星川 淳 さんのピースウォッチより

 以下に紹介するのは、星川淳さん(作家・翻訳家/屋久島環境政策研究所)がメールで配信された「ピースウォッチ」からの転載です。星川さんのご承諾の上で、署名事務局の責任で掲載します。



ピースウォッチ #02(2003.3.3付) より

★著作権関係でケチをつけられないよう、ネット公開されているものは原文ソースのURLと見出しだけつけることにしました。

★#01号の(1)の出典 Stratfor について質問がありましたが、StrategicForecast(戦略予測)の名のとおりCIA系といわれるアメリカの代表的な民間情報(諜報)サービスで、主要記事は購読制。立場は違っても「帝国」の動向を探るために内容が流出し、広く回覧されています。http://www.stratfor.com/

★メディア関係者、翻訳者のみなさん、取り上げられるものは報道してください。


(1)イラク戦争の票獲得に向けた米国の汚い手口――内部文書からリーク
---------------------------------------------------------------------
 アメリカ国家安全保障局(NSA)が、国連安保理の武力行使容認決議案支持取りつけのために、査察継続と平和的解決に傾く安保理メンバー各国の国連代表部に対して事務所および自宅の電話・Eメール傍受工作を強めている。とりわけ、採択の鍵となる非常任理事国6か国(アンゴラ、カメルーン、チリ、メキシコ、ギニア、パキスタン)がターゲットだが、安保理メンバー以外の国々に対しても同様な傍受を行ない、アメリカが有利に動くための情報収集が目的。ホワイトハウス内でもそこまですべきでないという慎重意見を押し切ったのはコンドリーザ・ライス大統領補佐官と見られ、恫喝と援助の買収工作に加えて、ここまで露骨な行為におよぶアメリカに、ヨーロッパをはじめ激しい反発が起こるのは必至。(英オブザーバー紙/3月2日)
---------------------------------------------------------------------
(★国連本部をアメリカに置くことを再考すべきでは?)
Revealed: US dirty tricks to win vote on Iraq war
Secret document details American plan to bug phones and emails of key
Security Council members

Martin Bright, Ed Vulliamy in New York and Peter Beaumont
Sunday March 2, 2003
The Observer
http://www.observer.co.uk/iraq/story/0,12239,905936,00.html


(2)米ベテラン外交官、ブッシュ政権に堪忍袋の緒が切れ辞任
---------------------------------------------------------------------
 長年アメリカ外交に貢献したジョン・ブレイディ・キースリングが、パウエル国務長官宛に辞任状を送り、その内容を公表した。国際協調をないがしろにするブッシュ政権の外交政策が、米国本来の国是にも国益にも合致しないとの判断が理由。キースリングは訴える。9・11以降の情報操作と世論誘導は目にあまり、帝政ロシア末期さえ思わせる。とりわけイラク侵攻にはまったく大義がなく、過去1世紀にわたるアメリカの国際貢献が培ったものを無にするだろう。いまならまだ世界中にアメリカの友人たちがいて、米欧協調による国際社会の安定を望んでいるが、イラク攻撃に踏み切ればアメリカは世界の憂いになる。パウエル長官はこれまでよくブッシュ大統領の失点を補ってきたが、いまや一線を越えた。良識が許さないので、自分の辞任をもって抗議し、なおアメリカ民主主義の自浄作用に期待する、と。(ニューヨークタイムズ/2月27日)
---------------------------------------------------------------------
U.S. Diplomat Resigns, Protesting 'Our Fervent Pursuit of War'
By FELICITY BARRINGER

UNITED NATIONS, Feb. 26 ・A career diplomat who has served in United
States embassies from Tel Aviv to Casablanca to Yerevan resigned this
week in protest against the country's policies on Iraq.
http://www.nytimes.com/2003/02/27/international/middleeast/27NATI.html




ピースウォッチ #01(2003.3.2付) より

★米英によるイラク開戦との時間競争になる中で、重要な情報がどんどん出てきています。下記はここ24時間ばかりのベスト3。メディア関係者には積極的な調査と報道を望みます。

★翻訳者・通訳者のみなさん、泥縄ではありますが、予防的平和創造(Peacemaking)に必要な、こうした重要な記事や論考を素早く訳して流す常駐の独立メディアと、そのための分業態勢をつくれないかと思います。仮称 Translators United for Peace (TUP)。関心があったら連絡ください。

------------------------------------------------------------------------
(1)先日、プーチンの特使としてフセインと秘密会見したロシアのプリマコフ元首相が、戦争回避の鍵を握るかもしれない取引材料を持ち帰り、米英仏などに示した。フセインは仏独提案のように即時、国連平和部隊を招き入れて完全な武装解除(将来の米英武力侵攻に耐えられないレベルまで?)に応じるうえ、米英の石油大手をイラクの石油開発に参入させるという内容。英仏は歓迎しているが、米は微妙。最終判断はブッシュ父にかかるか。米が乗れば、近日中にプリマコフが再度イラク入りする予定。(Stratfor特報)

(2)過去のイラク亡命者で最大の大物、フセイン・カメル(フセイン大統領の娘婿・95年亡命)を、初代UNSCOM委員長ロルフ・エケウス本人が聴取した国連の準機密文書の写し(PDFつき!)と、その分析。UNSCOM査察はカメル亡命以前と以後でまったく違う段階に入ったといわれるが、その一端がうかがえる内容。反フセイン体制の立場ながら、自ら開発を統率した大量破壊兵器(ABCすべて)の全面廃棄を証言し、原爆製造などの立役者と自己宣伝する亡命科学者ハディル・ハムザを虚言癖の持ち主と斬り捨て、湾岸戦争中、イラクが化学兵器の使用を自制したことを明かす。ABC兵器の所在を知りながら爆撃し、米兵およびイラク国民に被害を広げた米軍と対照的。(FAIRメディアリリース)

原文 http://www.fair.org/press-releases/kamel.html

(3)フセインの悪業の象徴とされるハラブジャの虐殺(1988年)について、当時の報道を振り返りながら真偽を検証すると、クルド人の町を占拠していたイラン軍と、攻撃するイラク軍との戦闘に巻き込まれたことがわかり、化学兵器使用もどちら側によるものか確定されていない。直後の国連調査ではイランのシアンガスが疑われるなど、事実がけっして明白でないことがわかる。(カナダ・トロントスター紙)

原文 http://www.thestar.com/NASApp/cs/ContentServer?pagename=thestar/Layout/Article_Type1&c=Article
&cid=1035778420902&call_page=TS_EditorialOpinion
&call_pageid=968256290204&call_pagepath=Editorial/Opinion

------------------------------------------------------------------------



星川淳氏のウェブサイト 「インナーネットソース」
Website: http://innernetsource.hp.infoseek.co.jp/