案していた。
 9月11日の後に採用された戦争計画との、もうひとつの顕著な類似点は次のことである。もし拒絶されたならば軍事力を行使するという条件付きで、アルカイダのリーダーであるオサマ・ビン・ラディンをアメリカに引き渡すようにアフガニスタンのタリバン政府に対して説得しようとすることを、この安全保障文書が含んでいたことである。

計画はいつでも発動する準備ができていた
 提出から9月11日までの2日間にブッシュがその文書を詳細に再検討する機会はなかったと、政府高官たちは信じている。しかし、それは国家安全保障補佐官コンドリーツァ・ライスに提出されていた。そして、政府高官によれば、ブッシュはそれを知っていて署名することになっていたという。
 公式の安全保障指令として計画がととのえられていたことは重要であると、ミクラスゼウスキーは報告している。なぜなら、それはアメリカが9月11日の攻撃が起こらなくても、アルカイダへの全面的な攻撃を意図していたことを示しているからである。
 このような指令は、ホワイトハウスの最高レベルにおいて承認された後にのみ公式に作成されるものであり、即座に実行にうつされることになる決定を表している、最高機密文書なのである。
 通常かかる指令は、主要閣僚委員会において大統領の認知のもとに承認されるのが常である。その主要閣僚委員会は、現ブッシュ政権のもとでは、ライス、司法長官ジョン・アシュクロフト、国防長官ドナルド・ラムズフェルド、国務長官コリン・パウエル、財務長官ポール・オニール、CIA長官ジョージ・テネットを、他の主要政府高官とともに、その中に含んでいる。




ビンラディンを引き合いに出した攻撃前メモ
  Pre-Attack Memo Cited Bin Laden
    「ニューヨーク・タイムズ」5月15日(水)
    by ディヴィッド・ジョンストン

 ワシントン、5月14日。フェニックス市の、あるFBI局員によって昨年夏に書かれたこの機密メモは、連邦捜査局本部に、アメリカの飛行学校に在籍する中東出身者を調査するように促し、また、オサマ・ビンラディンを名指しで引き合いに出し、彼につき従う者たちがテロ実行の訓練をするために飛行学校を利用することがありうると示唆していた、と政府当局者が今日はじめて述べた。

 そのメモはこう述べていた。ビンラディン氏のようなテロリストグループが、世界中の民間航空産業にイスラム戦士を、パイロットや警備員や航空機整備士として配置するという一致協力した努力の第一段階として、飛行学校へ生徒を送り込んでいるかもしれない、と。

 このメモの存在は数か月前から知られていたが、最近までその詳細はほとんど知られていなかった。ここ数週間に、いく人かの米国議会議員と議会職員がそれを読むことができた。今日まで政府当局者は、そのメモがビンラディン氏への直接の言及を含んでいるということを明らかにしていなかった。

 ロバート・S・ミューラー3.は、FBI長官になったのが9.11攻撃のほんの2週間前なのだが、連邦捜査局がそのメモにほとんど注意を払わなかったと認めた。ミューラー氏は、捜査局にはそれを評価する適切な分析能力が欠けていた、と述べた。それは彼が正そうとした欠点で、FBI内に新たな分析部を設立し、そこに新たな職員を配置したという。

 そのような部のひとつが連邦捜査局内情報部で、このメモの直接の結果としてつくられたものである。この情報部の目的は、テロリストの脅威に関係する情報を集めて評価すること、さらに捜査局内や他の連邦諸機関にそういう情報を広めることである。
 このメモは、アリゾナ州(州都フェニックス市)の、あるFBI局員によって書かれたのだが、彼は、アリゾナ州で飛行学校に通っていた数人の中東出身者のテロ調査をおこなっていたのである。このメモを読んだ人々は、次のように述べた。そのメモは、誰かを名指しでアルカイーダ信奉者と特定していないし、調査すべき飛行学校も特定していないし、9.11の攻撃を明確に予言してもいなかった、と。

 しかし、このフェニックス・メモを読んだ数人の米国議会議員は、それを、最も重大な資料と特徴づけ、ありうるハイジャックについて政府が警告を受けていたかどうかを議会調査する際に明らかにされるべきものであると述べた。数人の上院議員は、そのメモは顧みられなかった警告を象徴している、と述べた。

 このメモは、連邦捜査局にとってやっかいな唯一の内部文書ではないかもしれない。8月に、ザカリアス・ムッサウイが何故ミネソタ飛行学校に在籍していたかを捜査員たちが説明しようとしていたとき、ある局員がこのメモについて熟考して、こう述べていた。ムッサウイ氏は世界貿易センターに飛行機を突っ込ませることを計画しているかもしれない、と。ムッサウイ氏はフランス市民で、まもなく移民法違反容疑で逮捕されたのだが、アメリカ政府によって、9.11の20人目の意図的なハイジャッカーであると信じられたのである。

 FBI当局者は、9.11以前に捜査官たちが入手していた情報では、あの攻撃を妨げることはできなかったであろう、と述べた。フェニックス・メモが、ビンラディン氏の飛行学校利用がありうるものと言及していたとしても、そのメモのどこにも9.11の陰謀を予報するものはなかった、と。フェニックスで調査されていた中東出身者の誰ひとり、アルカイーダとの結びつきも、9.11攻撃との結びつきもなかった、と捜査局当局者は付け加えた。

 連邦捜査局の説明では納得しない議員もいた。今日、バーモント出身の民主党員で上院司法委員会議長である上院議員パトリック・J・リーヒーは、連邦捜査局長官のミューラー氏に手紙を書いて、さらなる情報を求めた。

 司法警察当局は今日、次のように述べた。このメモを7月末に捜査局本部で電子文として受け取った時、反テロの局員がそれを再検討した、と。しかし当局は、その中心的な勧告について何の行動もとらなかった。その勧告は、捜査局に、飛行学校への入学を求める外国人学生によって提出されたビザ申請に関する情報を収集するように促すものであったのだが。

 9.11のハイジャッカーのうちの数人は、フロリダやカリフォルニアのような州の飛行学校で勉強していた。そのひとりがモハメド・アタ、当局がこの陰謀の首謀者と結論づけた人物であった。

 数人の議員は、このメモがFBI本部に警告を発することができなかったとは信じられないと語った。

 しかしながら、今日、司法警察当局は次のように述べた。このメモを扱った捜査局員は分析官ではなく捜査官で、当時、他の最優先事件に深く関わっていた。それには、フランスで発覚したテロの計画や、2000年10月にイエメンで起きた駆逐艦コールに対する自爆攻撃の容疑者の追跡が含まれる、と。また、こうも述べた。これらの局員たちは、当時、フェニックス市からの推論にすぎないメモとみなされたものを調査する時間がほとんどないと信じていた、と。

 国中の飛行学校には数百人の外国人がいるので、連邦捜査局本部の当局者は、提案された調査計画を「かなり大がかりな企て」とみなした、と一人の高官は述べた。当局者は、その勧告を考慮する時間がもっとできるまで行動を延期することを決めた。

 そのかわりに、ワシントンの捜査局当局者は、2つの部局へそのメモを送付し委託した。そのうちの1つはニューヨーク支局で、そこではアルカイーダの件が調査されていたのである。しかし、9.11以前には何の行動もとられなかった。

 更に、このフェニックス・メモには別な問題があった、と捜査局当局者は述べた。このメモは、8月にムッサウイの調査を開始したミネアポリスの捜査局員に回送されなかったのである。

 ムッサウイ氏は、9.11の攻撃でビンラディン氏と共謀していたとして後に告発されたのだが、困惑し悩ませる事件を象徴していた。捜査局員たちは、ムッサウイ氏がテロ行為の準備をしているかもしれないと信じていたが、彼が法を破った証拠はなかった。

 ムッサウイ氏は、飛行学校の教官に、ロンドンのヒースロウ空港からニューヨークのケネディ空港までのシミュレーター飛行訓練をしたい、と述べていた。その情報にもとづいて、昨年8月の部局内会合で一人の局員が、ムッサウイ氏は飛行機を貿易センターに突っ込ませようとしたのかもしれないと考察した。捜査局当局者はそう述べて、「ニューズウィーク」の今週号で初めて公にされた報告を確認した。

 局員たちの中には、ムッサウイ氏がシミュレーション飛行をしたいと望んだ747旅客機に関して、異なった推論をする者もいた。ムッサウイ氏との最後のインタヴューで、ミネアポリスの捜査局員は、彼がテロ実行の準備をしているという連邦捜査局の疑いがあったので彼と向かい合ったのだが、貿易センターツインタワーに飛行機で突っ込むつもりかどうかを尋ねなかった。

 ムッサウイ氏は、法を破る計画は全くないと強く主張した。