ブッシュ再選に当たって−−反ブッシュ、反小泉、反戦平和の闘いを継続しよう


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(1) 11月2日の米大統領選挙はブッシュの勝利に終わった。今後4年間再びブッシュが大統領となる。私たちはアフガン戦争以来、3年間にわたってブッシュの対テロ戦争という名の侵略戦争、単独行動主義的先制攻撃戦略と闘ってきた。反ブッシュを最優先の課題として反米・反帝の反戦平和運動に取り組んできたが故に、極めて残念な結果である。
 それよりも何よりも、現に今まさに米軍の容赦ない殺戮と破壊を真正面から被っているイラクの民衆、アフガニスタンの民衆、そして米の帝国主義的な支配と抑圧、脅迫と蹂躙、搾取と収奪を被っている中東、ラテンアメリカ、アジア、アフリカ等々、世界中の途上国の全ての民衆にとっての不幸であり悲劇である。

 私たちも、世界の反戦平和運動も、途上国の民衆も、ケリーのイラク、対テロ戦争、先制攻撃戦略など、軍事外交政策でのブッシュとの帝国主義的な共通性、同一性を承知してきたし、とりわけ今夏頃からのケリー失速に注意を払ってきた。出口調査と結果との大幅な食い違いなど今回も甚だしい不正が噴出したが、ケリーがあっさり敗北を認めたため、曖昧なまま終わった。
 「落胆しているヒマはない」「街頭に戻ろう」「闘いは変わらない」「立ち上がり闘おう」等々−−世界の反ブッシュ・反戦の潮流は口々に闘いの続行を誓い合っている。私たちもまた長期戦を覚悟して陣容を整え、新しい決意、新しい気分で、反ブッシュ、反米・反帝の闘いを継続したい。

 
(2) ブッシュは再選後初の記者会見で、対テロ戦争の継続を宣言した。そのことで自らが侵略戦争と暴力的破壊の源泉であることを示した。第一期に続き、更に次の4年も世界を戦争と破壊と不安定の泥沼に突き落とすと宣言したのである。これからの4年も“戦争の4年”になるだろう。
 中東ではすでにシリア、イランなどに軍事脅迫の刃を向けている。イスラエルを増長させる形でのパレスチナへの攻撃はアラファト不在の下で極めて深刻である。アジアではとりわけ日本の私たちは北朝鮮への先制攻撃と戦争挑発の危機感で一杯である。更にはベネズエラやキューバなど、「左傾化」するラテンアメリカへの軍事介入の危険を警戒しなければならない。これらの諸国はいつテロリスト呼ばわりされ攻撃されてもおかしくない状況にある。

 ブッシュ共和党は、上下両院でも、知事選でも、最高裁でも勝利した。米国の政治は急速に右傾化し保守化していることを示した。「暗黒の時代」「ファシズム」「独裁政治」などと危機感が表明されている。投票数350万票の「歴史的な勝利」をテコに対外的な侵略、国内的な政治的抑圧と警察国家、マッカーシズムのエスカレーションの危険性がある。

 ブッシュの第二期は変わるのか変わらないのか。私たちも今のところ分からない。しかし、ブッシュから戦争を除けば何が残るのか、と考えれば答えは自ずと明らかではないだろうか。戦争、テロの恐怖、不安を煽る以外に彼は何もやってこなかったし、選挙で宗教右派と保守派と「セキュリティ・ママ」を動員できたのもこれである。ブッシュ政権は戦争ができなくなれば失速し崩壊する。ブッシュの戦争政策、対テロ戦争政策と全力を挙げて闘うことは、引き続き私たち日本と世界の反戦平和運動の最優先の課題である。


(3) 来年1月の選挙強行をめぐってイラク情勢は決定的局面に入った。イラクで再び大虐殺の危機が切迫している。ブッシュは再選後最初の仕事としてファルージャとラマディに血の雨を降らせようとしているのである。1万人もの兵力を動員して米軍が両市を包囲し、男性だけを閉じ込め、女性や子どもを市内から退去するよう勧告し、突入を宣言している。降伏しなければ皆殺しということだ。すでに毎日のように激しい空爆が繰り返され、地上攻撃開始の合図を待つだけになっている。

 今回の作戦は米のイラク占領の行き詰まり、軍事的戦略的破綻、開戦以来の軍事冒険主義の破綻の結果である。自らの失敗を更なる虐殺と破壊で切り抜けようとしているのである。多くの子どもや市民が殺されている。今回の侵攻は4月を上回る規模の大虐殺を引き起こす危険がある。何としても大虐殺が始まる前に未然に食い止めなければならない。


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(1) ブッシュの勝利が米国史の中において、世界史においてどんな意味を持っているのか、まだ分からない。しかしはっきりしているのは、ブッシュがその頂点を極めたかに見える今回の大統領選挙を転機に、アメリカ帝国主義とドル帝国がまさに新しい衰退と没落の道を歩み始めていることを同時に示していることである。
 
 ブッシュ再選は、異常でグロテスクな先制攻撃的軍国主義を支持する軍産複合体や石油メジャー、石油をがぶ飲みする自動車や重厚長大産業への依存だけではなく、福音主義派などの狂信主義的キリスト教原理主義、極右保守派への依存を一層強めたことで、米国内を宗教的文化的に先鋭な形で「二つに分裂」させ、米国内の矛盾・対立を一層深刻化させた。
 何よりもまず唯一の軍事超大国である米国が、ブッシュの第一期でやりたい放題の力の政策を振りかざしてきた結果、戦争と脅威と不安定の源泉になり、国際的孤立の道を突き進んでいる。再選されたブッシュは世界をもっとズタズタに引き裂くだろう。米の「一極支配」、軍事的経済的覇権と言うが、その下で米国の孤立化と脆弱性が強まっており、対米離反、対米憎悪と敵意が急速に増大しているのである。イラク侵略・占領や国際関係をめぐる欧州・ロシアと米国の分裂、「有志連合」もガタガタになり次々と脱落している。


(2) 問題は国際政治と米国内政治における分裂や孤立だけではない。大統領選再選を唯一の目標としてやってきた「あとは野となれ山となれ」方式の経済政策が限界を示し始めたのである。軍拡と軍産複合体への大盤振る舞い、大規模金持ち減税、利下げと過剰流動性によるバブル膨張とマネーゲーム、とりわけ住宅バブルと株価バブルの維持等々。全ては再選までの信じ難い金融的財政的拡大政策であった。景気の減速局面はこれらの無理に無理を重ねてきた諸矛盾を一気に、あるいは徐々に、いずれにしても不可避的に明るみに出すだろう。

 現にブッシュが再選を決めたその瞬間から金融市場はドルの急落、債券価格の急落、金の急騰という洗礼を受けた。株の急騰がメディアで騒がれたが、それは事の反面に過ぎない。言うまでもなく焦点は、危機的水準に達した「双子の赤字」、財政赤字と経常収支の赤字の膨大な水準であり、それを背景にしたドルの信認の動揺である。
 現在のところは、経常収支赤字と資金流出懸念からドル売りが加速しているが、いつこれが財政危機の爆発懸念と結び付き、長期金利の急騰を引き金に、ドル・株・債券のトリプル安や金融市場全般の動揺に波及するか分からない。現に再選が決まった11月3日、財務省高官は議会に要請している国債発行額の上限引き上げが可決されなければ、国債入札を延期する必要があると危機感を表明し国庫の窮状を訴えた。

 ブッシュ第一期の侵略と破壊のやりたい放題、侵略的暴走が可能であったのは、クリントンが二期にわたり積み上げた巨額の財政黒字のお陰であり、その結果、財政的制約を無視することができたからである。しかし彼はこの財政的余力を文字通り見事に使い果たしてしまった。しかも全部食い潰した上に膨大な赤字を積み上げている。ブッシュの第二期は、財政的制約がストレートに効いてくる局面に入る。深刻極まりない財政危機を無視して再び軍事的冒険主義をエスカレートさせようものなら、それこそ今度は、米国経済の未曾有の危機となって跳ね返るだろう。


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(1) 小泉首相はブッシュ再選で「ほっとした」と漏らした。自民党の組織基盤の極度の弱体化の下で、ブッシュが最大の「政権支持基盤」であるが故に発した本音だろう。
 小泉と政府与党は当然、図に乗るはずである。ブッシュ再選をテコに、これまでの路線、つまり自衛隊イラク派遣の延長と占領協力強化、海外派兵恒久法、在日米軍基地再編に伴う米軍の世界侵略拠点への基地提供に決着を付けようとしている。対北朝鮮戦争準備、集団自衛権の行使も念頭にある。更には教育基本法の改悪や憲法改悪を目標に軍事外交戦略を根本的に転換し、日本を侵略国家に変える道を突っ走ろうと目論んでいる。日本自らが自発的に対米従属と属国化を推し進めることで、極めて危険なブッシュの先制攻撃戦争政策に深くはまり込んでいこうとしている。日本の新しい軍国主義である。

 アジア情勢と日本にとって最も危険なのはブッシュの北朝鮮政策、対北朝鮮戦争準備である。日本では核開発問題に拉致問題が絡み、異常な戦争ヒステリー、民族排外主義を加速させる危険がある。それは先制攻撃政策、ミサイル防衛や武器輸出三原則の撤廃とも結び付き、有事法制の発動や国家総動員体制にも波及する。


(2) しかし、ブッシュ再選前後から小泉政権の与党基盤が微妙に揺れ始めている。一方での、内政と経済政策における、郵政民営化と「三位一体改革」、教育予算切り捨て、相次ぐ増税・大衆収奪計画、消費税増税等々をめぐる矛盾と対立、他方での軍事外交政策における、派兵延長をめぐる与党内からの慎重論、教育基本法と憲法をめぐる公明党と民主党の慎重対応、基地再編問題での地元の批判、何よりもこのまま対米従属政策を続けることへの支配層内部からの異論の台頭等々。小泉のかけ声とは裏腹に与党と世論の支持は失速しつつある。

 本当の闘いはこれからである。まず差し迫っているのはファルージャ大虐殺加担反対の闘い、12月14日に期限切れを迎える自衛隊派兵期間の延長阻止の闘いである。内外におけるブッシュと小泉の孤立と窮地は、世界と日本の反戦平和運動が真正面からぶつかり合い、その総力を挙げて闘ってきた結果である。その成果が、ブッシュ第二期にようやく姿形を現そうとしているのである。私たちは、反ブッシュと反小泉、日米同盟の新しい強化反対、日本の新軍国主義反対、教基法改悪阻止・改憲阻止、戦争国家化阻止の課題に、これまで以上に全力を挙げて取り組んでいきたい。


2004年11月7日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局