98年度活動報告

「環境と貿易」プロジェクト

農業プロジェクト

「畑からのメッセージ」キャンペーン

政策分析レポート「日本の農業・食料政策編」の作成

「農業・貿易とWTO」ワークショップへの参加

WTO第二回閣僚会議への参加

「WTO閣僚会議報告会・農業協定レビューに向けての意見交換会」の開催
「東南アジア食料安全保障・公正貿易委員会」主催の会議への参加

プレスリリース・意見書提出




OECD・MAI(多国間投資協定)に関する活動

MAIにNO!日本キャンペーン

プレスリリース・意見書





□概説□

 「環境と貿易」プロジェクトは、1995年11月に開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)大阪会議に向けて開催した連続セミナー「アジア太平洋地域の環境と貿易」および国際市民会議をきっかけに始まった。プロジェクトでは、WTO(世界貿易機関)、OECD(経済協力開発機構)、APECなどが促進する「貿易・投資自由化」が、南北格差や各国内で起きている不均衡問題、および地球環境や地域環境の劣化の問題とどのように関係しているのかについて考察してきた。また、こうした問題を解決していくための方策について、国際法・経済学・環境政策などの専門家の話を聞き、国際機関や政府間でのアプローチや各国政府の国内政策と、市民・NGOによる取り組み方の違いなどについて理解を深めている。1998年度には、1999年からのWTO次期交渉に向けた世論形成のためのプロジェクトと、97年度に引き続きOECDで交渉されていた多国間投資協定(MAI)に反対するキャンペーンを行った。
 1999年にはWTO次期交渉に向けた世論形成のためのプロジェクトを継続する予定である。




農業プロジェクト

「畑からのメッセージ」キャンペーン

【期間】1998年8月〜
【担当者】事務局(佐久間智子、檀上理恵)
【背景・内容】
 市民フォーラム2001農業プロジェクトと「MAIにNO!日本キャンペーン」(別項参照)との合同企画。WTOやMAIの求める自由化が生活に及ぼす悪影響を危惧するメッセージを記したステッカーを、生産者・流通加工業者の協力を得て、米袋や野菜パック、国内産加工食品のパックなどに貼り、消費者や流通業者にアピールすることを目的としている。ステッカーのメッセージは、公募により決定した。1999年3月現在で、米生産者を中心に、滋賀県・大阪府・栃木県・埼玉県・茨城県・山形県・宮城県・新潟県などの生産者からの協力を得ている。このプロジェクトは今後も数年間継続する予定。


▲「畑からのメッセージ」キャンペーンステッカー



政策分析レポート「日本の農業・食料政策編」の作成

【期間】1998年5月
【担当者】大野和興(理事)、事務局
【背景・内容】
 環境に関連の深い日本の政策について、その意思決定メカニズムと環境・持続可能な開発への影響を分かりやすく解説した政策分析レポート・シリーズ(シリーズ全体についてはp.15参照)の第1冊目として、日本の農業・食料を巡る現状とそれをもたらした戦後からの農政を解説したレポートを作成し、同時に自給を目指す小規模農業を支える国際的な枠組みを提案した。1998年5月に行われた「農業・貿易とWTO」ワークショップとWTO閣僚会議(いずれもジュネーブ)、1999年2月に行われた「東南アジア食料安全保障・公正貿易委員会」主催の会議(クアラルンプール)でNGO関係者や政府政策担当者に配布した他、国内の研究者・政治家・行政担当者・農業従事者・NGO関係者などにも配布した。タイトル・協力者の方々は以下の通り。
・政策分析レポート@「日本の農業・食料政策編」
 執筆:大野和興(2001理事、アジア農民交流センター) 顧問:御地合二郎(全日本農民組合連合会)、田中 優(市民フォーラム2001共同代表)、暉峻衆三(東亜大学(当時))、富山洋子(日本消費者連盟)、古沢広祐(国学院大学)水原博子(日本消費者連盟)〈A4版16ページ〉英語版は「Policy Review No.1 :Overview of Japan's Agriculture and Agricultural Policies」。



「農業・貿易とWTO」ワークショップへの参加

【期間】1998年5月15日〜17日
【場所】スイス・ジュネーブ
【担当者】佐久間智子(事務局長)
【背景・内容】
 WTO閣僚会議開催に先立ち、農民組織とNGOの主催によるワークショップがジュネーブ郊外で開催され、約50団体80名が参加した。ワークショップの目的は、99年に始まるWTO農業協定の見直しに向けて、世界の農民組織とNGOが目標と戦略について話し合いを開始することであり、最終日には今後の戦略として、各国のケーススタディの実施や食料安全保障問題についてのガイドづくり、メディアに向けた国際的なキャンペーンの実施などが確認された。



WTO第二回閣僚会議への参加

【期間】1998年5月18日〜20日
【場所】スイス・ジュネーブ国連欧州本部
【担当者】暉峻衆三(理事)、佐久間智子(事務局長)
【背景・内容】
 1995年1月1日に発足したWTOは、以後2年以内に一度、最高決定機関である閣僚会議を開催することになっている。前回のシンガポール会議では全加盟国の閣僚が5日間にあたり演説を続けたが、今回の会議では演説は国家元首と主要国の貿易相、ルジェロWTO事務局長など数十名が行ったに留まり、実質的な協議は全て、NGOもマスコミも入れないWTO本部の中で行われた。今回の会議の焦点は、1999年に開始する次期交渉に関して、すでに決まっている農業・サービス分野以外にどの分野を対象とするのか、また交渉をラウンド形式で行うのか(EU・日本が主張)、分野別の個別交渉にするのか(アメリカが主張)などであったが、いずれも今回の会議では結論には至らなかった。



「WTO閣僚会議報告会・農業協定レビューに向けての意見交換会」の開催

【期間】1998年5月23日
【場所】総評会館401号室
【担当者】大野和興(理事)、事務局(佐久間智子、檀上理恵)
【背景・内容】
 「農業・貿易とWTO」ワークショップおよびWTO閣僚会議について佐久間が参加報告を行い、続けて大野和興氏、日本消費者連盟の水原博子氏、全日本農民組合連合会(全日農)の御地合二郎氏、日本農業新聞の岡田健治氏からの報告を行った。その後、農業を巡る国際・国内の政府やNGOの動き、農業基本法の見直し(「新基本法」)に関する現状認識、「農業の多面的機能」のWTO協定中での位置づけ、国際・国内の運動形成の障害などについて、30名の参加者とともに意見交換を行った。



「東南アジア食料安全保障・公正貿易委員会」主催の会議への参加

【期間】1999年2月24日〜26日
【場所】クアラルンプール
【担当者】佐久間智子(事務局長)
【背景・内容】
 東南アジア食料安全保障・公正貿易委員会(South-east Asian Food Security & Fair Trade Council)は、ASEAN諸国のNGO・農民の交流を目的に94年から会合を定期的に開催してきた。今年度は、金融危機が東南アジアの食料供給に与えている影響を評価すること、およびWTOの次期ラウンドに向けた委員会のポジションを作ることなどが主なテーマとなった。この会合では、委員会の有志メンバーによるAOA(農業協定)作業部会が発足し、2001も域外メンバーとして積極的に関わっていくことになった。



プレスリリース・意見書提出

・「『農業政策の新しい方向』についての提案」を提出(1998年8月、内閣総理大臣、農林水産大臣宛)
・「コメ関税化に反対する市民・NGO声明」提出とプレスリリース(1998年12月15日、首相・農水大臣・外務大臣に提出。7団体204名が賛同)
・「WTO次期交渉に向けた意見と要請」提出とプレスリリース(1999年3月21日、外務省に提出。APECモニターNGOネットワーク(AMネット)との連名)





OECD・MAI(多国間投資協定)に関する活動

【期間】1998年4月〜1999年3月
【担当者】事務局
【背景・内容】
 MAIとは、1995年9月からOECD(経済協力開発機構)で交渉されてきた国際投資自由化のための協定である。その内容は、外国投資・投資家を国内企業と同等以上に扱うことを各国・各自治体に求めるものであり、MAIのもとでは、外国企業が直接各国政府を提訴し、賠償請求を行えるようになる。各国の環境NGOは、MAIは多国籍企業の国境を越えた活動に自由を与える一方、社会的弱者や途上国の人々からセーフティネットを奪い、国家や自治体から社会・環境規制や経済政策を実施する権限を取り上げるものであるとし、各国の労働組合や消費者団体、先進国の開発NGOや途上国の農民運動などとともに、世界的な反対キャンペーンを行ってきた。そして1998年12月、OECDにおいて3年以上の年月が費やされてきたMAI交渉が正式に打ち切られた。その直接の理由はフランス政府が交渉から撤退したことだが、その背景にはMAIの存在と問題点を世界中に知らせ、世界規模で反対キャンペーンを展開した1000以上もの世界の市民団体・NGOの運動があった。
 しかし、MAI交渉がこれだけの反対を受けてとん挫したにもかかわらず、同様の投資協定がWTO次期交渉で復活する可能性が非常に高く、今後も予断を許さない。



MAIにNO!日本キャンペーン

 市民フォーラム2001、アジア太平洋資料センター(PARC)、APECモニターNGOネットワーク、A SEED JAPANなどが中心になって98年2月に立ち挙げた。98年度は主に以下の活動を行った。

・ハガキキャンペーン:首相宛、自治体首相宛、OECD事務局長宛にMAI交渉の打ち切りを求める内容。ハガキ送付者に対しOECDから回答があったため、さらにそれに対する返答のサンプルレターを作成。
・全国キャラバン(1998年4月11日〜19日):大阪・京都・名古屋・長野・松本・甲府・横浜・東京の全国8ヶ所で、街頭行動と集会を行った。
・外務省への申し入れ(1998年4月20日):外務省国際機関第二課のMAI交渉担当者に対し、MAIの自治体レベルでの審議と政策アセスメント、情報公開を求めた。
・投資の自由化に関する政党アンケート(1998年6月):7月に行われた衆議院選挙に向けて各政党に対し、アンケートを実施。送付先は自由民主党、公明党、民主党、社会民主党、新社会党、新党さきがけ、自由党、共産党の計8政党。うち公明党だけが無回答。
・シンポジウム「『グローバル経済』は破局への道?」開催(1998年11月3日):ゲストはロリ・ワラック(米国のNGO、パブリック・シチズン/グローバル・トレード・ウオッチ)、北沢洋子(国際問題評論家)、小島延夫(弁護士)、根本忠宣(三和総合研究所金融調査室)、約130名が参加。
・MAI反対署名提出:MAI交渉の打ち切りを求める署名(17,000人分)を首相宛に提出。同時に外務省国際機関第二課(MAI交渉担当)、国際機関第一課(WTO担当)の各担当者に申し入れを行った。



プレスリリース・意見書

・MAIに関する政党アンケートの回答について(1998年7月3日)
・MAIに関する首相と外相宛の署名提出および外務省経済局への申し入れ(1998年11月25日)

★「WTOメーリングリスト」が開設されました★

 1995年に発足したWTO(世界貿易機関)などの国際的な政府間経済フォーラムが押し進める「貿易・投資の自由化」は、実際には国・自治体の社会・環境法制の廃止・緩和を押し進め、国際・国内の両方での貧富の格差や環境破壊を引き起こしています。
 「WTOメーリングリスト」は、現在の多国籍企業の「自由」のための国際経済の枠組みやルールの決定プロセスや内容、およびその社会・環境影響に関する市民サイドの分析などを広く共有し、市民・NGOのオルタナティブについて議論するための場を提供するためのメーリングリストです。
 メーリングリストは公開を原則としますが、参加にあたっては、管理者(市民フォーラム2001・佐久間智子)の承認が必要となります。参加を希望される方は、管理者(tsakuma@jca.apc.org)に氏名・所属・住所・電話番号・FAX番号(ある場合)をお知らせ下さい。


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