関西ブロックより京都教育大学への申し入れ文書


2009年6月23日

京都教育大学長殿

キャンパスセクシュアルハラスメント全国ネットワーク関西ブロック
連絡先:石元清英
Tel 06-6368-0705(直通)
〒564-8680 大阪府吹田市山手町3-3-35 関西大学社会学部


 キャンパスセクシュアルハラスメント全国ネットワークは、大学でのセクシュアルハラスメントの防止と問題解決に取り組む教職員学生他、この問題に関心を持つ者たちのネットワークで、関西ブロックは、その関西支部です。

 私どもは、今般明らかになった、京都教育大学生による集団準強かん事件と、それに関して京都教育大学がなされた対応について、非常に重大な問題があったと考えています。大学におかれましては、今後早急な善後策をとられるとともに、将来の問題再発の防止に全力で取り組まれるよう、以下の通り、申し入れをいたすものです。


(1)京都教育大学は事実関係を解明し被害者を救済することにおいてきわめて不十分であったのではないか。

 報道によりますと、大学は、女子学生の被害申告を受けて調査を開始はしたが、当事者の話が一部食い違ったため強姦にあたるか明確な判断ができないと、「公然わいせつ事件」であったと結論されています。「調査はしたが話が食い違うので判断できない」というのは、セクハラ調査で大学が常套の言い訳とするところですが、加害者側と被害者側の話が100%一致しない限り判断はできない、というのでは、調査はおよそするだけ無駄ということになってしまいます。そもそも、性暴力被害の問題では、被害者・加害者の主張が異なることは頻繁であり、とくに合意の有無について、被害者・加害者双方の主張を対等なものとしてみること自体に問題があります。大学は、性暴力被害を扱う上で当然持つべきそうした認識を持ったうえで調査に臨んだのでしょうか。かりに、大学には調査能力がないと認めるのならば、被害学生の同意を得て、捜査機関にゆだね、事実関係を明らかにすることに大学として協力すべきであったと考えます。

(2)京都教育大学は被害者を保護支援しつつ、警察に通報することも促すなどの措置を取るべきだった。

 しかし、私どもは、大学は速やかに警察に届けるべきであった、と単純に申しているわけではありません。文部科学相は、「訴えがあったらいち早く警察に知らせるべき」と発言し、マスメディアでも同様の意見が見られますが、しかし私どもは、「大学が警察に通報しなかったこと」を無前提に非難することには、危うさがあると考えます。性暴力被害者からの相談を受ける際の鉄則は、被害者の立場に立つことであり、本人の意向を問うこともなく警察に通報するなどは、決してあってはなりません。言うまでもありませんが、それは、事件を隠すことに大学が加担せよ、というのではありません。大学がすべきなのは、被害学生を心身ともに支えつつ、警察に通報することを含め被害の回復のためにできることについて情報を与え、被害者の意思を尊重しつつ刑事告発の行動を促すことであったと考えます。

(3)京都教育大学が本気で「教育的配慮」を言うのであれば、加害者処分に留まらない包括的な対応が不可欠である。

 大学は、本件の対処が教育的配慮によるものであったことを主張されていますが、加害学生たちが停学処分の間に、学童指導員のアルバイト等を行っていたことをみると、この点においても、大学のやったことは不十分きわまりないと言わざるを得ません。大学が、加害学生への教育的配慮を行うことが問題なのではありませんが、その教育的配慮は、このような卑劣な行為をなぜ起こしてしまったのかを反省させ、二度と繰り返さないよう教育することのはずです。単に停学処分という形式だけでそのような措置を一切取っていないのなら、大学の言う教育的配慮とは、加害性をごまかし甘い処置を行うことにすぎないのではないでしょうか。また、この事件は、90名近くの体育会系学生たちの宴会で、周囲に学生の居る場で起こっています。逮捕された学生だけでなく、他の学生達にも、性暴力を容認する雰囲気があったのではないか、それは体育会にもともと瀰漫するものではなかったか、等を点検し、同様の問題が二度と起こらないようにすることが大学の果たすべき教育的責任であるはずです。

 非常に残念なことですが、大学における性暴力は何ら珍しいことではありません。今回の事件を稀なことと受け止めるのではなく、そのようなことが起きやすい大学、ひいては社会の問題を直視し、大学教育にあたられるよう、強く期待するものです。

 さらに、事件報道後、インターネット上で、被害を矮小化し、被害者を貶めるような発言も目立っています。こうした発言が被害者や周囲の学生たちにもたらす影響ははなはだ大きいものがあります。私どもは、京都教育大学が、性暴力と人権侵害を許さない毅然とした態度を示すとともに、被害学生の心身の回復を支え、彼女が真に良好な教育環境でふたたび勉学に励めるよう、最大限のサポートをされますよう要望するとともに、今後、京都教育大学が取られる措置に、注目してまいる所存です。

以上



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Last update:2009-07-03