(国賠ネットワーク)警察法改悪、衆院の拙速審議に抗議し、法律案に反対します

警察法改悪、衆院の拙速審議に抗議し、法律案に反対します

警察法の一部改正の法律案が、2022年3月2日に衆議院・内閣委員会において可決されました。1回だけ、合計4時間ほどの審議でした。法案は翌日に衆議院を通過し参議院へ移っています。戦前の国家警察の暴虐が繰り返されないよう、都道府県警察が捜査権を持っている現行の制度が覆されようとしています。新聞は次のように報じました。

「警察庁に、サイバー警察局と捜査権を持つサイバー特別捜査隊を設けるための警察法改正案が2日、衆院内閣委員会で可決された。 サイバー警察局がサイバー事案に関する業務全体を担当。警察庁関東管区警察局にサイバー特捜隊を設置し、全国を管轄して「重大なサイバー事案」を捜査する。重大サイバー事案は、国や重要インフラに重大な支障が生じる▽高度な技術を用いる▽海外からの不正な活動に関与する――ものと規定。特捜隊は逮捕や捜索もする。日本の警察は捜査は都道府県警が担っており、国が自ら捜査する形は制度の大きな転換となる。

2日の審議では共産党が「重大サイバー事案の定義に具体的な線引きがなく、恣意(しい)的に権限行使する可能性がある」として、れいわ新選組が「国家警察の復活とも言えるものだが、納得する説明がない」として反対し、自民党や立憲民主党などが提案した付帯決議がつけられた」(朝日新聞22.3.2)

法案の概要説明には、新設されるサイバー警察局は、「捜査指揮、解析、情報集約・分析、対策などを一元的に所掌」とあります。これまでの情報通信局の所掌事務を長官官房へ移し、「警察業務のデジタル化、科学技術の活用等を推進」ともあります。また、関東管区警察局に全国を管轄するサイバー特別捜査隊が200人規模で新設され、国・地方公共団体の重要インフラに関わる事案、マルウェアなど対処に高度技術を要する事案、国際共同捜査などの重大サイバー事案に対応するとされます。警察庁長官官房が情報通信技術に関する広範囲の権限を持つことになります。このように重要な法案について十分な質疑をせず、拙速に可決したことに、強く抗議します。

サイバー・セキュリティの維持管理は、私たちの日常生活の監視強化とも表裏一体です。秘密裏に収集、保存された個人情報が恣意的に使われて、新たな冤罪を生む危惧をぬぐえません。政治と結びついた公安警察の偏見や誤った思い込みから冤罪が生み出される例は後を絶ちません。2021年9月8日に提訴された大川原化工機事件(「世界」2022.3)の国賠訴訟や、大垣警察市民監視事件の国賠(朝日新聞22.2.24)はその実例です。また、冤罪事件の捜査過程を記録した警察の保管・保存文書の情報公開は、これまで都道府県の情報公開委員会のもとで、様々に行われてきました。それらが国に一本化して、安易に廃棄されたり、隠蔽される恐れもあります。このような観点から、私たちは、警察法の一部改正の法律案に、強く反対します。

2022年3月5日

                       国賠ネットワーク

連絡先: infodesk@kokubai.net