『ピープルズ・プラン研究所ニュース』 No.1 (1997/07/26)


巻頭言

花崎 皋平

 この春、私たちはピープルズ・プラン研究所準備会を発足させた。まだ試運転期間であるが、3回のラウンドテーブルを開催しての私の気分は、希望と不安と半々である。いまあるドクトリンとしての専門領域にこだわらず、現実が提起する課題をめぐって率直な意見を交換する、そしてなにが争点であるかを明瞭にするというねらいに関しては、課題の設定と話題提供者が適切であれば、成果のある議論ができるだろうという手応えはあった。

不安はその裏面というべきか。どうしてもたこつぼ型の参加になりがちだという点である。一番はっきり現れるのは、ジェンダーやフェミニズム関連の主題だ。そこは女性の分野となってしまい、男性の参加にとぼしい。フェミニスト研究者たちも、他領域の場合にはあまり出席されない。それぞれ忙しいから、時間のエコノミーを考え、どれに出てどれに出ないかを選ばざるを得ない事情はよくわかるのだが、それに慣れるとルーティンワークのわだちにはまる。現状維持の保守主義がしのびよる。70年代に書かれた、ボブ・ディランだったか、ゲイリー・スナイダーだったかの詩に、「専門家は保守的だ」というのがあった。創造的なコンフリクトと新しいものをはらむカオスの醸成という期待がかなえられるか。それが不安である。


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