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2001年11月10日発行164号ピースネットニュースより

【連載】反グローバリゼーションの運動のいま(8)

詩人の心で、打ち返そう!
(BE A POET:STRIKE BACK!)

環境と金融リサーチ 田 中 徹 二

 タイトルの「BE A POET:STRIKE BACK!」は、ATTACのニュースレター「サンド・イン・ザ・ホイール」10月24日号(通巻第101号)のタイトルであった。これは、101号の記事の中の、“大地をベースにしたスピリチュアリティー(霊性)を世界の変革のための行動に結びつける作品”を発表しているスターホークの「詩だけが悲嘆を語ることができる:9・11を越えて」という小論からとったものである。スターホークは次のように言う。「喪失と死の現実に直面し、言葉はその深さに触れることはできない。詩だけが悲嘆を語ることができる。命の匂い、感触を伝える言葉だけが気持を動かせる」、と。
 実際、テロリストたちの手段にされてしまった旅客機の乗客たち、貿易センタービルで働いていた人たちは喪失と死の現実に直面してしまった。また、次ぎに起きるかもしれないテロや炭そ菌事件は、自分を喪失と死の現実に直面させる。
 そしてもし言葉だけでなく、詩でうたうことができたなら他者の気持ちを動かすことができるだろう。他者たちとは、「戦争を支持している圧倒的多数の人たち」であり、その人たちは実際には、自分の中に複雑な気持ちを抱えているのだからだ、とスターホークは言う。「複雑な気持ち」とは何かについて、そのパラグラフでは答えていないが、その前のパラグラフでの「私たちは深いところで私たちの技術や経済が持続可能でないこと、自然が私たちより強いことを知っている。あのビルの倒壊は私たちが密かに予期している、近づく清算の日の肖像だ」というのが答えになるのであろうか? 米国の戦争を支持する一般国民の間にも、今の技術や経済が持続可能なものではなく、いつかしっぺ返しが来るのではないかとの予期があり、それが複雑な気持ちとして現われているのだろうか?
 ともあれ、「新しい政治的言語を創」らなければならないと、スターホークは主張する。
 一方、米国のアフガニスタンに対する空爆はいっそう激しさを増し、民間人に多数の犠牲者が出るとともに、さらに恐ろしいことに、アフガニスタンでは厳しい冬を前に100万人が餓死線上にあり、数百万人が飢餓に直面していると言われている。しかし、それへの世界からの援助を米軍の空爆が邪魔をしているという現実に対し、国際社会が有効な戦争ストップの世論と運動を組えていないということに深い憂慮を覚えざるをえない。
 ようやくフランスやドイツなど欧州では「空爆反対」の世論が高まってきたが、桁違いの数の喪失と死という現実が現われてしまうのであろうか? そしてその後にようやく空爆は終わる(停止する)のであろうか? しばし、喪失感を余儀なくされるが、「新しい政治的言語を創」り――それは必ずしも詩的言語ということではなく共感性をベースにした言語が必要であろう――、人々に働きかけなければならない。

香港での民衆フォーラムとマーチに参加してきました
 つい最近の10月27日〜29日に、香港での民衆フォーラムとマーチを行なうためのネットワークであるSolidarity and Resistance against Globalisation(SRG)の行動に参加してきました。これは、29日から開催される世界経済フォーラム(WEF)アジア太平洋地域総会に対する民衆側の対抗行動でした。現在、中国のWTO(世界貿易機関)加盟を目前にして、香港にはアジアの地域拠点を設置する企業が急増しているが、WEFには日本からソニー、NTTなどの経営者が参加していた。
 SRGには、香港、台湾、フィリピン、タイ、バングラディッシュ、韓国そして日本からの参加があった。テーマは「グローバリゼーションに対するオルターナティブは何か?」ということで、「1WTO・IMF・世銀の改革は可能か? 2企業支配・国際資金流通への対抗策は? 3台湾・香港・大陸(中国)の経済関係は?」などの論議を行い、28日はオーチャード通りという一番の繁華街を400人でマーチを行った(警察側はこの通りでのマーチを禁止していたが、どういう訳か強行できた)。
 香港でのグローバリゼーションをテーマにした初の試みということであったが、結構盛り上がったというのが現地の活動家の声である。日本からは4人プラス在香港の日本の人2人が参加した。私たちの報告は、日本の小泉「構造改革」とグローバリゼーションについて、国際金融の流れとオールタナティブとしてのトービン税、などであった。
 ところで、 私は香港の市内に入るのは初めてだが(旧国際空港にはベトナムへの乗り継ぎとして寄ったことがある)、文字通り資本主義の落し子のような都会で、街中高層ビルと喧騒、そして排気ガスで充満していた(とくに2階建てバスの排気ガスがすごい)。お年寄りが街中にまったく見られないことに象徴されているように、社会的弱者にはとても住みずらい街のようです。地下鉄のエスカレーターのスピードも速くて、最初ひっくり返りそうになった。また、フィリピン出身のハウスメイドたちの(12万人もいる!とのこと)、日曜日に港近くの広場に何千人(もっと?)と集まって休息や交流している姿は圧巻でした。
宣伝ですみません:新刊で出ました「アタックの本」
 『反グローバリゼーション民衆運動――アタックの挑戦』(ATTAC [編] / 杉村昌昭 [訳] つげ書房新社刊)というのがそれです。定価は、1800円+税。
 主な内容は「世界の未来をいっしょに取り戻そう(アタックの基本綱領)/政治をちがった仕方で《する》こと(アタックの指針)/民主主義的空間を世界規模でつくりだすこと(アタック国際運動の基本綱領)/トービン税をいかに管理し、何に使うか?/なぜ為替取引に課税するか/生命対に対する多国籍企業の侵害を妨げること/グローバリゼーションは後戻りできないものだろうか?/ポルト・アレグレ/ジェノバの虐殺に抗議するコミュニケ」など。恥ずかしながら、私がこの本の「まえがき」を書きました。

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