衆議院の警察法改悪法案可決に抗議する

3月3日衆議院は、前日の2日の内閣委員会でたった3時間半の審議だけで戦後の警察制度を根底から覆す警察法の改悪を可決した。内閣委員会の審議では、条文の検討にすら踏み込まず、法案審議という立法府が果たすべき役割をほとんど果さず、サイバー警察局やサイバー特捜隊の設置を予定した質疑が大半を占める情けないものだった。立法府としては無責任の極みであり、この重大な法案を審議を尽さすに通過させた責任は重い。

法案に含意されている問題は深刻である。国家が直接捜査権を持つことができるサイバー警察局、サイバー特捜隊は、私たちの日常そのものでもあるネットを専門に取り締る機関だ。更に各都道府県警のサイバー捜査の能力も格段に高度化されることが予想される。同時に、膨大な警察のデータが警察庁長官官房によって統合的に管理されることになる。ビッグデータとAIによる警察監視国家の枠組に法的な根拠を与えることになり、このような国家警察は戦前のそれとは比べものにならない抑圧的なものとなることは間違いない。

しかし、内閣委員会では、サイバー犯罪、サイバー攻撃の脅威が情緒的に語られ、「サイバー事案」に対して捜査機関に大幅な権限を与えることを当然とする雰囲気と、これに「ノー」とは言えない空気が支配した。しかし私たちはこうした脅しには決して屈しない。

警察法改悪によって、憲法が保障している言論・表現の自由、結社の自由は大幅に侵害されることになるだろう。また、民間通信事業者などの企業も巻き込み、通信の秘密は形骸化され、国家によるネット検閲もより容易になることも間違いない。私たちは、サイバー犯罪やサイバー攻撃よりも、むしろこうした事態を恐れる。私たちにとって手離すことのできない基本的人権への国家による侵害を恐れる。日本と世界がますます危機とリスクに晒される時代だからこそ、私たちは、多様な人々が交流し連帯しながら、平和な社会を創り出すための闘いを創り出す前提となる表現の自由や通信の秘密を、一歩たりとも警察や政府の手に委ねるような立場はとらない。

参議院の審議はこれからである。議員の皆さんには、警察法の問題をはっきりと見据えて、反対の態度を貫くよう、改めて訴える。

2022年3月5日

警察法改悪反対・サイバー局新設反対2・6実行委員会(注)

(注)警察法改悪反対・サイバー局新設反対2・6実行委員会は、ATTAC Japan(首都圏)、JCA-NET、アジア太平洋資料センター、共通番号いらないネット、盗聴法に反対する市民連絡会などの市民運動団体、NGOに関わる個人によって構成されています。

ウエッブ:https://www.jca.apc.org/no-cyberpolice/

問い合わせ:no-cyberpolice.techcenter@aleeas.com  (TEL)070-5553-5495